昔の日本の家には仏間があることが一般的でしたが、現代ではマンション暮らしの世帯が増え、仏壇を置くスペースを取れないということも珍しくありません。
また、家で供養はしたいけど、跡継ぎがいないので仏壇を買おうにも買えないというケースもあります。
しかし、自宅での供養は必ずしも仏壇は必要ではありません。
今回の記事では、仏壇の代わりに自宅で供養できるものをご紹介します。
仏壇とは?
それでは、そもそも仏壇にはどういった定義があり、どんな役割があるのでしょうか。また、仏壇は必ず必要なものなのでしょうか。
仏壇とは何か
仏壇とは、一口で言うと「自宅にあるお寺」のことです。
仏壇は、お寺の本堂を模したものであり、その宗派で最も信仰される仏様(本尊)を祀ります。
また、浄土真宗以外の宗派では、仏壇に位牌を置きます。
位牌は、故人がこの世に降りてくる時の窓口のようなものです。
仏壇にお参りするときは、故人が位牌まで降りてきます。
したがって、仏壇は本尊と故人・祖先にお参りをするための施設です。
お墓やお寺と違い、自宅でいつでもお参りできる点で便利です。
仏壇を置く意味は?
現代では日本人の宗教観や神仏観も変わってきて、仏壇は必要ないと考える人も増えてきました。
家に仏壇を置く意味は、どのようなことがあるのでしょうか。
故人とのコミュニケーションの場
仏壇は、故人に思いを馳せ、故人との関係を再認識する場を提供してくれます。
仏壇に祀られる位牌は、故人がこの世に降りてくる時の窓口になります。
亡くなった家族や身内に思いを馳せるときは、やはり仏壇の前が落ち着くのではないでしょうか。
逆に、仏壇にお参りする習慣があるから、故人のことを定期的に思い出すことにもつながります。
亡くなってからといって、その人と自分との関係は終わりではありません。
故人としてのその人と新たな関係を築くためには、故人のことを思い出す作業は重要なプロセスになります。
精神的な支柱として
仏壇に祀られるご本尊にお参りをすることは、日々のストレスから解放される手段になります。
仏など、人知の及ばない神聖な存在とのつながりを感じていれば、仕事や家庭などの毎日のストレスも小さなことに思えます。
あるいは、日々の雑事を忘れ、心を静かにしてお参りをすることで、一度ストレス自体から解放されることができます。
一度心をリセットする場として、仏壇にお参りするというのもいいでしょう。
先祖への感謝の場所として
仏壇には顔を知っている家族だけではなく、それ以前の先祖代々の霊も祭られています。
仏壇にお参りすることで、自分が今あることの感謝を、先祖に伝えられます。
自分は無の世界から突然生まれた生物ではありません。
必ず両親がいます。両親がいなければ自分がありません。また両親もその両親がいなければ存在していません。
そのようにさかのぼっていくと、自分が今存在して生きているということは、先祖が営々と血をつなげてくれているおかげなのです。
また、自分は先祖からの繋がりにいると感じることで、一人切り離された存在ではないという安心感も得ることができます。
仏壇はなくてもいい?
仏壇は必ずしも置く必要はありません。
仏壇を置くことの意味は、先述の通り故人・先祖、仏様とのつながりを感じられる場を提供してくれることにあります。
しかし逆に言えば、これは「仏壇がなければできないこと」ではありません。
家の中に、故人の霊魂を祀る場所があって、先祖への感謝の気持ちを伝えられて、故人と対話することができれば、それはどのような場所、どのような環境でもよいのです。
ですから「仏壇」という仏具は絶対になければならない、ということはありません。
ただし、本当は仏壇が欲しいけど事情によって家に置けないという場合は、仏壇に代わるものを置けばいいでしょう。
マンション暮らしで仏壇の代わりになるものは?
自宅がマンションだったり、1人暮らしのワンルームだったりして、仏壇が置けない場合、その代わりにどのような「故人と対話をする場所」を設けたらよいのでしょうか。
カラーボックスや家具
1番簡単な方法は、カラーボックスや家具などの上に何か布を敷いて、そこに位牌を安置し、花などを供えれば、それで十分に仏壇の代用になるということです。
そこに向かって毎朝、線香とロウソク、お供えを供えれば、仏壇の機能は完全に果たすことができるでしょう。
さらに言えば、カラーボックスの上など、常に目に触れる場所に仏壇の代用を設ける必要もありません。
たとえば押し入れの一角に台を置き、そこに布を敷いて位牌を安置すれば、そこも十分に仏壇の機能を果たします。
むしろ普段は見えないので、部屋の雰囲気に違和感をもたらさず、良い方法かもしれません。
供養壇・ミニ仏壇
最近は本格的な仏壇の代わりとして、ミニ仏壇や供養壇を購入する人も増えています。
ミニ仏壇とはその名の通りサイズの小さな仏壇で、棚や家具の上に置いても違和感のないものです。
供養壇もほぼ同様ですが、遺骨を一部オブジェに入れて祀ったり、本尊を置かない場合もあります。
形も本当の仏壇のミニチュア版のようなものから、飛び出す絵本式に敷台と背後に衝立があるだけのものまで多様なので、自分の趣味に合ったものを選べます。
手元供養グッズ
手元供養とは、遺骨を自宅や身に着けられる形で保存して供養することです。
遺骨を身近に安置することで、仏壇が無くても故人に思いを致し、供養できます。
自宅に置くタイプだと、おしゃれでインテリアになじむ容器が広く販売されています。ミニ骨壺がその代表です。
また、遺骨自体を宝石やプレートに加工して、自宅に安置できるものもあります。
身に着けるタイプだと、小さなケースに少量の遺骨を納めてペンダントにしたり、遺骨自体を宝石に加工してアクセサリにするものもあります。
いずれにしても全骨を使わない・納められないものが多いんで、残りの遺骨はお墓に入れたり散骨する必要があります。
仏壇を自分で作るのはあり?
もしもDIYに自信がある人であれば、仏壇を自分で作ってもよいでしょう。
仏壇には形式的な制限はありませんから、カラーボックスに扉をつけ、その中に本尊と位牌を祀るだけでも仏壇になります。
位牌の代わりになるものはある?
仏壇の代用が可能となると、次に考えるのは位牌の代わりになるものはあるのかということでしょう。
そもそも無宗教でお葬式を挙げた場合は、戒名がありませんから位牌も作りません。
しかし故人を何らかの形で象徴するものがなければ、何に対して祈っていいのか戸惑ってしまうことも事実です。
その場合は、故人の写真などを置いてそこに話しかければ、それが十分に位牌の代わりになるでしょう。
遺骨を自宅に安置する場合の注意点
仏壇があった場合でも、また仏壇を何かで代用した場合でも、そこに遺骨を安置する時にはいくつか注意点があります。
ごくたまに遺骨にカビが生える
保管の仕方が良くないと、遺骨にカビが生えることがあります。
高温で火葬された直後の遺骨は滅菌されている状態なので、骨壺に遺骨を納めた時点では、カビが生える要素がありません。
ただし、骨壺のふたの間から外気が入ったり、温度差で結露して内部に水がたまると、そこからカビが生える場合があります。
遺骨を安置する際は、通気性が良く、直射日光が当たらない場所を選びましょう。
結局はどこかに埋葬・散骨する必要がある
遺骨を自宅で供養していても、供養する本人が亡くなった時、手元供養されていた遺骨はどうすればいいのでしょうか。
遺骨の処理は「墓地、埋葬などに関する法律」などで定められており、原則墓地に埋葬しなければなりません。そうでなければ散骨します。
納骨に期限はないので手元に遺骨を置いておくこと自体は問題ありませんが、いずれは誰かがしかるべき形で供養する必要があります。
結局は納骨を先延ばしにするだけなので、手元供養する場合は後々のことも考えておきましょう。
まとめ
故人を供養する気持ちや、故人と対話をしたい気持ちの上で大切なのは、形ではありません。その気持ちが本当にあるかどうかだけです。
したがって、仏壇という形にこだわる必要は必ずしもないのです。
もし仏壇を置けなくても、自分のライフスタイルにあった供養方法を探しましょう。その方こちらにとっても負担にならず、かえって心置きなく供養ができるでしょう。