家族が亡くなった後、悲しみが癒えない間でも、否応もなくしなければならないことが「遺品整理」です。
しかししなければならない、と分かっていてもどうしても手をつけられない場合もあるでしょう。
そのような場合どうしたらよいのでしょうか。
今回の記事では、遺品整理がどうしてもできない場合の対処法をご紹介します。
目次
■遺品整理の時期
・遺品整理はいつから始める?
└四十九日法要を終えてすぐ
└相続手続き終了後すぐ
└葬儀後すぐ
・遺品整理はいつまでに終わらせる?
└賃貸の場合は申し出て1ケ月後まで
└故人に報告したいなら四十九日まで
└持ち家の場合は年末まで
└相続税の申告のためには亡くなってから10ヶ月以内
■遺品整理の仕方とは
・貴重品を最初に見つけて別にする
・相続や手続きに必要な書類を捜索する
・遺言書やエンディングノートなどを見つける
・遺族が揃ったところで行う
・遺品整理で残すものと残さないものに分ける
・保留品の判断期限を決める
■遺品整理ができない原因
・親の遺品はなかなか捨てられない
・亡くなった人の物の処分にストレスを感じる
・時間が取れない
・物が多すぎる
・実家が遠方にある
■遺品整理ができないとどうなるか
・実家が処分できな場合に費用が発生する
・部屋が使えない
・気持ちが整理できない
・空き巣による盗難
・害虫の発生
・不審火の発生
■遺品整理を自分でできないときの対策
・日時を決めて親戚を総動員する
・形見分け会をする
・遺品整理業者に委託する
└遺品整理業者に依頼するのメリット
└遺品整理業者に依頼するデメリット
└遺品整理業者の料金
└遺品整理業者の選び方
遺品整理の時期
本来、遺品整理はいつからいつまでにやるのが望ましいのでしょうか。
遺品整理はいつから始める?
まず一般的に言うと、遺品整理をするタイミングは以下の通りです。
四十九日法要を終えてすぐ
1つは四十九日の法要を終えてらすぐのタイミングです。
宗派にもよりますが、仏教では、故人の霊魂は亡くなってから四十九日の間はこの世をさまよっているとされます。
ですからその四十九日間はお墓の中に納骨せず手元に置いて供養し、四十九日が終わったら安心してお墓に納骨するのです。
ですから、亡くなった人の霊魂があの世に行ったことをメドに遺品整理を行うことが多いのです。
また四十九日の法要には親族が多く集まるため、形見分けを合わせて行い、それに伴って遺品整理をするということもよくあるケースです。
相続手続き終了後すぐ
家族が亡くなるといろいろな手続きが必要です。
手続きは死亡届から始まって、電気、水道、ガスなどの停止または支払い口座の変更、年金、保険金などの手続き、そして何より遺族の間で遺産分割について話し合い、その上で相続手続きをする必要があります。
相続を済ませてしまえば、遺品の持ち主がすべて確定するので、それを契機に遺品整理を行います。
葬儀後すぐ
故人が賃貸住宅に住んでいいた場合、賃貸契約を解除しなければなりません。
その際には、家主に申し出てから1か月以内に退去することになります。
ですから退去の日までに遺品整理をするために、多くの場合は葬儀が済んだらその足ですぐに遺品整理を行うことが多いのです。
遺品整理はいつまでに終わらせる?
では、遺品整理はいつまでに終えなければならないのでしょうか。
賃貸の場合は申し出て1ケ月後まで
まず個人が賃貸住宅に住んでいた場合は、家主に契約解除を申し出て1ケ月後が退去日になります。
家主はその1か月後から、次の賃借人を入れるために室内の清掃などを開始します。
ですからその日までに遺品整理を終える必要があります。
故人に報告したいなら四十九日まで
遺品整理はおそらく故人にとっても気になるところです。
霊前で無事に遺品整理が終わったということを報告したいのであれば、故人の霊魂この世にある四十九日までの間に遺品整理を行い、安心させてあげます。
持ち家の場合は年末まで
故人が自分の持ち家に住んでいた場合、故人が亡くなろうとどうであろうと税法上は固定資産税が発生します。
誰も住んでいない不動産の固定資産税を納付するのは無駄な話ですから、できれば固定資産税の計算が行われる期日まで故人の家を売却したいと考える人も多いでしょう。
そのためには、固定資産税の課税額の計算が毎年1月1日時点の土地、建物などの所有者に対し行われますので、その日までに不動産を売却することが必須になります。
したがって、1月1日直前であるその年の年末までに遺品整理を行い、持ち家を売却できる状態にするわけです。
相続税の申告のためには亡くなってから10ヶ月以内
固定資産税の支払いはあきらめても、不動産を相続した場合はその相続税の納付は期日までに行わなければ脱税になります。
期日は故人が亡くなってから10ヶ月以内です。
したがって、10カ月以内に誰が何を相続するのかが具体的にわかっている状態にする必要があります。
相続財産には不動産の他、趣味で集められる骨董品などの動産も含ます。
整理される遺品の中に相続財産に該当するものがあるかもしれません。
ですから、故人が亡くなって10カ月以内に遺品整理をして、どんな財産があるのかを明確にする必要があります。
遺品整理の仕方とは
遺品整理はどのようにしたら1番効率的なのでしょうか。
その遺品整理の仕方の基本は以下の通りになります。
貴重品を最初に見つけて別にする
遺品整理を行う時に最初にするのは、貴重品を遺品の中から選り分けて、処分するものとは別にして保管することです。
貴重品といってもそれは何も貴金属だけではなく、亡くなったあとの公共機関の手続きに必要なものを含みます。
具体的には以下のものです。
・印鑑、実印
・銀行の預金通帳、キャッシュカード
・マイナンバーカード、印鑑証明カード
・年金手帳、年金関連書類
・健康保険証、運転免許証、パスポートなどの個人証明書類
・電気、水道、ガスなど公共料金の領収書や請求書
・電話、インターネットの領収書や請求書
・借用証や金銭貸借契約書などの借入金に関する書類、契約書、証文
相続や手続きに必要な書類を捜索する
また故人の遺産を相続するために手続きに必要なものも合わせて探して選り分けておきましょう。
具体的には以下のものです。
・生命保険、損害保険の証書
・土地や家などの不動産登記簿や権利証
・株などの有価証券、金融資産に関する覚え書やメモ
遺言書やエンディングノートなどを見つける
上記のことと並行して行うのが、故人の遺志を確認するための遺言書やエンディングノートを見つけることです。
エンディングノートには遺産の分割方法を含めて、形見分けなどの遺品整理についても方向が示されているはずですから、遺品整理はその遺志に沿って行いましょう。
遺族が揃ったところで行う
遺品整理は相続対象の遺族全員がそろってから行いましょう。
遺言がない場合、誰が何を相続するのかは相続人同士の遺産分割協議で決められます。
一部の相続人だけで相続財産を処分することはできないので、遺産分割協議は遺品整理の前に済ましておく必要があります。
自分以外の相続人がいない場所で遺品整理を行ってしまうと、処分した後でその遺品が欲しかったなどのクレームが出て、大きなトラブルの原因になります。
また遺品整理の前に、どのような方針で遺品整理を実施するのかについて遺族の間で話し合っておくことも、遺品整理を効率的に行うポイントになります。
遺品整理で残すものと残さないものに分ける
ここまで済んでやっと遺品整理を開始できます。
遺品整理では、遺品を「残す」「処分する」「保留する」の3つに分けます。
しかし「残す」ものが多くなってしまうと遺品整理の意味がなくなりますし、「保留」が多くてもその保留の品をどうするかの判断を後日また行うことになるので手間が倍増するだけです。
したがって遺品整理は、多くの品の中から「絶対に残したいものを探し出す」という考え方で行いましょう。
保留品の判断期限を決める
しかし、「保留」と分別された遺品は必ず発生します。
その保留品をそのままずっと置いておいたのでは、結局残したことと同じになります。
ですから、必ずその保留品をいつまでに判断して、最終的に残すか処分するかを決める、というその期日を明確に設けておきましょう。
遺品整理ができない原因
以上のような遺品整理の期日があっても遺品整理ができない場合があります。
主だった原因を紹介します。
親の遺品はなかなか捨てられない
1つは親などの故人の遺品には思い出が詰まっているので、なかなか捨てる踏ん切りがつかない、という場合です。
亡くなった人の物の処分にストレスを感じる
家族を失うということは喪失感や虚無感と言った大きなストレスを抱えることになります。
遺品を目の前にすると、そのストレスがさらに増えてうつ状態になるので、遺品整理ができないという場合もあります。
時間が取れない
そもそも仕事や毎日の生活が忙しいために、遺品整理に手が回らないということもあるでしょう。
それに遺品整理は1日で終わるものではありませんから、そのようなまとまった日程がなかなか取れないということもよくあります。
物が多すぎる
遺品整理の時間をとっても、遺品が多すぎるためなかなか終わらないということも発生します。
これは特に長年連れ添った配偶者が亡くなり、残された高齢の妻や夫だけで遺品整理を行わなくてはならない場合に多いことです。
実家が遠方にある
遺品整理は1日では終わりません。
何度も通ったり、あるいはまとまった日程を取る必要があります。
しかしその遺産整理をするべき実家や家が遠くにあって、何度も通えない、あるいはホテルなどに宿泊なければならない、という場合には遺品整理がなかなかできません。
遺品整理ができないとどうなるか
遺品整理をしないでそのままにしておくとどうなるのでしょうか。
遺品をそのままにしておくことで生じる問題を紹介します。
実家が処分できな場合に費用が発生する
遺品整理ができずに実家の売却ができない場合は、次のような費用が発生します。
費用は遺族の誰かが負担しなければなりません。
・固定資産税
・実家が賃貸の場合、その家賃
部屋が使えない
家族が多くて1部屋でも余裕が欲しい場合に、故人の部屋がそのままになっていると、使えない無駄な部屋が1つずっと残ってしまうことになります。
気持ちが整理できない
遺品が故人の生前の状態のまま残っていると、なかなか故人に対する気持ちや、亡くなったことを受け止める気持ちの整理がつきません。
空き巣による盗難
居住者のいない家がそのまま残されていることは、その家に空き巣などが入りやすい状態で放置していることでもあります。
空き巣だけではなくホームレスがこっそり実家に入って好き勝手に暮らしてしまうということもあり得ます。
害虫の発生
遺品を放置しておくと、そこから害虫が発生することがあります。
自分の家の中だけならまだしも、その害虫が近隣の家に移って、トラブルになる恐れもあります。
害虫は食べ物などの生ゴミの中に発生するだけではなく、衣服や本などにも繁殖するので、きれいにしていても注意が必要です。
不審火の発生
居住者のいない家は放火魔の格好のターゲットにもなります。
あるいは放火魔ではなくても、遺品によっては自然に発火する場合もあります。
自分の実家が出火元で周辺が類焼してしまったら損害賠償が発生することもあり得ます。
遺品整理を自分でできないときの対策
遺品整理がなかなかできない時は、自分一人で悩んでもなかなかはかどりません。
次に、遺品整理ができないときの対策を紹介します。
日時を決めて親戚を総動員する
1つは親族の手や知り合いの手を総動員して、一定の日に一斉に集まって、一気に遺品整理を済ませるという方法です。
形見分け会をする
遺品整理をするので手伝ってほしいということはなかなか頼みにくい場合もあるでしょう。
そういう時は、形見分けの会をするので参加してほしい、ということにします。
参加者も自分にメリットがあることなので、積極的に参加してくれます。
遺品整理業者に委託する
最近よくある方策は、専門の遺品整理業者に委託することです。
プロなので効率的に、かつ客観的な判断で残すものと処分するものを判断し、処分も迅速に完璧にしてくれます。
遺品整理業者に依頼するメリットとデメリットを挙げておきましょう。
遺品整理業者に依頼するメリット
まずメリットは以下の点です。
・短時間で遺品整理ができる
・遺品整理のあとの処分品の回収、清掃、不用品の買取まで行ってくれる
・遺族の精神的負担、身体的負担がなくなる
・貴重品を確実に見つけ出してくれる
・必要な品物と処分する品物を的確に、かつていねいに行ってもらえる
遺品整理業者に依頼するデメリット
しかしデメリットも以下のようにあります。
・遺族ですれば無料の作業に費用がかかる
・家の広さ、遺品の量によっては多額の費用になる
・一般的には不用品だが、実はとっておきたかった遺品が処分されてしまう
遺品整理業者の料金
また以上のデメリットで挙げた費用については、一般的に以下が相場になっています。
・1ルーム、1K:3万円~8万円
・1DK:5万円~12万円
・1LDK:7万円~20万円
・2DK:9万円~25万円
・2LDK:12万円~30万円
・3DK:15万円~40万円
・3LDK:17万円~50万円
・4LDK以上:50万円~
遺品整理業者の選び方
遺品整理業者の中には悪質なところもあります。
具体的には遺品をこっそり盗む、遺品の中で実は価値のあるものを不用品に分別してそれをあとで回収し転売して儲ける、故人のプライバシーを拡散させる、などです。
そういう業者を避けるためには、以下のような業者の選択方法をとりましょう。
1.「遺品整理士」の資格を持っている遺品整理業者を選ぶ
遺品整理士とは一般社団法人の遺品整理士認定協会が認定する民間資格です。
この資格を持っている遺品整理士は、法的な知識もしっかり持っているので相続などの上で必要になるものを処分してしまうことがありませんし、モラルもしっかりしていますから犯罪を犯す可能性が低いです。
2.ホームページから個人情報を守る体制について確認する
しっかりした業者の場合は個人情報保護方針を明確に提示し、作業員に徹底しています。
3.口コミや比較サイトを見る
インターネット上の遺品整理業者比較サイトや、口コミサイトで、その業者に関する情報を集めてみましょう。
以上を行えば遺品整理業者に頼んだことによるトラブルは限りなく避けられるでしょう。
まとめ
遺品整理はいつかは必ず行わなければなりません。
またいつまでも先延ばしにしてしまうと、心理的な負担だけではなく、金銭的な面や物理的な面で損害が発生してしまう可能性もあります。
遺品整理の期日を設定し、人の力を借りるなどして効率的に遺品整理を行いましょう。