仏壇が自宅にある場合、何をどのように飾っていますか。
見よう見真似、あるいは親がしていたことをそのまま踏襲していませんか。
もちろん、大切なのは仏壇にお参りする心なので、多少飾るマナーが違っていても大丈夫ですが、しかし大人の常識として正しい仏壇飾りの方法については知っていたほうが良いでしょう。
今回の記事では、仏壇飾りには何が必要で、正しい飾り方はどのようなものかということを解説して行きます。
正しい仏壇の飾り方
ではさっそく、正しい仏壇飾りについて解説します。
仏壇に飾る仏具の種類
仏壇に飾る仏具は以下のようなものです。
香炉
香炉は線香を焚くものです。
香炉にはふたのある玉香炉とふたのない前香炉があります。
玉香炉は通常は小さいので、本尊の前に供え、線香は立てません。
線香を供えるのは、仏壇の正面に置いた前香炉にします。
3本足の香炉の場合は、そのうちの1本を手前にします。
花立
花立は生花を供えるものです。
仏壇の左右に1つづつを置き、両方に同じ花を供えます。
燭台
燭台はロウソクを立て、灯をともすものです。
火立やロウソク立ともいいます。
仏飯器
仏壇に御飯を供えるのは、生きている人間が使うような茶碗はNGです。
代わりに仏飯器という専用のご飯を盛る器を使い、毎朝炊きたてのご飯を供えましょう。
茶湯器
お茶や水も御飯と同様に、専用の茶湯器を使います。
これも毎朝、新しいお茶や水に替えましょう。
仏器膳
仏飯器や茶湯器をのせる横長のお膳を仏器膳(ぶっきぜん)と言います。
これは仏壇の正面に供えます。
高杯
高杯(たかつき)は高月とも書き、お菓子や果物を供える足のついた器です。
ただし絶対になければいけないというものではなく、お菓子などは茶器に懐紙を敷いてその上に載せて供えても大丈夫です。
リン
リンは金属製の鳴らすと、まさに「リン」と音のするものです。
リンは小さい座布団のようなリン台の上に乗せて使います。
お供えの種類
お供えには「五供(ごくう)」と言って5種類あります。
れは香、花、灯燭(とうしょく)、浄水、飲食(おんじき)です。その内容は以下の通りです。
香
香とは線香のことで、故人や祖先にとってここから出る香りがごちそうになります。供えるタイミングは朝のお供えの最後です。
下げるタイミングは燃え尽きるまでそのままにしておくことです。
花
花には生花または造花を用います。
供える目的は、お参りする人の心を清らかにすることです。供えるタイミングは、枯れてきたら取り替えますが、保たせるためには毎朝水を取り替えましょう。
灯燭
灯燭はロウソクのことです。
ロウソクを立てることで、故人や祖先が仏壇に降りて来る道を示します。供えるタイミングは朝、浄水や仏飯を供えた後です。
お参りが終わったら火を消しましょう。消し方は口で息を吹きかけてはいけません。手であおいだりして消しましょう。
浄水
浄水は清らかな水のことです。故人や祖先の喉が渇かないようにするために供えます。供えるタイミングは、お参りする最初に水を取り替えます。
ただし浄土真宗では浄水を供えません。
飲食
飲食とは炊きたてのご飯のことです。
これも御飯の香りが故人や祖先にとってごちそうになるので供えます。
ですから炊き立てのご飯を、家族に出す前に1番に仏壇に供えましょう。
下げるタイミングは朝供えた場合は午前中いっぱい、少なくとも夕方のご飯が固く前には下げるのが理想です。下げた飲食は家族で食べても大丈夫です。
どのような花を供えればよい?
仏壇に供える花についてもいろいろなマナーがあるので知っておいたほうが良いでしょう。
まず供えるのにふさわしい花は、絶対にこれでなければならない、というものはありません。
ですから故人が好きだった花や、季節の花を供えれば大丈夫です。
ただし、香りのきつい花、色がどぎつい花、トゲのある花、毒のある花はふさわしくないので避けましょう。また合理的な面で言えば、できるだけ長もちするような花にした方が、交換する手間が少なくて済みます。
長もちする花にはどのようなものがあるかと言うと、一般的には菊です。
菊は丈夫なだけでなく、香りよく、丸い形が仏壇に供えるにはふさわしいので人気です。
このほかカーネーションやユリなども良いでしょう。
色は派手過ぎなければどのようなものでも大丈夫ですが、ただし亡くなって49日目の四十九日法要までは白い花を供えるのが一般的です。色は白、黄色、紫、赤、ピンク、水色などが良いでしょう。
写真は飾っても良い?
仏壇には故人の写真や、家族の写真を供えても良いのでしょうか。
遺影を飾ってよいのは四十九日まで
仏教の教義では、人は亡くなっても49日目までは成仏せずにこの世にいます。
その後49日経つと、成仏して極楽へ行くと言われています。
仏壇は成仏した故人の霊が降りて来る場所なので、故人の生前の姿に繋がるものは置かないのが基本です。その点で言うと、写真は故人の生前の姿を示すものになるので、四十九日法要までは遺影として飾りますが、それ以降仏壇に供えるのはNGです。
しかし葬儀で使った遺影の扱いに困ったり、あるいは故人を偲ぶために写真が欲しいという場合は、仏壇の隣や前に棚を置いて、そこに飾りましょう。
ただし霊魂や供養に対する考え方は年々変わっていますので最近はそこまで写真を飾るのはタブーではなくなって来ました。
ですから、あまり神経質にならずに、写真を供えてもOKです。
ただし、仏壇に写真を供えることをNGだと思っている人がいることは知っておいた方が良いでしょう。
生きている人の写った写真はNG
故人に家族が元気で暮らしていることを知らせるために、家族の写真を供えたいという場合もあるかもしれません。
しかしこれも少し古い考えではありますが、写真には魂が宿るとされています。生きている人の写っている写真を破くのは気が引けませんか。
それは無意識に、写真には霊魂が宿っていると知っているから感じることです。
その意味では、仏壇はまさに亡くなった人のためのものですから、生きている人の霊魂が宿った写真を飾るのはNGです。
もしも故人に家族の写真を見せたいという場合は、やはり仏壇とは別の棚を用意して、そこに飾りましょう。
仏壇のどこに何を飾るか
仏壇は3段になっていますが、そのうち最上段には本尊を祀ります。
2段目には位牌を祀り、3段目に香、花、灯燭、浄水、飲食などの五供を飾ります。
仏壇の宗派ごとの飾り方
では仏壇の宗派ごとの飾り方についてもご紹介しましょう。
浄土真宗
まずほかの宗派に比べて、浄土真宗が大きく異なるので、そこから解説します。
そもそも浄土真宗は南無阿弥陀仏と唱えるだけで成仏できる、という考え方の宗派です。
なおかつ、亡くなったら49日間を待たずに、その瞬間に阿弥陀如来が迎えに来て極楽に連れて行ってくれます。ですから、故人が成仏するために仏壇に何かを供えるということは不要、と言うのが基本的な考え方です。
そのような考え方なので、ほかの宗派では仏壇には故人が降りてくるための位牌を供えますが、浄土真宗では供えません。
故人は極楽で成仏して、幸せに暮らしていますから、仏壇に降りては来ないのです。その代わりに故人の法名が記載された過去帳を祀ります。
本尊は浄土真宗の本願寺派(お西)では阿弥陀如来を祀り、脇待は蓮如上人と親鸞上人の掛け軸を供えます。
東本願寺派(大谷派、お東)の場合は本尊は阿弥陀如来で脇待は九字名号と十字名号という経文の文字を書いた掛け軸を供えます。
また毎日の供養もほかの宗派とは違って、浄水は供えません。
その代わりに仏飯を山盛りにして供えます。
浄土宗
浄土宗では本尊は浄土真宗と同じ阿弥陀如来ですが、座像ではなく立像を祀ります。
脇待は観音菩薩、勢至菩薩。または善導大師、円光大師です。
これは掛け軸でも像でもかまいません。
真言宗
真言宗の本尊は大日如来です。
脇待は弘法大師、不動明王ですが、智山派、豊山派の場合は不動明王の代わりに、興教大師の掛け軸にする場合もあります。
天台宗
天台宗には特に厳密な祀り方はありませんが、本尊は一般的には阿弥陀如来です。
脇待は伝教大師、天台大師が一般的ですが何も祀らない場合もあります。
日蓮宗
日蓮宗の本尊は、日蓮聖人が書いたという「大曼荼羅(だいまんだら)」の掛け軸です。
その掛け軸の前に日蓮聖人の仏像を祀ります。大
曼陀羅はほかの飾りに比べて手に入りにくいですが、大きな仏壇店や菩提寺に言えば購入できるでしょう。
曹洞宗
曹洞宗の本尊は釈迦如来、別名釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)を祀ります。
脇侍は基本的には不要ですが祀る場合は、道元禅師、瑩山禅師の掛け軸にします。ほかの宗派と違うのは位牌を2段目ではなく、本尊の左右に祀ることです。
臨済宗
本尊は特に決まっていませんが、多くの場合は曹洞宗と同じ釈迦如来を祀ります。脇侍は分派によって異なります。
たとえば妙心寺派の場合は無相大師と花園法皇の掛け軸です。
脇侍については菩提寺に確認したほうが良いでしょう。
まとめ
仏壇の正しい飾り方について良くおわかりいただけたのではないでしょうか。
最初に書いたように、仏壇を飾る時に1番大切なのは故人を偲ぶ心と、その宗派に帰依する気持ちです。
ですから仏壇の飾り方にあまり神経質になる必要はありませんし、逆に言えば形だけ作っても心がこもっていなければ意味がありません。
しかし一方では、他人がその仏壇を見たときに、あまりにマナーに反した飾り方だった場合は、気にされる場合があることも事実です。ですから上で説明したような解説を参考に、基本的なマナーを守った仏壇の飾り方を行いましょう。