仏教では、法事を行う際に様々な場面でのし袋を使用します。
また場面によって、のしの有無・表書きの書き方・水引の種類などを使い分ける必要があります。
これらは明確な決まりではなく、マナーとされる場合も多く、迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。
この記事では、のし袋について、主に法事での使用に焦点を合わせて解説します。
のしとは
のしは、一般的に慶事の際に送る贈答品に飾りとして使用する物です。
元々は、長寿を表すアワビが素材として使われていました。
そのため、本来は慶事ではないお見舞いなどでも、のしを使う場合があります。
基本的には弔事でのしを使うことはマナー違反とされます。
以下では、のしの由来や種類について解説します。
のしの由来・歴史
のし【熨斗】は漢語で、熨「熱でしわを伸ばす」斗「ひしゃく」を意味し、昔アイロンとして使われていた火熨斗に由来しています。
現代でも中国では、熨斗はアイロンを意味します。
元々のしは、アワビを薄く伸ばし、乾燥させた物で作られていました。
アワビは長寿をもたらす縁起物とされ、アワビで作られたのしは、贈答品に添える場合に適していました。
その後のしは簡略化され、昆布や紙を使うようにもなりました。
現代では、あらかじめのしが印刷された、のし袋・のし紙が一般的です。
のし紙の種類
のし紙の種類は、のしではなく水引と呼ばれるヒモ状の飾りの色や結び方で決まります。
のし紙の種類は多様で
紅白蝶結び・紅白結び切・黒白結び切り・黄白結び切り
などヒモの色の組み合わせと結び方で呼びます。
のしを使う物・使わない物
のしは、本来アワビを材料としているため、生ものの代用品としての意味もあります。
そのため、生ものを送る場合はのしを付けません。
この生ものとは文字通りの意味ではなく、生ものを加工した物にも適用されるため注意が必要です。
ハムなど過熱済みの肉類や、鰹節などの場合ものしを付けません。
のしは基本的に祝い事の際にしか使用しません。
弔事で使用する場合は、贈答品が生ものかどうかに関係なくのしを付けません。
弔事があった家庭に贈答品を送る場合、のしを付けてしまうと大変失礼にあたります。
また、仏前に生ものをお供えすることはないため、仏前へのお供えにも本来は生ものアワビで作られたのしを付けることはありません。
法事で使うのし袋の用意の仕方
のし袋の種類は様々で、のしや水引が最初から印刷されている物から、全てを自分で用意し組み立てることもできます。
表書きと名前を含め印刷を行ってくれるサービスや、金額や包み方の相談に乗ってくれる葬儀社もあります。
代表的なのし袋の用意の仕方を紹介します。
のし袋の購入方法
のし袋を販売している所は多く、ホームセンターやスーパーから、コンビニや100円均一でも購入することができます。
近年では、インターネット通販でも購入することが可能で、最短で注文したその日に届くサービスを行っている場合もあります。
急遽用意する必要がある場合でも、購入方法で困ることはあまりありません。
専門店に頼む
のし袋を単体で購入する以外にも、贈答品などの専門店で頼むこともできます。
この場合は、贈答品をあらかじめのし袋で包んだ状態で用意をしてもらえ、用途に合わせたのし袋を選択して貰えます。
表書きなどを印刷して貰える場合もあります。
そのため、自分でのし袋を購入するよりも、失敗する可能性を低くすることができます。
法事で使うのし袋の表書き・名前の書き方
のし袋の表に大きく【寿】や【御祝】と書かれた物を目にしたことが一度はあるのではないでしょうか。これが表書きです。
しかし法事で使う表書きは慎重に選ぶ必要があります。
香典を包んだのし袋に【寿】と書いてあったら大問題です。
以下では、法事で使用するのし袋の表書きと名前の書き方について解説します。失敗することのないよう、参考にしてみてください。
表書きの書き方
法事の場合、四十九日までは【御霊前】と薄墨で書きます。
葬儀から初七日など全て【御霊前】で大丈夫です。
ただし浄土真宗の場合は【御仏前】を使います。
浄土真宗以外の宗派では、四十九日までは故人は霊魂となってあの世とこの世の間をさまようとされていますが、浄土真宗の場合は、故人は亡くなった直後に浄土に赴き成仏すると考えられているからです。
四十九日を過ぎてからは、全ての宗派で【御仏前】を使い黒墨で書きます。
基本的にこの2種類を覚えておけば問題はありません。
名前の書き方
名前を書く場合も、四十九日前は薄墨、四十九日後は黒墨を使います。
名前は、水引の下に送り主の名前をフルネームで書きます。
夫婦の場合は、夫の名前をフルネームで中央に書き、妻の名前のみ夫の名前の左隣に書きます。
3人以内で連名にする場合は、右から順に立場や地位が高い人の名前を書きます。
友人など特に上下関係がない場合は、50音順でかまいません。
4人以上の場合は、代表者の名前だけを書き、その左に○○一同と書きます。
この場合は、全員の名前を書いた別紙を用意する必要があります。
これも、立場や50音順に揃えましょう。
法事のお返しで使うのし袋の表書き
お返しで使うのし袋の表書きには【志】か【粗供養】を使います。
基本的にどちらを使っても問題ありませんが、関西・四国・中国地方では【粗供養】を、それ以外の地域では【志】を使うのが一般的です。
法事で使うのしの中袋の書き方
中袋の表側には、漢数字で金額を書きます。
場所は、中央上部に縦書きで書きます。
漢数字は、一般的な書体ではなく大字を使います。
これは一二三と書いた場合、簡単に書き換えることができるからです。
以下に一から万までを記載しておくので、参考にしてください。
壱 弐 参 肆 伍 陸 漆 捌 玖 拾 佰 仟 萬
一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 百 千 万
法事で使うのし袋を用意する際のマナーと選び方
法事で使うのし袋は多様で、場面に合わせて選択する必要があります。
のし袋の種類は中身の金額や、地域によっても変わる場合があります。
以下では法事で使うのし袋の種類について解説します。
香典で使う水引の色・本数・結び方
香典を包む際に使う水引の色は、一般的に黒・白か青・白です。
関西地方では一周忌以降に黄・白を使う場合があります。
包む金額が多い場合は、双銀(銀・銀)を使います。
水引の本数は、奇数にする必要があり、一般的に5本か7本です。
【苦】を連想するため、9本は使いません。
水引の結び方は、一般的に結び切りを使います。
これは簡単にはほどけない結び方で、二度と繰り返したくない行事で使う結び方です。
同じ理由で、あわじむすびも選択されます。
お返しで使う水引の選び方【一周忌・三周忌・七回忌】
お返しで使うのし袋の水引は、一般的に黒・白を使います。
一周忌までを黒・白、三周忌以降を青・白か黄・白とする場合もあります。
本数は香典と同じく5本か7本で、結び方は結び切りです。
お寺に渡すお布施で使うのし袋
一般的にお布施を包む場合はのし袋を使いません。
白い封筒に入れて渡す方法が一般的です。
奉書紙を使うと、より丁寧な形になります。
この場合、水引も使用しません。
これは、お寺に不幸があったわけではないからです。
お布施を入れた封筒の表書きは【お布施】と書きます。
お布施をそのまま渡すことはマナー違反とされ、ふくさと呼ばれる布に包んで渡します。
香典の渡し方とマナー
香典を渡す場合は、施主に直接手渡し、「どうぞお供えください」と一言添えることがマナーです。
中身の紙幣にも正しい包み方があります
新札を包まない
香典で新札を包むと、あらかじめ予想していたことになり、マナー違反です。これは四十九日を過ぎてからも同様で、新札は避ける必要があります。
手元に新札しかない場合などは、折り目をつけることで対応できます。
・金額に4と9を含めない
4は【死】を、9は【苦】を連想させ、不吉で縁起が悪いとされています。
そのため、4万円や9万円などの金額は避ける必要があります。
・向きを揃えてお札を包む
お札の向きは厳密に決まっているわけではありませんが、裏から中袋を開けてお札を取り出した時に、表が見えるように入れます。
人物が描かれている方は下側にします。
まとめ
のしは、一般的に慶事の際に送る贈答品の飾りとして使用する物です。
元は、アワビを薄く延ばし乾燥させた物が使われていました。
現代では、のしと水引があらかじめ印刷されたのし袋が一般的です。
のし紙の種類は、水切りの色と、その結び方で決まります。
一般的に、慶事に使う場合は紅白蝶結、弔事に使う場合は黒白結び切りを使用します。
生ものを送る場合は、のしを使用しません。
ハムなど過熱済みの肉類や、鰹節なども生ものとされます。
仏前へのお供えにのしは使いません。
のし袋は、スーパーやコンビニなどで購入することができます。
贈答品などの専門店に依頼すると、用途に合わせてのし袋を用意してくれる場合や、表書きなどを印刷してくれる場合があります。
香典の表書きは、四十九日までであれば【御霊前】、それ以降は【御仏前】を使います。
浄土真宗の場合は、四十九日前でも【御仏前】を使います。
お返しで使うのしの表書きは、【志】か【粗供養】を使います。
関西地方では【粗供養】を、それ以外の地域では【志】を使うことが一般的です。
香典を包む際に使う水引の色は、一般的に黒白を使います。
結び方は結び切りか、あわじむすびを使います。
お寺に渡すお布施では、一般的にのし袋は使いません。
白い封筒か、奉書紙にお布施を包みます。
水引も使用しません、これはお寺に不幸があったわけではないからです。
以上、のし袋の表書きと、のし袋を包む際のマナーについての解説でした。