縁起でもありませんが、一家を支える大黒柱に万が一ということがあります。
一家を支える大黒柱である夫がいなくなってしまうことは、残された妻や子どもにとっては大きく深い悲しみになります。
悲しみと同時に経済的負担が残された家族に大きくのしかかってきます。
そんなときに頼りになるのが、公的年金から支給される遺族年金です。
頼りになる遺族年金ですが、ほとんどの人は支給されるのですが、中には何らかの理由で支給されない人も少なからずいます。
夫に万が一があっても生きていけるように公的年金から遺族年金が支給されるのかどうかは、事前に確認する必要はあります。
とはいえ、遺族年金がもらえる受給資格については、加入している公的年金の種類によって違いがあるので、この記事を読んでいただき遺族年金がもらえる受給資格があるかどうかを確認してみてください。
■遺族年金とは
遺族年金とは、亡くなった人によって生計が維持されていた遺族の生活を保障するための年金になります。
遺族年金の受給資格は、故人が加入していた公的年金の種類によって変わるので、まずは遺族年金の種類についてみていきましょう。
・遺族年金には2種類がある
遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類と、寡婦年金(かふねんきん)と中高齢寡婦加算の2種類の加算があります。
遺族年金の種類
・遺族基礎年金
故人が国民年金と厚生年金に加入していた場合に受給できる遺族年金になります。
・遺族厚生年金
故人が厚生年金に加入していた場合に受給できる遺族年金になります。
遺族年金の加算の種類
・寡婦年金
国民年金に加入している夫が老齢年金を受け取る前に亡くなると、支払ってきた年金が掛け捨てにならないように妻に対して支給されます。
・中高齢寡婦加算
女性限定で支給されるます。
条件は夫が死亡したときに妻が40歳から64歳の場合で、妻が65歳になるまで遺族厚生年金に中高齢寡婦加算として年間に585,100円加算、支給される有期年金になります。
■年金の加入と遺族年金
それでは、遺族年金をもらうにはどんな要件が必要になるでしょうか。
先述の通り、遺族年金は、故人が加入していた年金によって変わります。
知っているようで以外に知らないのが年金の加入者についてです。
日本の年金は、日本に居住する20歳以上60歳未満の全ての人が加入しなければならない制度で、加入者は以下の3種類に分類されています。
・第1号被保険者
国民年金に加入している自営業者、学生、フリーターの人
・第2号被保険者
国民年金と厚生年金の両方に加入している公務員、民間サラリーマンの人
・第3号被保険者
国民年金に加入していて、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者の人
日本国民である以上、2種類ある公的年金の国民年金か厚生年金のいずれかに加入しているはずなので、遺族年金がもらえる人は全ての人が対象になります。
しかし、中には、年金の未納や未加入時期などによって遺族年金がもらえない人も少なからずいます。
ここからは、2種類ある公的年金でもらえる遺族年金について、受給資格や受給期間、受給金額など詳しくみていきます。
■国民年金に加入している人の遺族年金
亡くなった人(第1号被保険者または第3号被保険者)が国民年金に加入していた場合にもらえる遺族年金は、遺族基礎年金になります。
遺族基礎年金は、母子年金とも言われていて子育て世代を対象にした遺族年金になっていて、毎年、受給額が見直されるので注意が必要です。
受給額については、日本年金機構のページから確認することができます。
・遺族基礎年金の受給資格
遺族基礎年金の受給資格は以下の通りです。
・亡くなった人と生計が同一で、亡くなった人の収入で生計を維持していた、子どものいる配偶者、子ども
受給資格を持つ子どもとは、18歳未満の子ども、20歳未満で障害等級1級または2級の子どものことを指します。
・遺族基礎年金の受給要件
遺族基礎年金の受給要件は、亡くなった月の前々月までの国民年金の加入期間の2/3以上で、保険料が納付または免除されていること、亡くなった月の前々月までの1年間で保険料の未納がないことが受給要件になっています。
2026(平成38)年3月31日までの間は、亡くなった人が65歳未満で、亡くなった月の前々月までの1年間で保険料の未納がないことも受給要件になっています。
また、遺族年金を受け取る人の前年の収入が850万円未満、もしくは所得が655万5千円未満であることも受給要件になっています。
第3号被保険者にあたる妻が亡くなった場合は、夫の年齢が55歳以上であることも受給要件になっています。
・遺族基礎年金の受給金額
遺族基礎年金の受給金額は、基準になる金額(毎年見直される)に子どもの人数分の金額が加算されて決まります。
2018(平成30)年12月の時点での受給金額は、779,300円+子どもの加算額になります。
子どもの加算額は、第1子に224,300円、第2子にも224,300円、第3子以降は各74,800円が加算されます。
・子ども1人の場合
779,300円+224,300円=1,003,600円
・子ども2人の場合
779,300円+224,300円+224,300円=1,227,900円
・子ども3人の場合
779,300円+224,300円+224,300円+74,800円=1,302,700円
遺族基礎年金は、子どものいる配偶者、子どもがいることが受給資格であることからわかるように、子育て世代にとって優遇された内容になっています。
子どもがいない場合は遺族基礎年金をもらえないと思ったかもしれませんが、子どもがいない場合でも遺族年金は支給されます。
子供がいない場合の遺族基礎年金~死亡一時金
子供がいない場合の遺族基礎年金は受取れませんが、死亡一時金として受け取ることができます。
死亡一時金を受け取る資格は、配偶者、子ども、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹にあります。
優先順位は、【配偶者→子ども→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹】の順番です。
死亡一時金を受け取る要件は、「免除期間を含む国民年金保険料の納付期間が36ヶ月以上ある人が、老齢基礎年金を受給せずに亡くなり、その人と生計を共にしていた遺族」が死亡一時金を受取ることができます。
受け取れる死亡一時金は、亡くなった人の保険料納付期間によって、120,000円から320,000円の間で支給されます。
また、死亡一時金の請求は亡くなった日の翌日から2年以内とされています。
期間が過ぎないうちに、市役所に申請しましょう。
子供がいない場合の遺族基礎年金~寡婦年金
子供がいない場合は遺族基礎年金は受取れませんが、一定の条件を満たしていると寡婦年金を受け取ることができます。
寡婦年金を受け取る資格は、婚姻関係が10年以上ある妻になります。
寡婦年金を受け取る要件は、亡くなった夫が10年以上国民年金に加入していて子供がいない、または子供が18歳以上で遺族基礎年金を受給できない妻、亡くなった夫が障害年金を受給していないこと、妻が繰り上げ受給で年金を受け取っていないことが受け取る要件になります。
寡婦年金の受給金額は、亡くなった夫が本来受給できたであろう老齢基礎年金の3/4程度の金額になり、受け取れる期間は妻の年齢が60歳から65歳までの5年間になります。
・遺族基礎年金の受給期間
遺族基礎年金の受給期間は、子どもが18歳に到達する年度の3月31日までになります。
子どもが複数いる場合は、一番下の子どもが18歳に到達する年度の3月31日までが受給期間になります。
また、子どもがいない場合に支給される死亡一時金は、一時という名前の通り一度だけの支給になります。
■厚生年金に加入している人の遺族年金
亡くなった人(第2号被保険者)が厚生年金に加入していた場合にもらえる遺族年金は、遺族厚生年金になります。
また、厚生年金に加入しているということは同時に国民年金にも加入していることになるので、国民年金から遺族基礎年金も併せてらえる場合もあります。
・遺族厚生年金の受給資格
遺族厚生年金の受給資格は以下のようになります。
厚生年金に加入していて亡くなった人と生計を維持していた、
・妻
・子ども、孫(18歳に到達する年度の3月31日を過ぎていない者、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の者)
・55歳以上の夫、父母、祖父母(受給ができるのはいずれも60歳からになります)
になり、その優先順位は、【子どもがいる妻→子ども→子供のいない妻→父・母→孫→祖父母】の順番になります。
先に説明しました遺族基礎年金と大きく違うのは、受給資格対象者が増えていることと、子どもがいない場合でも妻に受給資格があるということです。
・遺族厚生年金の受給要件
遺族厚生年金の受給要件は以下のようになります。
・厚生年金に加入している第2号被保険者が亡くなったとき
・厚生年金に加入している第2号被保険者が加入期間中に傷病がもとで初診の日から5年以内に亡くなったとき
・2026(平成38)年3月31日までの間は、亡くなった人が65歳未満で、亡くなった月の前々月までの1年間で保険料の未納がないことも受給要件になっています。
・老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある人が亡くなったとき
・1級もしくは2級の障害厚生年金を受給している人が亡くなったとき
・遺族年金を受け取る人の前年の収入が850万円未満、もしくは所得が655万5千円未満であることも受給要件になっています。
・遺族厚生年金の受給金額
遺族厚生年金の受給金額は、亡くなった人の加入実績や支払った厚生年金の保険料に応じた金額になります。
また、残された遺族が配偶者だけなのか、子どもはいるけれど18歳以上の場合は遺族厚生年金だけがもらえますが、18歳未満の子どもがいる場合は遺族厚生年金と遺族基礎年金が加算してもらえ、子どもの人数によってもその金額は変わってきます。
遺族厚生年金の受給金額を決める計算式はかなり複雑になっています。
【遺族厚生年金 報酬比例部分の年金額(本来水準)】
{平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数 + 平均報酬額×5.4881/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数}×3/4
このように、遺族厚生年金の計算式はとても複雑でわかりにくいと思いますので、概算にはなりますが、遺族厚生年金の受給金額例をあげさせていただきます。
【平均標準報酬月額 20万円の場合】
・「妻のみ」もしくは「妻と18歳以上の子どもがいる場合」
遺族厚生年金のみ受取れ、年額324,911円(月額27,076円)になります。
・「妻と18未満の子ども1人の場合」
遺族厚生年金と遺族基礎年金の両方が受取れ、年額1,337,711円(月額111,476円)になります。
・「妻と18未満の子ども2人の場合」
遺族厚生年金と遺族基礎年金の両方が受取れ、年額1,564,011円(月額130,334円)になります。
・「妻と18未満の子ども3人の場合」
遺族厚生年金と遺族基礎年金の両方が受取れ、年額1,639,411円(月額136,618円)になります。
・遺族厚生年金の受給期間
遺族厚生年金の受給期間は、遺族厚生年金を受け取る人の年齢や子どもの有無によって変わります。
・配偶者が30歳未満で子どもがいない場合は、5年間のみ受け取ることができます
・配偶者が30歳以上の場合は、子どもの有無に関わらず一生涯受取ることができます
*40歳未満は遺族厚生年金、18歳未満の子どもがいる場合は遺族基礎年金も加算されます
*40歳以上64歳までは遺族厚生年金と中高年寡婦(年額584,500円)が加算されます
*65歳からは遺族厚生年金と老齢基礎年金を併せて受取れます
・遺族厚生年金の受け取りが55歳以上の夫、父母、祖父母の場合
*60歳から一生涯受け取ることができます
■遺族年金がもらえない?
遺族基礎年金、遺族厚生年金ともに受給条件を満たしていないときは、遺族年金は1円も受け取ることができません。
どのようなときに遺族年金を受け取ることができないのか、遺族基礎年金、遺族厚生年金で受給条件が違うので。それぞれについてみていきます。
・遺族基礎年金がもらえない条件
遺族基礎年金がもらえない条件は、以下になります。
国民年金の加入期間不足
・国民年金の加入期間が25年未満で、その加入期間中に2/3以上の期間で保険料が納められていない
・亡くなった前々月より1年間保険料の滞納がある
子どもがいないもしくは子どもが18歳以上
・子どもがいない場合、子どもが18歳以上の場合
・障害者等級一級または二級の子どもが20歳以上の場合
受け取る人の年収が850万円以上、もしくは所得が655万5千円以上ある
遺族基礎年金を受け取る人の年収が850万円以上もしくは所得が655万5千円以上の場合は、金銭的に困っていないということで遺族基礎年金を受け取ることができません。
・遺族厚生年金がもらえない条件
遺族厚生年金がもらえない条件は、以下になります。
厚生年金の加入期間不足
厚生年金の加入期間が25年未満で、その加入期間中に2/3以上の期間で保険料が納められていない
第2号被保険者が傷病の初診から5年以内に亡くなって保険料納付期間が2/3以上ない
遺族厚生年金を受け取るのが夫の場合
55歳以下の夫は受給資格がありません(55歳で受給資格を取得、60歳から遺族厚生年金が受け取れる)。
受け取る人の年収が850万円以上、もしくは所得が655万5千円以上ある
遺族厚生年金を受け取る人の年収が850万円以上、もしくは所得が655万5千円以上ある場合は、金銭的に困っていないということで遺族厚生年金を受け取ることができません。
■まとめ
ここまで、遺族年金がもらえる受給資格についてみてきました。
遺族年金を受給するには、遺族基礎年金、遺族厚生年金ともに年齢や子どもの有無、加入している期間など、さまざまな要因があります。
こちらの記事を読んでいただき、遺族年金を受け取るための条件、受け取れる金額、受け取れる期間を理解していただき、万が一があったときは、以後の生活設計をたてるときの参考にしてみてください。