葬儀や法事を主催者、つまり施主として行う場合に用意しなければならないものは粗供養です。
しかし葬儀や法事はそうそう何度も行うものではありませんから、粗供養と聞いても何のことかわからなかったり、どのようなものを用意すればよいのか迷ったりするかもしれません。そこでここでは粗供養とは何なのか、おすすめの品にはどのようなものがあるのかについて解説します。
粗供養とは何?
まず粗供養とはいったい何なのでしょうか。
会葬のお礼
粗供養は「そくよう」と読み、葬儀や法要の際に参列して、故人を供養してもらったお礼として参列者に渡す粗品のことです。
渡す物自体を「粗供養品」と言います。
粗供養という言葉自体は関西や西日本で使われますが、地域によっては「粗」ではなく「祖」の字を使って「祖供養」とする場合もあります。
粗供養は誰がする?
粗供養は葬儀や法要で故人を供養してもらったことへのお礼の品なので、喪主あるいは施主などの主催者が贈るのが通常です。
ただし、関西などの一部の地域では、法事の参列者がそれぞれ参列者の軒数分の粗品を持ち寄って粗供養品として配ったり、あるいは故人の兄弟など施主以外の親族も粗供養を用意して施主が渡すのとは別に参列者に渡すという風習もあるので、事前に詳しい親族などに確認しましょう。
また粗供養は葬儀、法事が行われて参列者が帰る前にその日のうちに渡します。
香典返しとの違いは
粗供養と似た意味合いのものに「香典返し」という言葉があり、中には両方を混同して使っている場合もあるようです。
しかし正確には、葬儀、法要の参列者すべてに渡す粗供養と異なり、香典返しは通夜や葬儀に、香典、供花、供物などをくれた人へ、四十九日法要が終わってから、まさにお返しとして贈る品物を指します。
粗供養品はその名の通り、もらった香典の金額に関わらず、同じ粗品を渡しますが、香典返しはもらった香典の金額に応じて品物のグレードを選びます。
場合によっては香典返しを「即日返し」と言って葬儀や法事の当日に渡すこともありますが、あとで香典額を確認してして香典返しに見合わないほど高額だった場合も、四十九日法要後に改めて香典返しを贈ります。
また香典返しのことを「満中陰志(まんちゅういんし)」と呼ぶ場合もあります。
満中陰志の「満中陰」とは、故人が亡くなって49日間は成仏しないでこの世にとどまり、49日後に成仏する、「忌明け」のことを指します。
意味は成仏しない期間の「中陰」が「満ちる」ということです。
粗供養のマナー、タブーとは?
粗供養にはマナーやタブーがあるので、用意する際には十分に気を付けましょう。
粗供養のマナーとタブー
粗供養のマナーとタブーは以下のようなものです。
関西では2種類以上をセットにする
まず関西地方では、粗供養品は2種類以上の品物をセットにして渡す風習があります。
したがって、粗供養の予算が2000円なら、1500円相当の品と500円相当の品をセットにして、袋に一緒に入れるということです。
また3品を1セットにする場合もあります。
何品を1セットにするかというと、感謝を伝えたい側の人数によります。
具体的には、施主である母親と長男がいた場合2品になります。母親、長男、次男の場合は3品になります。
これはNG!粗供養のタブーとは?
粗供養で渡すものでタブーになる品物は、「四つ足生臭もの」と呼ばれるもので、具体的には「肉」「魚」です。
肉も魚も殺生が伴うものなので、仏教の戒律を犯すことになるため、粗供養品としてはふさわしくないのです。
また香典返しとしても「四つ足生臭もの」は避けましょう。
ただし現代ではそこまで厳密ではなく、避けるべきものは「生肉」「生魚」に限定されているようです。
最近では、ソーセージの詰め合わせや、贈答品のセットの中に肉の瓶詰が入っているものなどは贈っても問題がないとされています。
また、慶事を連想させるものも香典返しとしてはタブーです。
たとえば神事の際に用いる酒類、「よろこぶ」とかけて結婚式の引き出物に入れることが多い「昆布」などです。
しかしこれもセット品の中に含まれていたり、原料として用いられている場合には問題とならず、あくまで単体として「箱詰めの利尻昆布」などを贈るのは良くないと理解しておきましょう。
宗教上のタブーではありませんが、金額が露骨にわかる商品券やクオカードなども粗供養品、香典返しではふさわしくありません。
粗供養品を渡すタイミング
粗供養品はいつ渡せばよいのでしょうか。
これには2つのタイミングがあります。
1つは粗供養の意味合いだけでは来場時に受付で500円~1,000円程度の品物を渡す場合です。
もう1つは来場時には受付で交換チケットを渡し、終了時に2500円~3000円程度の品物と交換してもらう場合です。後者の場合は香典返しの意味合いを兼ねて渡す、ということになります。
ただし以上は受付を用意する通夜や葬儀の場合なので、そのような場を設けない四十九日、一周忌、三回忌などの法要の場合は、渡すタイミングが異なります。
具体的には会食がある場合は会食会場から参列者が帰る際に、会食がない場合は法事の会場に参列者が来た時に渡します。
しかし参列者によっては会食に参加しないで帰ったり、ということもあるので、誰に渡せなかったかを確認しておき、そのような人には後日郵送しましょう。
粗供養のし紙のルール!色にも決まりが?
粗供養品にはのしをかけて渡すのがマナーです。
のしは「白黒」もしくは「黄白」の結び切りの水引がついているものにします。どちらにするかというと、全国的には白黒の水引が主流です。しかし関西や中国、四国地方の一部では黄白の水引が一般的です。
また葬儀や法事などの弔事は繰り返しを避けるべき行事ですから、1度結んだらほどけない結び切の水引にします。
表書きは「志」または「粗供養」
のしの表書きは上半分に「志」または「粗供養」と記載します。
どちらが正しいのかというマナーはないので、どちらでも大丈夫です。
ただし粗供養という言葉自体、関西ではポピュラーですがそれ以外の地域では一般的ではない場青も多いので、志を使ったほうが汎用性があるともいえます。
またのしの下半分には「施主の名字または施主のフルネーム」を記載します。
さらに、一周忌、三回忌、七回忌などの年忌法要の時には表書きの「志」の上に「一周忌志」などと記載したり、「一周忌 粗供養」と記載する場合もあります。
会葬御礼などの挨拶状は粗供養の場合はつけるのがマナーではありません。
しかし、最近の例で言うと、当日に渡す香典返しと粗供養の意味合いが混同して来ていることと、2種類のものを参列者によって渡し分けることが現実問題として難しいので、粗供養にも会葬御礼を入れるケースがほとんどです。
会葬御礼には「葬儀の際にお世話になったことへのお礼」を記載します。
香典返しを四十九日後に贈る際にも、お礼状が必要です。
そこにも「永眠、葬儀の際にお世話になったことへのお礼」のほか「無事に四十九日を済ませられた報告」「供養の品物を贈ること」 「直接会って渡せないことへのお詫び」を記載します。
おすすめの粗供養品は?
では粗供養にはそのような品物を選ぶのが一般的なのでしょうか。
粗供養品の相場
粗供養品の相場は、葬儀当日に渡す会葬御礼品として考える場合は500円~1000円程度です。
しかし香典返しを兼ねる場合は、香典の金額の半額~1/3が基本です。
粗供養と香典返しを一緒にして渡す場合は一律、2500円~3000円程度の品物を選び、後日それぞれの香典の額を計算して、1万円以上包んでくれていた場合は、改めてその香典額の半額~1/3の品物を贈りましょう。
ただし、粗供養品の内容は住んでいる地域や葬儀、法事を行う地方の風習によって様々です。したがって以上の相場は参考程度にとどめ、実施前に儀礼に詳しい親族などの確認して最終的な用意を行ったほうが無難です。
おすすめの粗供養品は?
おすすめの粗供養品には何があるのでしょうか。
まず粗供養品を選ぶ際には鉄則があります。
それは「消えもの」と言って後に残らないものにすることです。
つまり葬儀も法事も弔事なので、平常の暮らしに影響を与えず、使い切ることで弔事で受けた穢れを洗い流せてしまう、という意味があるのです。
その「消えもの」としてよく選ばれるものとしては、海苔や食品などの詰め合わせ、小包装された菓子、茶葉、コーヒー、洗剤、タオル、浴用剤などの食品や消耗品が多いです。
さらに会場から持ち帰る時にかさばるものだと返って迷惑になるので、洗剤でも大きな箱のものはふさわしくありません。
基本はコンパクトで軽いものです。参列者への感謝を籠めたくて凝ったものを渡したい気持ちもあるかもしれませんが、しかし粗供養品に限っては定番のものを選んだ方が無難でしょう。感謝の気持ちを表したり、故人の個性を表したりするのは、香典返しの時に考えましょう。
以上のようなものは、あわただしい葬儀時や法事時に、ゼロから選んでいるととても大変です。
その点、葬儀の時に葬儀会社に依頼すれば、いくつかの候補をカタログで見せてくれ、その中から選ぶことができるので助かるでしょう。
また法事などの時にも、セレモニーホールで同様のカタログを用意しているケースが多いです。最近はネット通販でも、粗供養品のシリーズを用意し、のしもつけてまとめて送ってくれるサービスを行っているところがあるので、探してみましょう。
まとめ
粗供養品は葬儀や法要などの全体の準備から考えると小さなことですが、しかし形になるものなので、意外に参列者の印象に残るのも事実です。
マナーに沿って、なおかつ気が利いた粗供養品を渡せば印象が良くなり、それは故人の供養にもなります。
今回の記事で挙げたような粗供養のマナーとタブーをよく理解して、失礼にならないように渡しましょう。