追善供養という言葉は聞いたことがあるでしょうか。
故人の冥福を祈る意味で非常に重要な概念であり、行為です。
言葉の意味は知らなくても、信心深い人、故人の冥福を祈る気持ちがある人であれば、追善供養は日常的に自然に行っているかもしれません。
そこでここでは追善供養とはどのような意味か、そして具体的に何を行うのか、ということについて解説します。
追善供養とは
追善供養とはどのような意味なのでしょうか。
追善とは
最初に「追善」の意味からです。
追善の「追」には「後に従う」「追いかける」という意味がありますが、仏教的にはさらに踏み込んで、「先に行っている人の後を親しむ、懐かしく思い出す」という意味です。
そして「善」は仏教上の善行をあらわします。
善行とは何を指すのかということはまだ分かりにくいかもしれません。
たとえば学校の勉強をしっかり行って受験に成功するのは人間社会においては善ですが、しかし仏教上の善行ではありません。
受験に成功して親に喜んでもらったら初めて善行になります。
さらに仏教で最も重視されている価値観は「慈悲」なので、善行は弱い者をいたわったり、貧しいものに施しを与えることを指します。
もう少し広い意味で言うと、弱い人、貧しい人とを喜ばす、というのが善行です。
ですからボランティアも十分善行に値します。
ここから、「追善」は先に行っている人に善行をするということから、先にあの世に行っている人に善行を行うことで喜ばす、という意味で広く使われるようになりました。
追善供養とは
追善供養とは、先に亡くなった故人のことを喜ばす供養のことです。
では供養とは何かというと、1番大きなものは、法要を行い菩提を弔うということです。
遺族、親族、知人友人が集まり、僧侶に読経をしてもらって、参列者全員で焼香をする、というのがその法要であり供養のあらましです。
しかし供養はこのような行事をしなければできないということではありません。
供養の意味とは、故人が成仏できるように、あの世で安心して暮らすことができるようにすることです。
したがって、朝夕に仏壇に手を合わせることも、お墓参りをすることも供養です。
さらに時折故人のことを思い出して、心の中で故人と会話をすることも供養です、そのように本来的な供養は非常に幅広いものを指します。
したがって追善供養とは、故人が成仏できるように善行を施し、常日頃を含めて故人に思いを馳せることを指します。
追善供養の種類
追善供養にはどのような種類があるのでしょうか。
行事としての追善供養
まず「儀式」として行う追善供養には以下のものがあります。
1つは「中陰供養」です。亡くなってから49日間を「中陰」と呼び、その間には7日ごと法要を行いますが、その7回の法要を中因供養といいます。
一般的には「初七日」「四十九日法要」などがそれにあたります。
2つ目は「年忌法要」です。
年忌法要とは、亡くなった日から「数え」で決まった年数たった時に行う法要です。
具体的には1年目、3年目、7年目、13年目、17年目、23年目、27年目、33年目、そして場合によっては50年目です。それぞれの年数をとって、その法要を「一周忌」「三回忌」「三十三回忌」といいます。
ただし年忌法要は永久的には行うものではありません。
故人が亡くなって33年または50年たつと、故人の霊魂からは個人の人格がなくなって祖先の霊を一体化して一族を守ってくれるようになります。
この時には個人に対しての法要は必要なくなる、三十三回忌または五十回忌を最後に年忌法要を終了します。
これを弔い上げといいます。
法事ではない追善供養
また行事、法要として行うのではない追善供養もあります。
最も幅広いものでは常日頃から故人に対して思いを巡らすことが追善供養ですが、もう少し限定させると、たとえば仏壇に浄水やお米などを供え、手を合わせる、可能なら自分で読経することが最も簡単な追善供養でしょう。
さらに仏壇に対するのを同じように、お墓参りをして、供え物をし、手を合わせることも追善供養です。
あるいはこのように仏教的な行動ではなくても、たとえばボランティアを行うことも、その時に故人の冥福を祈れば立派な追善供養になります。
追善供養のやり方
では追善供養とはどのように実行すればよいのでしょうか。
ボランティアなどの善行の方法は、それこそ星の数ほどあるので、ここでは行事、法要としての追善供養の法要を解説します。
追善供養の基本
追善供養の基本的な方法は以下の通りです。
年忌法要のやり方
年忌法要は墓前や仏壇前に、遺族、親族、知人が集まって供物を行い、合掌、焼香をするのが基本です。
その際に僧侶に来てもらって、読経を上げる場合もあります。
墓参りのやり方
お盆やお彼岸に墓参りをする際には、さらに上記で挙げた行動のほかに、墓石を清掃する、墓域をきれいにするということも行いましょう。
そのうえで供物を捧げ、線香とロウソクを手向け、合掌をすれば十分に追善供養になります。
宗派別の特徴
では仏教の宗派別には追善供養の方法に違いがあるのでしょうか。
どの宗派にも共通する追善供養
まずその宗派にも共通している追善供養のポイントです。
追善供養の法要に参列する際に、亡くなって49日目の四十九日法要までは葬儀と同じ服装です。
具体的には遺族は男性はブラックスーツ、女性は黒の長袖のワンピースやスーツなどの正喪服です。参列者もダークスーツ、地味な色合いのワンピースなどの略喪服を着用します。
一周忌、三回忌の際には、一段服装が簡便になって、遺族は略喪服、参列者はダークカラーのジャケットなどの服装になります。
三回忌が終わったら、全員平服での参列がOKです。
ただし平服と言ってもラフな普段着ではなく、男性であればスラックスにジャケット、女性であれば派手な柄ではないワンピーズなどです。
法事に招かれた際には香典を持参することが一般的です。
その金額は故人と自分との関係性によって変わります。
具体的な相場は以下の通りです。
- 両親:3~10万円
- 兄弟、姉妹:3~10万円
- 祖父母:1~5万円
- 叔父、叔母:1~3万円
- 甥、姪:1~5万円
- その他の親戚:3千円~3万円
- 友人、恩師、仕事関係者:3千円~1万円
以上は自分の血縁の場合も、配偶者の血縁の場合でも同じです。
また配偶者と連名で1つの香典を出す場合は、上記の金額の1.5倍にします。
また香典は裸で渡さず、必ず香典袋に入れます。
香典袋には四十九日法要までは「ご霊前」、それ以降は「御仏前」と表書きします。ただし相手の宗派が浄土真宗の場合はどの法事の時でも「ご仏前」です。
更に香典袋の裏には自分の氏名、住所と香典に包んだ金額を書きます。
これは仏教的な理由からではなく、遺族が香典を受け取った場合、あとでお返しをするので、そのお返しを誰に送るのか、いくら程度の品物にするのかということを整理しやすいように行います。
また金額の書き方は、1、2、3などの算用数字は使いません。
その代わりに「壱」「弐」「参」といった漢数字を使います。
さらに数字の前には「金」と書き、末尾には「圓也」と加えます。
これは後で数字を書き加えることができないようにするためです。
特に故人や施主と親しい場合は香典とは別に供物も持参します。
品物としては日持ちのする菓子や果物が良いでしょう。
供物にも香典と同様ののしをかけます。
浄土真宗の追善供養の特徴
以上のどの宗派でも共通するマナーのほかに、浄土真宗の場合だけほかの宗派とは異なるマナーがあるので、注意しましょう。
具体的には、先ほど書いたように、香典の表書き、供物ののしの表書きは常に「ご仏前」です。
さらに、焼香の仕方はほかの宗派であれば香をつまんで額の前に押し頂きますが、浄土真宗ではそれは行いません。
その焼香を真宗本願寺派では1回、大谷派では2回行います。
追善供養のお供えの品
追善供養を行う際に仏前に飾る、供えるものは以下の通りです。
- 仏飯:炊き立ての米
- 花:生花
- 供物:菓子や果物
- 高坏(たかつき):料理を乗せる器。1本の脚の上に皿が載った形をしている。
- 段盛だんもり:供物を供える仏具。
- 焼香盆:焼香の際の香炉を載せる。
- 仏飯器:仏飯を盛り付ける器。
- 遺影:四十九日法要までは葬儀で使った遺影を飾る。それ以降は飾らない。
- お布施:僧侶に渡すお布施または施主に対するお布施。
追善供養でお経をあげてもらうときのお布施
追善供養の法要を行う際に僧侶に来てもらって読経を上げてもらう場合は、お布施を渡す必要があります。これにもマナーがあるので気をつけましょう。
まずお布施の相場です。
これは寺院の格式や地域によっても異なりますが、一般的には四十九日法要、一周忌法要など重要な法要の際には3万円~5万円程度、三回忌以降のお布施は1万円~3万円程度です。
またお布施も裸では渡さずに必ず香典袋に入れましょう。
その際の表書きは「お布施」「御布施」です。
もしも香典袋が準備できない場合は、郵便番号記入欄のない白封筒でも代用できます。
更に法要を行う場所は寺院ではなく自宅や霊園で、そこまで僧侶に来てもらう場合はお布施とは別に「御車代」を5000円程度用意します。
御車代は白封筒に入れて、表書きを「御車代」とします。
法要の後参列者による会食を行う場合もあるでしょう。
僧侶が来て読経してもらっている場合は、僧侶にもその会食に参加してもらうのが一般的です。
しかし僧侶の方で参加を遠慮した場合は、その会食費用に代わるものとして、やはり5000円程度の「御食事代」を白封筒に入れて渡しましょう。
まとめ
追善供養というものの概念の幅はとても広く、ボランティアや施しを行って弱い人を助けてもそれはそれで十分該当します。
あるいは、お墓や寺院に行かずに自分の家の仏壇の前で手を合わせてもそれもやはり追善供養です。
しかし一般的な追善供養とは、やはり墓前や寺院で行う、親族や知人を招き、僧侶に読経を上げてもらう法要です。
法要にはマナーがありますので、実施する場合には以上の解説をしっかり読んで、間違いがないようにしましょう。