少子高齢化が進む日本において、いつかくる人生の終わりのために自分で考えて行動する“終活”は、今や私たちにとても身近なものとなり、仕事にも結びついてくるようになりました。
今後ますます終活とビジネスに深い繋がりができることは間違いなく、それに応じて終活の資格など、専門知識を持っている人の需要も高まるに違いありません。
しかし、終活の資格といっても様々で、どういった資格を取るべきなのか分からないという方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、終活の中でもメジャーな“生前整理”の資格である生前整理診断士について解説します。
その他の終活に関連する資格についても軽く触れているので、ぜひ最後までお読みいただけたら幸いです。
生前整理診断士とは?
生前整理診断士とは、どういった資格なのでしょうか。
以下で詳しく説明します。
生前整理普及協会が認定する民間資格
生前整理診断士とは、介護や葬儀、片付け、相続などの様々な終活に関する悩みを持つクライアントに対して、物・心・情報の観点から総合的なアドバイスをする専門家のことです。
介護についてはケアマネージャー、葬儀については葬儀会社、片付けについてはリサイクル業者や生前整理・遺品整理業者、また、相続問題については各士業などにそれぞれ相談するのが一般的ですが、全て1人の専門家に相談できれば尚良いというクライアントのニーズを叶えるのが、生前整理診断士の仕事となります。
この資格は、一般社団法人生前整理普及協会が認定している民間資格で、同じ協会が認定する生前整理アドバイザー(2級)という資格を取得後に受講できる資格となっているので注意が必要です。
生前整理アドバイザーとは?
生前整理アドバイザーとは、終活の知識や具体的な実践方法について習得できる資格です。
この資格は、級によっては、ビジネスのためではなく、自分の終活に役立てるために学ぶこともできる資格になっている点が特徴で、ビジネスというよりは自分自身に活かすために資格を取りたいという方にもおすすめの資格となっています。
生前整理アドバイザーの資格を取得するには、生前整理アドバイザー講座を受講する必要があります。
生前整理アドバイザー講座には2級、準1級、1級、2級認定指導員、準1級認定指導員があり、どの級を目指している人もまずは2級から順番に受講していかなくてはなりません。
生前整理アドバイザー講座を受講する場合は、生前整理普及協会のホームページ、電話、FAXから申し込みをすると受講することができます。
また、2級と準1級まではSkype(スカイプ:パソコンやスマートフォンを使ってビデオ通話などができるアプリ)で受講することも可能なため、講座が行われている場所が遠方の場合はSkypeを積極的に活用することをおすすめします。
生前整理アドバイザー講座の費用は、例として2級を挙げますが、税込みで21,450円です。
講座で使用する教材をあらかじめ持っている場合は、教材料の5,500円を引いた額が受講費用となります。
生前整理診断士になるまでの流れ
それでは話を生前整理診断士に戻しましょう。
生前整理診断士の資格を取得するまでの一連の流れは以下の通りとなっています。
1.生前整理アドバイザー2級認定講座に受講申し込みをする
2.生前整理アドバイザー2級認定講座を1日間受講する(Skypeでの受講も可能)
3.生前整理アドバイザー2級を取得
4.生前整理診断士認定講座に受講申し込みをする
5.生前整理診断士認定講座を3日間受講する
6.生前整理診断士を取得
最初に生前整理アドバイザー2級の資格を取得しておかなくてはならないということさえ頭に入れておけば、特に難しい手続きや流れはないので安心してくださいね。
生前整理診断士の講座内容と費用
生前整理診断士の具体的な講座内容には、
- 生前整理診断士の仕事内容
- 片付けや相続などの終活に関連する業界についての知識とコーディネート方法
- 生前整理診断士に関連する法律
- お客様対応の心得
- 葬儀会社や士業など、各専門業者への依頼の仕方
- 生前整理診断士の役割
などがあります。
他にも学ぶことは多数あり、全部で10項目ほどの項目について3日間(10時~16時までの計900分)しっかりと学ぶことができます。
また、受講費用は税込みで148,500円です。
さらに希望者には別途税込3,780円で携帯できる写真入りの証明書を発行してもらえます。
受講費用は、講座申し込み日より1週間以内に、協会指定の銀行口座に振り込む必要があるので、前もってお金の確保をした上で申し込むようにしましょう。
生前整理診断士の資格難易度
生前整理診断士の合格率については公表されていないので、資格の難易度を明確に説明することはできません。
しかし、生前整理普及協会がテストの難しさについて「しっかりと講座を聞いていれば合格できる程度」と説明しているので、そこまで難易度が高いわけではないようです。
ただ、この難易度の説明は生前整理普及協会が認定する全ての資格に対しての総合的な説明と読み取れるので、生前整理診断士の難易度が上記で述べられているようなものかは厳密には言い切れません。
生前整理診断士資格取得後の進路
生前整理診断士資格取得後の進路には、主に生前整理・遺品整理業やリサイクル業、葬儀業などが挙げられます。
生前整理診断士の資格は国家資格ではなく民間資格なので、診断士の資格を取ったからといって、生前整理診断士1本で独立して働けることはそこまでありません。
そのため、資格取得後の進路については終活に関連する職種への就職にある程度就きやすくなるくらいと考えておくと良いでしょう。
しかし、独立して生前整理診断士として開業することも不可能ではなく、実際に活動している方もいらっしゃるので、挑戦してみたい方は新たな道を切り開くつもりで頑張ってみるのも良いかもしれません。
また、進路とは言えないかもしれませんが、リサイクル業や葬儀業など終活に関連する業種ですでに働いている場合は、生前整理診断士資格を取得すれば、さらに深い業務や接客ができるようになる可能性がかなり高くなります。
生前整理診断士の収入は?
生前整理診断士の収入については、この資格のみで仕事をしているケースは少数派のため、正確な収入を計算することができず、明示できません。
ただし、やはりはっきりと記すことはできませんが、実際に生前整理診断士に相談すると、初回の相談は60分無料、それ以降の相談については1時間あたり税抜きで5,000円(+交通費)ほどが相場報酬ということなので、これを基に計算すると大体の収入が見えてくるかと思います。
また、リサイクル業や葬儀業など終活に関連する業種で就職して働く場合は、資格手当てなどで数千円~数万円ほど給料がUPする可能性もあるでしょう(会社によっては資格手当が無い場合もあります)。
生前整理診断士以外の生前整理資格
生前整理アドバイザーのように、生前整理診断士以外にも、生前整理に関する資格が存在します。
こういった資格は多数あるので、今回は生前整理普及協会が認定する資格のみに絞って簡単に説明します。
生前整理相談士
生前整理相談士とは、片付けや介護、葬儀、相続に関する相談の窓口になることができる資格です。
そのほか、相談の窓口になったあと、クライアントを各専門家に繋げるという大切な役割もあります。
今回主に説明した生前整理診断士の下級資格にあたるため、診断士よりも先にこちらの相談士の資格を取得するのも良いでしょう。
生前整理相談士認定講座の講座日程は1日間で、講座を受講するには生前整理アドバイザー2級の資格を持っていなければなりません。
生前整理認定作業士
生前整理認定作業士とは、生前整理のための片付けなどを実際に行うことができる資格のことです。
直接クライアントの自宅に訪問して、生前整理に必要なことを伝え、独自のノウハウに従って仕分けや片付けを行うことができるので、生前整理業に従事している方には特におすすめの資格といえます。
生前整理認定作業士認定講座の講座日程は1日間で、講座を受講するには生前整理アドバイザー2級の資格を持っていなければなりません。
生前整理エステートセール
生前整理エステートセールは、物の歴史や商品価値に基づいて物の価値を判断することのできる資格です。
エステートセールとはアメリカ発祥のリサイクル方法で、日本のように売り主が大切にしてきた物にもむやみやたらに安い値段をつけるのではなく、売り主すらも気付かなかったような価値を見出し、それに見合った価値を物につけて、大切にしてくれる人に届けるというリサイクルのことをいいます。
そのため、骨董屋や生前整理・遺品整理業、リサイクル業の方に向いている資格といえるでしょう。
生前整理エステートセール認定講座の講座日程は2日間で、講座を受講するには生前整理アドバイザー2級の資格を持っていなければなりません。
生前相続アドバイザー
生前相続アドバイザーとは、士業の方のみが取得できる資格で、生前の相続の流れについて、生前整理の観点から学ぶことのできる資格です。
弁護士・税理士・行政書士・司法書士・社会保険労務士・不動産鑑定士・土地家屋調査士の方たちしか受講できないというのが、他の資格との大きな違いといえます。
生前相続アドバイザー認定講座の講座日程は1日間で、講座を受講するには指定の士業の方であるほか、生前整理アドバイザー2級の資格を持っていなければなりません。
生前整理診断士に相談するには?
なかには、生前整理診断士の資格を取得したいというよりも、生前整理診断士に終活について相談してみたいという方もいらっしゃるでしょう。
その場合は、生前整理普及協会に相談をするか、または株式会社プロバイドが運営する「生前整理の窓口」という法人に相談することをおすすめします。
また、それ以外に、生前整理・遺品整理業者やリサイクル業者、行政書士なども生前整理診断士の資格を取っていることも多いので、そういった方たちの中で、さらに診断士の資格を持っている人に相談するのも良いでしょう。
各社のホームページに資格保有者の存在や保有資格内容が記載されていることが多いので、ぜひホームページをチェックしてみてください。
まとめ
以上、生前整理診断士について解説しました。
これからも終活に関する資格・職業の需要は高まっていくことが予想されている日本社会で、自分のためにも、自分の大切な人のためにも終活に関連する資格は取っておいて損はありません。
それがビジネスに繋がる可能性も存分にありますので、ご自分のキャリア形成のためにもぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。