ふくさとは、絹やちりめんなどで作られたご香典を包むための小さな布のことで、日本古来からの伝統的な小物です。ふくさには多種多様な色があり、包む金額やタイプによって包み方や渡し方が違います。
葬式や法事などに出席する準備として、弔事にふさわしいふくさの色や種類についての知識を深めておく必要があります。いつ出席しても、失礼にならないようにお悔やみ用のふくさも用意しておくとよいでしょう。
この記事では、
- ふくさの基礎知識
- ふくさの選び方
- ふくさの種類別の包み方
- ふくさの代用品
についてご紹介します。
葬式で使うふくさとは?
ふくさとは、お葬式や結婚式で渡す金品などを包むための四角い布です。
現在は、絹や縮緬で作られた小さな布ですが、もともとは貴重品などを覆うための風呂敷でした。
現在のふくさは、裏地の付いた絹製の小さな布となっており、一枚仕立てと二枚仕立ての2種類があります。
一枚仕立ては名の通り、1枚の布でできたシンプルな作りのもの、二枚仕立ては裏地がついているため、表と裏の合計2枚で違うカラーになるように仕上げられています。
ふくさ(ふくさ)という名前は「物をふわっと折り畳む」という意味から名付けられています。
お悔やみやお祝いの場で金品を持って行く時は、必ずふくさに包むしきたりなので、葬式に出席する際は、失礼にならないようにふくさのマナーを知っておくべきです。
葬儀のふくさの色や柄の選び方
ふくさには、お祝い用とお悔やみ用とがあり、形は似ていても、色や柄が全く違います。それぞれのシーンやマナーに合わせて、ふさわしいふくさを選ばなければ、マナー違反になるので気をつけましょう。
葬式に適したふくさの色や柄の選び方を説明していきます。
葬式に適したふくさの色は寒色系
お通夜や葬儀などの場では、悲しみを表現する寒色系のふくさが適しています。
喪服や小物、アクセサリーなども暗い落ち着いた色合いが多いように、ふくさも服装マナーの一つとして紺や灰色、緑などの寒色系がふさわしいと考えられているのです。
紫色のふくさは弔事と慶事で使える
紫色のふくさは弔事と慶事の両用で使えるため、非常に便利で経済的です。
一方で、お祝いの場で使うふくさは暖色系を選ぶのがマナーです。
つまり、紫色のふくさが一つあれば、冠婚葬祭のどんな場でも利用できるので2つ用意しておく必要がないのです。
表裏式のリバーシブルタイプも便利
慶事で紫のふくさは少し地味だと感じる人には、リバーシブルタイプのふくさがおすすめです。
リバーシブルタイプのふくさは、表面と裏面で違う色を使ったタイプのもので、それぞれのシーンに合わせて裏返して利用できます。
しかも、価格は通常のふくさとほぼ同じ程度なので、紫のふくさと同様に経済的なのです。
ふくさの柄は無地がマナー
葬式で使用するふくさの柄は、無地か蓮の花があしらわれている程度の刺繍が入ったもののみ、許されています。
最近は、花柄や鶴などの刺繍が施されたデザイン豊かなふくさが増えていますが、それらはお祝いの場で利用するふくさのため、葬儀には適していません。
葬儀用のふくさは、控えめな色で柄がないものを選びましょう。
香典の金額によって変わるふくさの種類
ふくさの種類は、金封ふくさと爪付きふくさ、台付きふくさの3種類があり、包む金額によって選ぶべきふくさが違います。それぞれの違いについて、みていきましょう。
3万円以下は略式の金封ふくさ
3万円以下のお香典を包む時は、簡単に包める袋状の金封ふくさを使います。
すでに袋状になっているため、お香典袋の向きを設定するのみで、わざわざ包む必要はありません。
手軽な仕様になっていることもあり、1~3万円の香典袋を包むのに適しています。
3万円以上は爪付きふくさや台付きふくさ
3万円以上のお香典を包む場合は、爪付きふくさや台付きふくさを選びます。
爪付きふくさは、ふくさを留めるため爪がついたシンプルな四角い布製のふくさです。
一方、台付きふくさは形状は爪付きふくさと同じで、簡易切手盆が付属された四角い布状のふくさです。
ふくさの正しい包み方
お香典をふくさで包むときには、それぞれの種類のふくさに正式な作法があります。特に、香典袋の向きを間違えると、マナー違反で失礼に当たるので、要注意です。お香典の内容に適したふくさを選んだ後は、正しい包み方を身につけていきましょう。
金封ふくさの包み方
金封ふくさは、長財布のような形状で金封をすぐに入れられる略式の袋状のふくさです。
葬式では左開きで中のお香典を取り出して渡すので、ふくさの袋状の部分が右になるように包みます。
つまり、左開きでふくさを開けた時に、お香典の表書きが見えるような状態で包んでおくのが常識です。
爪付きふくさの包み方
爪付きふくさは、爪状の留め具がついた四角い布状のふくさです。
お香典を包むときは、まず、ふくさがひし形になるように机の上などに広げて配置し、香典袋の表書きが少し右に来るような位置に置きます。
その後、右→下→上→左の順番にふくさの4つの角を折り曲げていきます。
そうすると、会場でお香典を渡すときに、左開きで手渡せます。
台付きふくさの包み方
台付きふくさとは、爪付きふくさに小さなお盆が付属したふくさです。
包み方は爪付きふくさと同様で、葬儀では、小さなお盆の上にふくさを乗せて、左開きでお香典袋を取り出します。
ふくさの渡し方の基本マナー
お香典をふくさに包んだら葬式の会場まで持っていき、会場では、作法に沿った渡し方をする必要があります。ここで、お香典の正しい渡し方をみていきましょう。
受付で渡す時のマナー
会場に受付がある場合は、ついたらまず受付でお香典を渡します。
会場に着いたら、受付に到着する前にお香典をふくさから取り出し、相手から表書きが読める方向にして両手に持ちます。受付の人にお香典を渡す時は「この度は(ご愁傷様でございます)」とお悔やみを言い、一礼するのがマナーです。
お悔やみの言葉は、大きすぎず小さすぎずの声の大きさではっきり伝えましょう。
直接手渡しする時のマナー
受付がない場合は、先方に直接渡すのが一般的です。
直接お香典を渡す際は、先にふくさからお香典を取り出しておき、相手の前に行ってから台の上などに置いて差し出すのがマナーです。
差し出す時のお香典の方向は、相手から見て表書きが読める方向です。
この時も、一礼して「この度は(ご愁傷様でございます)」との一言を添えます。
特に、家族葬では受付を設けずにお香典を辞退するケースが多く見受けられるので、直接手渡しする時のマナーも身につけておくとよいと思います。
お香典を辞退された時のマナー
お香典の受け取りを辞退された場合は、相手の意向を受け入れて沿うようにしましょう。
お香典の辞退には、相手への配慮やお礼品の用意などの手間を省くなどの理由があるため、頑なに渡そうとすると、かえって失礼にあたります。
お香典の辞退された時は、その場でふくさに包むのではなく、バッグなどに入れておきましょう。
辞退されても、どうしてもお香典を渡したい場合は、葬式がすべて終了した後に、家まで直接、持って行く方法もあります。
爪付きふくさの渡し方のマナー
爪付きふくさでお香典を渡す時は、まず、爪状の留め具を外してからふくさを広げます。
中から香典袋を取り出して、すぐにふくさをたたみましょう。
たたんだふくさの上に香典袋を乗せたら、反時計回りに回し、受付の人に手渡します。
お香典を渡す時は、お悔やみの言葉を添えて一礼しましょう。
台付きふくさの渡し方のマナー
台付きふくさでお香典を渡す時は、爪付きふくさの渡し方が基本になります。
まず、ふくさから爪付きふくさの時と同じく、香典袋を取り出します。その後、ふくさをたたんでから、受付の人から見やすい向きで香典袋のみをお盆の上に乗せて渡します。
その際にも、お悔やみの言葉を添えて一礼しましょう。
ふくさがないときの代用品
通夜や葬儀に香典を持参する場合は、ふくさに包むのがマナーなので、必ずふくさを用意しなければいけません。
しかし、急な訃報ですぐにふくさを用意できない場合は、代用品でも構いません。ふくさがないときに利用できる代用品には、次のようなものがあります。
ハンカチ
ハンカチはふくさの代用品として、よく利用されています。
ハンカチ自体は、ビジネスやプライベートでも幅広く使われるアイテムなので、葬儀に持っていってもマナー違反にはなりません。
ただし、ふくさの代用品としてのハンカチなので、色は紺や灰色、黒などの暗めで柄は無地のものを選びましょう。
急ぎの時は、目立たない程度の柄が入ったハンカチでも構いません。しかし、きらびやかな装飾が施されているハンカチはNGです。折り目やシワがある場合は、アイロンをかけてから使う方が良いでしょう。
風呂敷
ふくさは、もともと風呂敷だったこともあり、代用品として利用してもマナーに反しません。
ただし、通常の風呂敷ではサイズが大きすぎるため、ひと回り小さなものを用意するべきです。
また、ハンカチと同様に、色は控えめで無地のもの、もしくは目立たない柄が入ったものを使用しましょう。
ダイソーのふくさでもいい?
どうしてもふくさが必要な場合は、ダイソーなどの100円ショップで販売されているものがおすすめです。
100円ショップの品物を葬式に持参してもいいの?と疑問を抱く人もいると思います。しかし、最近は、ダイソーやセリアなどの大型100均ショップのふくさが人気で、見た感じも通常のふくさと変わりません。
急な訃報で、風呂敷やハンカチではなくふくさを用意したい時は、ダイソーなどの100円ショップのふくさがおすすめです。
まとめ
葬式のふくさの選び方や包み方、渡し方のマナーについて解説しました。
葬式で使うふくさには3つの種類があり、香典の金額や渡し方によって、選ぶべき種類が違います。
選び方や包み方、渡し方のマナーは細かく決まっており、意外と覚えることが多いですが、失礼にあたらないように基本的な知識を深めておきましょう。