お葬式や一周忌などの法事、法要に参列する際に悩むのが香典です。
香典は故人と自分との関係、自分の年齢や社会的立場、その法要の種類などによって、金額が変わってきますから悩みもひとしおです。
一般常識よりも少ない金額にしてしまうと遺族に対しても失礼ですし、自分の非常識さを知られてしまいます。かといって多く出しておけば問題ないかと言えばそうではなく、それも常識がないことを疑われたり、返って遺族を恐縮させてしまったりします。
今回の記事でしゃ法事の際の香典の金額の相場と、合わせてそのお金を包むのし袋についての書き方やマナーなどについて詳しく解説します。
目次
■金額の相場
・葬儀(通夜または告別式)の香典の相場
└孫や親族などの場合
└友人、知人関係の場合
・一周忌などの回忌法事
・親の法事など身内の法事の場合いくらつつむ?
・香典でNGの金額
・香典として新札はNG?
■お金の包み方
・お金の入れ方
└のし袋に入れるお札の向きは?
└お香典の包み方
・のし袋の選び方
・薄墨は使う?
└薄墨は通夜と告別式のときだけ
└表書きの印刷が薄墨でなければ濃い墨で統一
・表書きの書き方
└仏教の法事の場合
└キリスト教のミサの場合
└神道の霊祭の場合
└お香典袋の名前の書き方
金額の相場
まず1番気になる香典の相場についての解説です。
香典は、法事の種類と、自分と故人との関係性によって変わってきます。
加えて自分の年齢によっても変わりますが、以下では香典の金額相場を20代から40代の幅を持って提示しますので、20代であれば最低額を下限にその幅の中の下の方の金額、40代であれば幅の上の方の金額、30代であれば中間くらいの金額というように、読み取ってください。
葬儀(通夜または告別式)の香典の相場
孫や親族などの場合
・兄弟姉妹、配偶者の兄弟姉妹:3万~10万円
・おじ、おば:1万円~3万円
・その他の親戚:3,000~3万円(ただし全く付き合いのなかった親戚の場合は葬儀にも参列せず、香典もを出さない場合もあります)
友人、知人関係の場合
・友人、知人:5,000円~1万円
・友人、知人の父母:3,000~1万円
・会社の上司:5,000円~2万円
・会社の上司の家族:3,000~~1万円
・勤務先の社員:5,000円~1万円
・勤務先の社員の家族:3,000~1万円
・習い事の先生、恩師:3,000~1万円
・自分の子どもの先生:出す場合は~5,000円
・近隣の知り合い:3,000~1万円(付き合いがある場合)
一周忌などの回忌法事
・親族:1万~2万円(夫婦で参列する場合は~5万円。ただし、法要だけであれば2万~5万円、会食がある場合は最低3万円です)
・特に親しい、世話になった友人、知人:1万~~5万円
・一般的な付き合いの友人、知人:5,000~3万円
親の法事など身内の法事はいくらつつむ?
法事は仮に故人が父母、祖父母などの、自分にとって非常に近しい存在であっても、自分が喪主や施主でなければ香典を出します。
・祖父母、配偶者の祖父母:1万円~5万円
・父母、配偶者の父母:3万~10万円
香典でNGの金額
また香典では避けなければならない金額があります。
1つは「4」「9」などです。
この数字は「死ぬ」「苦しむ」につながるので避けるのがマナーです。
また日本では古来から陰陽道の考え方で、陽にあたる奇数は縁起が良く、陰に当たる偶数は縁起が悪いとされています。
ですから、香典で包む場合でも偶数は避けましょう。たとえば8万円はNGで、それであれば金額が減少しても7万円の方がよいということです。
ただし、例外として2万円はOKです。
香典として新札はNG?
香典袋に入れるお札は新札、いわゆる折り目のないピン札はマナー違反です。
正しいマナーは折り目の入った、使い回されたお札を入れることです。
その理由は新札は銀行などに行って両替したり、手に入ったものを保管しておくものなので、新札が入っていると前もって亡くなることを想定して準備していたというメッセージが遺族に伝わってしまうからです。
とは言え、よれよれのお札を入れるのがはばかられたり、新札しか手元になかったりした場合は、新札をいったん折って、折り目を付ければOKです。
お金の包み方
香典で重要なことにはお金をいくらにするかだけではなく、そのお金をどのように包むかという点もあります。
具体的には以下の通りです。
お金の入れ方
まずのし袋にどのようにお札を入れるか、からマナーがありますから注意しましょう。
のし袋に入れるお札の向きは?
のし袋に入れるお札は、相手がお札をのし袋から取り出したときに表面を向いていて、天地が正しい位置になっているようにするのがマナーです。
つまり、中袋の封筒を表に向けて縦に置き、お札の表面すなわち「万円」の文字が見える面をこちら側にして、なおかつ天地の天を左側に向けて入れます。
そうすれば相手が左手で封筒を持って右手でお札を取り出した時に、お札は正しい位置になります。
またお札が複数枚になる場合は、必ずすべてのお札の向きを揃えましょう。
お香典の包み方
香典はのし袋の中でもいわゆる「不祝儀袋」に包みます。
関東地区では双銀(そうぎん)や白黒の水引のついたのし袋ですが、関西地区の場合は黄白の水引を用いる場合もあります。
香典のお金はのし袋に直接入れてはいけません。
お札はまず必ず中袋という封筒に入れ、そのうえでその封筒を外袋に入れます。
またのし袋を裏返すと上下の折り返しがありますが、その折り返しの上の方が上側になるように折ります。
これを下向きに折ると言います。
めでたくないことなので下向きだというわけです。
これに対して結婚などの慶事の場合、折り返しの下の方が上側になるように折ります。
中袋の裏面の左側には自分の住所と氏名、裏面の右側または表面の中心に香典の金額を記入します。
金額の書き方は、頭に「金」をつけ、漢数字は旧字体にするのがマナーです。
これは新字体の漢字の場合は、間違えて1本線を足してしまうと金額が簡単に変わってしまうため、それを避ける目的です。
数字の旧字体は以下の対照になります。
一:壱
二:弐
三:参
四:四
五:伍
六:六
七:七
八:八
九:九
十:拾
百:佰
千:阡
万:萬
円:圓
つまり15,000円を包む場合は「金壱萬伍阡圓」という書き方になります。
のし袋の選び方
またのし袋も故人の帰依する宗教や、行われる法要の属する宗教によって変わってきますから注意しましょう。
・仏教の場合
蓮の花の絵が印刷されたのし袋が正式です。もちろん蓮の花がなくても大丈夫です。
・キリスト教の場合
ユリの花、十字架などの絵が印刷されたのし袋です。
・神道の場合
無地ののし袋に白黒、双白、双銀などの水引きがついていているのし袋です。
薄墨は使う?
のし袋の表書きの文字というと、筆で薄い墨を使うという印象がありますが、この点はどうなのでしょうか。
薄墨は通夜と告別式のときだけ
薄墨を使うのは通夜と告別式の場合だけです。
なぜ薄墨なのかというと、文字を書くために磨った硯(すずり)に涙が落ちて墨が薄くなってしまった、涙で墨が滲んでしまった、ということを表現するためです。
自宅に薄墨の用意がなければ普通の黒色の墨でもOKです。
それ以外の一周忌などの法要の場合は「故人を偲び、心を込めて一生懸命に墨を磨った」ということの表現として、普通の濃い黒の墨を使います。
またのし袋の表書きは、薄墨の毛筆がマナーです。
ただし、中袋の封筒に書く住所、氏名は黒のボールペンなどで書いた方が間違いがないためおすすめです。
表書きの印刷が薄墨でなければ濃い墨で統一
表書きの「ご霊前」などの文字がすでにすでに印刷されている市販ののし袋の場合、すべてが薄墨で印刷されているとは限りません。
商品によっては墨の色が濃い黒の場合もあります。その時に自分の名前だけ薄墨になると、全体の印象が不格好になるので、その場合は名前も濃い墨で書きましょう。
表書きの書き方
表書きの書き方は、宗教や法事のタイミングによっても異なります。
それぞれの場合について解説していきます。
仏教の法事の場合
まず葬儀から四十九日法要までは「御霊前」にし、その後の法要では「御仏前」にします。
「霊」から「仏」になる理由は、亡くなってから四十九日までは故人の霊魂はまだ不安定な霊魂のままで、四十九日が経つと無事に仏になるという考え方に根差しています。
ただし、浄土真宗では亡くなるとすぐに極楽浄土に往生して仏になると考えられているので、最初から「御仏前」と記載します。
あるいは、曹洞宗や臨済宗といった禅宗も「ご霊前」ではなく、すべての法事で「ご仏前」です。
これは禅宗の教義の中では、極楽浄土という場所はないとされているため、四十九日までは「霊」でそれ以降「仏」になるという考え方もないからです。
以上のような故人の宗旨や、あるいは法事の宗旨がわからない場合は、「御香料」「御香資」「御香奠」などは中立的な表現なので、それを用いましょう。
キリスト教のミサの場合
キリスト教においては通夜や告別式、あるいは四十九日法要といったものはなく、基本的にはすべて「追悼ミサ」という考え方です。
その際の香典の表書きは「御霊前」「御花料」にしましょう。
ただしこれはカトリックなどの場合の話で、プロテスタントは「霊」という考え方を否定していますから、プロテスタントのミサの場合は「御花料」にします。
このようなキリスト教のさらにその宗派の情報まではなかなか入ってきませんから、教会での法事に参列する場合は、すべて「御花料」にしておけば安心です。
神道の霊祭の場合
神道、あるいは神式の場合は葬儀とは言わず霊祭と言います。
その霊祭に香典を包む場合の表書きは「御玉串料」「御榊料」が正式なマナーに則ったものになります。
ただし「御霊前」と印刷したのし袋しか手に入らない場合は、それでもOKです。
お香典袋の名前の書き方
香典の表書きの水引より下の段には自分の名前を書きます。
表書きは香典を包んだ人が誰か、持参した人が誰かによって書き方が以下のように異なります。
・本人が包んで本人が参列する場合
自分の名前をフルネームで記載します。
・香典を包む人と別の人が代理で参列する場合
ある人の香典を持って代理で法事に参列する場合は、香典を包んだ人の名前をフルネームで書き、その左下に「内」と記載します。
芳名帳への書き方も同じです。
・連名の場合
夫婦で香典を包み、2人一緒に参列する場合は夫のフルネームです。
しかし妻も故人と付き合いが深い場合も妻の下の名前を書いた連名の方がよいでしょう。
友人同士や同僚同士で香典を包んだ場合は、中央に代表者の苗字を書き、左下に「他三名」などと記載します。
会社の部門全員で香典を出し合って1つののし袋に包んだ場合は「××株式会社 □□部一同(または有志)」、全員でなければ「××株式会社 □□部有志」と記載します。
ただし、中袋には香典を出した全員の氏名、住所、包んだ金額を縦書で記載します。
会社として包んだ場合は会社の住所です。
このように全員の名前を記載する理由は、後で香典返しをする場合に、正しく全員に返せるようにするためです。
まとめ
慶弔時のうちの結婚式などの慶事は、最近ではかなりしきたりがラフになって来ていて、相手への敬意が籠っていることが伝わればあまりお祝いの出し方にこだわる必要はありません。
しかし法事などの弔事にはいまだに多くのマナーやしきたりが残っています。
これを守らないと、自分に常識がないとわかって恥をかいてしまったり、場合によっては親や会社にも恥をかかせてしまいます。
その最たるものが香典ですので、以上で解説した内容を参考に、マナーに沿った金額や包み方で香典を出すようにしましょう。