身内のお葬式が終わると、「法事」や「法要」をすることはご存知だと思います。
しかし、いざ自分が法事や法要を営む側になると、実際には何をしていいかよく分からないのではないでしょうか。
そもそも、「法事や法要って何?」「法事と法要が別物だとしたらどっちをすればいいの?」などという疑問が湧いてくるかもしれません。
この記事では、法事と法要の違いや法事でやるべきこと、その他特別な法要について解説します。
法事と法要の違い
法事と法要という言葉はよく似ていてその違いを明確に理解している人は多くはありません。
法要とは、亡くなった故人に対する供養をすることです。
納骨のときに僧侶に読経していただいたり、お墓を新しく作ったときの開眼供養などがこれにあたります。
法事はお盆やお彼岸などの仏教行事全般を指し、法要と法要の後の食事などを含めた言葉としても使われます。
分かりやすく言うと、法要は僧侶に読経などあげてもらうことで、法事は法要とその後の食事も含めたものということになります。
次からは法事と法要についてもう少し詳しく解説していきます。
法要とは
法要とは、亡くなった故人の冥福を祈るために忌日(きにち/きじつ)に人々が集まって行う追善供養になります。
忌日とは、故人が亡くなった日のことで命日ともいいます。
加えて故人が亡くなった後、七七日(しちしちにち)まで7日ごとに7回行われる追善供養をする日も含めます。
四十九日の後は、命日の翌年に行う一周忌、その翌年に三回忌、死後6年目に七回忌、死後の12年目に十三回忌という流れで法要を行っていきます。
法事とは
法事とは、法要とその後の会食を含めたものになり、四十九日にあわせて納骨をしたり、一周忌などの節目に法事を行うことが多いです。
法事はお盆やお彼岸などの仏教行事全般も指していますが、中でも特に大切な法事は、初七日、四十九日と一周忌になります。
近年では、初七日を告別式の後に行い簡素化される傾向がありますが、四十九日を過ぎるまでは「忌中」になり、祝い事は控えたほうがいいです。
また、一周忌を過ぎると「喪が明ける」ことになるので、親族や近親者を招いて盛大に法事を行うことが多いです。
法事の服装
法事では「平服でおこしください」と言われることがありますが、服装は葬式と同じように男性はスーツ、女性はスーツもしくはワンピースが望ましいです。
男性は黒のスーツ(シングル・ダブルどちらでも良い)、白いワイシャツ、ネクタイやベルト、靴下と靴も黒を着用してください。
女性は肌の露出が少ない黒のスーツもしくはワンピース、黒いパンプス、ストッキングは肌色もしくは黒色を着用してください。
また、光沢のあるバックや靴、ヒールが高い靴、派手な装飾や光るものは避けるようにしてください。
子どもが法事に参列する場合の服装は、学生であれば学校指定の制服を着用するようにしてください。
制服がない場合、男の子は黒や紺、グレーのブレザーとズボン、女の子は黒や紺、グレーのブレザーとズボンもしくはワンピースを着用します。
靴は学校指定のものがあれば学校指定のものを着用し、学校指定のものがなければ白や黒、紺のスニーカーでも問題はありません。
法要の種類
法要には、追悼法要と年忌法要があります。
回忌法要
回忌法要は、故人が無事極楽に行けるように追悼するための法要です。
故人は亡くなってから7日おきに閻魔大王の裁きを受けるとされており、これに合わせて法要をします。
回忌法要の種類は以下の通りです。
法要の種類 | 読み方 | 逝去からの日数 |
初七日 | しょなぬか | 7日目 |
ニ七日 | ふたなぬか | 14日目 |
三七日 | みなぬか | 21日目 |
四七日 | よなぬか | 28日目 |
五七日、三十五日 | いつなぬか、さんじゅうごにち | 35日目 |
六七日忌 | むなぬか | 42日目 |
七七日忌、四十九日 | なななぬか、しじゅうくにち | 49日目 |
百箇日忌、百か日忌、百箇日、百か日、百カ日 | ひゃっかにち | 100日目 |
年忌法要
忌明け以降の法要は、年忌法要と言います。
年忌法要の種類は以下の通りです。
法要の種類 | 読み方 | 逝去からの年数 |
一周忌 | いっしゅうき | 満1年目 |
三回忌 | さんかいき | 満2年目 |
七回忌 | ななかいき | 満6年目 |
十三回忌 | じゅうさんかいき | 満12年目 |
十七回忌 | じゅうななかいき | 満16年目 |
二十三回忌 | にじゅうさんかいき | 満22年目 |
二十七回忌 | にじゅうななかいき | 満26年目 |
三十三回忌 | さんじゅうさんかいき | 満32年目 |
法事の準備と流れ
それでは、実際に法事を行うには何から手を付ければいいのでしょうか。
ここからは、法事の全体像を説明するとともに、具体的に何をするかを解説していきます。
法事の準備
法事を行う場合は2ヶ月くらい前から準備を始めます。
1.法事の日程と場所を決める
法事の日程は忌日当日が望ましいですが、忌日できないときは忌日までの招待客が集まりやすい休日を選びます。
法事を行う場所は、お寺、自宅、お墓のいずれかになります。
2.お寺への連絡と会食場所の予約
法事の日程が決まりましたらお寺に連絡をして僧侶の手配をします。
会食をする場合は、招待客するおおよその人数を考えて斎場や会館、レストランやホテルなどの会食をする場所の予約をします。
3.引き出物や案内状と招待客リスト
法事に招待する範囲をどこまでにするかを考えながら招待客リストを作成します。
招待する人が決まれば法事の案内状を作成して送付していきます。
招待する人が少ない場合は、電話での案内でもかまいません。
また、引き出物をどのようなものにするのかを考えていきましょう。
4.石材店への連絡
お墓への納骨をする場合は、石材店への連絡が必要になります。
納骨をするときには、戒名を彫刻する必要があり、彫刻には3週間程度の期間が必要になるので、法事の1ヶ月くらい前までには連絡をするようにしてください。
5.法事の出欠確認
法事の2週間くらい前には出欠の確認を済ませるようにしてください。
出欠人数を確認して、会食の料理の数や引き出物の数などを手配先に連絡しておきます。
また、お寺やお墓、会食場所への移動を自家用車で行うのか、バスやタクシー、送迎バスなどを使うのかなど、どのような方法で移動するのかもこの時点で決めるようにしてください。
6.法事の前日
法事の前日には法事に持参するお布施やお供え物、位牌や遺影などを準備して忘れ物がないように確認します。
法事当日の流れ
法事の当日は早めに会場に行って招待客や僧侶の到着を待つようにしてください。
【法事の流れ】
1.僧侶の読経
2.遺族、親族の焼香
3.参列者の焼香
4.僧侶の法話
5.お墓参り
6.会食場所への移動
【会食の流れ】
1.喪主より簡単な挨拶
2.献杯
3.会食
4.喪主より閉会の挨拶
5.引き出物を渡して解散
会食に僧侶も同席する場合は、僧侶は上座へ案内し、遺族や参列者は下座に着席します。
法事のお布施
法事で僧侶に読経をお願いしたときは、謝礼のお布施を渡す必要があります。
法事でのお布施は30,000~50,000円が相場です。
読経してもらう時間や地域、宗派によって変わることがありますが、一般的には35,000円くらいが無難な金額です。
法事は納骨や四十九日、一周忌や三回忌など続いていくので、今後も同じ寺院にお願いするのであれば、お寺に直接聞いてみるのもいいです。
ただ、寺院に直接聞いても「お気持ちで・・・」と答えられることが多いので、他の檀家の人かご近所さんもしくは葬儀業者に聞いてみるのもいいです。
お布施の内訳は、「読経料」、「お車代」、「御膳料」などを含んだ金額になります。
先ほどのお布施の一般的な金額の35,000円に当てはめると、読経料が25,000円、お車代が5,000円、御膳料が5,000円になります。
お布施は白無地の封筒に入れて、表書きは「御布施」、「お布施」、「御経料」、「〇〇家」と書き、僧侶が帰るとき、もしくは会食に同席した場合は会食後に渡すようにしましょう。
法事のお供え
法事にはお花やお供え物、線香を用意するほか、会場を借りる場合は会場の使用料なども必要になります。
お供え物は果物やお菓子類などが一般的で、他にはビールやお酒、ジュースなどの飲み物、お線香やローソクを備えることもあります。
お供え物の費用は5,000~10,000円くらいが必要になります。
法事のお花はフラワーアレンジメントなどが一般的で、費用も10,000円くらいから少し豪華にしたときは20,000円くらいが必要になります。
会場を借りて法事を行った場合は、法事が終わった後には、お供え物やお花を持ち帰らないといけないので、あまり多くならないようにしましょう。
法事の会食
法事の会食は一人あたり4,000円程度が目安になります。
自宅で会食を行う場合は、仕出しの弁当やお寿司の出前などを手配しておくといいです。
会食を自宅以外の場所で行うときは、料理の内容と飲み物代も含めてお店と打ちあわせをするようにしましょう。
また、会食は必ずしなければならないということではないので、会食をしない場合は折詰の料理と小瓶のお酒を用意して引き出物と一緒に渡すようにしましょう。
引き出物はお茶やお菓子、海苔などが一般的で、他には石鹸や洗剤などの消耗品も喜ばれます。
引き出物の相場は2,000~5,000円で、3,000円程度が目安になります。
引き出物は持ち歩くことも考えて、できるだけ軽いものを選ぶようにしましょう。
初盆の法要
初盆とは故人が亡くなってから四十九日法要を済ませたあとにはじめて迎えるお盆のことで、通常のお盆よりも盛大に行われることが多いです。
初盆の法要を行う時期は、「旧盆」と「新盆」の2通りがあります。
旧盆は8月15日を中心にした、8月13~16日の4日間をお盆としていて、関西地域を中心に全国的にも8月に多く行われています。
新盆は7月15日を中心にした、7月13~16日の4日間をお盆としていて、東京や関東地域の一部で行われています。
初盆の法要は基本的には年忌法要などと同様ですが、初盆特有の準備しなければいけないものがありますので注意が必要です。
迎え火と送り火
13日に迎え火で故人の霊、ご先祖様を迎え、16日の夜には送り火で故人の霊とご先祖様を送ります。
初盆の迎え火と送り火には白提灯を用意して、故人の霊が迷わないように目印として玄関や仏壇の前に飾ります。
白提灯は初盆のときにだけ使用するもので、仏壇店もしくは仏具店で購入することができます。
精霊棚
精霊棚は故人やご先祖様の霊を迎えるために必要な棚で、精霊馬やその年に収穫された作物や故人が好きだった果物などをお供えします。
精霊棚は仏壇とは別に用意する必要があり、仏壇店もしくは仏具店で購入することができます。
精霊馬
お盆の時期に見たことがあるかもしれませんが、精霊馬とはキュウリやナスビを爪楊枝や割りばしで馬や牛にみたてて作るものです。
一般的にはキュウリやナスビを使うことが多いのですが、地域によっては他の野菜を使うこともあります。
お葬式で行う初七日法要
初七日法要は故人が亡くなってから7日目に行われる追善供養になります。
近年では、仕事の休みが取れない、遠方に住んでいるので参列できないなどの理由から、葬式当日に行うのが主流になっています。
もちろん別の日に独立して法要を営む場合とは勝手が違いますので、確認しておきましょう。
お葬式で初七日法要を行うときの流れ
お葬式で初七日法要を行うときは、「繰り上げ法要」と「繰り込み法要」という2つの流れがあります。
【繰り上げ法要】
1.通夜・告別式
2.出棺
3.火葬
4.初七日法要
5.精進落とし
6.解散
【繰り込み法要】
1.通夜・告別式
2.初七日法要
3.出棺
4.火葬
5.精進落とし
6.解散
という流れになります。
最近は「繰り込み法要」が主流になっています。
初七日法要のお布施
お葬式で初七日法要も行なうときのお布施は、初七日法要として別にお布施を用意する必要はありません。
通夜~告別式といった一連の流れの中に初七日法要を繰み込んでいるので、僧侶に渡すお布施に含まれていると考えてください。
初七日法要を葬式とは別に行うとき
初七日の法要には、基本的には基本的な年忌法要などの際の法事と変わりません。
親族や近親者を招待してお供え物を用意して、僧侶に読経をお願いし、法要の後の会食などをします。
まとめ
ここまで、法事と法要の違い、法事はいつ、何を行うのか、法事のお布施やお供え物、初七日や初盆などの法要について解説してきました。
法事や法要は普段することがないので、マナーや注意することなどわからないことが多くあるかもしれません。
余り堅苦しく考えずに心を込めて故人を供養する気持ちを持って準備を進めれば、いい法事になりますので、ここで解説しましたことに参考にしてみてください。