成年後見制度には判断能力の有無によって3つの種類があります。
保佐は判断能力が不十分な方に使われる制度の事であり、本人を被保佐人、補佐を行う方を保佐人と言います。
成年後見制度における保佐人とはどのような方になるのでしょうか?
保佐とは?
成年後見制度は、著しく判断能力が低下している方が使う制度である「後見」、判断能力が低下している方には「保佐」、一部の判断能力が低下している方が使う制度である「補助」があります。
保佐はちょうど中間の位置にある制度であるといえます。
「保佐」は成年後見制度の一つ
保佐は成年後見制度の一つであり、認知症などの障害によって日常生活の様々な事柄に対して支援が必要な方です。
後見は生活全般に対して支援が必要なことに対して、保佐の場合は自分でできることも多いため、金銭が絡むような内容の事柄が出てくれば保佐人が自己決定を支援していきます。
そのため、被保佐人の方は一見すると何も問題のないような方のことが多いのが特徴であるといえます。
しかし、保佐よりも判断能力がある補助よりも支援が必要ですので、定期的な保佐人の支援を必要としています。
成年後見人との違い
成年後見人と補佐人の大きな違いは、どこまで本人の自己決定を支援していくかです。
後見人は本人の日常的な細かいことからすべて支援をしていきます。
例えば、在宅で過ごしている方に対しては、日常の買い物の支払いから、近所への挨拶や、介護保険を利用する際の契約などを実施していきます。
後見を受ける方は重度の認知症や寝たきりの方の場合が多いですので、代わりに後見人が判断をしていかないと生活が成り立たないことが多いからです。
対して保佐の場合は日常生活上で本人の代わりとなって行うことはほとんどありません。例えば、買い物に対しても口を挟むようなことをしませんし、介護保険を使う際の契約書などにもサインをしないことが多いです。
あくまでも本人の分からないことを支援していくことが仕事ですので、そこまで頻繁にかかわることも少ないといえます。
保佐人と補助人の違い
後見人と保佐人に対しては大きな違いがありますが、保佐人と補助人の違いについては分かりにくいかと思います。
多きな違いとしては、保佐人は重要な財産行為を本人が行う際は保佐人の同意が必要という事項があります。
補助人の場合は重要な財産行為の一部のみに同意権が与えられることに対して、保佐人は全ての重要な財産行為に対して同意見が与えられます。
それでは具体的にどのような行為を指すのでしょうか?
私たちが日常生活において大きな買い物をしたり、定期預金を解約したりなどの行為を指します。
例えば、不動産を売却や購入をすること、借金をしたり、金銭を貸し付けることに関しては被保佐人一人でできません。必ず保佐人の同意が必要になります。
もしこういった行為を被保佐人が補佐人の同意なく行う場合には、後から保佐人がその行為に対して取り消し行為を行うことが出来ます。
これは保佐人に取り消し権が付与されるからです。
また、このような重要な行為以外に裁判所が認める範囲で保佐人には取り消し権が与えられます。
例えば、高齢者の女性が息子に頻繁にお金を要求されて、要求されるたびに渡してしまうことが問題視されていました。
このような行為は通常であれば家庭内の問題ですので、重要な財産行為に入りませんが、家庭裁判所が認めれば息子にお金を渡す行為に対して取り消し権が与えれられることがあります。
保佐人で知っておきたいポイント
保佐人はどのような方がなるのでしょうか。
また法定代理人と保佐人の違いや、保佐人から後見人になれるかなどについてご紹介していきます。
保佐人は誰がなる?手続きについて
保佐人は様々な方がなっていることが多いです。
家族がなったりすることもありますし、四親等以内の親族の場合もあります。
弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門家がなる場合もありますし、市民後見人という市民から選ばれるケースもあります。
しかし、誰でもなれる訳ではありません。
家庭裁判所が決定しますので、きちんと保佐の業務が出来るような方になることが原則として考えられます。
保佐人と法定代理人の違い
法定代理人とは本人の代わりとなって様々な手続きをすることが法的に認められた方になります。
保佐人に対して法定代理人としての権利はなく、本人の代わりとして手続きを行うことが出来ませんので注意しておきましょう。
これが後見人となれば話は変わります。
後見人の場合は本人の法定代理人として活動が出来ますので、その部分で保佐人と大きな違いがあることが分かります。
あくまでも保佐人は本人の出来ない部分、法律で定められた重要な財産行為のみに対して支援をすることが出来ます。
保佐人から後見人になれるのか?
被保佐人の判断能力は年々低下していくことが一般的です。
特に認知症などの進行性の病気の場合は、病気とともに適切な判断が難しくなってしまいます。
そのような場合は、保佐人では対応しきれない部分がありますので、家庭裁判所の許可のもと後見人になることもできます。
これのように、本人の判断能力に応じて補助から保佐、保佐から後見にいくことはあります。
しかし、反対に後見から保佐や、保佐から補助というのはめったになく、これは判断能力は不可逆的(治らない)であるからです。
もし現在の成年後見制度の種類が適していないと感じた場合は、本人もしくは保佐人から家庭裁判所に申し立てをして対応をしていくことになります。
保佐人が注意したいこと
保佐人を行う上で知っておきたいこと、注意したいこととはどのようなことがあるのでしょうか?ここでは保佐人が行う人が注意したいことについてご紹介していきます。
代理権は付与されるのか?具体的な例について
保佐人には代理権は付与されません。
この代理権は非常に大切なものであり、一つ間違うと本人の権利を阻害してしまう可能性もあるからです。
具体的なケースについてご紹介していきます。
以下は、保佐人が必要以上に関与しすぎたケースです。
Aさんは認知症があり、独居高齢者でした。子供もいませんし、訪問販売で高額な商品を購入してしまったなどの金銭トラブルがあったので、当時ケアマネジャーだった方は、本人を支援して成年後見制度を活用してもらうことにしました。
Aさんも訪問販売に合った場合に困ると思い同意して申し立てをすることにしました。
家庭裁判所に申し立て後、Aさんがある程度判断能力があると判断されて、弁護士の保佐人がつきました。
Aさんは預金の他に不動産などの財産が多かったので、保佐人が付いたのです。
保佐人である弁護士は非常に親切な方でしたので、頻繁にAさんの自宅に訪れてAさんの様子を伺いAさん自身も弁護士に信頼を置いていました。
Aさんも訪問販売や株の話、銀行とのやりとりの中では弁護士に話をしにいき相談をしていました。
関係性もできて数年が立ち、Aさんは徐々に判断能力の低下が強く出てきました。
弁護士自身もそのことを感じていましたが、家庭裁判所に後見の申請をすると時間や手間がかかり、そのまま保佐人としてAさんにかかわっていました。
当然Aさんは徐々に判断能力が低下してきていますので、以前よりも弁護士に頼りきりになることが多くなったのです。
この時には既に弁護士は様々な部分でAさんの代わりとして判断するようになったのです。
例えば、介護保険を調整していくケアマネジャーとのやりとりは弁護士を通して行っていました。
ケアマネジャーは後見について知識があったので、多少おかしいと思いながらも弁護士に全てを報告、Aさんに対しての処遇について質問をしていました。
その後数か月がたったころ、Aさんの兄弟が数年ぶりに訪問してきたのです。
兄弟はAさんの認知症が進行しており、弁護士が保佐人としてかかわっていることを初めて知りました。
Aさんは昔から自分が認知症になったらグループホームに入って皆と一緒にワイワイと過ごしたいという話を、兄弟にはしていました。
兄弟はAさんが認知症になっても自宅で過ごしている姿を見て、弁護士にクレームを入れました。
弁護士としては施設に入るよりもAさんがこのまま自宅で過ごしておいた方が良いと自己判断してしまったことを謝罪しました。
本来成年後見人を行う方は、本人の意思をしっかりと聞いて「支援」をしなければいけません。本人の代わりに本人の処遇を決める代理権は無いので、注意が必要です。こういったケースは時々見られます。
いくら保佐人だかららといって本人の代わりにすることはできませんし、そうするのであれば後見人として申し立てをするべきです。
被成年後見人はどんな人が対象者?
被成年後見人はどのような人を対象としているのでしょうか?
高齢者であれば認知症の方や寝たきりの方が対象となっていますし、子供などであれば障がい者が最も多いです。
障がい者施設や老人ホームに入居している方の中には後見人が付いている方も多いです。
生活をしていく上でなんらかの支援が必要な方は成年後見制度の対象となっています。
報酬は任意で決められるのか?
保佐人を親族以外の方に依頼をする場合は、報酬が定められることがほとんどです。
この場合の報酬はいくらぐらいになるのでしょうか?
通常であれば月に2万円が原則の報酬であり、そこからは持っている資産に応じて異なります。
資産が多い方ですと月に5万円ほどの報酬が発生します。
これは家庭裁判所が本人の資産内で払えるだけの金額を設定していきますので、そこまで高額にはなりません。
まとめ
保佐人は他の後見人や補助人とは違って行う仕事や出来ることが異なります。
もし成年後見制度を使う予定がある方は、保佐人がどのような役割で動くのかを知っておくことをお勧めします。