葬式を終えると少し気持ち的に余裕ができて来ますが、しかしするべきことはまだ終わっていません。
その中の大切なものの1つが位牌を買うことです。
よく位牌は寺院の方から黙ってても授けてくれると思っている人がいますが、決してそうではありません。
位牌は自分で買い、かつ戒名を購入場所で頼んで彫ってもらう必要があるのです。
そこで今回の記事では、位牌とはどういうものでどこで買ったらいいのかということについて解説して行きます。
■位牌の種類
まず位牌にはどのような種類があるのでしょうか。
作成者別の位牌の種類
位牌は、誰が誰にのために位牌を作るかによって「順修牌(じゅんしゅはい)」と「逆修牌(ぎゃくしゅはい)」の2つに大別できます。
順修牌とは
順修牌とは「順番」という文字が入っている通り、亡くなった故人の供養のために遺族が作る位牌にことです。
通常、仏壇に祀ってある位牌は全て順修牌です。
逆修牌とは
生きている遺族が亡くなった故人に作る順修牌に対して、生きている間に寺院から戒名や法名を授けてもらいそれを位牌に彫り付けるものを「逆修牌」と言います。
・形状別の位牌の種類
デザインによっても位牌は種類が分かれます。
位牌の基本的なデザイン
まず一般的な位牌のデザインは台座の上に戒名や法名を記した札板を立てたものです。
形自体はシンプルな四角形のほか、上部が雲や月、唐草などの意匠をあしらった屋根になっているものもあります。
故人が多い場合の位牌
先祖代々の霊魂を1つの位牌の中で祀ることも可能です。
その場合は、戒名を位牌の表面にはすべて彫ることができませんから、板状の位牌を十枚程度重ねて、まるでカードのようにして1つの位牌の外枠の中に置納めます。
このような位牌を「回出位牌(くりだしいはい)」と言います。
・デザイン別の位牌の種類
以上をベースに位牌は形によって多数の種類に分かれます。
位牌の形の基本ワード
まず形状を説明する前に、位牌の構造上の専門用語を解説しておきましょう。
「札板」は台座の上に載っている板を指します。
札板の真下で上に向いて開いた蓮華の花弁の形をした部分を「受花」「受華」「請花」と言います。
位牌の枠に当たる部分を「框座(かまちざ)」と言います。台座の上の部分です。
この知識をベースに形別の位牌の種類を、以下ご紹介します。
春日型の位牌
札板が乗る受け台が四角で装飾が少ないものを「春日型」と言います。
勝美型の位牌
春日型位牌で、札板のトップの部分が鳥の巣のようになっているものを「勝美型」と言います。
葵角切型の位牌
春日型で台座の角が丸くなっている位牌を「葵角切型」と言います。
猫丸型の位牌
框座の形が猫足のように丸まっているものを「猫丸型」と言います。
呂門(ろもん)型の位牌
框座が正面から見ると「ロ」の字の字のような形をしているものを「呂門型」と言います。
■白木位牌から黒塗りの本位牌への書き換えについて
告別式の時によく見る位牌は白木のはずです。
この白木の位牌はどこかのタイミングで、本格的に黒塗りや唐木の本位牌に変更する必要があります。
ではどのタイミングでどのように変更していけばよいのでしょうか。
・本位牌は四十九日までに用意する
四十九日の法要を境に故人の霊があの世に成仏しますから、そのタイミングまでに霊魂が納まる本位牌になっている必要があります。
・本位牌製作の期間は2週間見る
しかし本位牌は購入場所に行って並んでいるものを購入すればよいということではありません。
どの形の位牌にするかを選び、その上で戒名や没年月日を彫ってもらう必要があります。この加工期間として最低2週間は必要です。
ですから四十九日から2週間を逆算して、その日までに本位牌を注文するようにしましょう。
・本位牌は自分で用意する必要がある
本位牌は寺院が準備してくれるわけではありません。
仏具店に行って自分で注文する必要があります。
またリアルの店舗に行かなくても、ネット上で発注することも可能です。
ただし浄土真宗では本位牌の代わりに過去帳を使うため、位牌を購入する必要はありません。
・無宗教でも位牌は用意できる
最近増えている無宗教による葬儀を行った場合でも、位牌を作ることは可能です。
その際には寺院から戒名を授けられていなくても、自由に生前の名前などを彫っても問題ありません。
・白木位牌から本位牌に書き換える手順
では白木位牌から本位牌に変更する手順を解説します。
1.すでにある他の位牌の大きさを測る
まずすでに仏壇を持っていて、ほかに位牌を祀っている場合は、その位牌の寸法を測ります。
先祖の位牌の大きさと異なるとアンバランスになってしまいます。
2.位牌に彫り込む「戒名、俗名、命日、行年(享年)」を書き出す
位牌を注文する時にはどのような文字を彫るかを一緒に指示する必要があります。
具体的には「戒名、俗名、命日、行年(享年)」です。
勘違いや、お互いに行き違いがないように、きちんと紙面に文字で記載して依頼しましょう。
3.仏壇店を探す
位牌を主に販売しているのは仏具店、仏壇店です。
どの仏壇店に注文するかを探しましょう。
その際には、戒名の価格が明示してあるところ、価格の内訳が明記してあるところ、質問に丁寧に答えてくれるところを選びます。
4.好みの位牌を選ぶ
注文する仏壇店が決まったら、好みの位牌を選びます。
サイズは基本的に、先祖の位牌を同サイズか、それよりもやや小さいものを選ぶことが一般的です。
5.彫り付ける文字や色を決める
位牌に彫る文字は先ほど書いたように「戒名、俗名、命日、行年(享年)」ですが、これも何かのルールがあるわけではありません。
宗派によっては、戒名の頭に古代インド文字の「梵字」を入れる場合もあります。
文字色は、位牌の表側に彫る文字を金か白で、裏面は金、白、朱で彫ることが一般的です。
6.文字のレイアウトを決める
位牌の表裏にそれぞれどの文字を彫るかについても、何かのルールがあるわけではありません。
一般的には表は戒名で、それ以外は裏ですが、没年月日を表に入れる場合もあります。
また位牌の表面に夫婦の2人の戒名を入れる位牌もあります。
その際には2名分の戒名が横並びになるようにレイアウトします。
7.文字の入れ方を決める
ここまで位牌の文字を「彫る」と記載してきましたが、位牌を彫りこまずに表面に書き付けるだけという方法も選択できます。
一般的には黒字塗り位牌に金文字を入れる場合は書き文字にし、木目や色が美しい唐木位牌の場合は彫り込み文字にします。
■位牌はどこで買う?
では位牌はどこで購入したらよいのでしょうか。
・基本は仏具店
位牌は仏壇店、仏具店などの専門店で購入することが一般的です。
・ネットショッピングでもOK
しかし近隣に仏壇店などがない場合は、仏壇店の運営しているネット上の通販サイトや、Amazonでも購入することが可能です。
・位牌を購入したら寺による魂入れが必要
どこで本位牌を購入した場合であっても、そこに文字を彫ったからと言って、そのまま「位牌」になるわけではありません。
なぜならそこには故人の霊がまだ入っていないからです。
霊魂を入れるためには、寺院に頼んで魂入れの法要をしてもらう必要があります。
ただし四十九日方法に間に合わせて位牌を購入した場合は、四十九日法要時に魂入れをしてもらえますから、事前に行う必要はありません。
■位牌の選び方
上でも少し書きましたが、どのような観点で位牌を選べばよいのかをまとめて記しておきます。
・すでに納まっている位牌と同じデザインにする
現在、仏壇が自宅にあって、ほかの先祖の位牌を祀っている場合は、すでにある位牌と同じデザインにした方がよいでしょう。
・仏壇に収まるサイズが必須
せっかく作った位牌が仏壇に収まらないと困りますから、仏壇のサイズを事前に測り、その範囲内で位牌を選びましょう。
・先祖の位牌よりも大きくしない
一般的に、位牌は先祖の位牌よりも大きくならないようにすること、と言われています。
位牌は一般的に尺寸法で表します。例えば3.5号という位牌は札板の高さが3寸5分、つまり10.5cmのものを指します。
ただし、位牌のデザインによっては同じ号数でも、全体の大きさが異なることもあるので注意しましょう。
■位牌の価格
位牌は購入する場だいたいいくらいの価格なのでしょうか。
・塗位牌の相場
本漆を塗った位牌は3.5寸サイズであれば4万~10万円程度です。
漆を合成樹脂にすれば1万円前後です。
・唐木位牌の相場
木目を生かした唐木位牌の場合は、使用している木材によって価格が大きく異なります。
一般的には「黒檀(こくたん)」「紫檀(したん)」「鉄刀木(たがやさん)」を用い、価格は3.5寸サイズで2万~5万円前後です。
・モダン位牌の相場
最近は伝統的な形の位牌ではなく、洋風のリビングで祀っても違和感のないモダン位牌が増えています。
この場合はデザインも素材も豊富なので、価格には幅があります。
一般的には3万円前後です。
・回出位牌の価格は
「回出位牌」とは先ほど書いたように、複数の札板をカード状に納めている位牌のことです。
この場合は。札板の作成費と外形の購入費でそれぞれの費用がかかります。
外形の価格相場は以上で解説した位牌の価格とほぼ同じですが、札板は以下のような価格になります。
札板の素材によっても価格は変わりますが、文字を彫り入れる価格はほぼどの素材でも同じです。
文字を彫り込む場合は、1戒名2,000円程度です。したがって先祖が5人いたら1万円です。
彫るのではなく書き込む場合は、1戒名1,000円程度です。
■まとめ
位牌についての総合的知識が得られたのではないでしょうか。
位牌は手元で先祖や故人を供養するための大切な依り代ですから、以上で解説したことを参考に、しっかりしたものを作成するようにしましょう。