日本の法律上、人が亡くなってから24時間以内は火葬できません。
多くの人は病院で死亡診断書を出してもらうため、一度は病院の霊安室に移動されます。
ですが、病院の霊安室では火葬までの24時間遺体を預かることはできません。
なので、お葬式まで、少なくとも火葬までは、遺体を安置する場所が必要です。
今回は、ご逝去から遺体安置までの流れと、遺体安置について解説します。
ご逝去から遺体安置までの流れ
多くの場合、ご遺体は病院から安置所に搬送されます。
病気やケガで入院中に亡くなった方はもちろん、ご自宅で亡くなっても病院に搬送して死亡診断書をもらうことが多いためです。
なお、ご自宅で亡くなった場合、主治医がいれば自宅に呼んで、その場で死亡診断書を出してもらえばこの限りではありません。
ご逝去後の儀式
ご家族が息を引き取られたら、まずいくつかの儀式を遺族と病院側で行います。
末期の水(まつごのみず)
末期の水は、ご家族が息を引き取られた後、遺族の方で故人様の口元を湿らせる儀式です。
仏式の場合は、箸先にガーゼか脱脂綿を付けて、水を含ませたもので故人の口元を湿らせます。
神式の場合は榊を使うのが正式です。
キリスト教の場合は、末期の水に相当する儀式はありませんが、教会によっては「聖体拝領」という儀式をすることがあります。
清拭(せいしき)・湯灌(ゆかん)
末期の水を終えたら、故人の体を清めて着替えをします。
身体を清めるには、通常は清拭が行われます。
清拭とは、アルコールを浸したガーゼなどで、故人の肌が露出している部分を拭く儀式です。これは遺族ではなく看護師が対応してくれます。
ご遺体の状況や遺族の希望があれば、湯灌を行うこともあります。
湯灌専用のバスタブのようなものに故人を入浴させた状態で洗います。
湯灌は清拭と異なり、葬儀社のスタッフを呼ばないと厳しいでしょう。
また、日本では多くはありませんが、エンバーミングをすることもあります。
エンバーミングとは、以外の修復や防腐処置をすることで、長期間遺体をきれいな状態で保つことができます。
具体的には故人の体に防腐剤を入れて血液を抜くなどの処置が施されます。
エンバーミングは、故人や遺族の意思があった場合のみ行われます。
着替え・死に化粧などの身支度
故人の体を清めたら、遺族が用意した衣類に着替えさせて、ひげを剃ったり、化粧を施したりして故人の旅立ちの身なりを整えます。
死亡診断書を出してもらう
医師から死亡診断書を発行してもらいます。
役所に死亡届を出すのに必ず必要です。
死亡届を出さないと火葬のための火葬許可証も出してもらえませんので、発行されるので、必ずなくさないようにしてください。
病院の霊安室に移動
一通りの儀式を終えたら、故人を霊安室に移動します。
長時間は預かってもらえないので、早急に葬儀社を手配し、遺体を搬出しなければなりません。
葬儀社を選定
葬儀社を選びます。
病院から提携している葬儀社を提案されることもありますが、必ずしもそこに頼む必要はありません。
葬儀社がすぐに決まらないようなら、遺体の搬送だけ病院提携の葬儀社に依頼し、その後葬儀社を変えることもできます。
その際は、遺体の搬送だけをお願いすることを伝えましょう。
遺体搬出・遺体安置
葬儀社を手配したら、遺体を安置場所に搬送します。
所属している宗教の作法に従って、布団やお供えを用意しましょう。
遺体安置とは
遺体の安置とは、亡くなってから出棺されるまでの間、遺体を置いておくことを言います。
日本の法律上、死後24時間は遺体を火葬できないため、それまでに遺体を安置する場所を確保する必要があります。
現在、病院で亡くなる人が8割を占めていると言われていていますが、病院や老人ホームの霊安室にはスペースに限りがあり、長時間安置してもらうことはできません。
人が亡くなるとまず葬儀社に遺体を搬送してもらいますが、どこに搬送してもらうかを決める必要があります。
まずは、遺体を安置する場所、施設についてみていきましょう。
遺体安置はどこでする?
遺体を安置する施設は、自宅でなければ斎場や葬儀社、民間の安置施設などがあります。
ただし、施設によっては葬儀まで故人との面会や付き添い宿泊ができないことがあります。
これらの制約を知らずに頼んでしまうと、故人とゆかりが深い人にとっては悔いが残ることもあります。
それぞれの施設について知っておくことは大切です。
遺体を自宅に安置する
住宅事情に不都合が無ければ、これまでは自宅での遺体安置が一般的でした。
自宅安置にする場合は、仏間にご遺体を搬入して、枕飾りなどのお供えをします。
近年では仏間がない家も多いので、冷房の多い部屋や、場所の都合で寝室のベッドに置くこともあります。
自宅安置のメリット
何といっても、自宅安置のメリットは遺族が故人との最後の時間をゆっくりと過ごすことができるという点です。加えて、故人が最後の時間を自宅で過ごせるということも、良い所です。
斎場や民間の遺体安置所に預けると、自由に面会ができなかったり、付き添いでの宿泊ができなかったりします。
半面、自宅であれば故人と好きに過ごすことができるので、最後の時間を大切にしたい方は、自宅安置が良いでしょう。
自宅安置のデメリット
自宅安置のデメリットは、遺体の管理を自分でしなければならないということです。
遺体を安置する部屋は涼しく保たなければならないため、空調は常に気を使う必要があります。
また、遺体を安置する白色の布団なども自分で用意します。ドライアイスや枕飾りは葬儀社がセットで販売していることもあります。
加えて、そもそも住宅事情によっては自宅安置ができないこともあります。
特にマンション住まいの場合は、エレベーター、通路、ドアの幅に至るまで、全て棺桶が通り抜けられる必要があります。
マンション住まいで遺体を搬入する場合は、事前に大家やマンションの管理会社に許可を取りましょう。
遺体を斎場や葬儀社に安置する
住宅事情やひっそりと家族葬をしたいなどの理由で自宅が利用できない場合は、斎場や葬儀社に相談しましょう。
それぞれ独自の遺体安置施設を備えている場合があります。
斎場・葬儀社に安置するメリット
斎場や葬儀社に安置するメリットは、遺体安置以降も葬儀社を変更しない場合は、ワンストップで遺体の管理を任せられることです。
遺体安置所を持っている葬儀社であれば遺体の管理に関してもプロなので、安心して任せられるでしょう。
斎場・葬儀社に安置するデメリット
場所や会社にもよりますが、故人との面会や付き添い宿泊の制限が設けられています。
折角遠方から人が来てくれても、葬儀まで面会してもらうことができないことがあります。
面会時間をや回数を増やすことで、オプション料金がかかる場合が多いでしょう。
民間の安置所に安置する
民間で、遺体安置の専用施設を開いていることがあります。
昨今では「遺体ホテル」という言葉も登場しており、ホテルさながらの設備の遺体安置所も誕生しています。
地域によっては火葬場が混雑していることもあり、火葬までの待合場所として使われることも多いようです。
また、ラックのようなところに遺体を収納していくタイプでも遺体ホテルと呼ばれることがあるので、民間の安置専用施設を探すときは、タイプや料金体系など確認しておきましょう。
民間の安置所に安置するメリット
遺体安置専用の施設なので、プロに遺体の管理を任せられます。
面会の時間や回数制限設けていないところもあるので、故人とゆっくり過ごしたい方は探してみても良いでしょう。
また、場所によってはに代わってコンシェルジュが弔問に対応してくれることもあります。
民間の安置所に安置するメリット
民間安置所の使用にもよりますが、暫定的な遺体の置き場所として、短期間の安置しか想定していない施設ですと、冷房設備が整っていないとこともあります。
また、付き添いのための施設や面会ができないところもあるので、民会の安置所を利用するときは内容をよく調べて決めましょう。
遺体の搬送は誰がする?
遺体の搬送は葬儀社がします。
費用は、搬送する距離によって変わりますが、遺体搬送の費用の相場は、10Kmで20,000円前後です。
ただ、葬儀社によっては、50Kmまでの遺体搬送料金が基本料金に含まれていることもあるので、葬儀社を利用する場合は確認するようにしてください。
遺体安置の料金
遺体安置にかかる費用では、以下の3つに費用が掛かります。
- 安置施設使用料
- 遺体保存にかかる費用
- 付き添い費用
ここからそれぞれにかかる費用をみていきますが、遺体を保存する期間や遺体を搬送する距離などによりかかる費用は変わりますので、あくまで参考として考えてください。
また、葬儀社によっては、遺体搬送料金以外に安置施設使用料、遺体保存にかかる費用、付き添い費用が基本料金に含まれていることもあるので、葬儀社を利用する場合は確認するようにしてください。
安置施設利用料
自宅で遺体を安置する場合はもちろん施設利用料は不要です。
斎場や葬儀社の安置施設を利用する場合の費用相場は、1日あたり5,000~30,000円とかなりバラつきがあります。
この他、面会室利用料として20,000~30,000円が別途かかることもあります。
自治体が運営している公営斎場の安置所では1日目は利用料無料で、2日目以降が1日あたり3,000円前後と費用が抑えられる傾向があります。
民間の遺体安置所では、1時間1,000円という時間制から1日5,000円から10,000円という日割り制など、依頼する民間遺体安置所によって費用は変わります。
遺体保存にかかる費用
施設利用料の他、ドライアイスと枕飾りはセットで20,000円~50,000円程度が目安です。
枕飾りとは、故人が亡くなってから遺体を斎場に運ぶまで枕元に飾られる簡易な祭壇のことです。
民間の遺体安置所では枕飾りを使わない場合が、費用はドライアイス代の10,000円前後になります。
付き添い費用
自宅で遺体を安置する場合はもちろん付き添い費用はかかりません。
斎場や葬儀社などの安置施設を利用した場合は、付き添い費用が50,000円程度はかかります。
また、自治体が運営している公営の斎場などでは、付き添いができないこともありますので、事前に確認するようにしてください。
民間の遺体安置所での、付き添いの費用は5,000~30,000円程度です。
遺体安置の期間
遺体を安置する期間は、一般的に2~3日と言われています。
加えて、日本の法律では死後24時間以内の火葬は禁止されているので、少なくとも丸一日安置しておく場所を手配する必要があります。
ただし、亡くなってから葬儀をするまでの期間については決まりがなく、遺族や斎場、葬儀社の諸事情などで遺体を安置する期間は変わります。
亡くなって24時間が経過した日が、友引、年末年始などにあたり火葬ができない場合、亡くなった故人の家族が遠方や海外に住んでいるという場合、斎場や葬儀社の予約が一杯で火葬や葬儀ができない場合は、2~3日以上遺体を安置せざるを得ないこともあります。
遺体の衛生状態を考えた場合、安置場所の状況にもよりますが、ドライアイスでの安置は3~4日を目処にした方が良いでしょう。
それ以上安置する必要があれば冷蔵保棺できる施設に移動することをおすすめします。
遺体安置での注意点
遺体安置で気を付けることには何があるでしょうか。
注意点をチェックして、心残りの無いお見送りに備えましょう。
遺体の腐敗
遺体安置でもっとも気を付けておくことが、遺体を腐敗させないことです。
特に自宅で遺体を安置する場合は自分で管理しなければならないので注意しましょう。
お通夜、告別式まで遺体にダメージを与えないようにドライアイスを準備して、冷房が効く部屋で安置します。
遺体の腐敗が進んでしまうと、お葬式で棺桶を開けた瞬間に場内に腐敗臭が広がってしまうということになりかねません。
遺体の腐敗を防ぐためのドライアイスは、一般のドライアイスと大きさが違うので、斎場や葬儀社に相談するようにしてください。
遺体安置の線香と北枕
遺体を安置するときに線香は絶やしてはいけないと言われていて、そのようにしていることが多くありました。
しかし、現在では線香を絶やさないために付き添える人数、葬儀の準備、これまでの看病疲れなどの理由から、なかなか付き添いができないことがあります。そもそも、自宅でなければ、夜通し線香やロウソクに火をつけておくことを禁止している施設も多いです。
そのような場合は、照明はつけたままにして線香やローソクの火は消すと良いでしょう。
また、仏式で葬送する場合は、遺体を安置する場合は北枕(または西枕)で遺体を安置します。
これは、お釈迦様が亡くなったときに、頭を北の方向に顔を西の方向に向けて亡くなったことに由来していて、お釈迦様にならい、亡くなった人が極楽浄土に行ってほしいという気持ちの表れになります。
遺体との面会・弔問
基本的には、お通夜、告別式に参列するのがマナーになりますが、どうしてもお通夜、告別式に参列できない場合は、遺体を安置している場所での面会をすることになります。
そのような場合は、必ず訪問する前に遺族に連絡を入れて、遺族に迷惑がかからない時間に面会をするようにしてください。
遺体の安置場所が自宅ではない場合は、面会時間に制約が設けられていることが多いのでくれぐれも注意してkづ浅井。
また、面会に伺う際は喪服ではなく、地味な平服や普段着で伺うようにして、香典などは持参しないようにします。
まとめ
ここまで、遺体を安置する場所、遺体安置にかかる費用、遺体安置をする期間、遺体安置で注意すべき点など、遺体安置についてみてきました。
お通夜、告別式に参列する機会はあっても、遺体を安置するという機会は近親者が亡くならない限り、そう経験することがありません。
人の死は突然やってくるものなので、その時に慌てて遺体安置のことを決めてしまうと、故人との最後の別れに悔いや後悔が残ってしまうことがあります。
そうならないよう事前に、亡くなったあと、遺体をどのように安置するのかを含めて、どのように葬儀をするのかを家族や近親者で相談しておくことが大切です。