遺言書は亡くなる前に、自分が亡くなった後の財産などの処分をどうするのか事前に決めておくことが出来るものであり、終活を行っている多くの方が遺言書を作成しています。
しかし、遺言書の開封には検認という作業があり、これは避けて通れないものとなります。
遺言書の検認とはどのようなことを行うのでしょうか?
遺言書確認に必要な検認とは?
遺言書の検認の目的としては、その遺言書が本当に本人が書いたものなのかを把握する為です。
検認が済んでいない遺言書は基本的に無効ですので、必ず検認が必要となります。
また、これは後述しますが、検認が必要なのは自筆証書遺言のみであり、公正証書で作成された公正証書遺言は検認の必要がありません。
検認を行う理由
検認は本当に本人が書いたものなのかどうかを確認するために必要なことですが、なぜそのようなことが必要なのでしょうか?
その理由としては遺族などの関係者が本人の財産を目当てに、自分にとって都合の良い遺言書の作成をしてしまう可能性があるからです。
例えば、兄弟がいたとして次男が自分に全ての財産を渡すように親本人に無理矢理書かせた遺言書が発見されたとします。
検認を行う際は、様々な調査を行いますので、もし無理矢理欠かせたことが発覚すればその遺言書は無効になります。
また遺言書が有効になるためには書き方など様々な確認ポイントがありますので、そのポイントを把握することも検認作業の大切な作業であるといえます。
きちんと本人が自分の意志を持って書いたのかを確認するのが検認です。
検認はどこで誰が行うのか?
検認は家庭裁判所で行われます。
家庭裁判所では職員が適正に書かれている遺言書なのかを確認していきます。
遺言書の検認期間は早くても1か月前後、遅い場合は2か月前後かかります。もし遺言書に対して不備があった場合や、筆跡の鑑定が必要な場合などはさらに時間がかかりますので注意が必要となります。
現在終活が活発に行われており、検認作業は非常に多くなってきています。
特に都市部では遺言書を書く方も増加してきていますので、検認の終了までの期間は長くなっています。
どのような部分を検認するのか
それでは検認とは具体的にどのようなポイントを確認していくのでしょうか。
用紙
用紙についてはどういった紙でも構いません。ある事例では広告の裏に遺言書を書いており、それが有効になったケースもあります。
日付
いつ書いたかということは遺言書では非常に大切なことですので、日付の確認は必須となります。
筆跡
筆跡に関しては本人が書いたかどうかを確認する為の大切な確認項目です。
本人の筆跡と明らかに違う場合は、本人が書いた遺言書と認められませんので注意しておきましょう。
訂正箇所
遺言書を書いている際に訂正をすることはよくあります。
自筆証書遺言は全てを自筆で書くため、訂正をすることが多いのです。
訂正箇所に関してはきちんと印鑑を押していないと認められません。
もし仮にここで不備などがある場合は、遺言書は無効になりますし、もし遺族が納得していない場合は、検認の後に裁判で争うこともあります。
覚えておきたいこととしては、検認はあくまでもその遺言書が有効かどうかを調べるものであり、もしその内容に対して異論があったり、遺言書は無効であるということを訴えたいのであれば、裁判で争われることになります。
検認はあくまでも本人が書いたかどうかを証明するだけですので、その辺りは理解しておきましょう。
検認について知っておきたいポイント
検認について知っておきたいことについてご紹介しておきます。
検認は遺言書を家族が発見した時点で必要になってきますので、スムーズに検認するためのポイントは知っておきましょう。
検認前に遺言書を開封をしてしまうリスク
もし検認前に遺言書は開封してしまうと罰則が科せられます。
検認をしない内に開けてしまいますと5万円以下の過料があり、その遺言書が無効になることもあるので注意しておきましょう。
その理由としては、やはり遺言書の書き換えの可能性、遺言書の破棄の可能性があるからです。見つければ開封せずにすぐに検認をしてもらうように手続きをしましょう。
検認を拒否することはできるのか?
検認をせずに遺言書を開封して、相続人で相続をするケースもあります。
そもそも検認という制度を知らずに、相続人だけで話を進めてしまうことも多いのです。
しかし、その場では相続について納得していても、後から異論を唱えたりすることもありますので、相続人だけで遺言書を執行するのはあまりお勧めはできません。
特に多額のお金が動く際は、必ず検認をしてもらうようにしましょう。
検認は必要な作業ですので、基本的には相続人が1人でも検認をすると言えばだれも止めることが出来ません。
検認済通知書と遺言書のコピー
検認済通知書は家庭裁判所で検認が終了した際に相続人に通知されるものです。検認が済みましたという通知がいくだけで、その内容については一切書かれていません。
裁判所に言って遺言書のコピーをもらうことが出来ますので、その時点で内容について確認できます。
ちなみに、検認済通知書に関しては、法律上で定められている相続人全員にいくことになっています。
検認しないための方法や注意点は
相続人が納得すれば検認の必要はありません。
また、検認はデメリットが多いものです。
特に検認にかかる期間がネックになることが多いです。
例えば、不動産などがある場合、早めの段階で相続について分かっていないと相続する人も、相続されない人もスムーズに処理が出来ません。
また、株などがある場合は早めに売却をしておきませんと値段が動きますし、現金などの場合でも親族が使ってしまうこともあります。
いずれにしても検認までの時間でトラブルが起きやすいのです。
生前に出来る検認不要の遺言書
検認は自筆証書遺言のみで行う必要がある確認作業ですが、公正証書遺言の場合は検認が不要です。
これは既に公証人が検認作業を済ましているという扱いになりますので、家庭裁判所での検認は必要なくなるのです。
検認自体に時間がかかるものですので、最初から公正証書を作成するということは時間短縮のメリットがあります。
また、自筆証書遺言の場合は内容や書き方によっては無効になることがありますので、公正証書遺言の方が確実に相続が出来るといえます。
公正証書遺言を作成するためには
公正証書遺言は公人役場にて公証人が作成します。
作成に関しては何度か打ち合わせがありますので、できるだけ早めに取り掛かることをお勧めします。
文章自体は公証人が考えてくれますので、メモ書きなどで整理をしてから打ち合わせをすると時間が短縮できます。
また、自分で公証役場までいけない場合は、公証人が来てくれる制度もあります(有料)ので、是非活用するようにしましょう。
最近の終活では自筆証書遺言よりも公正証書遺言を勧めるところがほとんどですが、それは検認がいらない、確実に有効になる遺言書の作成が出来る理由があるからです。
遺言書をめぐるトラブルは多い
遺言書をめぐるトラブルは非常に多いのです。
そのため、検認が終わったとしても、その結果に対して納得できないと数多くの裁判になっています。
昔は遺言書の検認はありませんでした。
しかし、遺言書を勝手に書き換えたり、勝手に作成したりがありましたので、検認という制度が出来たのです。
遺言書の検認で起こるトラブル
それでは実際に行ったトラブルとはどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、遺言書の検認にまつわるトラブルについてご紹介していきます。
勝手に家族が遺言書を書き換えてしまったトラブル
長男が遺言書を発見した際、勝手に開封をして内容を確認しました。
そこにはほぼ全ての財産を次男に相続をするという内容が書かれていました。
長男はそれを書き換えてほぼすべて長男が引き継ぐという内容に書き換えました。
それを次男に見せて「自分にすべて引き継ぐと書かれている」と次男に主張しましたが、当然次男はその内容に納得いきませんでした。
次男の方が親と仲が良く普段から身の回りのお世話をしていたからです。
次男は検認作業を知っていましたので家庭裁判所に申告をして、検認をしてもらうことにしました。
結果的に遺言書は親が書いたものではないと判断されてその遺言書自体は無効になりました。
内容に不備があった
遺言書の書き方に不備があればその遺言書は当然無効となります。
また、一部の認められることもあります。
ある遺言書が発見されました。
遺族は検認を家庭裁判所に依頼をして検認をしてもらうようにしましたが、検認結果を見ると住所の番地が一部分だけ違うということで、遺言書自体が有効でないと判断されました。
このケースの場合、相続人同士がもめることはありませんでしたが、遺言書をきちんと記入していないとトラブルのもとになりますので、事前に公証役場で作成するなど第三者のチェックが必要となります。
書いた時点で認知症があったケース
遺言書の作成した時点で認知症と診断されていた場合、その遺言書は無効となるケースが多いです。
認知症の本人に対して相続人が自分に有利になる遺言書を書かせるケースがあります。
しかし、検認の時点では明らかに文章が不自然であったり、本人の筆跡でない場合は無効とされますが、認知症の有無までは調べられません。
認知症で遺言書が無効になるのは裁判です。検認の時点ではその遺言書の自体が有効か無効かだけを判断しますので注意が必要です。
まとめ
検認自体を知らないという方も多いかと思いますが、遺言書が発見されれば検認は必須の作業です。検認自体に時間がかかりますが、法的に決まっていることですので、きちんと有効か無効かを判定してもらう必要があります。
まず遺言書が見つかれば、開封せずに検認をしてもらうことは覚えておきましょう。