成年後見制度の法定後見制度は既に判断能力が無い方、判断能力が乏しい方が使う制度であり、本人の権利を守るために使われる制度です。
成年後見制度の任意後見制度は判断能力があるうちに後見人を指定して、手続きを行いあらかじめ準備をしておく制度となります。
成年後見制度を始めるに当たって、診断書が必須になっており、この診断書が無いと申し立てをすることが出来ません。
ここでは、実際成年後見制度を申し立てるにあたり、診断書作成の注意点や上手く書いてもらうポイントなどをご紹介していきます。
成年後見人で診断書が必要な理由
成年後見制度の目的としては、判断能力が無い方が被害を受けない為に、後見人が本人の権利を守るという目的があります。
成年後見制度が出来るかどうか判断するのは裁判所であり、裁判所の判断基準としては判断能力があるかどうかです。
判断能力があるかどうかというのは、医学的な知見が必要になります。
また任意後見制度では、反対に本人の判断能力が正常かどうかが重要になるのです。
判断能力の有無を図る為医師の診断書が必要になります
判断能力の有無が重要
例えば、判断能力があるかどうか分からないまま、成年後見制度を申し立てたとしても裁判所は認めません。
成年後見制度で後見の判定が出た場合、本人の決定権を後見人が取り消すことが出来るので、もし判断能力が残っている状態で成年後見人が成立してしまった場合、本人の権利を侵害してしまうことになるからです。
判断能力が残っていない、乏しいことが非常に重要になるのです。
成年後見人制度は本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」となっており、後見は判断能力が無い、保佐は判断能力が乏しい、補助は状況に応じて判断が出来ない場面があるなど、判断能力によって受けれる制度が異なります。
診断書を書いてくれない、取れない場合
医学的な知見から判断能力を判断する為、診断書の作成は非常に重要になります。
しかし、日頃から主治医との関係性が良好な場合は、診断書も取りやすい場合もありますが、主治医などがいない場合は医師が診断書をいてくれない場合もあります
ケース1.主治医がいない場合
主治医がいない場合は、主治医を作るようにしましょう。
成年後見制度の診断書は医師であれば誰でも作成してくれる訳ではありません。最も認知症について詳しいのが精神科・心療内科の医師です。
最近は認知症専門の外来などもありますので、そういったところの病院を受診し診察を受けると良いでしょう。
主治医になってくれるのかどうかは、医師に確認をする事が必要です。
また、1回目の診察だけで主治医になれるかどうか分からないという医師も多いですので、2回、3回と定期的に通うことが大切です。
ケース2.診断書を作成してくれない場合
診断書を書いてもらいたいとお願いをしても作成してくれないケースがあります。
これには様々な理由がありますが、一つは専門外ということです。
整形外科や外科などの医師に判断能力が無いかどうかを書いて欲しいといっても専門外であることが多く、断られる可能性があります。
成年後見制度自体を知らない医師もいますので注意しましょう。
もう一つは初診などの場合です。
初診の場合は検査なども限られていますし、医師も患者のことを深く理解していない為、診断書は作成できないと言われることもあります。
ケース3.判断能力が無いと書いてくれない場合
明らかに判断能力が無いと分かる場合は判断能カが無いと書けますが、能カがあるかどうか微妙な時には医師は判断能力無しとは書いてくれません。
病院に行くと急にしっかりとする方もおり、判断が難しいのです。
そういった場合は、家族が日頃の様子を詳細に伝えたり、もし介護サービスなどを受けている場合は、記録を持ち込んでも良いでしょう。
アルツハイマーや脳血管性認知症であればMRIなどで判断が出来ますが、脳の委縮などが無い場合でも認知症状が出る場合もあります。
そういった場合は、医師の見立てで判断をすることになりますので、第三者の意見や情報が必要になります
成年後見人の審判には医師の診断書は最も重視される書類の一つです。
ほぼ診断書で判断能力の有無を決めている傾向にありますので、医師も作成には慎重になる傾向にあります。
診断書の期限について
診断書は原則的に3か月以内のものしか認められませんので注意しましょう。
半年前や1年前の診断書は有効ではありませんので、もう一度取り直す必要があります。
そのため、成年後見制度を活用する際には、あらかじめ取っておくのではなく、他の書類と同じタイミングで揃えておくのが良いでしょう。
診断書の中身について
成年後見制度に使用される診断書は通常の診断書とは異なり、成年後見制度活用するための診断書が必要になります。
診断書は家庭裁判所にあります。
成年後見制度で使用される診断書にはどのようなものがあるのでしょうか?
診断書の書式について
診断書には決まった書式が使われています。
以下の3つの項目に記入をしなければいけません。
・本人の人定事項
・医学的診断
・判断能力の意見
何を記入されるのか知っておく
診断書にはどのようなことを記入されるのか知っておくと心の準備が出来ます。それぞれどのような事を記入していくのでしょうか。
本人の人定事項
ここには本人の氏名や生年月日など、本人についての基本的な情報を記入していきます。
医学的診断
医学的な知見はこちらに書かれます。
アルツハイマーなどの病名があるのであれば病名を記入していきます。
病名がはっきりしている場合なら病名を書けば問題ありませんが、はっきりとしていない場合もあります。
そのような時は「認知症の疑い」といったように想定で書くことが出来ます。
また「認知症の疑い」と書く場合でも、判断能力が無くなった時期や他の病名、現在の精神状態などを書くこともあります。判定をした根拠が必要となります。
判断能力の意見
この部分に関しては、あらかじめ項目が決まっており医師は該当する項目にチェックを入れていきます。
診断書の部分を抜粋します。
自己の財産を管理·処分することができない
…これは判断能力が無いということであり、「後見」相当であることを指します。
自己の財産を管理·処分するには、常に援助が必要である
…こちらにしては「補助相当であり、判断能力が乏しいことを指します。
自己の財産を管理·処分するには、援助が必要な場合がある
…これは「保佐」相当であり、判断が出来な場合があることを指します。
自己の財産を単独で管理·処分することができる
…こちらに関しては、判断能力がありという状態です。
こちらにチェックが入っていないと後見制度を利用することが出来ません。
診断書作成の費用について
診断書作成についての費用は自費扱いになり保険は適用されません。
そのため、医師によって、病院によって費用が異なりますので注意しましょう。しかし、5000円~1万円程度が一般的と言われています。
診断書は改訂される
現在診断書は見直されており、平成31年中に改訂され書式が変更されます。
それぞれどのような部分で改訂があるのでしょうか。
現在の問題点
現状の診断書では医師の判断、つまり医学的な知見のみしか書く欄が無く、個別的な診断書ではありません。
もっと詳細に本人を知ったうえで、家庭裁判所は判断すべきであり、必要に応じて適正な後見制度を活用できるように配慮されることが必要となってきました。
診断書はどう変わるのか?
そういった問題点があり、診断書には以下のポイントが改訂として含まれます。
判断能力の意見の見直し
現在の判断能力の意見に追加で「支援を受けなければ」という文言が追加されます。これは家族やヘルパーなどの支援があれば物事を理解できるという意味です。例えば、難しい内容の説明でも家族やヘルパーが噛み砕いた言い方をすれば理解できるなどがこれに当てはまります。
実際、支援を受ければ理解できる方も多く、そういった方に対して配慮した改訂となっています。
判定の根拠の見直し
現在の判定の根拠は自由記載とされていますが、改訂によって見当識障害・意思疎通・理解・判断能力・記憶カの項目についての有無、程度を記載する項目が追加されました。これを書くことによって、何にどの程度支援が必要なのか明確にすることが出来ます。
福祉関係者の意見を記載する項目
ヘルパーや介護職員などが医師に伝えて記載する項目が追加されました。ヘルパーや介護職員は本人と日常的に関わっている人ですので、日常の様子をより詳細に記載するために改訂されました。
医師としては日頃の様子を知れることによって、参考に出来ますし、家族からしても家族の知らない本人の様子を伝えてくれますので、メリットは大きいと言えます。
診断書の改訂によって予想されること
診断書が改訂されると、以前よりも詳細に本人の出来ない事、出来ることが浮き上がってきます。後見人の役割が変化していくことが予想されます。
出来ることに関しては後見人の権限が無く、出来ない事のみに後見人の権限が付与されることになるでしょう。
これは後見人としてはやや煩雑になる可能性が有りますが、本人にとってメリットは非常に大きいと言えます。
本人が出来ない事のみに関して後見人が入りますので、本人の権利が阻害されることが限りなく少なくなるでしょう。
また、現在は後見が大半を占めていますが、より詳細に本人の出来ないことが分かりますので、後見は減り保佐や補助の数が増加していくことが予想されます。
まとめ
成年後見制度を活用していく上で、医師の診断書は非常に重要な書類となります。
これから成年後見性を活用しようと考えている方や、現在申し立てをしている方は是非参考にしてみてください。
また、今年には診断の改訂がありますので診断書が果たす役割はますます重要になってくるでしょう。