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法事・法要

お盆のなすときゅうりは何?精霊馬の意味や作り方

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最近はお盆などの行事もだいぶ簡略化されてきましたが、その中で生き残っているのが、きゅうりやなすなどに割りばしで4本の足をつけて仏壇などに飾る風習でしょう。
しかしこれらの風習は、親から受け継いでいるので、その意味も分からないまま継続している人が多いのではないでしょうか。

実はこれらの飾りには宗教上の重要な意味合いがあるのです。

そこでここではお盆に供えるきゅうりとなすの意味合いについて解説します。

お盆とは何か?

そもそもお盆とはどのような仏教上の行事なのでしょうか。

お盆には祖先の霊が帰ってくる

お盆というと、お盆休み、すなわち夏休みを思い浮かべる人がほとんどかもしれません。しかし本来はこのお盆休みは商家などで働いている人を故郷に帰らせて、お盆の法要に参加させるために休みを与えた、というのが起源です。したがって本来のお盆とは、その法要のことを指すのです。

ではどのような法要かというと、お盆はあの世にいる先祖の霊魂がこの世に戻ってくるので、それを迎え、丁寧におもてなしをするという意味です。

お盆とはいつの期間を指す?

お盆がいつの期間を指すのかは、地域によって異なります。まずお盆を旧暦、すなわち太陰暦で考えるか、新暦すなわち太陽暦で考えるのかによって決まってきます。
旧暦の場合のお盆は7月15日前後ですし、新暦の場合のお盆は8月15日前後です。つまり1か月違うわけです。

ではどの地方で新暦と旧暦に分かれるかというと、全国的には新暦で行うことがほとんどになっています。その中で東京などの関東では、旧暦に行う風習が残っています。

旧暦から新暦になった経緯は、明治時代に政府が太陰暦を廃して太陽暦に変更したことが契機ですが、しかし8月中旬というと農業の最盛期なので、とてもお盆の行事まで手が回りません。
そこで一部の地方では、8月ではなく旧暦の7月のままお盆を行うようになったのです。

新盆・初盆とは?

また「新盆」「初盆」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
これは故人が亡くなって四十九日法要を済ませた後、最初にやってくるお盆を指します。この時には、通常のお盆よりも盛大に法要を行います。

多くの場合は僧侶を自宅に呼んで読経をしてもらい、その場には知人を招いて一緒に法要に参加してもらって、法要終了後は会食を催します。
さらに玄関や部屋の中、仏壇には絵柄の入っていない白提灯を飾ります。
これは初めてあの世から家に帰ってくる故人の霊が道に迷わないようにするための目印の意味があります。

お盆にはどういう風習がある?

お盆の行事は地方によっても大きく異なります。

一般的にはお盆に入る7月13日または8月13日に、玄関先に迎え火を焚いてお迎えします。
そして故人の霊があの世に帰る16日には送り火を焚いて送り出します。
この送り火のほかに、大きな船を作ってそれで街中を練り歩く精霊流しや、小さな船にろうそくをともして川に流す灯篭流しなどを行う場合も多いです。

さらに14日~15日は盆中なので、3度の食事には家族と同じものを仏壇またはお盆のために設けた祭壇に供えます。
帰ってきた霊魂を慰めるために、盆踊りも行います。

お盆の発祥は?

お盆の行事はいつから始まったのでしょうか。

お盆の正式名称は、盂蘭盆会(うらぼんえ)あるいは盂蘭盆(うらぼん)です。
この名前は「盂蘭盆経」という経典が由来です。
「うらぼん」とは仏教発祥の地のインドの言葉であるサンスクリット語で「逆さ吊りの苦しみ」を意味する「ウラバンナ」が語源です。

なぜ「逆さ吊り」などという物騒で痛そうなものが、故人の霊魂を迎える日になったのかというと以下のようなエピソードがあるからです。

釈迦の弟子である目連(もくれん)という人には神通力があり、亡母が地獄で逆さ吊りの刑にあっていることを透視します。
そしてそのような母の苦しみを助けられないかと師匠である釈迦に相談をします。
すると釈迦は「旧暦の7月15日に多くの高僧が盛大に供養すれば救える」と答えます。
そこで目連がそのとおりに法要を行ったところ、亡母は逆さ吊りの刑から解放されたのです。

このエピソードが中国を経て日本に伝わり、旧暦の7月15日に先祖の霊を供養するために法要を行うようになりました。これがお盆の始まりです。

お盆の歴史

そのように日本に伝わったお盆の行事はどのようにして現在のような、日本中で行われる法要となったのでしょうか。

日本で最初にお盆の法要が行われたのは、606年の推古天皇による「推古14年7月15日斎会」だとされています。
それ以降毎年朝廷ではこの時期にお盆の法要を行ってきましたが、その法要を庶民も行うようになったのは江戸時代からです。

その理由は意外なことに、ロウソクが大量生産できるようになって価格が下がり、庶民の家庭でも普通に使えるようになったことが背景にあります。
なぜならお盆の法要にはロウソクが必須なので、それが手に入りやすくなったことで、それまで武士や貴族だけが行っていたお盆の法要を庶民も行えるようになったからです。

お盆に飾るなすときゅうりって何?

以上がお盆に関する基礎知識ですが、ではこの記事のテーマである、お盆にかざるなすやきゅうりにはどのような意味があるのか、という解説に移りましょう。

お盆のなすときゅうりの名前は何?

まずきゅうりやなすに4本の割りばしを指したものを精霊馬( しょうりょうましょうりょううま)と言います。
精霊馬は故人の霊があの世からこの世に来る時、そしてこの世からあの世に帰る時に使う乗り物です。
故人があの世から来るときには速く来てもらえるようきゅうりの馬を、帰りはゆっくり帰ってもらうためになすの牛に乗ってもらいます。

またこの世からあの世に帰る時に、故人にお土産を持って行ってもらうために、その荷物を載せる意味でも牛を用意するという意味合いもあります。

多くの地方では、夏に旬を迎えるきゅうりとなすを用いますが、時代や地域によっては藁(わら)で精霊馬を作る場合もあります。

なすやきゅうりは精霊馬にするほかに、刻んで洗った米と一緒にをハスの葉やサトイモの葉に盛り付けて仏壇に供える「水の子」にも用います。

お盆のなすときゅうりを飾る時期はいつから?

では精霊馬にしたなすときゅうりはいつから仏壇に飾るのでしょうか。

それはお盆の期間が始まってからということになります。
先ほど書いたように、地方によってお盆は新暦と旧暦のところがありますので、新暦の地方の場合は8月13日、旧暦の地方の場合は7月13日から飾ります。

お盆のなすときゅうりの作り方

簡単に精霊馬の作り方をご紹介しましょう。

まず材料はなすときゅうり、そして割りばし1~2膳です。
なすときゅうりはまっすぐのものよりも、少し曲がっているものの方が馬や牛に見えやすいです。

最初に割りばしを、野菜の大きさに合わせて、ちょうどそれぞれが足に見える程度の長さに切りましょう。
そしてその割りばしをそれぞれの野菜に、馬や牛に見えるように挿せば完成です。

お盆のなすときゅうりはどう処分する? 

概念上はお盆が終わる時に、精霊馬は先祖の霊があの世に乗っていてしまうので、精霊馬としての機能は消滅し、残ったものはただのなすときゅうりになります。
したがって単に捨てても問題はないのですが、しかし多くの地方では、それもはばかられるため、川や海に流すことをしています。
また地方によっては畑などに埋めて土に返す場合もあります。

しかし近くに海や川がない場合も、そもそも埋める畑がない場合もあるでしょう。
そのような場合は、元・精霊馬に塩をかけて清めた後、白い紙に包んで可燃ゴミの日に出しましょう。
せっかくだから食べたらどうかという考えもあるかもしれませんが、それはNGです。

お盆になすときゅうりを飾らない宗派や地域は?

精霊馬は全国的に飾られているわけではありません。
特に西日本では精霊馬の代わりに先ほど書いたような精霊流し灯篭流しの船などに故人の霊を載せて、あの世に帰すという習俗の方が一般的です。

また同じ精霊馬でも地方によって飾り方が違います。
基本はヘタがある方が頭なので、霊魂を迎える時には頭を内向きにし、送る時には頭を外側にします。
しかし地方によっては、全く逆にする場合もあります。

また宗派によっても精霊馬を作らない場合があります。
それは浄土真宗です。
浄土真宗の教えでは、故人の霊魂は亡くなったらすぐに阿弥陀如来が極楽に連れて行ってくれます。極楽は苦しみも悩みもない最高に快適な場所なので、そこから故人の霊魂がこの世に戻ってくるということはありません。
したがって、浄土真宗では精霊馬を作らないばかりではなく、そもそもお盆の法要を行わないのです。 

お盆のなすときゅうり以外の盆飾りにはそうめんも

お盆に供えるものとしては、なすやきゅうり以外に茹でたそうめんがあります。

そうめんを供える理由はいくつかあります。

1つは故人の霊があの世に帰る時に、精霊馬にお土産を載せますが、そのお土産を精霊馬に括り付けるひもとしてそうめんを使うというものです。

もう1つは故人の霊魂が精霊馬に乗ってあの世に帰る時に、手綱にするという意味です。

また精霊馬と関係なく、そうめんには疫病予防の効果があるとされています。
特にそうめんには熱病除けの効果があるといわれているので、疫病が流行しやすい夏の時期に、それを回避するために供えたのです。

さらに最近言われるようになった理由としては、そうめんはご存じの通り長いものなので、喜びを細く長く続けることを祈願して供えるということもあります。

まとめ

これでお盆になすやきゅうりに割りばしを挿したものを飾る理由がおわかりいただけたのではないでしょうか。
このように知ってみると、意味も分からずしていた行事に深い理由があったとわかるので、より故人を偲ぶ気持ちで精霊馬を飾ることができるでしょう。
ぜひ今年のお盆は以上のことを思い浮かべながら精霊馬を飾ってください。

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