家族が亡くなって新たに仏壇を購入した際には、単に仏壇だけではなく、そこに飾る仏具も購入しなければなりません。
この仏具が結構多岐にわたり、どれをそろえてよいのか迷ってしまうというのが、一般的な現象です。
そこでここでは、仏壇に飾る仏具にはどのようなものがあるのかという点について網羅して解説します。
仏具の基本
まず仏具の基本です。
仏具の名前と種類
仏具には以下ようなものがあります
火立て
火立てはロウソクを立てる台で、燭台ともいいます。
火立ては2つ用意し、仏壇の左右一対で飾るのが一般的です。
ロウソクは故人が仏壇に降りてくる時の道しるべとなります。
花立て
花は故人の霊魂を慰め、同時に生きとし生けるものは限りがあるという仏教の教えを体現するものとして、仏壇には必要なものです。
その花を生けるのが花立てです。これも左右に一対づつ飾るのが一般的です。
また花は基本的に生花が望ましいとされていますが、最近は造花でも構わないと考え方が変わってきました。
香炉
香炉とは線香を立てる仏具です。
線香の煙は故人にとってごちそうになるので、線香を手向けることは非常に重要です。香炉は1つだけ置きます。
主な材料は鋳造製です。しかし中には陶磁器や、木製塗り製品などもあります。
茶湯器
水やお茶はあの世で故人ののどが渇かないようにするために供えます
お茶や水は普段使うような湯呑茶碗ではなく、特別な茶湯器という容器に入れて飾ります。
ただし浄土真宗では、故人の霊魂がいる極楽は大変に快適でのどが渇くことはないとされるので、お茶も水もし供えません。
仏飯器
故人の霊魂はご飯を食べません。
しかしやはりご飯から上がる湯気がごちそうになるので、仏壇には炊き立てのご飯を供えます。
ご飯もお茶や水と同様に、ご飯茶碗などで供えず、特別な仏飯器で供えます。仏飯器には、真鍮製や瀬戸物製があります。
浄水、お茶、ご飯は毎朝替えるようにしましょう。
高杯
高杯(たかつき)は、高月とも書きます。
仏壇の左右に置いて、お菓子や果物を供える足のついた棚のような器です。
常花
常花は、生花のほかに飾る模造の花です。
形は蓮華を模してあります。これは蓮の花は泥の中で美しい花を咲かせるので、苦しい修行の末に悟りを開くという意味を示しています。
ただし浄土真宗では、常花は飾りません。
灯籠
灯篭は吊灯籠(つりとうろう)とも言います。
仏壇の天井から吊るし、本尊を照らし、仏壇の内部も明るくします。
瓔珞
瓔珞(ようらく)は、仏壇の天井の両側に吊るして仏壇を飾るものです。
リン
りんは漢字で書くと「鈴」になりますが、金属製の叩くと涼やかな音がする鐘です。
読経をする前と、終わった後に鳴らします。
過去帳・ 見台
浄土真宗以外の宗派の場合、仏壇には位牌を供えますが、浄土真宗では位牌の代わりに過去帳を供えます。
過去帳とは、故人の戒名(法名)、没年月日、俗名、享年などを記録する帳面です。過去帳は過去帳台の上に置きます。
見台は、過去帳を安置するための台です。
仏具の飾り方
以上の仏具はどのように飾ったらよいのでしょうか。
仏具の飾り方は宗派によっても異なりますが、そのうちの基本は以下の通りです。
まず仏壇はだいたい3段になっています。
上段
最上段の中央に本尊を安置し、その左右に脇侍を安置します。
本尊は仏像または仏の書いてある掛軸の場合が多いです。
脇侍も仏像の場合と、宗派の開祖や仏の書いてある掛軸、あるいは「南無阿弥陀仏」など宗派の題目を書いた掛軸などを飾ります。
中段
次に位牌は、本尊が隠れないように、本尊の左右かあるいは1段下に安置します。
1段下に置いた場合は、位牌の前に仏器膳を置いて仏飯器と茶湯器を置き、左右に高坏を置きます。
下段
には花立て、香炉、火立て、マッチ消、リンなどを配置します。
ミニ仏壇の仏具の配置
最近は住宅環境の変化に伴って、場所を取らない小型のミニ仏壇を購入する家庭が増えてきました。
ミニ仏壇にはボックスタイプとオープンタイプがあり、ボックスタイプはまさに正規の仏壇のミニチュア版なので、飾る仏具は基本的に同じです。
一方でオープンタイプの場合は、仏具をディスプレイするような形になるので、ミニ骨壺と花立て、茶湯器を横並びにするなど比較的自由な飾り方が可能です。
仏壇に写真は飾ってもいい?
仏壇に故人の遺影や、今生きている家族の写真を飾っている家庭もあるようです。
遺影は故人を偲ぶために飾るのでしょうし、家族写真は家族が無事に暮らしているということを故人に報告するために飾るのでしょう。
しかし遺影にしても家族写真にしても、写真を仏壇に飾ることは基本的にNGなのをご存じでしょうか。
なぜなら仏壇は、この世とあの世の境界にあるもので、お参りをしたときに故人があの世からこの世に降りてくるときの依り代になります。
言ってみれば、この世とあの世をつなぐ窓口です。
生きている人の写真をそのような場所に飾るということは、まるでその人がすでに亡くなっているようなことになるので、ふさわしくない、縁起が悪いというのはよくお分かりになるでしょう。
また遺影も同様です。
写真には魂がこもるとされています。
写真は非常に幅広く言ってしまえば、生きている人と同じ性格を持ったものです。したがって、その生きている人と同じ性格を持った遺影を、あの世とこの世に窓口に置くのはふさわしくありません。
ただし、亡くなってから49日目の四十九日法要までは、故人の魂はまさにこの世とあの世の間にいますから、その間だけは仏壇に遺影を飾っても構いません。
写真や遺影を仏壇に飾ってはいけないとしても、やはり故人を偲んだり、家族の無事を報告するために写真を手向けたいという気持ちはあるでしょう。
その場合は、仏壇の横や前に別の棚を置いて、そこに遺影や写真を飾りましょう。
仏具はどこで買う?
では仏具はどこで購入したらよいのでしょうか。
基本は仏壇店で仏具セットを買う
確実に全ての仏具が買い揃えられるのは仏具店です。
大きめの仏具店に行けば、花立て1つをとっても様々なものが用意してありますから、自分の好みのものを購入しましょう。
また仏具を1つ1つ購入しなくても、全てをワンパックにした仏具セットして売っている場合も多いので、それを買えば煩わしさはありません。
リアル店舗で仏具を買うメリット・デメリット
実際に店舗を構えている仏具店で仏具を買うことにはメリットとデメリットがあります。
メリット
メリットは以下の通りです。
- 自分の目で確認して買える
- 専門知識を持っているスタッフにいろいろと相談しながら買える
- 購入後のアフターフォローが安心できる
- 納期の心配がない。行ったその場で手に入る
デメリット
一方でリアル店舗で仏具を購入する上ではデメリットもあります。
- ネット通販やカタログ通販に比べてに価格が高いことが多い
- 商品の品ぞろえに限りがある。選択の幅が狭くなる。
- スタッフのペースで買い物が進み、自分のペースでゆっくり考えながら購入することができない
- まれに悪徳業者や超高価格を強引に売り込む店がある
- 買い物に時間がかかる
- 購入して持って帰るのが大変
最近は通販も充実している
最近はどのような商品でも通販で購入することが可能になっています。
仏具もその例外ではありません。
むしろリアルの仏具店はどんどん減っていく傾向にありますから、それに対して購入ニーズを満たすために、通販による仏具の販売は一層盛んになっているということさえ言えます。
通販は基本的にカタログ通販とネット通販に分かれます。
どちらもカタログ上やサイト上に掲載されている仏具から自分の判断で商品を選んでいくことになりますが、最近はさらにネット通販の方が増えてきました。
この理由の1つは、ネット通販には物理的な限界がありませんから、非常に多岐にわかる品ぞろえをすることが可能だからです。
仏具は上で挙げたように、非常に多くの種類があり、さらにぞれぞれが材質違い、色違い、デザイン違いの多様な商品があります。
リアル店舗では到底不可能なその品ぞろえができるのが、通販の最大のメリットですが、カタログはやはりページ数という限界があります。
その点ネット通販には限界がありませんから、数百、数千の品ぞろえが可能です。さらにネットは検索機能が優れているので、どれだけラインナップが豊富でも、金額、デザインなどを指定すれば、すぐに自分の欲しい仏具が探し出せます。
また2つ目の理由はネット通販の場合最も価格を安く提供でいる可能性があるからです。価格の安い順で言えば、ネット通販、カタログ通販、リアル店舗です。
通販は店舗が必要ありませんから店舗の賃借料などを仏具の価格に乗せなくて済みます。またスタッフもいないので人件費も浮かせられます。
したがって通販は非常に安く仏具を提供できます。
カタログ通販はそれでも、カタログを作成するための紙代、デザイン代、印刷代がかかるので、多少なりともその分を価格に乗せなければなりません。しかしネット通販はサイトの構築費用をいったんかければ、基本的にそれ以降は費用が全くかかりません。したがって乗せるコストが極めて安いため、低価格で提供することが可能なのです。
3つ目はカタログ通販に比べてネット通販の方がレコメンド機能、つまりおすすめ機能が充実しているからです。
リアル店舗に対する通販のデメリットは専門スタッフに相談できない点ですが、カタログ通販の場合はせいぜい商品の説明書きを丁寧にする程度しか対処のしようがありません。
しかしネット通販では先ほど書いたように、検索によって自分の細かい条件に合致した仏具を探すこともできますし、商品ページとは別に仏具の選び方などの解説ページも十分に用意できます。あるいは、自宅がマンションか戸建てかなどによっても、おすすめできる商品がセットになっている場合もあります。
このようにネット通販は、購入する人の側に立っても非常に便利なので、最近利用する人が増え、したがって店舗数も増加の一途なのです。
まとめ
仏壇に飾る仏具の網羅的な知識が得られたのではないでしょうか。故人をきちんと弔うためには、毎日の供養は当然ですが、正しい仏具を用意し、そして正しく仏壇に飾ることも重要です。ですからここで解説した内容を参考に、正しく仏具を飾りましょう。