インターネット上ではブログやwebサイトの記事などで、40代からの終活を推奨する情報を多く見かけます。しかし、終活の内容によっては、40代での終活は時期早尚と言えます。
この記事では、終活の内容を見直しつつ、40代から終活を始めるのは早すぎる理由を解説していきます。
40代では早すぎる終活
終活とは、自身の人生の終わりに向けた活動のことであり、生きているうちに葬儀やお墓などを準備したり、残される人に向けて医療についての要望や遺言を残したりすることなどを指します。
終活には「何歳から始めるべき」という定義はありません。ただ、多くは自身の最期が明確に感じられる、高齢の方が行うものです。
では、以下に終活で行う具体的な活動を挙げていきながら、なぜ40代から終活を行うのは早すぎるのかを解説していきます。
葬儀の準備
葬儀の準備も葬儀文化の変化や葬儀会社の存続の不安などの理由から、40代から始める終活にふさわしくありません。
終活のなかでも、葬儀の準備はとても大切な活動のひとつです。
残された遺族にとってお葬式の準備はとても大変なものであり、自身で自分の葬儀のプランを組み立てておくことで、残された人たちに負担をかけないようにするというわけです。
「早いうちから葬儀の仕組みを理解しておくことで安心できる」といった理由で40代から葬儀の準備を勧める情報がありますが、 葬儀の仕組みを理解しておくと言っても、葬儀のかたちは近年で大きく変化しています。
とくに葬儀の低価格化が加速しており、以前のように数百万円をかけて執り行うものから、家族葬などの数十万円で執り行えるかたちに変化しています。
終活における葬儀の準備は、長く見積もっても10数年先を見据えた準備であり、30年、40年先を見据えた活動ではありません。 30年、40年と時が経てば、葬儀のかたちにさらなる変化が起こっていてもおかしくありません。
現在の葬儀の仕組みを知ることは無意味ではありませんが、葬儀のかたちは時代とともに変化することを理解しておく必要があるのです。
また、葬儀も葬儀会社という一企業によって執り行われることがほとんどです。当然ながら「会社」という形態である以上、事業の変更や倒産の可能性があります。つまり、葬儀のプランを相談した会社が、数十年後も存続している保証はないというわけです。
やはり40代のうちから葬儀の準備をするというのは、あまりにも時期尚早なのです。
お墓の準備
お墓の準備も、40代では早いと言えるでしょう。
先祖代々のお墓がある場合はよいですが、「お墓がない」「田舎の墓に入りたくない」という事情をもつ方も少なくありません。このことから元気なうちに様々な霊園を見てまわり、お墓を購入するのが代表的な終活のひとつになっています。
また、お墓は終活のなかでもとりわけお金がかかる事柄のひとつであり、残された人に迷惑をかけないために準備しておくという意味合いもあります。
しかし、お墓の多くは購入すると年間管理費がかかります。
墓地の年間管理費は、墓石を建てたり納骨をしなくても、契約時点から毎年払うことになります。
加えて、お墓は葬儀以上に大きな変化をみせています。
昔ながらの墓石のあるお墓を選ぶ人は少なくなっており、樹木葬や納骨堂など様々な選択肢が生まれています。
昔のように数百万円をかけてお墓を用意しなくても、10万円単位でお墓を準備することが可能になってきているのです。
とくにお墓にこだわりはないという方は、やはり40代から考える必要はないといえるでしょう。
ただし、都心部を中心とした墓地不足を不安に思う方は、40代からの終活として済ませておいても良い事柄かもしれません。
これは高齢化が進むことで「田舎までお墓参りにいけない人」が増え、近くのお墓を求めるといった事情が絡んでおり、今後も都心近郊のお墓の人気は高まっていく一方だと思われます。
ほかにも、お墓には人気となるポイントがあります。景色の良い環境、とくに海の見える霊園などは人気が集まりやすく、すぐに売れてしまいます。
お墓は賃貸住宅のように数年経てば空きが出てくるものでもないので、早いもの勝ちと言っても過言ではありません。
もし譲れないお墓の条件があるようなら、40代からの終活としてお墓を準備しておくのも良いかもしれません。
40代で始めてもいい終活
断捨離・身辺整理
40代から終活を始めるのならば、老後の生前整理を前倒しする意味で断捨離によって物を手放し、生活を整えていくことから始めるのがよいかもしれません。
断捨離とは、物への執着をなくして不必要な物を捨ててしまうことによって、生活の質の向上させる活動のことです。また断捨離には持っているものを捨てるだけでなく、新しく入ってくる物を断つという意味合いもあります。
終活としての断捨離・生前整理は、主に相続などの税金面で済ませておかなければならないという意味合いがあります。
例えば、家族や友人に形見分けを行うときも、贈与税の対象となります。贈与税は、1年間にもらった財産が合計110万円を超えると発生します。つまり、なんでもかんでも溜め込んでおいて「あとは残された人に譲ろう」と思っていても、税金で遺族や友人に思わぬ出費を強いることになるかもしれないのです。
税金の心配がなかったとしても、大量の遺品を整理することは遺族にとって負担となります。このことから、終活のなかでも断捨離・身辺整理は重要な活動とされているのです。
ただ、断捨離や身辺整理は終活だけに限った活動ではありません。早いうちから物への執着をなくし身辺を整理しておけば、助かるのは老後の自分自身というわけです。
エンディングノートを書く
エンディングノートとは、介護や医療などの老後の意向、相続や葬儀・墓など死後の意向について記録しておけるノートです。
この他、自分の資産やプロフィール、家族・友人へのメッセージを記載できます。
エンディングノートについては、書き直しを前提にするなら40代から書き始めても良いでしょう。
1つに、エンディングノートには家族に何かあった場合に共有しておきたい情報を書き込めるためです。
例えば、家族の一人が急に入院したとします。
この人が公共料金や各サービスの支払いをしていたり、ペットの世話をしていたりした場合、あるいは親族に連絡が必要になった場合、エンディングノートにこれらの情報を記載しておくと便利です。
もう一つは、資産や保険の情報を一度書き出すことで、ライフプランの見直しができるという点もあります。
ただし、資産や老後・死後の意向は年を経るごとに変わっていきます。
40代から書き始めると、必ず書き直しが必要になるでしょう。
最近では紙ではなく、PC上で作成できるエンディングノートもあります。
40代からエンディングノートを書き始めるなら、データでの管理も検討しましょう。
終活が必要な40代もいる
ここまで40代から終活を始める必要性が乏しいことを解説してきましたが、終活を始めたほうが良い40代もいます。それは40代後半の単身者、とくに子どものいない未婚の方です。
実際に40代後半の独身女性のなかで、終活に関心を持ち始めている人は増えているようです。そのきっかけとなってるのが、40代後半で独身の女性お笑い芸人たち。彼女たちが「婚活を諦めて終活を始めた」といった発言をメディアでしたことから、同じ境遇にある方々の関心が一気に高まったようです。
すでに結婚をすっぱりと諦め、交友関係もこれ以上は広がることはないと確信している人などは、残したいメッセージや財産の示し方などが大きく変化することもないでしょう。
そうした場合は、エンディングノートを作成したり、断捨離を始めてみたりといったかたちで終活を始めてみるのもよいでしょう。
もちろん、40代後半であっても、今後まだまだ生活環境が大幅に変わることもありえます。晩婚化の流れのなかで、50代で結婚をすることもあるかもしれません。リタイア後の地域活動のなかで、無二の親友と出会えるかもしれません。
「終わること」ばかりを考えすぎず、老後の準備であることも意識することが大切です。
まとめ
インターネット上では、40代からの終活を勧める情報が多いです。しかし実際に40代で終活を始めても、数十年も経てば環境は大きく変化し、せっかくの準備も水泡に帰すだけになってしまうことが多いでしょう。
それだけでなく、資産などにまつわる情報をエンディングノートにまとめてしまうことで、紛失や盗難などのリスクが生まれる可能性もあります。
ただし、すべての40代が終活を始める必要がないというわけではありません。
40代後半に差し掛かった単身者などは、40代で終活を始める意義があります。また、年齢は関係ない事情となりますが、健康に大きな問題を抱えている人も40代で終活を始める必要性があるといえるでしょう。
自身の置かれている状況や周囲の環境をしっかりと見極め、自分には終活が必要だと感じた方は身近なことから着手してみてください。