お葬式には何かと決まり事やマナーがありますが、化粧に関してもいくつかのマナーが存在します。
香典や服装など、他のことについても気を配らないといけないことが多々あるので、化粧はいつも通りに済ませてしまうかもしれませんが、できれば最低限のマナーだけはおさえて化粧をしたいものです。
そこで今回は、お葬式に参列する際にふさわしい化粧のマナーやポイントについて分かりやすく解説します。
お葬式での化粧とは~基本的な考え方~
最初に、お葬式にふさわしい化粧として一般的に考えられている化粧方法について説明します。
お葬式の化粧は片化粧(薄化粧)で
基本的に、お葬式の化粧は片化粧(かたげしょう)をするものと考えられています。
片化粧とは、喪服を身につける際に施す化粧で、紅をひかない薄い化粧のことです。
片化粧についてはあまり明確なルールがないので、個人の基準で判断しなくてはいけないのが難しいところですが、自分を着飾るための華やかな化粧ではなく“身だしなみを整えるための化粧“という考えで化粧をすると、片化粧といわれるような化粧ができます。
とは言っても普段の化粧をしていると、その普段の化粧が基準になってしまうので、客観的に認められる薄い化粧というのがどういうものか分からないという方もいらっしゃると思います。
このように自分だけで化粧の程度を判断するのが不安な場合は、周囲の人に確認してもらうと確実です。
化粧をしない・すっぴんでの参列はNG
先ほど、自分を着飾るような華やかな化粧はお葬式にふさわしくないと言いましたが、かといって化粧をせず、すっぴんでお葬式に参列するのもあまり良くありません。
一般的に、何か特段の事情がない限り、すっぴんで参列することはマナー違反とされています。
公の場では大人の女性はマナーとして化粧をしなくてはいけないという考えを、お葬式にも適用しましょう。
具体的な化粧のポイント
それでは、お葬式にふさわしい具体的な化粧の方法について説明します。
どのパーツにおいても、基本的にはナチュラルメイクを心掛けることで、お葬式にふさわしい片化粧に仕上げることができるので、特にその点を意識して化粧をしていきましょう。
ベースメイク(ファンデーション・ハイライトなど)
ファンデーションは、ラメやパールなどが入ったツヤ感が出るものではなく、マットなものを使用しましょう。
肌に塗るときは、厚塗りせず、自然な印象に仕上がるように軽く塗ります。
ベースが厚塗りにならないように気を付けることで、その他の部分においてもナチュラルで自然な程度の化粧に抑えやすくなるため、ファンデーションを塗る際は特に気を配りましょう。
シミやクマが気になってどうしてもファンデーションを厚く塗ってしまうという方は、コンシーラーを使うとファンデーションの厚塗りを防げるのでおすすめです。
ファンデーションではなく、BBクリーム(化粧下地とファンデーション、コンシーラーなどを1本で兼ねた化粧品)とフェイスパウダーだけでベースメイクを仕上げても、カバー力を保ちつつ自然な肌になるので試してみてください。
また、ハイライトに関しては、使用するとどうしても健康的なイメージになってしまうため、お葬式では控えておくべきとされています。
眉(アイブロウ)
眉は薄すぎず、濃すぎず、自然な眉になるようにアイブロウを施しましょう。
眉の形に関しては、極端に角度のある眉や、短い眉、細い眉ではなく、緩やかなカーブを描いて適度に太さのある形にします。
できればペンシルタイプでなくパウダータイプのアイブロウを使用すると、柔らかい印象の、より自然な眉を描くことができるのでおすすめです。
眉の色は髪の色によっても異なりますが、黒髪や茶髪であればダークブラウンなどのブラウン系統の色を使うと自然な印象になります。
目元(アイシャドウやつけまつげ、カラコンなど)
基本的には目元の化粧はしないのがお葬式にふさわしい片化粧とされています。
どうしてもアイメイクをしたい場合は、アイシャドウのみにすると良いでしょう。
アイシャドウを使う場合は、ラメやパールが入っていないタイプのものを使用してください。
色味もブルーやピンク、パープルのような明るい色ではなく、ブラウンやベージュ系の色を選択し、あまり濃くならないように塗ります。
また、アイシャドウ以外にも何かアイメイクをしたいという方は、マスカラ程度の化粧に抑えておきましょう。
マスカラを塗る際は、まつげの長さが極端に伸びるようなマスカラではなく、自然な雰囲気を残したまつげを印象作れる普段使いのマスカラや、透明のクリアマスカラがおすすめです(※ただし、ツヤが出るものは避けてください)。
その他のアイラインやつけまつげ、アイプチ、カラコンなどはお葬式にふさわしくない化粧と考えられているので、できればしていかない方が良いでしょう。
万が一アイシャドウやマスカラにプラスして何かアイメイクをする場合は、華美な印象にならないように注意してバランスを見ながら化粧をすることを心掛けてください。
頬(チーク)
チークは一般的に、お葬式では使用を控えるべきと考えられています。
ただし、チークを使わないと顔色が悪く見えてしまうなどといった場合は、自分の肌に馴染みやすい色のチークを薄くぼかすようにして塗ってください。
その際は、頬に丸くチークを入れるのではなく、頬骨の辺りに少し斜めにしてチークを入れると大人っぽい印象になりますよ。
口(口紅やグロス、リップなど)
先ほど片化粧は紅をひかないと言いましたが、口紅をしないと顔色が悪く見えてしまうなどの理由から、最近は、鮮やかな色でなければ口紅をひいても構わないという考えが主流になってきています。
口紅を塗る際は、ラメやパールの入っていないベージュ系の落ち着いた色を選択し、塗ったあとにティッシュオフをしたり、指でぽんぽんとぼかしたりして、唇が浮いてしまわないようにしましょう。
グロスはどうしてもツヤが出てしまうので、たとえ色が薄いものであっても、お葬式では控えておいた方が無難です。
リップは、ツヤの出ないマットタイプのもので、落ち着いた色のものであれば着用して構いません。
ただし、あまりに色が激しい場合は、口紅と同様に少しティッシュオフするなどして肌になじませましょう。
爪(マニキュアやジェルネイルなど)
爪は、長さを整え、マニキュアなど、何も塗っていない状態で参列することが望ましいと考えられています。
そのため、自分で塗ったマニキュアであれば葬儀の前に必ず除光液で落としてから参列しましょう。
専門店で施してもらったジェルネイルに関しては自分で落とすことは難しいので、葬儀までに店に行く時間がないような場合は、黒いレースの手袋で手先を隠して参列することを強くおすすめします。
しかし、手袋をしていても、お焼香や精進落としをいただく際には手袋を外さないといけないので、完全に隠しておくことはできません。
それを防ぎたい場合は、少し強引な方法にはなりますが、ジェルネイルの上からベージュのマニキュアを塗ってその場をしのぐこともできます。
アセトンフリーの除光液を使えばジェルネイルを落とすことなく、上に塗ったベージュのマニキュアだけ落とすことができるので、その後も安心です。
その他(髪色や髪型、アクセサリー)
まず、髪色ですが、基本的には黒や茶色などの大人しい色合いで参列することが望ましいと考えられています。
そのため、金髪などの明るい髪色の方は、黒や茶色に染め直すか、スプレーを使って一時的に髪色を落ち着いた色にしましょう。
また、髪型に関しては、地域によって多少異なることもありますが、髪の長い方は耳より下でまとめ髪にしておくと確実です。
その際の髪ゴムや髪留めは黒や焦げ茶色など、目立たない色・デザインにします。
髪の短い方は、お辞儀をしたときなどに髪が落ちてこないように、黒や茶色のヘアピンなどで髪を軽く留めておくと尚良いでしょう。
アクセサリーなどの装飾品については、基本的には結婚指輪以外のアクセサリーは必要ないとされているので、何か身に着けていかなくてはと考える必要はありません。
どうしてもアクセサリーをつけて参列したい場合は、一連の真珠のネックレスか、真珠が一粒だけついたピアス(イヤリング)のどちらかを選択しましょう。
両方つけていきたいと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、葬儀に参列する際のアクセサリーは何か1点のみと考えられているので、ネックレスかピアスどちらかだけしか身に着けられません。
また、アクセサリーを身に着ける場合は、必ず金具がシルバーのものを選ぶ必要があります。
親族のお葬式での化粧はどうする?
故人の親族の場合であっても、すっぴんではなく、他の参列者と同様に片化粧を施さなくてはなりません。
状況によっては受付を任される場合や喪主になる場合など、他の参列者と関わることが多かったり、参列者の注目を集めたりする役柄になることもあるので、より注意して化粧をしておくことが大切です。
身内の方が亡くなってとても化粧どころではないかもしれませんが、親族の代表として他の参列者から見られる可能性もあるため、できるだけ気を引き締めて適切な化粧をしておきましょう。
中学生や高校生もお葬式での化粧は必要?
中学生や高校生については、化粧は必要ありません。
普段から化粧をしていて、お葬式でも化粧をしたいのであれば、中高生が化粧をしてはいけないというルールもありませんので、片化粧をしても構いません。
大学生(成年)の場合は、必ずとは言いませんが化粧をしておいた方が確実です。
お葬式の化粧はマナーを守ってナチュラルに
以上、お葬式での化粧について説明しました。
化粧はその人の個性を表すことのできる素敵な手段ですが、一般的なお葬式に参列するにあたっては個性を表現する化粧よりも、故人や故人の親族を思って、落ち着いた化粧を選択する方が良いでしょう。
これからお葬式に参列することがあったときには、この記事を思い出していただき、故人を偲ぶ化粧をしていただければと思います。