人が亡くなるのは急でも、家族であればしなければならないことが多くあります。
また、お葬式の準備などは一生のうちに何回もすることではないので、慣れているという人も少ないでしょう。
家族が亡くなることを考えるのは縁起も悪く気も進みませんが、事前に何をする
1.臨終~遺体安置までの流れ
まず最初に、臨終してから遺体を葬式までの間安置する流れです。
危篤になったらするべきこと
家族が危篤になったら以下のことを行いましょう。
関係者への連絡
まず親族への危篤の連絡は3等親までを目安に行います。
しかし3等親でなくても危篤者と親しい人には連絡すべきこともあり得ます。
連絡方法は電話連絡が基本で、時間帯は深夜でも、早朝でもこの場合は許さます。
次の内容を伝えてください。
・危篤者の氏名
・病名と状態
・現在の居住場所(病院であれば病院名、部屋番号)
・連絡先
危篤者の着替えの用意
病院に入院している場合は病衣を着ていますから亡くなった後にきれいな服で自宅に迎えたい場合はその服を用意します。
入院費の準備
病院にもよりますが、退院時に入院費の精算が必要な場合もあります。
さらに、交通費や家族、親族、危篤者の知り合いとの飲食代などのために、ある程度の現金を用意しましょう。
危篤者の銀行口座から必要な資金の引き出し
危篤者の逝去が金融機関に知られると、故人の口座は凍結され、遺産分割が終わるまでは家族であっても引き出すことができなくなります。
ですから、必要になるお金があれば、危篤者の口座の中から事前に引き出しましょう。
なお、金融機関に逝去の情報が入る方法は、町内会の掲示板などですが、死亡届を提出した役所から金融機関に連絡が行くことはありません。
葬式を依頼する葬儀業者の決定
葬儀業者は病院から連絡が行く場合もありますが、そうなると費用が言い値になってしまいます。
そうならないためには事前にインターネットなどで調べて、相見積もりを取るなどをしておいた方がよいでしょう。
臨終したら行うこと
残念ながら逝去した場合は、以下のことを行います。
臨終した場所によって対応が異なる
病院で逝去した場合は、医師がいてほとんどの場合は死因がわかりますから、医師がすぐ死亡診断書を書いてくれます。
死亡診断書は役所に届ける場合に必要になるので、必ずもらいましょう。
遺体はまずは病院の霊安室に安置され、そこから自宅に運びます。
運ぶところから葬儀業者に頼む必要がありますから、すぐに連絡します。
仮にすでに病院の方で葬儀業者に連絡している場合は、そのまま葬式まで頼んでもよいですが、そうしたくない場合は搬送だけを頼みましょう。
ただし明確に「搬送だけ」と葬儀業者に伝えることが必要です。
病院への支払いをしますが、医師や看護師へのお礼は基本的には不要です。
ただし特にお世話になった場合は、後日訪問して心づけを渡しても失礼にはなりません。
しかし最近は金品を受け取らない規則になっているケースもありますから、その場合はナースステーションに菓子折りなどを届けましょう。
自宅で逝去した場合は、医師が立ち会っていれば病院と同様に死亡診断書を書いてもらえます。
医師が立ち会っていなくても死亡診断書は必ず必要なので、すぐに主治医に連絡し、来訪の上、死亡確認をしてもらいましょう。
主治医が不在の場合は、別の医師か、近隣の病院の医師でもかまいません。
医師の段取りがつかない場合、または家族の不在時に1人で逝去した場合は、110番で警察医を呼びます。
どの場合も、医師による死亡確認がなされるまでは遺体に手を触れたり、遺体を動かすのはNGです。
ただしまだ息があるかどうか分からない場合、生き返る可能性がありそうな場合は、119番で救急車を呼びましょう。
旅行先や家族と離れた場所で逝去した場合は、遺体のまま搬送するか、現地で火葬まで行います。
どちらの場合も現地の葬儀業者に頼むことになります。
臨終時の儀礼
仏教の場合は、臨終時には以下のことをします。
・末後の水:ガーゼや脱脂綿を割り箸の先に巻いて水を含ませ、故人の唇を水でうるおします。
・清拭(せいしき):看護師または葬儀業者に身体を拭いてもらい、鼻などにガーゼなどを詰めてもらいます。
・着替え、死化粧:故人に着せたい服があれば、看護師または葬儀業者に渡します。
キリスト教の場合は、教会に連絡して「病者の塗油の秘跡」というものを行ってもらいます。
葬儀業者への連絡
遺体の搬送以降の葬式全般を依頼する葬儀業者に連絡します。
寺院、教会への連絡
寺院、教会へ連絡して通夜以降のことを頼みます、その際に故人の菩提寺や、登録している教会を知らないと困るので、事前に確認しておきましょう。
葬儀日程、時間、葬儀斎場の決定
寺院、教会および葬儀業者と葬儀の日程と葬儀斎場、葬儀後の通夜振る舞いの斎場を打合せします。
混乱を招かないためにも、明確に決めておきましょう。
今日亡くなったらいつ葬式にするべきか
葬儀日程を決める場合は、以下に注意しましょう。
・火葬場の空き状況
・法要を行う僧侶、神父、牧師の予定
・参列親族の予定
・地域の習俗
また臨終後の葬儀の一般的なスケジュールは以下の通りです。
・逝去当日:遺体を安置し1晩過ごす
・2日目:通夜(18時頃からで合計1時間程度、その後「通夜振る舞い」という故人を偲ぶ会食をすることが多い)
・3日目:告別式、火葬(告別式は10時から2時間程度。その後火葬場に移動し、火葬後自宅に戻るのが15時頃)
なお、六曜の「友引」に葬儀を避ける風習もありますが、六曜は仏教などと関係ないものなので、本来は気にする必要がありません。
ですが、火葬場が友引を休業日にしている場合や、親族に気にする人がいる場合は留意しましょう。
関係者へ訃報の連絡
逝去したことを関係者に連絡します。連絡範囲の基準は以下の通りです。
・家族、親族関係:故人の兄弟姉妹、叔父、叔母、孫、甥、姪
・交友関係:友人知人、所属していた趣味の会
・会社関係:勤務先、定年退職した勤務先、親しい取引先
・地域関係:自治会、町内会
遺体の搬送
臨終後は1時間程度で遺体の処置や儀式を行い、その後いったん霊安室に安置後、以下のいずれかへ搬送します。
・自宅
・斎場または葬儀社のホールや霊安室
・火葬場の霊安室
役所への届け出
火葬までに役所が発行する「火葬許可証」を準備する必要があります。
火葬許可証は、医師の発行する死亡証明書を添付して役所に死亡届出をすると発行されます。
喪主が行く必要はありませんので、他の親族に頼んでもいいでしょう。
2.遺体安置~納棺~通夜までの流れ
次に上記へ搬送して以降の通夜までの流れです。
自宅安置をした場合
斎場または葬儀社のホールや霊安室、あるいは火葬場の霊安室に安置した場合は任せておけばよいですが、自宅安置の場合は以下のことを行います。
・枕飾り(燭台、花瓶、水、鈴、香炉、一膳飯)を枕元へ供える
・遺体は仏間か座敷に、頭が北を向くように安置する
・敷布団や掛け布団は1枚にして、遺体が温まらないように注意する
・枕は低すぎると口が開いてしまうので注意する
納棺の儀
翌朝になったら納棺を行います。
納棺とは
納棺とは、その文字の通り遺体を棺に納めることです。
納棺の際には、遺体を整え死装束を着せます。
タイミングは、多くの場合は遺族や親族が揃ってからなので、逝去翌日の通夜の前です。
納棺時の準備
納棺は葬儀業者がしてくれます。
以前は、故人には「足袋、脚絆、手甲、頭陀袋、数珠、経帷子、三角布、笠、草履、杖」といった死装束を着せるのが一般的でしたが、最近は寝間着や洋服、着物などを着せることも増えています。
他に故人に着せたい服があれば葬儀業者に渡しましょう。
副葬品として一緒に納めてはいけないもの
棺の中には故人の愛用品などの副葬品を入るのが普通ですが、燃えないもの、燃えにくいもの、有毒ガスを発生するものはNGです。具体的には以下のものです。
・腕時計、指輪、メガネ、カメラ、硬貨などの金属製品
・アルコール類
・化粧品、鏡などのガラス製品
・ライターや電池などの爆発物
・ハンドバッグ、靴、おもちゃなどのプラスチック製品
・化学合成繊維の衣服
・発泡スチロール、CD、ゴルフボールなども燃えないないもの
・果物などの水分が多いものや分厚い書籍、大きなぬいぐるみなど燃えにくいもの
・釣り竿、杖、ゴルフクラブなどのカーボン製品
・生きている人が写っている写真
もしも故人の愛用の品で上記に該当するが副葬品にしたい場合はそれを写真に撮って納棺しましょう。
3.通夜~告別式までの流れ
次に通夜から告別式までの流れです。
お通夜の流れ
通夜とは
通夜は、故人と最後の過ごし、永遠の別れを惜しむ場です。
時間的には夜18時頃から開始し、1時間程度で行う「半通夜」が一般的です。
また近親者だけで夜通し行うもの「仮通夜」と言います。
通夜の一般的な流れ
通夜から公式な葬儀が始まりますから、以下をよく読んで手抜かりがないようにしましょう。
1.供花の確認
まず最初に行うのは供花(きょうか)という故人や遺族の親しい人から届く花をの贈り主を後日のお礼のために確認することと、葬儀斎場での供花の配列の順番、および葬儀の進行について葬儀業者と打ち合わせることです。
供花の順番は一般的には、喪主から始まって血縁の近い順ですが、しかし会社関係から来た場合はそちらを優先させた方がよいこともあるので注意しましょう。
判断できなければ葬儀業者に聞きます。
2.会葬礼状と返礼品の確認
会葬礼状と返礼品の確認をします。
これは、通夜斎場の受付で弔問客の香典を受け取った際に渡すものですので、葬儀会社の用意してくれる会葬御礼状と、返礼品を手提げ袋などに入れて準備します。
なお、返礼品とは別に香典返しというものがありますが、これは忌明けに間に合うように準備すれば大丈夫です。
香典返しは香典の額の半額または1/3程度の現金または商品を返すことです。
以前は香典返しは後日行っていましたが、その煩雑さを防ぐために最近では当日に、返礼品と一緒に、全員に対して同じ品物を返すケースも増えています。
ただし高額の香典を頂いた場合は、忌明けの直後に香典金額にふさわしいものを返した方がよいでしょう。
3.弔問客の対応
夕方17時ころから弔問客が訪れてきます。
受付も誰かに頼まなければなりませんが、これはケースバイケースで、親族のうち故人と血縁が遠い人、近隣の人、会社関係の場合が多いです。
誰に頼んだ場合も、通夜が始まる前に受付に行って受付のお願いと感謝の言葉をきちんと伝えましょう。
場合によっては心付けが必要なこともあります。
受付では弔問客に名前、住所、連絡先を芳名帳へ書いてもらいます。後日連絡する場合もあるので忘れないようにしましょう。
香典は会計係に渡し、中を開けて金額を名前とともに一覧にしてもらいます。
その際、芳名帳と香典一覧があとで一致させやすいように、同じ通し番号をつけておくと便利です。
4.親族着席
通夜開始前15分になったら親族が着席します。着席する場所は、祭壇に向かって右です。
喪主を先頭にして故人と血縁が近い順が一般的です。
5.会式
通夜の進行では、遺族の着席のタイミングや、弔問客への挨拶の仕方、各宗派の正しい焼香の仕方などが案内されます。
6.導師入場・読経・法話
導師が入場します。
導師とは故人を送り出す僧侶、神父、牧師のことです。
仏教の場合は、その際に一同起立し、合掌で迎えます。
いずれの場合も葬儀業社が担当する司会から案内があります。
導師の読経が通夜の最初でだいたい30分から40分かかります。そのあとは導師からの法話です。
7.焼香
そのあと焼香です。焼香の順番は最初に遺族、そして親族、弔問客です。
8.導師退場・喪主の挨拶
焼香が終わると導師が退場し、喪主が通夜挨拶を行います。内容は参列へのお礼でよいでしょう。
9.閉式・通夜振る舞い
挨拶後に司会から通夜の閉式と、用意していれば通夜振る舞いの案内があります。
通夜振る舞いには喪主を含め遺族が出席する場合としない場合がありますから、これは地域の習俗に従いましょう。
告別式の流れ
多くの場合は通夜の翌日は告別式です。告別式の流れは以下の通りです。
1.告別式の準備
告別式の斎場は通夜と同じ場合がほとんどです。
ただし、通夜を自宅で行い、告別式は斎場で行う場合は、告別式の開始前に設営を確認する必要があります。
また喪主、親族は、告別式後すぐ火葬場に移動できる準備をしておきましょう。
告別式の場合も通夜と同様、葬儀業者との事前確認を忘れないようにしましょう。
2.日受付
告別式にも受付があります。
通夜と告別式の両方に参列する人は少ないので、ここでも通夜と同様に、会葬礼状と返礼品を渡し、芳名帳に記入してもらいます。
受付を担当する人への挨拶を忘れないようにしましょう。
3.告別式の開始
告別式も通夜と基本的にはは同じ流れですが、違う点は告別式の時には弔辞を述べてもらうことと、弔電の紹介をすることです。
弔電の紹介は葬儀業者に任せておいて大丈夫ですが、弔辞は誰に頼むかは遺族が決めなければなりません。
故人の親友、会社の上司など故人と親しい人、社会的に地位の高い人に喪主から頼むようにしましょう。
さらに弔辞、弔電のあと、僧侶が再び読経し、その最中に焼香が始まり、それが終わると司会から閉式の辞があります。
その後一般参列者は斎場外で出棺を見送り、遺族と親族は斎場内で出棺のためのお別れの儀に臨みます。
4.出棺~火葬までの流れ
告別式のあとは出棺と火葬です。
流れは以下の通りです。
出棺の流れ
まず出棺までの流れです。
1.お別れの儀
告別式の直後に、遺族、親族、親しい友人による「お別れの儀」が行われます。
別名を別れ花、釘打ちなどとも言います。
流れは、祭壇の前に棺を降ろして全員で囲み、葬儀業者の案内で花を棺のなかに入れ、遺体を飾ります。これが別れ花です。
一緒に火葬する副葬品もこのタイミングで納めます。
その後棺の蓋を閉じ、釘を石で打って棺の蓋を固定します。これが釘打ちです。
2.棺の搬出
お別れの儀のあと、親族、親しい友人の中の男性6人で、棺を斎場から霊柩車へと搬出します。
そのあとに、位牌を持った喪主、遺影を持った遺族が続きます。
3.喪主の挨拶
すべてが整ったら、喪主と遺族は参列者に対面して立ち、喪主が参列者に挨拶します。
内容は参列のお礼、故人の生前のお付き合いへのお礼、遺族の思い、今後の遺族への支援のお願いなどです。
4.出棺
挨拶後に、喪主、遺族は一礼し、出棺です。
僧侶および遺族、親族、親しい友人が、多くの場合は葬儀業者が用意した車、バスなどに分乗方法して火葬場へ向かいます。
出発直前に霊柩車が長いクラクションを鳴らして惜別を示します。
火葬の流れ
出棺して次に行うの火葬です。その流れは以下の通りです。
1.火葬場で行う手続き
ここで必要になるのが、役所に死亡届を出した際に受け取った「火葬許可証」です。
これを火葬場に提出します。火葬後に、火葬許可証に火葬済証明印が押され、これが納骨時に必要な「埋葬許可証」になります。
また分骨をしたい場合は、葬儀の前に葬儀業者の担当者に伝えておくと、小さい骨壺や錦袋を火葬時に用意してくれます。
2.納めの式
火葬前に炉の前で「納めの式」を行います。
流れとしては、位牌と遺影を祭壇に飾り、僧侶が読経と焼香を行い、葬儀と同様の順番で喪主、遺族、親族、親しい友人が焼香をします。
3.火葬
その後、棺を炉に納めて火葬になります。
火葬にはには40分~2時間程度かかります。その間、同行者全員が火葬場の係員が誘導する控え室で待機します。
その際に食事をする地方もありますので、葬儀業者に確認しましょう。
4.収骨
火葬終了の案内があったら炉の前に戻って収骨をします。
収骨とは別名「骨上げ」ともいう、遺骨を骨壺に納めることです。
遺骨の足の方から順に頭部に向かって2人1組で箸で遺骨を拾い、骨壺に納めます。この際に東日本ではすべての遺骨を骨壺に納め、西日本では一部だけ納め、残りは火葬場で処分します。
収骨が済んだ骨壺は白木の箱に入れ、それを布で包みます。
5.遺骨の安置
このあと自宅に戻るか菩提寺に行くかして、遺骨を四十九日の法要と納骨まで安置します。
火葬後は、全員が自宅または菩提寺まで行く必要はありませんから、葬儀業者の指示に従って、分乗した車別に近隣の交通機関まで同行者を送るようにしましょう。
以上までで臨終から葬式までの一連の葬送儀礼が終了します。
まとめ
臨終から葬儀まで遺族がしなければならないことのイメージが湧いたでしょうか。
することは多く大変そうですが、このうち告別式から火葬までの葬儀自体については葬儀業者に依頼してしまえば、あとはほぼお任せで大丈夫です。
遺族がしなければならないのは、まず葬儀業者を決めることと、葬儀までの段取りを整えること、および葬儀にまつわる通夜振る舞いなどのおもてなしの内容を決めることです。
これらは遺族がうっかりしていると、参列者にもあるいは故人にも失礼になるので、抜けがないように注意しましょう。