葬式は多くの場合、比較的突然やってくるものです。
長く病いの床に就いている場合でも、葬儀のことを事前に考えるのは縁起でもないのでしないことが多いでしょう。
そのためいざ葬儀ということになると、その段取りにバタバタとすることが多いのです。
たとえば、誰に受付をしてもらい、どこで香典返しを用意し、そもそも葬儀の会場はどこにするのか、というようなことです。
今回の記事では、事前に考えておきたい段取りの一つ、葬儀の受付を誰に頼めば妥当で常識的なのか、そしてそのお礼などはどうしたらよいのか、という点について解説していきます。
目次
■葬儀の受付を近所の人や会社の人に頼んだ場合のお礼は
お礼は翌日~2日後までに行う
服装は喪服で伺う
お礼の品はお金か実用品で
└実用品の場合は何がいい?
└現金の場合の渡し方
└お礼の相場はどれくらい?
■葬儀の受付の方法
まずは受付の準備から
芳名帳の書き方
返礼品の手渡し
参列者への受け答えの基本話法
受付を担当した場合の注意点
└香典の扱いに注意
└会場のことを知っておこう
└忘れがち!?焼香は先に済ませておこう
└お供えや弔電が届くことも
└受付をするときの服装は?
└冬は防寒をしっかりと
葬儀の受付は親族、孫、嫁?
受付は誰がするべき、誰がしてはいけない、というルールはありません。
しかし通常は、喪主の友人、会社関係の同僚や部下、自宅の近所の人、従兄弟などの少し遠い親戚に頼むというケースがほとんどです。
逆に故人の親、子、孫、嫁などの直系家族は、葬儀会場で参列者を迎える立場ですから、受付などの事務的な役割は担いません。
葬儀の受付がいない場合、代行を頼める?
しかし様々な事情で、受付を頼める人が1人もいない場合もあります。
そのような場合には、受付代行を頼みましょう。
受付代行は多くの場合、葬儀社のオプションサービスに入っていますから、葬儀社との打合せ段階で、受付代行が可能かどうかも相談しておけば大丈夫です。
そしてもしも仮にその対応がない場合でも、世の中には「便利屋」というビジネスを行っている会社がいくつもありますから、そういったところに打診してみましょう。
葬儀の受付を近所の人や会社の人に頼んだ場合のお礼は
葬儀会社のオプションサービスで受付代行を頼んだ場合は当然その分の費用の上乗せがありますが、これが近所の人や会社の同僚、部下に頼んだ場合、お礼はどのように考えたらよいのでしょうか。
お礼は翌日~2日後までに行う
まず、受付ではなく、葬儀でお世話になった、世話役代表や葬儀委員長には、葬儀の翌日か翌々日に挨拶に伺い、お礼を言い、心付けや品物を贈るのが常識です。
そのほか弔辞を述べてくれた人や、自宅で葬儀をした場合は大勢の弔問客や車両の出入りで近隣に迷惑をかけるので、隣近所にも必ず品物を持って挨拶に行きましょう。
時間がなくて2日後までにいけない場合でも、最低初七日までには必ず行くのが重要です。
そして受付などの事務的なことをしてくれた人や、あるいは参列後の会食の仕出しの手伝いをしてくれた人などにも、そのあとには必ずお礼の金品を渡しましょう。これも初七日までには済ませたいところです。
服装は喪服で伺う
お礼に伺う時には、特に重鎮が相手の場合は、前もって電話で訪問することを伝え、先方の都合の良い日時に合わせることがマナーです。
服装も、原則は喪服です。ただし最近はそのあたりのルールが緩くなってきていますから、男性であればダークスーツに地味な色のネクタイ、女性は落ち着いたスーツかワンピースでもよいでしょう。
受付などをしてくれた人に対しても、挨拶に伺うのであれば基本は同じ考えです。
喪服まではいかなくても、カジュアルな私服は避けるべきでしょう。
お礼の品はお金か実用品で
お礼の金品は、現金か家で日常的に使える実用品が望ましいです。
間違っても、装飾品など趣味によって好悪が異なるものは止めましょう。
実用品の場合は何がいい?
お礼に実用品を贈る場合は、菓子折やタオルなどが一般的です。
品物の包装の表書きは「志」です。会社関係の場合は、個人個人に渡さなくても、みんなで食べられる菓子折にして、「御礼」と表書きをしてもOKです。
品物に迷った場合は、カタログの中から自分の好きなものを選べるカタログギフトが最近では多くなっています。
世話役代表、葬儀委員長、お手伝いの人、それぞれの相場に合わせたカタログが用意されていますので、便利です。
支払いは、カタログを見て注文された品数の合計で精算する場合がほとんどです。
現金の場合の渡し方
しかし最近は、葬儀も人間関係もドライになってきていて、葬儀を手伝ってくれた方へのお礼は、現金にする場合が増えています。
日頃から親しい人へのお礼の場合には、白無地の封筒に「寸志」と表書きして渡します。相手が目上の場合は、表書きを「御礼」とします。
下に家名も入れましょう。
世話役代表や葬儀委員長には直接手渡しが必要ですが、それ以外の受付を含めたお手伝いの人には、誰か代表に渡して、配ってもらってもかまいません。
お礼の相場はどれくらい?
お礼の相場は、全体で2,000円~1万円程度ですが、受付役の場合は、3,000円~5,000円が相場です。
ただしこれは地域によっても、家格によっても違いますから、迷った場合は親戚の詳しい人に相談しましょう。
葬儀の受付の最低人数は何人?
受付の最低人数は3人です。役割分担としては、芳名帳に書いてもらう係、返礼品を渡す係、会計係です。
ただし多くの弔問客が訪れる可能性のある場合は、芳名帳が1冊では渋滞してしていますから、数冊用意しましょう。
そして芳名帳1冊につき1名の担当が必要です。
会計係は基本的には1人にしておいたほうが、管理と責任の所在が明解なので好ましいです。
複数になると、相手に任せたつもり、しかし一方は言われていない、などのトラブルの元です。
葬儀の受付の方法
では受付を頼まれた場合はどのようにすればよいのでしょうか。
以下、通夜、告別式に共通した葬儀の受付の段取りをご紹介します。
まずは受付の準備から
受付の最初の仕事は、受付コーナーを作ることです。
受付には長テーブルを置き、参列者の住所、氏名を書いてもらう芳名帳、芳名帳に記入するための黒のボールペンかサインペンなどの筆記用具、香典受けをそのテーブルに並べます。
受付準備は葬儀開始の30分前には完了している必要があります。
したがって受付を頼まれたら、早めに行って準備を始めましょう。
芳名帳の書き方
芳名帳には芳名帳への書いてもらい方、書いてもらう必要のある情報があります。
まず必要な情報は住所と氏名です。
その際にはフルネームと、正式な住所を書いてもらわないとあとで挨拶状が出せませんから注意してください。
香典袋に苗字のみ記入している人の場合でも名前を聞き、フルネームになるように名前を書き足しておきましょう。
代理の立場で芳名帳に記入してもらう場合は注意が必要です。
会社などの代表で参列する場合は、会社名と会社の住所を書き、その下に代表と書いて、参列した代表者の名前を書いてもらいます。
上司の代理できた場合は、会社名、会社の住所、上司の名前、そしてその脇に代理として、自分の名前を書いてもらいます。
また妻が代理で参列する場合も少し複雑です。
まず夫の仕事関係、知人の葬儀への参列の場合は、夫の名前を記入し、下に「内」の文字を加えます。
親類の葬儀に参列する場合は、自分と夫の両方の名前を記入します。
また芳名帳のほかに別途香典帳を1冊用意しておいて、そちらに香典袋の「記載名」を書いてもらいます。
芳名帳には記名欄にナンバリングをしておきましょう。
そしていただいた香典袋にそのナンバーを記載すれば、あとで照合がしやすく大変便利です。
返礼品の手渡し
芳名帳に名前を書いてもらったら、香典を受け取り、返礼品を渡します。
返礼品とは、香典返しと会葬礼状がセットになったものです。
香典を受け取ったら、その時に「ありがとうございます」といい返礼品を渡しましょう。
参列者への受け答えの基本話法
以上が受付の事務的な流れですが、受付の立場はあくまで喪主の家の代理ですので、いつも以上に対応は丁寧にしておく必要があります。
無礼な対応は喪主の恥になり、問題が大きくなりますから注意しましょう。
そのためには、参列者への挨拶をしっかりすることが大切です。
基本は受付に参列者が来たら、まず、「本日はお忙しい中お越し下さいましてありがとうございます」と言います。
更に雨天の日などであれば「本日は足元の悪い中いらしていただいてありがとうがざいます」と言うと丁寧です。
そして香典を受け取った際には「ありがとうございます」「お預かりいたします」と添えましょう。
受付を担当した場合の注意点
以上が受付の仕事の概要ですから、基本的には丁寧さだけ注意すればさほど難しくありません。
ただし、香典というお金を扱う場所であり、同時に喪主の代行ですから、その点については十分な注意が必要です。
香典の扱いに注意
香典は現金です。したがって取り扱いには十分な注意が必要です。
会計係を1人決めたら、その人はほかの仕事をしないで、現金をしっかり管理するようにしましょう。
特に葬儀のバタバタした時を狙っている香典泥棒が現れることもあるので、会計係は絶対にその場を離れてはいけません。
ここで香典袋を開け金額を確認するかどうかは喪主の考えによります。
金額確認も含めて依頼された場合は、袋から現金を出し、名前と金額を書いた一覧を作り、その合計と現金の合計が一致するようにしておきましょう。
会場のことを知っておこう
受付係は、受付と同時に会場の案内係の役目も担っています。
ですから、受付を頼まれたら、葬儀が始まる前に、葬儀場の入り口やトイレの場所、喫煙場所などを確認しておき、尋ねられた場合は案内できるようにしておきましょう。
忘れがち!?焼香は先に済ませておこう
受付係は、葬儀が始まると焼香できません。
従って葬儀が始まる前に焼香が必要です。受付の準備の前に「お先に焼香をあげさせてもらいます」と一言喪主に挨拶し、焼香しておきましょう。
お供えや弔電が届くことも
葬儀中には弔電や供花などの届け物が届く場合もあります。
それらはすべて受付を通るので、届いたらまず相手の名前を確認し、未記入であれば記入して、葬儀社などの担当に渡しましょう。
受付をするときの服装は?
受付係の服装は、基本は葬儀の参列者と同じで問題ありません。
男性であれば黒のスーツに白シャツ、黒のネクタイ、黒い靴、女性であれば黒いワンピースなどがTPOに合致しているでしょう。
光沢のあるネクタイや靴、バッグやアクセサリーなど派手な持ち物は控えるべきです。
女性の場合は、受付の仕事の一環で頻繁に動き回ることが多いので、ヒールはあまり高くないほうがよいでしょう。
ヒールの高さは最高でも5センチくらいまでに抑えます。
また数珠も忘れないようにしてください。
冬は防寒をしっかりと
受付は葬儀場の入り口に近い、室外に設けられることが多いです。
したがって冬の葬儀の場合は、とても寒いです。
受付を頼まれた場合は、コートを着るわけにはいきませんので、カイロなどを背中に貼るなど、防寒対策をしっかり行いましょう。
家族葬にも受付けは必要か
家族葬は、親族や親しい友人のみが参列しますので、参列者は少ない場合がほとんどです。
しかしだからと言って受付が不要かというとそうではなく、少なくとも参列者が10名~15名程度見込まれる場合は設けたほうがよいでしょう。
でなければ香典を誰に渡せばよいのかもわからず、喪主に直接渡すなどのことになると、ただでさえ忙しい喪主が一層大変になります。
また葬儀ではなく、三回忌などの法事の場合でも、故人の生前のポジションによっては多くの参列者が訪問しますので、その場合も受付は設けた方がよいでしょう。
まとめ
受付の仕事自体はシンプルですから、友人、会社の同僚や部下、近所の人などに頼んで問題がないものです。
ただし、仕事内容は現金を扱うこともあって意外に重要ですから、あまりいい加減な性格の人には頼まないほうが無難です。
事務処理がしっかりしていて、きちんと挨拶ができる人を選んで頼みましょう。