不幸にして肉親のお葬式を執り行うことになり、自分が喪主側になった時、遠方から駆けつけてくれる親類縁者や故人の友人がいるかもしれません。
これが結婚式であれば、こちらか招待状を出しますので「招待」ということでその交通費や宿泊することになった場合の費用はこちら持ちが常識的です。
しかし、先方の好意として葬儀に参列してくれた場合、その交通費や宿泊代はこちらで持った方がマナーに適っているのでしょうか。
ここではその悩みがちな質問について一発回答します。
目次
■遠方からの葬儀参列の費用は自費?喪主負担?
・葬儀参列のための交通費、宿泊費用は原則として自費
・葬儀場に近い宿泊施設の手配は喪主側で
・自宅やお墓からの近さでなく、交通の便のよい葬儀場を選ぶ
■遠方から参列してもらった人へのお礼はどうする?
・お車代などを渡すのはかえって失礼
・遠方から来てくれた親族には感謝の言葉を
・遠方からの参列者にはお中元、お歳暮でお返しを
・遠方の葬儀参列者の香典は辞退すべきか?
■自分が遠方の葬儀に参列しなければならなくなった場合は?
・遠方の親族の葬儀に欠席するのはマナー違反?
・葬儀に欠席する場合の失礼にならない伝え方は?
・香典だけでも渡したい場合は
└1.香典を他の参列者に託す
└2.香典を郵送する
└3.香典を後日手渡す
遠方からの葬儀参列の費用は自費?喪主負担?
まず結論から触れましょう。遠方から葬儀に参列してくれた場合の交通費、宿泊代は誰が持つのが常識なのでしょうか。
葬儀参列のための交通費、宿泊費用は原則として自費
結論的に言えば、葬儀への参列は「招待」ではなく、先方の自主的な意思によるものです。
したがって、葬儀に参列する際の交通費も宿泊代も、原則として参列者の自費負担です。
冒頭で触れましたが、これが結婚式などの慶事であれば、「自分のお祝いのために招待して出席してもらう」ので、交通費や宿泊代も含めて、出席していただいたお礼の気持ちを込めて「お車代」などの名目で負担するの常識的です。
しかしお葬式や法要などの弔事は「遺族を含め哀悼の意を持った人が自主的に集まる」場です。
したがって、交通費や宿泊費は自分の意思で参列数するので、自己負担するのが一般的です。
葬儀場に近い宿泊施設の手配は喪主側で
交通費や宿泊代は参列者の自費が原則ですが、宿泊施設の手配は喪主側ですることもあり得ます。
宿泊可能な葬儀場であればその旨を伝え、そうでなければ喪主が葬儀場近くの宿泊施設を先方の名前で予約するなどします。
遠方からの参列者の場合、葬儀場やそこまでの交通事情などの土地勘がありません。
宿泊施設の予約は土地勘のある喪主側で、交通の便が良く、葬儀場に近く、なおかつ宿泊代が常識的なホテルなどを取っておくと無難です。
自宅やお墓からの近さでなく、交通の便のよい葬儀場を選ぶ
交通費や宿泊代を喪主側で負担しないとしても、参列者の参列しやすさを考慮しましょう。
たとえば、葬儀場はお墓に近い、自宅に近いなどの喪主側の都合ではなく、新幹線の主要駅から近い、行く手段に乗り換えなどがなくわかりやすい、近隣に宿泊施設が多数あって予約がしやすい、などの利便性の良い場所を選ぶ方がベターです。
遠方から参列してもらった人へのお礼はどうする?
しかし現実問題で言えば、遠方から交通費も宿泊代も自己負担で葬儀に参列したくれた人に対して、それは参列者の意思だからと割り切れず、自己負担を当然だと考えることができない場合も往々にしてあります。
それは相手の金銭も含めた費用負担の問題の場合だったり、後々に親類内でこちら側が非常識に思われそうな場合もあるでしょう。
そういった場合、参列のお礼はどうすればいいのでしょうか。
お車代などを渡すのはかえって失礼
その時に1番気を付けなければいけないのは「葬儀参列の費用は自己負担が常識」ということを参列者が認識している可能性が大いにある点です。
その場合にも関わらず交通費や宿泊代相当分を、どのように丁寧であっても、こちらから渡してしまうと、相手が金銭的に余裕がないメッセージになってしまい、返って失礼に思われてしまう危険があります。
遠方から来てくれた親族には感謝の言葉を
では交通費などを渡す代わりにどうしたらよいのかというと、精一杯誠意を伝えるしかありません。
具体的には、遠方からわざわざ葬儀に参列してくれた人には
「本日はお忙しいところ、はるばる遠方から××の葬儀(告別式)にご会葬くださり本当にありがとうございます」
というお礼を言うことです。
あるいは、そのお礼の言葉に
「足元のお悪い中」
「ご体調がすぐれない中」
などと相手を気遣う言葉を添えられればさらによいでしょう。
遠方からの参列者にはお中元、お歳暮でお返しを
そしてそれでもこちらの気持ちが済まない場合は、その感謝の気持ちをお中元やお歳暮でお返ししましょう。
ただしその品物の価格は、相手の負担した交通費や宿泊代を推測して、最大でもその同額程度、通常であればその半額程度のものにするべきです。
またそうしたほうが、香典以外の金品を葬儀中に手渡すことがありませんから、葬儀のバタバタしている中煩雑なやり取りがなくて助かる、という利点もあります。
遠方の葬儀参列者の香典は辞退すべきか?
また、遠方から交通費をかけて参列してもらった場合、その費用との相殺の意味で香典を辞退する、というのはマナー違反になりますから注意しましょう。
香典は故人に対する相手の追悼の気持ちがこもっている金銭ですから、いただかないことはその気持ちを受け取らない、ということになって返って失礼に当たります。
自分が遠方の葬儀に参列しなければならなくなった場合は?
では自分が参列者として遠方の葬儀に参列する場合は、どうしたらよいのでしょうか。
遠方の親族の葬儀に欠席するのはマナー違反?
まず1つの選択肢として、あまりに遠方で執り行われる葬儀の場合は、欠席するという方法もあります。
基本的に、遠方の場合は欠席してもマナー違反にはなりません。
ただしその代わりに哀悼の意を伝えるための、弔花、弔電などは必ず送り、こちらの哀悼の気持ちと参列できなかったお詫びの気持ちを伝えましょう。
さらにできればその気持ちを、初七日などの法要が終わって相手がひと段落したころに、電話で伝えればよいでしょう。
葬儀に欠席する場合の失礼にならない伝え方は?
ただし非常に近しい親類縁者の葬儀の場合や、過去同様の例があった時に皆自己負担で参列していたという実績がある場合は、遠方だからという理由で葬儀を欠席することには躊躇するでしょう。
それでも自分の気持ちとして参列が億劫に思えたり、費用の負担が厳しいという場合は、訃報を聞い段階で時点で欠席する旨を喪主に電話で連絡しましょう。
しかしその際に欠席の理由を正直に「遠方だから」などと言うと、葬儀よりも費用が大切だとこちらが判断したということが伝わって、相手に対し大変失礼になります。
理由は以下のようにお伝えしましょう。
・「やむを得ない事情があるので」
・「どうしても仕事の関係で都合がつかなくて」
・「このところ体調がどうしてもすぐれなくて」
香典だけでも渡したい場合は
遠方なので葬儀は欠席するにしても、故人への気持ちや、遺族への気持ちから、香典だけは届けたいという場合もあるでしょう。
その場合には以下の3つの方法で届けるようにしましょう。
1.香典を他の参列者に託す
1つの方法は自分の家の近隣に住んでいて今回の葬儀に参列するつもりでいる人や、葬儀に参列する会社の上司、同僚に香典を託して、代理で渡してもらう方法です。
その際には香典の渡し主が自分であることがきちんと伝わるように、香典の中袋に自分の住所と氏名を明記することを忘れないようにしましょう。
2.香典を郵送する
2つ目の方法は、香典を現金書留で相手に郵送する方法です。
しかしこの場合、現金だけを書留封筒に入れて送ることは大変失礼に当たります。
ですからその場合は、哀悼の気持ちを伝える一筆を自分の直筆で書き、それを現金に同封するようにしましょう。
ただしこの方法では、香典以外に現金書留の費用がかかってしまいます。
現金書留代金は意外に高いのでそれに抵抗感を覚える人もいるでしょう。
あるいはそのために郵便局まで出向く時間がないという場合もあるかもしれません。
なお、宅配便会社などを使って現金を送付することは問題があります。
宅配では紛失した時の保証が無い上、実際に現金の宅配を受付けていない会社が多いため、注意しましょう。
3.香典を後日手渡す
3つ目は、喪主、遺族が自分の親類でほかの機会に会うことがある場合は、そのタイミングで相手に手渡すことです。
しかし、香典を葬儀当日に渡さずに後日渡すこと自体が、マナー違反とまではいかなくても、通常の方法ではありませんから、葬儀に参列できなくて申し訳なかった、というお詫びの言葉と一緒に渡すようにしましょう。
またこの場合、現金を包む封筒の表書きは、手渡すタイミングによって変わるので注意しましょう。
具体的には、香典を渡すのが、四十九日の法要の前か後かということです。
四十九日より以前であれば通常の葬儀時と同じで「御霊前」です。四十九日の法要以降の手渡しであれば「御仏前」になります。
これも細かいことで、遺族によってはこの点を知らない場合もありますが、しかし知っている場合、このルールに沿っていないと非常識だと思われますので、注意が必要です。
参列できなかった葬儀の香典を渡す方法は以上の3つしかありません。
これ以外に、いきなり相手の口座に香典相当を振り込む、などのことは非常に失礼に当たりますのでくれぐれもしないように注意しましょう。
まとめ
葬儀が遠方であろうとどうであろうと、その参列費用は参列者の自己負担が常識であり、大前提です。
しかしその常識通りに思われない場合や、自己負担してもらうことが自分の気持ちが沿わない場合のあることもまた事実です。
その際には上で挙げたような方法で、その気持ちを参列者に伝えましょう。