お葬式に参列する時に喪服に関してはそれなりに気を遣う人が多いですが、足元の靴にまで注意を払っている人は少ないようです。
しかしお葬式に履いていく靴には靴のマナーが、意外なほど細かくあるのです。
今回の記事では、葬儀に履いていく靴のマナーについて詳しく解説します。
■性別・年齢問わず共通する靴のマナー
まず性別や年齢関係なく、これだけは守らないと恥をかくという靴のマナーについて解説します。
・スニーカーは絶対ダメ!靴の種類は?
まず靴の種類についてはどのようなマナーがあるのでしょう。
まず葬儀に履いていく靴はオフィシャルなものが基本です。
スニーカーのようなカジュアルな靴は絶対にNGです。
・茶色やグレーはNG!靴の色
またお葬式に履いていく靴は、男女問わず、色は黒が基本です。
同じダークな色合いだからと言って、茶色、グレー系などはNGです。
また黒であってもチャコールっぽい黒や、薄い黒などは避け、漆黒のものを選びましょう。
・靴の素材にも気をつける
色だけではなく、靴の素材も気をつけるべき重要な要素です。
本革や合成皮革でOK
葬儀に履いていく靴の素材として相応しいのは、本革や合成皮革です。
もしも間に合わない場合は、ポリエステルなどの布系の靴でも大丈夫です。
中には、葬儀時には殺生に関連する革製品はNGで布製品でなければならない、という考え方を言う人がいますが、そこまで気にすることはないでしょう。
ただし、ワニ革、ヘビ革などの、模様の入った爬虫類の「革」の靴は避けましょう。
スエードやツヤがありすぎるエナメルはNG
同じ黒でも、光沢のないスエードはカジュアルな印象があるのでNGです。
逆に光沢のありすぎるエナメルも葬儀に相応しくない華美な印象があるのでNGです
・中敷きについても気配りを
靴に関しては中敷きにも注意を払えればそれに越したことはありません。
なぜなら葬儀会場によっては靴を脱いで座敷に上がるので、置いてある靴の中敷きが派手な場合、違和感があるからです。
靴の中敷きはできれば紺色やベージュなどの色にしましょう。
どちらも100均などに行けば販売しています。
・靴紐の結び方のルール
細かい話のなのでここまで気を使わなくても問題は大きくなりませんが、完璧を期すのであれば、靴紐の結び方にも注意しましょう。
葬儀時に履く靴の靴紐は「固結び」にして、残った紐の橋は靴の内側に入れましょう。
靴ひもを外に出して蝶結びにするのは本来NGです。
蝶結びは「ほどいたら結べる」ため、何度も繰り返すことを連想させるので、弔事である葬儀には相応しくないとされているためです。
なお、靴紐の素材は黒色で、靴の素材に合った革製がよいでしょう。
特に女性の場合は、リボンやサテンはNGになるので避けましょう。
また、靴紐の通し方にもマナーがあります。
靴ひもは、「シングル」または「パラレル」で通します。
シングルは最も一般的な結び方です。
結び方は、靴の羽根の紐通しに、左右交互に、靴の位置と直角に紐を通していくものです。
パラレルは、外見はシングルと同様ですが、羽根の内側で斜めに紐を交差させているものです。
「オーバーラップ」と「アンダーラップ」はNGです。
オーバーラップとは俗にいう「スニーカー結び」というもので、通し穴を1段づつ下げながら、靴紐を表から裏に通す方法です。
表からではなく裏から通して表へ出す通し方が「アンダーラップ」です。
・靴は弔事用に1足用意しておくと安心
以上の条件をラフに考えると仕事用の靴でも大丈夫と思いがちですが、しかし実際によく見ると光沢があったり、黒に薄いニュアンスがあったりする場合も多いです。
その靴を単品で見ている場合は気づかなくても、マナーに合った靴を履いている弔問客の中に混ざると目立つことも考えられます。
そうならないためにも、一定以上の年齢になったら冠婚葬祭用の靴を1足用意しておくことが無難でしょう。
・靴下のマナー
仮に靴に関しては葬儀のマナーを完璧に守っていても、靴下がマナー違反になっている場合もあります。
靴下の基本は男女とも、黒以外はNGです。
ただし通夜など「訃報を聞いて慌てて駆け付けた」ということが前提の場合は、よほど派手な靴下でない限り、その日に通勤用として履いている靴下でもOKです。
靴下の素材には、特にマナーはありません。
ただし、あまり素材感のあるものはフォーマルウェアとのバランスが悪いので、綿やポリエステルの素材にしておいた方が無難です。
■男性の靴のマナー
では特に男性の靴の場合に適用されるマナーをさらに詳しく解説します。
・基本はストレートチップで内羽根の靴
靴のタイプはいわゆる内羽根のストレートチップです。
内羽根とは靴ひもを通す穴の開いている革が、靴の内側に縫い付けられているものです。
外見は革が甲の部分でぴったりと合わさり、なおかつ穴が甲の部分まであります。
ストレートチップとはつま先の、ちょうど指の付け根あたりに横一文字のラインが入ったデザインです。
この他、「外羽根」と呼ばれる、靴紐を通す革の部分が靴の外側に貼り付けられているデサインも許容されます。
・つま先のデザイン
葬儀に履いていく靴でベストはストレートチップですが、ほかのデザインでも許容されるものがあります。
以下のようなものがあります。
・プレーントゥ
つま先にラインのないデザイン
これに対してNGのデサインは以下のものです
・ウイングチップ
つま先に羽のようにW字にラインが入っているデザイン
・Uチップ
つま先から甲にU字型のラインが入っているデザイン
また靴穴にメダリオンという飾りがついているものもNGです。
・男性の靴下のマナー
靴と同じ黒色が絶対条件ですが、そこに靴下と同色の小さなワンポイントが入っているものや、細いグレーなどのラインがむこうずね部分にぐるりと1本または多くて2本入っているものまではOKです。
これに対して全面が柄の靴下や、メッシュタイプの靴下はNGです。
■女性の靴のマナー
次に女性の靴についても詳しく触れましょう。
・基本はパンプス
女性が葬儀で履くべき靴の基本はパンプスです。
そのパンプスにもいろいろなマナーがあります。
・つま先とかかは隠れる靴
まず、デザインされたおしゃれなパンプスやミュール、バックストラップのサンダルなど、つま先が出ているものは仮に葬儀が夏であってもNGです。
同時にかかとに関してもベルトで結ぶ靴ではなく、しっかり隠れるものを選びましょう。
・リボンやワンポイントはNG
パンプスのデザインはできるだけシンプルなものにしましょう。
たとえばワンポイントのデザインが入っているものはNGです。
また、かわいいリボンや花の装飾がついているものも相応しくありません。
・つま先のデザイン
さらにつま先は隠れていればそれでよいというものでありません。
つま先のデザインは以下のものが望ましいです。
・ポインテッドトゥ
つま先が尖ったもの
・ラウンドトゥ
つま先が丸いもの
・スクエアトゥ
つま先が四角く角ばっているもの
また、先述の通り、つま先が空いている「オープントゥ」はNGです。
・ヒールの高さ
パンプスのヒールの高さの目安は、3cmから5cmだと考えましょう。
葬儀では長時間立っていることが多いので、ヒールのない靴の方が楽な気がしますが、それではカジュアルな印象になってしまいます。
適度にフォーマルで、なおかつ派手ではないというラインが、3cmから5cmのヒールです。
ただしヒールの形にも気をつけましょう。最近の葬儀会場はどこの床も大理石やフローリングです。
そこをピンヒールのパンプスで歩くとコツコツと音が出てしまい、厳粛な葬儀の雰囲気を壊してしまいます。
それを避けるには太めのヒールを選ぶことです。
ただし太いヒールといっても、土踏まずが凹んでおらず、ヒールが高くてつま先が低い「ウェッジソール」は適切ではありません。
・金具に注意
またパンプスについている金具にも注意が必要です。
留め具が金や銀などのいわゆる「光り物」は避けることがマナーです。
これは靴だけではなくほかの小物も同様です。
・和服の時は何を履く?
和装の喪服の場合履物は草履が基本です。
その草履も「喪履き草履」という台も鼻緒も黒い草履です。
・ストッキングのマナー
男性の靴下と同様に、女性のストッキングも黒の無地にしましょう。
目の粗いタイツはNGです。さらには柄物、レース地、くるぶしのワンポイント、ストッキングの後ろ側の縫い目のバックラインもNGです。
これを守ればストッキングではなくタイツでもOKです。
■子供の靴のマナー
葬儀に参列する子供の靴のマナーはどうでしょうか。
まず、制服のある中学生や高校生の場合は、制服着用時に履く靴でOKです。
ですから極論すればスニーカーでもうよいわけですが、ただし、赤などの色が派手なスニーカーは避けた方が無難です。
制服のない小学生や幼児の場合は、派手にならない、装飾の少ない黒系のシンプルな靴がよいでしょう。
幼児の場合、かかとが鳴る靴がありますが、それは避けることは当然です。
■まとめ
喪服に関してはある程度知識があっても、合わせて履く靴のマナーまではご存じなかったのではないでしょうか。
よく人の弱みを見ることを「足元を見る」と言いますが、意外に目立つのが足元の靴なのです。
喪家がマナーや風習に厳しい所だった場合、ちょっとしたマナーで印象を悪くしてしまうかもしれません。
靴のマナーについても知っているに越したことはありません。
弔事用の靴を選ぶ際は、ここで解説したマナーを参考にしてみてください。