昔の日本家屋には、個人の部屋を用意する余裕がなくても、必ず仏間だけはありました。したがってどのように大きな仏壇でも十分に置くことができたのです。
しかし現代では部屋の優先順位が変わり、仏間よりは個人の部屋に振り分けることが当然になって、仏間のある家はほとんどなくなりました。特にマンションなどの場合は、最初から間取りが決まっているので、仏間を用意するなどということはほぼ不可能です。
ところが家族が亡くなった時には一般的に仏壇を用意し、そこに位牌を置く必要があります。その時に多くの人が悩むのが仏壇の置き場所です。特に洋室中心のマンションの場合は、本当にどこに仏壇を置いたらよいのか困るでしょう。その時に助かるのがマンションに置くことを前提に作られた仏壇です。そこでここでは、マンションにおける仏壇には何があるのか、という点について解説していきます。
マンションにおける仏壇の種類
マンションにおける仏壇にはどのような種類があるのでしょうか。
マンションでの仏壇の種類
具体的には以下のようなものです。
モダン仏壇・デザイン仏壇
1つはデザイン仏壇です。これは現代仏壇などとも呼ばれます。
マンションの中で仏壇が置かれる可能性が最も高い部屋はリビングでしょう。
しかしリビングは基本的にフローリングなどの洋式の作りで、一方で普通の仏壇は純和式なので、両者に間にはどうしてもミスマッチなものが発生します。
しかしデザイン仏壇は、マンションの様式のリビングにおいても違和感がないように、様式のデザインで作られています。
扉を閉じてしまえば、洋式家具と見間違うほどです。
ミニ仏壇・ミニミニ仏壇
デザインが洋式であっても仏壇は本来的にかなり場所を取ります。
したがってリビングなどに置く場所がないということも多いのです。
そのような時に便利なのが、ミニ仏壇、ミニミニ仏壇と呼ばれる小さなサイズの仏壇です。
大きさは幅が約30cmで、高さもせいぜい25cm、奥行きは扉を閉じると20cm程度なので、家具の上などに置けるものです。位牌の数が少ない場合などは、このミニ仏壇、ミニミニ仏壇で十分でしょう。
形は、大きな仏壇をそのままミニチュア化したようなボックスタイプと、「とび出す絵本」のように位牌や骨壺を置くオープンタイプのものがあります。
壁掛け仏壇
床の上だけではなく、家具の上にも仏壇を置くスぺ―スが確保できない場合、壁掛け式の仏壇が役に立ちます。
壁掛け仏壇は普通の仏壇よりも薄型なので、下地が入っている壁ならどこにでも置けます。取り付け方も簡単ですし、何より場所を取らないので、日常生活の支障になることもありません。
仏壇が置けないときに代わりになる方法は
以上のようなマンションの住環境に適した仏壇でさえ置けない、あるいは仏壇のような目立つものを置きたくない、という場合、代わりになる方法もあります。
手元供養
1つは手元供養というものです。
これは遺骨は基本的にお墓に納めますが、その一部をペンダントなどに加工して、普段から身に着けいつでも供養できるようにするものです。
これであれば場所は全くとりません。
収納の中に安置する
仏壇は目につくところに置かなければならない、という決まりはありません。
ですから押し入れの中や、収納家具の中などに仏壇を納め、お参りの時だけ扉を開けるという方法でもよいでしょう。
仏壇の豆知識
以上がマンションにおける仏壇でしたが、合わせて仏壇の豆知識を少しご紹介しましょう。
そもそも仏壇とは何か
そもそも仏壇とは何を指すのでしょうか。
仏壇の意味は1つは「自宅にあるお寺」であり、もう1つは「故人の霊魂が降りて来る依り代」です。
仏壇がまだ一般的でなかった時代、故人にお参りしたい場合、お墓に行くしかありませんでした。
したがって天気が悪いときにも我慢しなければなりませんでしたし、お参りしたい時間に行くことができない場合もありました。
しかし仏壇が家にあると、仏壇がお寺の代わりになるので、そこにお墓の代わりの位牌をおけば、天候に関係なく、好きな時間にお参りすることができるのです。
また人は知らず知らずのうちに故人に心の中で話しかけている場合が多くはないでしょうか。
仏壇は故人の霊魂があの世から降りて来る依り代なので、故人に話しかける時に窓口にもなるのです。
仏壇には何が必要か
仏壇に飾る仏具は以下の通りです。
- 香炉:線香を焚くもの
- 花立:生花を供えるもの
- 燭台:ロウソクを立てるもの
- 仏飯器:御飯を供えるもの
- 茶湯器:お茶や浄水を供えるもの
- 仏器膳:仏飯器や茶湯器をのせる横長のお膳
- 高杯(たかつき):お菓子や果物を供える足のついた器
- リン:金属製の鐘
仏壇には何を供えるか?
また仏壇へのお供えはどのように考えたらよいのでしょうか。
仏壇に供えるものは?
仏壇へのお供えは「五供(ごくう)」と言って5種類です。それは香(線香)、花、灯燭(とうしょく=ロウソク)、浄水、飲食(おんじき=食べ物)です。
供える花の選び方
以上の五供のうち気をつけたいものは花です。
仏壇に供えるのにふさわしい花とそうではない花があるので、知っておいた方が良いでしょう。
まず1つの条件は長持ちする花ということです。
長持ちすることは仏教の教義には関係ありませんが、枯れた花を供えるわけにはいかないので、ダメになってきたら取り換える必要があります。
安い花でも1束数百円しますから、何度も交換していては出費が大変です。
ですから長持ちをする花がふさわしいのです。
具体的にはよく用いられるのが菊です。
菊は丈夫であるうえに、香りもよく、形が仏壇に似合うので重宝されています。そのほかカーネーションやユリなども良いでしょう。
2つ目の条件は色です。これは真っ赤などのどぎついものは避けましょう。
どぎつくない色の例としては、白、黄色、紫、赤、ピンク、水色などです。
ただし亡くなって49日目の四十九日法要までは白い花を供えることになっています。
3つ目の条件はトゲや毒のある花は避けるということです。
以上がふさわしい花ですが、ルールを絶対に守らなければならない、と考える必要はありません。ふさわしくないとされている花でも、故人が好きだったものであれば、それを供えてあげたい気持ちを優先してもよいのです。
仏壇に写真を供えるのはNG
よく仏壇に故人の写真や、家族の写真を供えているケースがありますが、本来的にそれはあまり推奨できることではありません。
なぜなら、仏壇は先ほど書いたように自宅にあるお寺です。
お寺という建物は「この世」と「あの世」の境界にあるものです。したがって仏壇もあの世とこの世の境界に位置するものです。
ですからその境界にまだ生きている人の写真を飾ってしまうと、まるでその人が亡くなってしまったかのようになるので良くないのです。
では亡くなった人の写真、すなわち遺影は仏壇に飾ってもよいのかというと、それは基本的に四十九日までとされています。
なぜなら、仏教の世界では、人は亡くなって49日間はこの世にいて、49日目に成仏するとされているからですす。
一方で遺影は昔から写真には魂が宿ると言われているように、生きている人の象徴です。
したがって、四十九日までは故人の霊魂がまだ成仏していないために、遺影を仏壇に飾ってもよいですが、成仏後に生きている象徴の遺影を飾ることはふさわしくないのです。
浄土真宗の仏壇の意味は
もしも自分の家の宗派が浄土真宗だったり、浄土真宗の家を訪問したりした時に、その仏壇が金箔であることに驚くかもしれません。
これは浄土真宗の教えに由来して、そのような装飾になっているのです。
浄土真宗以外の宗派では仏壇はあの世とこの世の境界としての存在です。
したがって基本的には地味な作りです。
一方で浄土真宗においては、人は亡くなった瞬間に阿弥陀如来の力によって極楽に往生するとされています。
したがってあの世のとこの世の境界という概念はありません。ですから、仏壇はすでに往生した後の極楽を模しているものなのです。
極楽とは何の苦しみも迷いも悩みもない場所なので、その意味合い示すものとして金で表現されます。そのため浄土真宗での仏壇は金箔なのです。
仏壇の向きはどうしたらいい?
仏壇を購入したらどちらの方を向いて置くのかということにもルールがあります。
ルールには3つの考え方があり、1つが「南面北座」というものです。
これは仏壇を南に向けて設置するということです。北は縁起が悪い方角なので、そちらには仏壇を向けないのです。
もう1つが「本山中心」という考え方です。これは仏壇を自分の家の帰依している宗派の総本山の中心線と一致している方向に置く、と言うものです。
したがってどの宗派に帰依しているかによって、置く向きが変わります。
3つ目が「東面西座」というものです。仏教では極楽は西の方にあると言われています。仏壇を東に向けて置くと、お参りする際に極楽のある西を拝むことになるので、良いとされているのです。
神棚も設置したいときの位置関係
家に仏壇のほか、神棚をある場合には、その両者を置く位置関係に注意しましょう。そのポイントは以下の通りです。
神棚を上にする
神棚と仏壇を同じ高さに置くことは基本的にしません。
なぜなら仏よりも神の方が上位なので、平行には並べないのです。ですから仏壇よりも神棚の方が高い位置にあるようにしましょう。
向かい合わせはNG
神棚と仏壇は1つの部屋の中で対面には置きません。
なぜならそう置いてしまうと、どちらかにお参りしているときに、もう一方にお尻を向けることになってしまうからです。
同じ場所の上下はNG
神棚は仏壇よりも上の位置にしますが、だからと言って同じ場所の上と下に置くことはNGです。
これは同じ部屋の中でもそうですが。2階建ての家で、上の階と下の階の関係の時にも言えることです。したがって、上下階に仏壇と神棚を置く場合には、双方の中心線がずれるようにしましょう。
まとめ
マンションにおける仏壇は、現代日本の住宅事情からどんどんラインナップが豊富になってきています。ですから必ず自分の家にぴったりの仏壇が見つかるはずです。仮に自宅がマンションでも、安心して仏壇を置くことを考えましょう。