家族や親しい人が亡くなって遺品整理をしようという時に1番困ることの1つが、住んでいた家が「ゴミ屋敷」状態となっている場合です。
その場合はどのような手順と方法でゴミを遺品と廃棄物に分けて処分すればよいのでしょうか。
今回の記事ではゴミ屋敷の遺品整理の方法について解説します。
■遺品整理で発生する、パターン別ゴミ屋敷とは
まずゴミ屋敷と言ってもその「ゴミ」にはいくつかのパターンがあり、パターンによって整理の難易度が異なります。
・乾燥した軽いゴミ中心
弁当屋のプラスティックの容器、ペットボトル、牛乳の空パックなどの軽いゴミが大量にある場合です。
しかし湿気は少ないため腐敗はせず、処分に関しては1つ1つ端から手を付けていけばよいので、比較的取り組みやすいゴミの状態です。
故人が男性の1人暮らしだった場合、この乾燥系のゴミ屋敷になっている場合が多いです。
・資源ゴミ中心
雑誌や古新聞などの資源ゴミが大量にある状態のゴミ屋敷です。
そのほか洋服などもあります。
乾燥系と同じく湿気は少ないので腐敗はせず、処分に苦痛は伴いませんが、ゴミがどれも重いのでその分処分は大変です。
・ゴミが腐敗している
キッチンを中心に食べ残しや汚れたままの食器などが大量に残されていて、かつそれらの食材が腐敗している状態のゴミ屋敷です。
中には食材だけではなく、ペットの糞なども含まれている場合があります。
部屋中から異臭がするため、慣れていなければ処分に大変な苦痛が伴うゴミ屋敷です。
・倉庫状態になっている
服、タオル、洗剤などがほぼ手付かずの状態のまま、それも同じ種類が大量に残されているゴミ屋敷です。
家屋であることを知らずに、汚い倉庫だといわれれば納得してしまうかもしれません。
この場合、処分しないで残しておくものが増えてしまうと、処分に非常に時間がかかってしまいます。
・貝塚状態になっている
縄文時代や弥生時代の住居跡近くには、食べた貝の殻を一定の場所に捨てたエリアがあります。
いわゆる貝塚です。貝塚ではまるで地層のように貝殻が下層から上層へ、ミルフィーユのように積み重なっています。
ゴミ屋敷でも、ゴミが床に置かれておらずゴミの上にゴミを積み重ねたことによって、ゴミが貝塚のようになっている場合があります。
このようなゴミ屋敷の処分は極めて大変です。
貝塚系のゴミ屋敷は一般人には処分は難しいので、清掃業者に任せるしかありません。
■自分でゴミ屋敷のゴミを分別し片付ける場合
以上のいずれかに該当したゴミ屋敷を自分の手で片づける場合、どのようにしたら良いのでしょうか。
・用意するもの
まず準備物は以下の通りです。
ゴミ袋やダンボール
最初に用意すべきはゴミの量に応じた、ゴミを捨てるゴミ袋や段ボールなどです。
さらにゴミは自治体の基準に沿って分別しなければなりませんから、燃えるゴミ、燃えないゴミ、プラスチック関係、アルミ缶関係、古着、粗大ゴミなどに最初から分別しながら、処分していく必要があります。
したがって、思った以上にゴミ袋や段ボールは必要になります。
ゴミ袋や段ボールはできるだけ多めに準備しましょう。
軍手、エプロン
ゴミの中には鋭利な部分を持っているものもあります。
それらで手を傷つけないように軍手を準備しましょう。腐敗した食材などを素手で触るのは不衛生ですから、ばい菌に感染しないためにも軍手は必需品です。
また汚れても大丈夫な服でゴミ屋敷の処分作業をする場合以外は、服に腐敗物などが付着して取れなくなるケースもあるので、エプロンも用意するに越したことはありません。
室内履き、スニーカー
手だけではなく足を守るためにも、室内履きや靴底の汚れていないスニーカーなどを準備しましょう。
・片づける方法
次にゴミを片付ける手順です。
最低限残すものを3分類する
大量のゴミに囲まれて処分を続けていると、判断力が鈍り、捨てるべきでないものを捨ててしまったり、捨ててもよいものを取っておいたりしてしまいがちです。
そうならないように、判断力がある最初の段階で、預金通帳、印鑑、銀行のカードなどの金融関係のもの、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機などの家電品、高級衣類などを確保しましょう。
その上で、残ったものを
・廃棄
・保管
・判断保留
の3つに分けながら処分していきます。
特に少し凝ったようなものが出てくると価値がありそうで、あるいは「いつか」使いそうで取っておきがちです。
しかし今後2年間その品物を使う機会がなければ、一生使うことはほぼありません。
したがって迷ったら2年以内使うかどうかを判断基準にして、使わないと思われる場合は思い切って捨てましょう。
大きなものから分別する
片付けの順番は几帳面にゴミの塊りの端から取り組む必要はありません。
ざっと見渡して家電、家具、布団などの大きいものから捨てるかどうかを判断して分別していきましょう。
大きなものは比較的判断しやすいためです。
片づける部屋の優先順位を決める
思い付きで手近な部屋の片づけから取り組むのは非効率的です。片づけるべき部屋の優先順位を決め、決めたらその部屋の処分が終了するまで、次の部屋に移らないことが重要です。
おすすめの片づける順番は、玄関、居室、トイレ、キッチン、洗面所です。
つまり、入り口から順に片づけていくのが最も効率的なのです。
最初に人間の通路を作る
1つの部屋の片づけをする場合、大きなものを分別したら次には床一面のゴミから、通路を作るように処分していきましょう。
そうすると後の作業が格段にしやすくなります。
扉は開けない
ゴミ屋敷の片づけでタブーは押入れやキャビネットなどの扉を開けてしまうことです。開けてしまうと恐らくその中も当然ゴミだらけですから、一気に処分しなければならないものを増やしてしまいます。ゴミ屋敷の片づけの原則はとりあえず目に付くものを全て処分することですから、まずは外に出ているゴミを処分し、扉の中は全ての部屋が片付いてから処分に取り掛かるようにしましょう。
・ゴミの処分の方法
捨てるべきゴミが分別できたら、次はそのゴミを処分しなければなりません。
その方法は以下の通りです。
売れそうなものを売る
ゴミと言ってもすべてを捨てる必要はありません。自分にとって不要でも、人にとっては有用なものもあります。
それらのものはリサイクルショップに買い取ってもらったり、オークションサイトに出品するなどして現金化しましょう。
リサイクルショップは、家電が得意分野のリサイクルショップ、ブランド品が得意分野のリサイクルショップなど、細かく分野が分かれていますから、いくつかのリサイクルショップに声をかけましょう。
多くのリサイクルショップは、ものを持ち込まなくても、ある程度の量があれば出張で買い取りをしてくれます。
リサイクルショップが引き取ってくれなくても、状態の悪くないものはネットのオークションサイトに出品して売ることもよいでしょう。
ただし、写真を撮影し、説明文を書き、売れたら梱包して発送するという手間がかかるので、忙しい人にはおすすめできません。
気をつけるべきゴミの処分方法
ゴミによってはそのまま捨てるとトラブルの原因になるものがあります。
特に以下のゴミの処分をする場合はひと手間必要です。
・食用油
そのまま流さず、新聞紙に吸わせたり、百均で油の凝固剤を購入して固形化させ、その上でビニール袋にくるんで捨てましょう。
・スプレー缶
必ず中身を出し切ってから処分します。
中身を出し切る際に穴をあけるかは自治体によって異なりますので、確認しましょう。
スプレー缶の中身を出す際は必ず屋外の風通しが良い所で行います。
また、火気には注意してください。
穴をあける場合は、百円均一に専用の穴あけの器具が売っているので、それを使うのが簡単で安全です。
・お酒
栓を開けて、中身を流しやトイレに流し、ビンだけを捨てます。
・缶詰
1つ1つ開けて中身は生ゴミに分別しましょう。
外はブリキ缶として燃えないゴミにします。
・土
大量の土を道路などに捨てると法令に違反してしまいます。
少しであれば庭などに撒けますが、量が多い場合は自治体の清掃担当に相談しましょう。
■清掃業者に委託する場合
次に自分でゴミを処分するのではなく、清掃業者に委託する場合の手順です。
・費用相場
まず気になるのはいくらくらい費用がかかるのかという相場でしょう。
業者によってもゴミの状態によっても費用は異なりますが、おおむね以下のような費用感だと思ってください。
ワンルームの場合
ワンルームで天井までゴミが貝塚状になっている場合は、1部屋5~8万円です。
家1軒の場合
家1軒がすべてゴミ屋敷状態の場合は、1軒で20~30万円です。
行政代執行だとケタ違いの費用がかかる場合も
費用がかかることを嫌ってゴミ屋敷を放置しておくと、「ゴミ屋敷条例」を基に自治体によって「行政代執行」が行われてしまう場合があります、その場合は無料ではなく、あとでかかった費用を自治体から請求されます。
自治体は清掃業者ではありませんから、費用に競争原理は働かず、言ってみれば「正価」での請求になります。
費用的には、数万円から多い場合で数百万円という異常な高額になり得ます。
そのような高額請求を避けるためにも、ゴミ屋敷はできるだけ早く自分の手で処分しましょう。
・時間はどれくらいかかるか
ゴミ屋敷の整理にかかる時間は、その部屋数と作業人数におおよそ比例します。具体的には以下の通りです。
・1Kの場合:2名×約3時間
・1DKの場合:2名×約4時間
・1LDKの場合: 2名×約4時間
・2DKの場合:2名×約6時間
・2LDKの場合:2名×約6時間
・3DKの場合:3名×約8時間
・3LDKの場合:3名×約8時間
・4DKの場合:4名×約10時間
・業者を選ぶときの注意点
清掃業者に委託する場合、トラブルが頻発しています。
トラブルを防いで優良な業者に委託するためには、以下の点に注意しましょう。
書面で見積もりをとる
委託前に必ず見積もりを取ります。
中にはこちらの困っている足元を見て法外な金額を吹っ掛ける悪徳業者もいるので、複数の業者の相見積もりを取ることが大切です。
また口頭ではあとで言った言わないになりますから、必ず書面で見積もりを取りましょう。
書面での見積提出を断る業者には委託しない方が無難です。
3つの許可証の保有を確認する
ゴミ屋敷をビジネスとして清掃するためには以下の3つの許可証が必要です。
・一般廃棄物収集運搬業:ゴミを回収する許可
・産業廃棄物収集運搬業:会社のゴミを回収する許可、
・古物商:ゴミの中から不用品を売ったり買ったりする許可
ですから業者選定時にはこの3つの許可を持っているかを確認しましょう。
個人情報保護のポリシーを持っている業者を
一見ゴミでもその中には個人情報がたくさんつまったものも多く存在します。
清掃過程でその個人情報を入手し、悪用されたり拡散されたりするようなことは絶対に避けなければなりません。
業者として個人情報保護のポリシーをきちんと定め、公式サイトなどにアップしているかどうかを確認しましょう。
損害賠償保険に入っているか
ゴミの処分を業者に丸投げしていると、捨てるべきではなかったものを捨ててしまった、ということも発生し得ます。
その場合に損害賠償してもらえるように、損害賠償保険に加入している業者を選びましょう。
■まとめ
遺族としては故人を偲べるものはできる限りとっておきたいと思ったり、「人のもの」を勝手に処分することに躊躇してしまったりする場合もあるでしょう。
しかし使用する本人がいなくなってしまった以上、使う人のいないものは全てゴミです。
とっておくべきは思い出であってゴミではありません。
ですから故人の部屋や家がゴミ屋敷に状態になっていたら、以上を参考にできるだけ早い段階でゴミの処分を行いましょう。