仏壇にはいろいろなものを供えます。
仏壇のある家では毎日のお供えをする上でそのマナーを知っていないと何かと困ることがあるでしょう。
その中でもお彼岸の時には特別なお供えがあることをご存知ですか。
今回の記事では、お彼岸の時の仏壇のお供えはどうしたらよいのかという点について解説します。
お彼岸とは
そもそもお彼岸とはどのような法要の日なのでしょうか。
お彼岸の由来
「彼岸」という言葉は仏教用語です。
彼岸とは、文字通りとると「向こう岸」という意味になりますが、仏教では煩悩を脱却した境地、つまり極楽浄土のことを指します。
対して、煩悩に苦しめられる私たちがいる世界のことは、「此岸(しがん)」と言います。
お彼岸は、太陽が真東から真西に沈む日と、その前後3日間の合計7日間の期間です。
この期間に真西に沈んでいく太陽を拝むことで、西方にある浄土に思いを馳せ、仏門の修行に励む期間がお彼岸でした。
しかし、現在では日本古来の祖先信仰の考え方が取り入れられ、故人や先祖の供養のためにお墓参りに行くという習慣が定着しました。
お彼岸にすること
お彼岸の期間には、特別にすることはあるのでしょうか。
ここでは、必ずしなければならないわけではないけど、せっかくの機会なのでおすすめすることを紹介します。
お墓参り
もともとは仏門の修行に励む期間とされていたお彼岸ですが、今は先祖供養の機会になっています。
現在では、お彼岸はお墓参りに行く行事として浸透しています。
供養の形は一つではありませんが、お墓を手入れする機会にもなります。
都合がつけばお墓参りに行くことをおすすめします。
仏壇・仏具の掃除
先祖供養のやり方としては、仏壇や仏具をお掃除するのもいいでしょう。
親戚一同会しての法要でもない限りは、なかなか仏壇のお掃除に手を付けられません。
仏具店やネットで掃除用具は買うことができるので、仏壇のお手入れもお勧めします。
仏門の修行
本来のお彼岸の趣旨にのっとって、仏門の修行をしてみるのはいかがでしょうか。
仏門の修行とは、「六波羅蜜」を実践することです。
故人が煩悩の川を渡って彼岸にわたるためにする、仏教の基本的な修行法が「六波羅蜜」です。
「六波羅蜜」とは以下の6つの修行テーマです。
- 布施(ふせ)…他人に惜しまずわけ与える
- 持戒(じかい) … 戒律を犯さず悪い行いをしない
- 忍辱(にんにく) … 困難に耐え、怒りや恨みを我慢して、辛抱する
- 精進(しょうじん) … 怠けず何ごとも一生懸命努力する
- 禅定(ぜんじょう) … 坐禅を行って、何ごとにも動じない集中力を養う
- 智慧(ちえ) … ものごとの道理や理屈を正しく理解する
ですから本来、お彼岸の日には故人がこの行いができるように、生きている人もこの六波羅蜜を、お彼岸の期間中に1日に1つづつを実践することとされていました。しかし時代が下って、だんだんとこの教えの内容が端折られるようになり、これらの1つ1つを行うということがなくなって、代わりに故人の成仏を祈るだけということに変わりました。
しかしこの六波羅蜜の教え自体は今でも生きていますから、可能であればお彼岸の期間だけでもこの6つの教えを実践するように心がけましょう。それは故人の成仏を支援することになりますし、自分自身も悟りの境地、つまり欲望に振り回されず、安定した精神状態を獲得することにつながります。
春のお彼岸、秋のお彼岸はいつ?
お彼岸は年に2回あります。
春のお彼岸は3月の春分の日を中日にしてその前後3日間の計7日間です。
秋のお彼岸は9月の秋分の日を中日にしてその前後の7日間です。
お墓参りもこの期間にします。
またお彼岸は年に2回、春と秋にやってきますが、その違いや考え方の差はありません。
ですから都合があってどちらか一方しか行けないという場合でも、この2つの期間のうちのどちらかにお墓参りをすればよいでしょう。
お彼岸の時の仏壇の飾りは
お彼岸の時の仏壇へのお供えはどのようにしたらよいのでしょうか。
食べ物のお供え
まず食べ物は何を供えるのでしょうか。
ぼた餅・おはぎ
お彼岸の時には他の日とは異なった食べ物を供えます。
それが春のお彼岸の時にはぼた餅、秋のお彼岸の時にはおはぎです。
しかし実はぼた餅とおはぎはどちらも同じ、あんこでもち米をくるんだ食べ物です。
同じ食べ物をなぜ季節によって違う名前で呼ぶのかというと、春には牡丹が咲くので「牡丹餅」、秋には萩が咲くので「お萩」と呼ばれるためです。
ただし和菓子屋では季節によって商品名を変えずに、年間通じてどちらか一方の名前で販売しているところもあります。
また地方によってぼた餅やおはぎではなく、お団子を供えたり、そのそのお団子の形も丸かったり、平たかったりなど、いろいろなバージョンがあります。
ですから何を供えてよいのかわからない場合は、親戚に聞いた方が良いでしょう。
あるいはその時期の和菓子屋の店頭には、その地方でのお彼岸のお供えのお菓子を販売していますから、それによって推測することも可能です。
お供え物にあんこを用いられるのは、原材料の小豆が赤色で、赤い色は災難や疫病を予防してくれると言われていたためです。
特に江戸時代には天然痘などの疫病が大流行して多くの死者が出ました。その天然痘に感染しない、感染しても軽く済むということを祈って赤い食べ物を食べ、身の回りに赤いものを置きました。
お彼岸に赤い豆が原料のあんこをくるんだぼた餅あるいはおはぎを食べるのはその名残です。
お菓子、果物
またお彼岸に限らず、仏壇にはお菓子や果物を供えましょう。
しかし生ものなどの腐りやすいものは避け、日持ちのするお菓子や果物を選ぶのがベストです。
故人が好きだったもの
また故人の好きだった食べ物や飲み物を供えてあげることも故人の供養になります。
毎日お供えするのは五供
仏壇には基本的に五供(ごくう)というものを供えます。
五供とはその名の通り、以下の5種類のお供えです。
・花
花は生きとし生けるものはすべて滅びるという仏教の教えを体現したものです。
・ロウソク
ロウソクはあの世からこの世に故人の霊魂が降りてくる時の道しるべになります。
・線香
線香の香りは故人の霊魂にとってごちそうです。
・水
清らかな水です。水道水で構いません。
・ご飯
ただし故人の霊魂はご飯を食べません。しかし線香と同様に炊き立てのご飯の香りがごちそうになります。ですからご飯は炊きたてを供えましょう。
お彼岸に仏壇に供えるお膳の作り方
さらにお彼岸の時には以上のお供えとは別に、専用のお膳を用意する風習もあります。具体的には以下の「一汁五菜」、つまりご飯と漬け物を数に加えないで汁が1種とおかず5品の内容です。
- 飯椀:白飯
- 汁椀 : 絹豆腐のすまし汁
- 漬物皿 : きゅうりとなすの浅漬
- 平皿 : がんもどきの煮物
- 膳皿 : 野菜の胡麻和え(これは平皿のふたを容器にします)
- つぼ : ひじきの煮物
- 猪口 : 煮豆
- 小皿 : キンピラゴボウ(これはつぼのふたを容器にします)
地方によってはこれが少しづつ変わります。
たとえばご飯は白飯ではなく、わかめの混ぜご飯になるなどです。
詳しくはその地の風習に詳しい人に確認しましょう。
お供えの配置と向き
お供えのお膳には、並べ方にもルールがあります。それは以下のようなものです。
- 奥:膳皿、小皿、平皿
- 真ん中 : つぼ、猪口
- 手前 : 汁椀、漬物皿、飯椀
お供え膳はセットで販売している
以上のお膳を容器から用意した場合、全部で6種類を揃えなければなりません。それは大変なので、仏具店やホームセンターなどのに行くと、器を載せる膳から、容器まですべてをセットで販売していますので、利用するとよいでしょう。1セット用意しておけば、お彼岸だけではなくお盆や命日などの法要にも使えるので便利です。
値段的には、伝統的な漆塗りの高級なもので2万円前後、プラスチック製のものであれば2000~5000円程度で手に入ります。
また容器の色にも細かいルールがありますが、それを1つ1つ考えていると非常に大変なので、一般家庭であれば黒のものを買っておけば無難でしょう。
あるいは茶色であれば、お祝いのお供えの場合も利用できます。
まとめ
お彼岸の仏壇のお供えについてお分かりいただけたでしょうか。
すべてを忠実に実行するとなると大変なような気もしますが、しかしぼた餅などはお彼岸の季節には必ず和菓子店に売っていますし、お膳のセットもホームセンターなどに並んでいますので、意外に揃えやすいものです。
せっかくの機会ですので、一度チャレンジしてみましょう。