近年、法事と言えばお寺やセレモニーホールで行われるイメージがあります。
しかし、もともと法事は広く自宅で行われていました。
最近では小さなお家やマンションが増えるなど、住宅事情の変化で自宅で行う法事は少なくなっています。
逆に、仏間のある広いお家で、かつ駐車場が手配できれば、場所を抑えずとも自宅で法事をすることができます。
今回の記事では、自宅で法事をする際の準備について解説します。
法事の準備の流れ
自宅で法事をする際の準備の流れを解説します。
1.日時を決定する
法事の準備として初めに日時を決定します。
お寺と近しい親族に都合のいい日を確認し、日程を調整します。
四十九日は命日を1日目と数えて亡くなってから49日目、年忌法要は祥月命日に行うのが基本です。
しかし、丁度49日目や祥月命日に日程を合わせることが難しければ、前倒しにして予定を組みます。
実際は、49日目または祥月命日直前の土日に設定されることが多いようです。
2.案内状:参列者はどこまで呼ぶ?
法事の日時を決定したら招く人をリストアップし、案内状を送ります。
一周忌は家族・親戚の他故人の知人や友人を呼び、三周忌以降は親族までにとどめ、以降呼ぶ範囲は狭くしていくのが一般的です。
四十九日は地域によって盛大に知人まで呼ぶところも、家族のみで行うところもあります。
ただし、最近では葬儀の縮小に伴い法事も小さくなってきています。
身内だけで済ませたい場合は、親戚とお寺に一言断りを入れておきます。
いずれにしてもどこまで呼ぶかについて不安があれば、親戚の方に相談してみましょう。
案内状に記載する内容は「何を」「どこで」「いつ」行うかです。
また、案内状を送るときには封筒に入れて出すケースが多いです。
しかし、二重封筒は「不幸が重なる」と言われているため使用しないように注意しましょう。
3.引き出物の準備
案内状を出して参列する人数が分かったら、引き出物の準備をします。
引き出物は、のりやお茶などの乾きものや、和菓子や焼き菓子など日持ちのするものを選びましょう。消費してなくなる「消えもの」が基本です。
仏事なので肉や魚など殺生を連想させるものは避けます。
また、近年では引き出物にカタログギフトも登場してきました。
引き出物の価格は一人当たり3千~5千円が相場です。
のしの表書きは、「志」、西日本では「粗供養」などとします。
4.会食の料理の準備
参列する人数が分かったら、会食の手配も進めます。
仕出し弁当を頼むか、近くのレストランなどを予約します。
自分で料理を作る場合は、肉や魚を使わないメニューを意識します。
具体的には、野菜の煮つけや和え物、豆腐料理、海鮮を使わない寿司などです。
避けた方がいいメニューは、おせちに使われるような縁起物や、紅白の色使いのものです。
5.会場の準備
自宅で法事を行う場合は会場としてセッティングする必要があります。
会場のセットは以下をチェックしましょう。
- 参列者が通るところはすべて掃除する
- 仏壇を掃除する
- 焼香と焼香台の準備
- ろうそくや花などお供えを仏壇にあげる
- 仏壇の前に僧侶が座るための座布団(金襴または緋、紫)を置く
- 参列者の座席を確保する
- 位牌または過去帳を用意する
四十九日法要の場合は初めて本位牌を用意することになるので、前もって仏具店に相談しておきます。
6.お布施の準備
読経していただいたお坊さんにはお布施を渡します。
法事のお布施は3~5万円が相場です。
この他、自宅まで出向いていただくので、別途御車代として5千~1万円を包みます。
さらに、会食に参加してもらわない場合、御前料として5千~1万円を包みます。
お布施は白無地の封筒に納め、表書きは「御布施」または「お布施」とします。
中袋の表面には金額、裏面左側には住所・氏名を書きます。
法事で準備するお供え
自宅で法事をする場合は、仏壇に飾るお供えなども自分で用意する必要があります。
法事で準備するお供えについて解説します。
お供えは「五供」が基本
仏式のお供えは「五供(ごくう)」が基本です。
五供とは、以下の5つを指します。
- 香:香り。線香や焼香など
- 花
- 灯明:明かり。ろうそくや灯篭など
- 飲食(おんじき):食べ物。物販など
- 浄水:清らかな水
この他、お菓子や果物、故人の好きだったものをお供えします。
桃・ミカン・リンゴなどの旬な果物
法事で準備するお供え物は桃やミカン、リンゴの旬な果物です。
できれば丸っぽい果物がいいといわれています。
また、故人が好んでいた果物をお供え物として選ぶのもいいでしょう。
和菓子やゼリーなどのお菓子
お仏壇には、五供の他にお菓子などもあげます。
どら焼きやもなかなどの昔ながらの和菓子や、クッキーなどの焼き菓子、夏であればゼリーなども良いでしょう。
果物と同様、故人の好きだったものを供えると、故人を思い出すネタになります。
花は何を選べばいい?
仏花には厳格な決まりはありませんが、本数は奇数で二対用意することが基本です。
色は四十九日までは白を基調とし、それ以降は徐々に色味を付けても構いません。
色の数も奇数で揃え、3色の場合は白・黄・紫、5色の場合は白・黄・紫・赤・ピンクを選びます。
花の種類について、仏花の定番は菊です。
この他、ユリやトルコキキョウ、スターチス、スイートピーなど、好きにアレンジしましょう。
ユリなどの花粉が付きやすい花はあらかじめおしべを切っておきます。
注意する点としては、バラなどのトゲのある花、あさがおなどのツルのある花、彼岸花などの毒がある花を含めないようにすることです。
お花は真ん中の後ろ側に背の高い花を立て、全体がひし形になるように残るお花を組み合わせます。
以上で述べたのは仏花の定番なので、施主の意向や故人の好みに合わせて用意すればいいでしょう。
法事当日の進行
法事はあまり付き合いがない親族や、故人の関係者が訪れるため、進行する際に失敗することができないでしょう。ここでは、法事当日の進行についてお伝えします。
1.施主の挨拶
法事当日は参列者や僧侶が入場したら、施主の挨拶をして法事が始まります。
開催時の挨拶は参列者や僧侶への感謝を示す言葉を述べましょう。
季節の言葉などは交える必要がなくシンプルなのが望ましいです。
2.僧侶の読経・焼香・説法
僧侶が読経して故人を供養します。
読経の後は参列者が焼香して、説法があります。
お経は本来釈迦の教えを記したものなので、故人の供養とは直接関係しません。
お経は生きている私たちが幸せに生きるため、お釈迦様の教えを知るためのものです。
そうはいっても、お経はサンスクリット語などの音写なので、聞いて意味が分かるものではありません。
お経の後にしてもらう説法の方が分かりやすいでしょう。
3.会食
法事が終わった後は会食の席を設けます。
自宅で料理を振る舞うか、仕出し弁当を発注するか、外のレストランに場所を予約します。
施主から挨拶して、故人を偲びながら会食します。
まとめ
自宅での法事の準備について解説しました。
現代では自宅で親戚を招いての法事は少なくなりましたが、故人の家に集まり故人を偲ぶというのも、供養の一つではないでしょうか。
自宅で法事をする際は、仏壇や家の中をきれいにし、仏壇のお供えを用意します。会食の料理を自分で作る場合は、そちらも準備します。
後は外でやる際の法事と同じです。
法事に参列していただいた方が、和やかに故人を偲べる場にしましょう。