冠婚葬祭での出来事は、参列者の意識に残りやすく、昔からもめごとの無いよう気持ちよくと言われています。
特に「葬」に関しては、故人とのお別れの式典で1回限りですから、結婚式とお葬式がブッキングした場合は、お葬式に参列することが優先されますし、席順であったり焼香の順番であったりと、マナーを重視した言動が望まれます。
弔う目的のお葬式の服装は、細部にも気配りが必要です。
いきなりやってくる悲しみ事のお葬式に、戸惑うことなく対応できるよう、お葬式に参列する時の服装について知っておきましょう。
通夜・葬儀・告別式での服装について
通常お葬式は、2日間に渡り執り行われ、細かく分けると通夜・葬儀・告別式から成り立ちます。
通夜・葬儀・告別式別の服装には少し違いがあります。
通夜の服装
ずばり、服装は色目を抑えたビジネススーツやワンピース等、平服で構いません。
通夜とは、親、兄弟、親戚等、故人と親しい間柄の人たちが別れを忍ぶために、葬儀の前日に行われます。
順次親戚が集まって、お葬式の準備や手順を話合うこともできる時間です。
夜通しろうそくの灯をともし、線香を絶やさず朝を迎えるとされていましたが、最近では消防庁の指導で夜通し火をともしていられる会場はほとんどなくなりました。
服装に関しては、喪服でなくて構わないことになっています。
反対に喪服で行くと、死ぬのを待っていたのではと受け取られると言われています。
昔はメール等も無く、電報や電話で亡くなったことを聞きつけ、取り急ぎ駆けつけるという流れだったためです。
ただし最近は、日中に行う告別式に時間の関係上会葬できない友人知人たちが、通夜に参列し、別れを惜しむというケースも増えてきています。
そこで、通夜式なるものも執り行われるようになりました。
通常18時から行われる通夜式では、服装もできるだけ葬儀、告別式に準じるのが良いでしょう。
葬儀の服装(遺族として)
葬儀とは、故人の肉親が喪主となり、親戚や親しかった人たちと故人を弔う儀式です。
故人の希望や信仰する宗教などによって執り行われ方は違いがあるのですが、大きく分けると仏教・神式・キリスト教式があります。
午前中に葬儀を執り行い、その後、続いて告別式を行うのが主となっています。
葬儀中に続々と告別式会葬者が集まって見守っていますが、司会者進行者が「只今より告別式を執り行います」と挨拶をするので、流れを理解できます。
遺族として葬儀を執り行う時の服装は正喪服です。
喪服とは、黒色・薄墨色の服を指します。
成人男性の場合
喪主は洋装、和装どちらも正装です。
洋装は黒のモーニングコートで、弔事・慶事両方に着用できる昼間の正装です。
シャツは白色でつやの無いレギュラーの襟のものにします。カフスは黒色か真珠で台座は銀色を選びます。
ネクタイは黒色でネクタイピンは不要。靴下も黒色です。
靴は基本、靴前との縫い合わせが外に出ていない内羽根靴を選びます。
足先に横にスライドがあるストレートチップを選ぶと良いでしょう。室内での正装靴です。
ハンカチは、基本白色ですが、黒色も可です。
和装であればかみしも(白装束)や五つ紋付の羽織袴が正装です。
明治維新前までの弔い時の服装は白色で、西洋文化が入ってきてから黒色になりました。
地方によっては、白装束が定着しているところもあるようです。
白装束は、TV時代劇での切腹の時の着物?などと思う方があるかもしれませんね。
しかしTVが間違いです。本来切腹の時は、薄い水色の浅葱色でした。
白装束の足元は白色足袋、草履を履きます。
地方によっては冬でも素足という地域もあります。
成人女性の場合
喪主は洋装、和装どちらも正装です。
洋装はブラックスーツかブラックワンピースです。
黒色ストッキングを着用し、できるだけ素肌を出さないようにします。
ストッキングも柄物や透かし模様などは避けましょう。
靴も正装です。ヒールの高さが3cm~5cm程度の黒のプレーンパンプスが良いでしょう。
指先が開いたものや、バックがストラップになっているものはカジュアルになりますので気を付けましょう。
結婚指輪以外のアクセサリーはつけないようにしましょう。
もちろんピアスも耳の穴はプラスチック装具で塞ぎます。
髪は、明るい色や派手な色は避けてください。
お化粧も派手にならないよう、特に口紅の色を抑えます。
髪を留める場合、艶のない目立たない黒色にします。ネイルも無色が望まれます。
和装の場合、現代では、黒無地五つ紋付で生地は縮緬が主です。
間違っても黒留袖を着用しないようにしましょう。黒留袖は、帯より下に柄が入ります。
帯は、黒喪帯。足袋は白色で五枚こはぜが正装です。
草履は光沢の無い黒色を着用します。
地域によっては、白装束の場合もあります。
夫を亡くした場合の夫人が喪主の場合、誰の色にも染まりませんという主張であったり、古来のしきたりであったりと様々ですが、半襟・長襦袢・足袋・草履に至るまで白色です。
告別式の服装(参列者として)
告別式とは、友人や知人、仕事関係者等が、故人に最後の別れをする儀式です。
交友関係の広い人では、100人以上の会葬者もあります。
告別式の場で、友人知人同士も久しぶりに会うこともあるでしょう。
仕事関係の取引先同士も顔を合わせることもあります。
ただし、声を出しての挨拶はタブーです。
故人とのお別れに来ているのですから、基本黙礼が礼儀です。
喪主の服装のところでは細かく書きましたが、告別式の会葬者であれば、喪主より格上にならない服装が望まれます。
成人男性の場合
成人男性は、洋装でのブラックスーツが主となります。
白色シャツ、黒色ネクタイ、黒色ベルト、他は喪主の欄に準じます。
付け加えるとしたら、香りの問題でしょう。
ヘアクリームやワックスなどは、思ったより匂いを放ちますので控え気味にしましょう。
成人女性の場合
成人女性は、ブラックスーツやブラックワンピースが主となります。
バッグや靴は、黒色であっても、エナメル等の素材が光るものは避けましょう。
ショルダーバッグも避けたいところですが、ショルダーバッグしか持っていない場合は、肩に掛ける行為をせず、手に持つと良いでしょう。
お化粧やネイル、アクセサリーも色目や光物を控えます。
髪の色や髪型もカジュアルにならないように気を付けます。
学生の場合
学生の服装は、成人よりも緩く扱われます。
制服もしくは、黒色や紺色の上着に白いシャツ・ブラウス。
ズボン・スカートの色も地味な黒色、紺色、グレーなどです。
靴下は黒色か白色です。
靴は黒色靴が無い場合、白の運動靴でも構いません。
ただし、汚れは取り清潔な靴で行きましょう。
女児は黒色や紺色のワンピースで、色目を抑えた髪飾りにします。
乳幼児の場合
乳幼児の服装は、特に厳しくは言われませんが、色目を控えたものを着用しましょう。
しかし、乳児は親族以外の告別式には連れて行かないのが原則です。
授乳やおむつ替え、鳴き声などで遺族や周囲に余計な気遣いをさせてしまいます。
また、乳児は抵抗力が弱いですので、体調を崩す原因にもなります。
妊娠時の参列も同じです。ご自身の体調を第一に考えた上、参列を決めてくださいね。
お別れ会(偲ぶ会)・社葬の服装
告別式の類として、別の日に有志の人たちにより行われるお別れ会(偲ぶ会)や、組織の功労者や経営トップ陣などが亡くなった際に、組織が主催して行う社葬などもあります。
こちらは、行う場所により服装が違ってきます。
通常は告別式に準じますが、ホテルで行う場合は、他の利用客への配慮が必要です。
案内状に「平服でお越しください」とあれば、男性はブラックスーツやダークスーツ、黒以外の地味な色合いのネクタイの着用をお勧めします。
女性は、ブラックスーツや色目を抑えたスーツ、ワンピースで派手なアクセサリーやお化粧は控えましょう。
法要での服装
亡くなった方の冥福を祈り喪に服す期間は、故人との親しさにより違います。
仏教では、四十九日、神式では五十日祭が忌明けの目安で、故人の魂が家を離れると言われています。
また、喪明けは基本的には一年とされています。
喪明けはまでは、祝い事を慎む、神社へのお参りを控えるなど言われていますが、地域や各ご家庭により違いがあります。
法要の服装は、三回忌までは喪服に近いものを着用しますが、法要の回を重ねるごとに喪服からダークスーツにネクタイ、靴下も色が入っても可、女性も色目を抑えたワンピースやスーツ、アクセサリーやお化粧も常識の範囲なら可と徐々に緩くなります。
シーン別のポイント
会葬者は、できるだけ肌を見せないようにしますが、猛暑の夏などの時は辛いですよね。
また、冬の寒い時などはコートを着てもいいのでしょうか。
冬と夏の服装のポイントをお話しします。
冬場の葬儀 コートの扱いは?
寒い中、外で告別式を行う場合は、コートは着用しても構いません。
ただし、黒色コートが良いでしょう。
マフラーや手袋など防寒具も黒色が望ましいです。
ここで気を付けたいのが、生き物の殺生につながりますので、毛皮や皮製の着用は避けるということです。
屋外でも焼香の時は、コートは脱ぎます。
また、屋内での式典の場合は、建物に入る前にコートを脱ぎ、中表にしてたたみます。
屋内でも寒い場合がありますね。女性は特に足元が気になります。
以外にもタイツはカジュアルの部類なので、NGと言われています。
30デニールがストッキングとタイツの分かれ目です。黒いひざ掛け等で防寒しましょう。
夏場の葬儀 クールビズはOK?
フォーマルが基本です。
夏の暑い中、白いワイシャツの腕に喪章を着けて、喪服代わりにしたいところですが、喪章は遺族に限られたものです。
また、シャツの袖をまくりあげるのは、着崩す行為に当たりますのでマナー違反です。
スーツの生地で調整しましょう。
春夏向けのブラックスーツは、綿や麻を使用し、空気を通し織り方も粗めにしていますので、オールシーズンのスーツよりも快適です。
まとめ
知識が無いままで服装に拘りすぎると、マナー本に書いてある通りにしなければならないという気持ちになります。
しかし、お葬式の意味を知るとオシャレをしていく場所ではないと理解できます。
悲しみ事の場に行くことも少ないと、いざというときに慌ててしまいますが、心にあるものを表現するのがマナーです。
清楚かつ地味目にし、故人とのお別れという寂しさや悲しさを心に留めていれば、おのずと服装は整っていくものですので、ご参考にしていただけたらと思います。