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葬儀

親が生活保護…葬儀費用に葬祭扶助は申請できる?

投稿日:2019年1月10日 更新日:

葬祭扶助制度のイメージ1
生活保護は、国が国民に対して「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」制度です。
生活保護を受けている世帯は、不慮の事態に備える余裕はなく、お葬式の費用を出すことは難しいでしょう。

生活保護の受給者が亡くなった場合、最低限の葬送のための費用を国に申請できます。
それが、葬祭扶助申請です。

今回は、生活保護を受けている人が亡くなった場合の葬祭扶助について解説します。

■生活保護受給者の葬祭扶助制度とは

葬祭扶助により、自己負せずに無料で必要最小限の火葬を行えます。

・葬祭扶助とは

経済的困窮から、葬儀を行うことができない人に、自治体が葬祭について最低限、扶助する制度です。生活保護法18条において定められています。

参考:生活保護法( 昭和25年05月04日法律第144号) – 厚生労働省

・葬祭扶助制度を利用できる条件

故人が生活保護を受けていても、葬儀を行う方(喪主)に生活力があれば、支給されません。

申請できるのは、以下の場合です。

・喪主である遺族が生活保護を受給している時
・故人が生活保護を受けていて、遺族以外が葬儀を手配する時

前者は、故人や遺族の生活状況を考慮し、管轄の福祉事務所や福祉課が判断します。
後者は、故人の残した金品では賄えない時、不足部分を扶助します。

高齢者ご夫婦で生活保護を受けていた世帯で、夫が亡くなった場合を考えてみましょう。

1.妻が喪主のケース
喪主が生活保護を受けているので、申請できます。

2.別世帯の長男が喪主のケース
長男に収入があれば、費用を負担できますので、申請できません。
長男も生活保護を受けている時は、申請できます。

自治体によっては、生活保護を受給していなくても、喪主の経済状況によって、柔軟に対応します。
葬祭扶助の適用は、福祉事務所や福祉課が判断します。

・生活保護者の葬儀費用は親族が払うべき?

葬儀の費用は、喪主が負担することが多いです喪主は、親族のことが多く、故人の配偶者や実子がなります。
配偶者、実子がいない時は、親や兄弟姉妹がなるケースもあります。

喪主は誰がなるべきか、決まりはないです。

親族以外が葬儀を行う時は、故人が残した金品から費用を出します。残された金品で足りない分を葬祭扶助で支給します。

身寄りのない人は、自治体が行旅人扱い(行旅病人及行旅死亡人取扱法)で、火葬を行います。法定相続人や扶養義務者が特定後、費用を請求されることがあります。

■葬祭扶助制度で行う葬儀でできること/できないこと

直葬だけで、祭壇、読経、戒名代などの費用は扶助の対象になりません。

・支給されるのは「直葬」できる金額だけ

葬祭扶助で行うのは「直葬」だけです。
直葬は、通夜、告別式を行わず、火葬だけを行う葬儀です。

具体的には、下記の費用が葬祭扶助の対象になります。

・遺体の検案(死亡の事実を医学的に確認)
・遺体の搬送
・火葬
・骨壺など納骨その他葬祭のために必要なもの

斎場へ寝台車での搬送はプランに含みます。
運転手の他は、1人~2人しか同乗できません。
徒歩で行けないところでも、遺族は遺体とは別に斎場に向かってください。

・生活保護者の葬儀では戒名はなし?

戒名を付けてもらうには、どんなに安くても数万円単位のお布施が必要です。
ただし、戒名は葬祭扶助の対象にはなりません。
必ず必要なものではないので、戒名はつけない場合が多いでしょう。

戒名は、仏門に入った証として与えられる名です。
出家していない仏教徒でも、死亡時に与えられます。

戒名を頂いたお布施として、戒名料を寺院にお渡しします。
読経料とあわせて包むことが多く、宗派や地域、寺院の格により、金額は変わります。
慣習によるころも大きく、必要最小限とはなりません。

・生活保護者の葬儀には誰が参列できるの?

生活保護を受けていた方は、小規模なお葬式となります。
自治体で火葬だけするということもあります。

特に制限はなく誰でも参列できますが、親族以外の人の参列は遺族の負担も増すでしょう。
あらかじめ、喪主に確認して許可を得ます。

・生活保護者の葬儀で香典を渡してもいい?

冠婚葬祭の御祝い金、香典は、社会通念上、収入として認定するのは適当ではないとされてます。
これを認定除外といいます。喪主にお渡しする香典は、収入にはなりません。

喪主が生活保護を受給していても、香典は、生活保護の受給要件からは外れませんし、申告の義務もないです。

お別れの際のお花や読経料など、葬祭扶助で用意できないものを香典からまかなえます。

・故人が生活保護受給者だと、もらった香典は没収される?

没収されません。
香典は、喪主にお渡しするものです。
喪主の方が生活保護受給者でも、香典は所得として扱われません。

・生活保護者の納骨はどうすればいいの?

葬祭扶助は、遺骨を骨壺に収めるまでが対象で、納骨は対象外になります。
菩提寺がある時はそちらに納骨できますが、お墓のない人は、どこに納骨するのでしょうか?

お墓を購入するには費用もかかり、大変です。

お墓ではなく、納骨堂に預けることもできます。
納骨堂には、個人、家族、合葬など、種類もいろいろあり、費用を選べます。
合葬であれば最低5万円程度で済みます。安いゆえに希望される方が多く、預けられないこともあります。

納骨しない人もいます。海、山への散骨、自宅に保管する「手元供養」を選ぶ人も増えています。

また、収骨しない選択をする人もいます。

収骨とは、火葬の後に骨を拾い、骨壺に収めることです。地域で収骨の方法は違います。
東日本では、すべての遺骨を骨壺に収める「全収骨」を行い、西日本の多くの地域では、喉仏、歯など部分的に遺骨を収める「部分収骨」を行います。

収めなかった遺骨は、通常、斎場で供養し、埋葬します。
一部の火葬場では、まったく収骨をしないことを認めています。
遺骨を連れ帰らない時は、理由を明記し、捺印、署名した書類が必要です。

■葬祭扶助申請の方法/受給の流れ

生活保護を受けている方が亡くなってから、葬祭扶助を申請、葬儀終了までの流れを確認します。

・1.生活保護受給者の死亡後、福祉事務所で手続き

亡くなられた直後、管轄の福祉事務所や福祉係に相談、葬祭扶助を申請します。死亡診断書または死体検案書が必要です。

死亡届を提出する時に火葬場使用料の減免を申請します。

・2.受給決定後に葬儀社へ依頼

必ず、葬儀を行う前に申請し、受給が決まった後で葬儀社に依頼します。依頼時に、葬祭扶助を利用することを伝えます。

葬祭扶助は、申請者にではなく、葬儀会社に支払われます。葬儀の後で申請しても、葬儀を執り行う費用があったとみなされ、受理されません。

・3.葬儀を行う

葬祭扶助は直葬だけです。通夜式、告別式は行いません。

・4.福祉事務所から葬儀社へ費用が支払われる

葬儀が終わったら、葬儀社から、福祉事務所や福祉係に葬儀費用を請求します。この時、葬儀内容を記載した書類を提出します。葬儀費用は、直接、葬儀社に渡り、葬祭扶養申請者にはいきません。

■葬祭扶助で葬儀を行う時の注意点

必ず葬儀を行う前に葬祭扶助の申請をしてください。申請する方と故人の住民票が異なる場合は、申請する方の住民票がある自治体に申請してください。

・葬祭扶助の申請は葬儀の前に

葬祭扶助は、管轄の福祉事務所や福祉係が内容をチェックした後で葬儀社に直接支払います。
申請者と福祉事務所間でお金のやり取りはありません。

葬儀を依頼する際には、葬儀社に葬祭扶助で執り行うことをお伝えください。
葬儀社の方で、安く葬儀をしてもらうように配慮していただく必要があります。

先に葬儀を行い、後から葬祭扶助の申請をしても、受理されません。
一時的に立て替えるつもりで生活費から捻出しても、葬儀を行うだけの費用があったとみなされます。

申請は、必ず、葬儀(火葬)を行う前にしなければなりません。

・お供えの花などは追加できない

葬祭扶助で行えるのは、直葬に必要な最低限の内容です。

祭壇を飾ったり、花を供えたり、読経や戒名代をいただいたりなどは、葬祭扶助の対象外となります。お布施や花を購入する代金が捻出できるのならば、その費用を火葬費用に充当できるとみなされるのです。

・申請する方と故人の住民票が異なる場合は、申請する方の住民票が優先

原則としては、申請者の住民票がある自治体にある福祉事務所へ申請します。ですが、葬祭扶助の上限金額など、扶助の内容は地域により異なります。故人の住民票がある自治体の方が条件がよくてそちらで申請したい場合、生活保護費を負担していたほうの自治体の福祉事務所に相談してみてください。自治体によっては、柔軟に対応してくれるところもあります。

■葬祭扶助を受けても相続放棄はできる?

相続人が、亡くなった方の財産を一部でも処分したら、相続放棄が認められないことがあります。
葬祭扶助は、相続放棄に影響するのでしょうか?

・葬祭扶助は相続放棄に影響しない

結論から言うと、葬祭扶助制度を利用したことで相続放棄ができなくなることはありません。

相続放棄は、故人の相続財産を処分すると出来なくなります。
ですが、葬祭扶助は、「相続財産」に含まれません。

以下に詳しく解説します。

・相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)のすべての相続財産を放棄することです。すべての相続財産とは、預貯金や有価証券、不動産などの「プラスの財産」だけなく、負債や損害賠償責任などの「マイナスの財産」も含まれます。預貯金だけ相続して、借金だけは放棄するということはできません。

・相続財産に含まれるもの/含まれないもの

相続財産には、不動産や預貯金、株式、自動車、貴金属などの「プラスの財産」だけでなく、被相続人(亡くなった方)が負っていた債務(借金)のように「マイナスの財産」も含みます。

相続財産に入らないものに、被相続人が受給していた年金や生活保護受給権、扶養請求権などがあります。
これらは被相続人固有の権利ですから、相続財産とはなりません。ただし、すでに取得したお金に対しては、相続財産となります。

生命保険金や死亡退職金も相続財産にはなりません。相続財産は、相続開始時(通常、亡くなった時)に、被相続人に属していた財産です。
生命保険金、死亡退職金は被相続人の死亡により発生しているので、対象にはなりません。

ですが、相続税にはご注意ください。税務上は、生命保険金や死亡退職金は、相続財産になります。
生命保険金、死亡退職金は、相続税の対象となり、その金額が相続財産に加算されて相続税が課税される可能性があります。

生命保険金、死亡退職金など、相続財産でないのに相続税が課税されてしまうもののことを「みなし相続財産」といいます。

■まとめ

生活保護受給者の葬儀をする際は、葬祭扶助制度を利用できます。
ただし、利用できるのは、喪主に経済力がない場合か、第三者が葬儀をする場合です。

葬祭扶助制度では、遺体の検案・搬送、火葬、骨壺など葬祭のために必要なものが対象になります。
戒名や読経は含まれないので、注意が必要です。

また、葬祭扶助制度を利用して親の葬儀を上げたとしても、相続放棄には影響しません。

生活保護受給者の親や配偶者が亡くなった場合は、葬儀を上げる前に役所の窓口に相談しましょう。

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