葬儀に参列する場合は考えることは服装と香典の金額だけ済みますが、これが運営側の喪主になった場合はそうはいきません。
喪主は葬儀の全てをマネジメントしなければならないからです。特に葬儀の段取りがほぼ整い、参列者の顔ぶれも見えてきた段階で考えなければならないのは、その葬儀に参列する人たちの席順です。
席順を間違うと、失礼になってしまったり、ひんしゅくを買ったりすることになってしまいます。
ここでは葬儀での席順、そしてそのあとの精進落としなどの会食の席順などについて解説します。
目次
■なぜ葬儀の席順が大切なのか?
・席順で誰が喪主か、故人とどういう関係かを示す
・席順を決めて焼香の流れをスムーズに
■お葬式、葬儀の席順の基本的なルール
・葬儀の席にも上座と下座がある
・左右は縁戚の有無で分かれる
・縁戚関係の席順
└基本は血縁関係の濃い順で座る
└故人の嫁など喪主の席は最前列の一番内側(通路側)
└喪主の妻、嫁、孫など遺族の席順は家族単位が一般的
・一般席の席順
└一般席の席順=社会における上下関係
└社長などVIPが来る場合は上座に席を決めておく
└一般弔問客は自由
└地域によっては特別な慣習も
└赤ちゃん連れの親族がいる場合は席順にも配慮を
・席順の決まりがない葬儀や法事もある
■葬儀後の会食、精進落としの席順は?
・会食の席での上座と下座
・葬儀とは反対でゲストが上座、喪主や遺族は下座
・僧侶が同席する場合は最上座
■喪主は事前に席順を考えておく
・事前に決めておかないと葬儀の現場が混乱することも
・会食のテーブルに「席札」を用意することも
なぜ葬儀の席順が大切なのか?
比較的若い世代や、核家族で育った人には葬儀での席順などどうでもよいのではと思うかもしれません。
しかし、そのような儀礼にこだわる人、年配の人、親戚間の上下関係に厳しい人にとっては、葬儀の席順は大問題なのです。
席順が決まっているのには意味があります。
席順で誰が喪主か、故人とどういう関係かを示す
1つは上下関係の問題ではなく、その葬儀において誰が喪主で、誰が遺族かということを明確にするためです。
遠い親類の場合など、あまり喪主や遺族と顔合わせをしていない人にとっては、誰に弔意を伝えればよいのか、挨拶をすればよいのか、明確に基準がなければ間違って挨拶をし、あるいは挨拶をしそこない、失礼に当たってしまう危険性があります。
それを避けるために席順を決めて、席順だけで誰が喪主で、誰が遺族か分かるようにするのです。
席順を決めて焼香の流れをスムーズに
また「席順=焼香の順」でもあります。
日本では、葬儀の多くが仏式ですから、その時に行う焼香を、喪主、遺族、親族、一般会葬者の順でスムーズに行うためには、席順自体がその順番になっているほうがよいのです。
お葬式、葬儀の席順の基本的なルール
ではお葬式における席順は基本的にどのようなルールで決めていけばよいのでしょうか。
葬儀の席にも上座と下座がある
日本人の中の一定数の人は、非常に上下関係にこだわります。
会社でも上司には問答無用で従い、部下には上から指示するということが、まだまだ一般的です。
江戸時代の士農工商から続く日本人のメンタリティがそのようにさせているのです。
したがって、葬儀の席でも上座と下座があります。
その上下関係のルールは、祭壇に向かって最前列が最も上座であり、後ろになるほど下座ということが基本です。
左右は縁戚の有無で分かれる
また葬儀会場での座席のレイアウトは、祭壇に対して、中央に通路があり、左右に席が分かれていることが一般的です。
その場合、祭壇に向かって右が血縁関係、縁戚関係のある親族席、左側がそれらのない友人、知人、会社の上司、同僚らの一般席です。
縁戚関係の席順
基本は血縁関係の濃い順で座る
親族席内での席順は、上座から喪主、遺族、親族の順番になることが普通です。
また座席が横長のレイアウトの場合は、喪主の隣から順番に血縁の濃い親戚が座ります。
レイアウトが縦長の場合は、喪主の後ろに順番に座ります。
故人の嫁など喪主の席は最前列の一番内側(通路側)
あるいはそこまで厳密には決まっていない場合でも、喪主だけは最前列の1番内側ないし通路側に座るのが決まりです。
これは上でも書いたように、焼香の順番がスムーズにいくようにするためであり、葬儀中に会葬のお礼の挨拶をする場合にマイクに近くて便利ということであり、何より参列者に喪主が誰かということを明示するためでもあります。
喪主の妻、嫁、孫など遺族の席順は家族単位が一般的
また、血縁の濃い順と言ってもわかりにくいかもしれませんから、一般的な順番を提示しましょう。
まず葬儀で「遺族」に該当するのは、配偶者、両親、故人の子供とその家族、兄弟姉妹とその家族です。
しかし、血縁の濃い順だからと言って、まず故人の親が並び、次に配偶者と個人の子供が並び、そして兄弟が並び、そのあとに兄弟の家族が並ぶ、というところまで厳密には運営しません。
むしろ、遺族の場合は、血縁関係の濃さより、故人の配偶者とその子供、さらにその子供とその家族、兄弟姉妹とその家族というように、家族ごとにまとまって座ることの方が多いです。
ただしそのように家族ごとに並んだ場合、故人の兄弟姉妹が下座になりすぎる場合は、兄弟の夫婦だけがまとまって上座から順番に座り、故人の孫やひ孫たちは、そのあと続いて座って調整する場合もあります。
一般席の席順
一般席の席順=社会における上下関係
親戚縁者は多少席順が狂っていても、親族内の問題なので大きなトラブルにはならないケースの方がほとんどです。
しかし一般席の場合の方はそうはいきません。
なぜなら、一般席の席順の方が、社会における参列者の地位と連動していることが多いからです。
社会的に上位にいる人を、部下や子会社の社員のような社会的に下位の人よりも下座に座らせてしまうことは、見る人から見れば大問題になって、喪主の社会的な立場に差しさわりが出てくる可能性さえあります。
特に、世話役代表や葬儀委員長などは社会的に上位の人の場合が多いですし、あるいは故人が現役の社会人の場合は会社関係の参列者が多くなりますので、特別に注意が必要です。
この時の席順は、まず世話役代表または葬儀委員長が最も上座です。
そして会社関係の中での、役職者や故人の上司に当たる人がその次の上座になります。
また会社関係と、地元の政治家などが同時に参列する場合は、それぞれが別の上下関係のルールを持っていますから非常に扱いが難しくなります。
その際には年齢順にしておけば無難です。
社長などVIPが来る場合は上座に席を決めておく
特に会社の社長や役員、あるいは地元の政治家などのVIPが参列する場合は、椅子に席札を貼って、あらかじめ席を決めておいたほうがよいでしょう。
一般弔問客は自由
一般席の場合は、その点だけ注意すれば、後の参列者の順番は祭壇に近い方から順に自由に詰めて座ってもらえば、あとはさほど気にする必要はありません。
場合によっては、一般席が埋まっていれば、親族席の後列に一般参列者が座ることもあるほどです。
地域によっては特別な慣習も
ただし以上はごく一般的な話であって、地域によっては独自の席順があるかもしれません。
ですから、地元に帰って葬儀を営む場合などには、念のため葬儀前に、両親や親族の年長者などに確認したほうがトラブル防止にもなり、安心です。
そして地域独自の席順ルールがあればそれに従いましょう。
赤ちゃん連れの親族がいる場合は席順にも配慮を
ただし、以上は基本的なルールであって、場合によっては実情に沿ったアレンジも必要になります。
その1番の例が、遺族や親族の中に、赤ちゃん連れで参列する人がいる場合です。
その場合には、その親子で出入口の近くに座らせてあげましょう。
そうすれば葬儀中に赤ちゃんがぐずったり、泣き出したとき、すぐに会場の外へ出られるので、葬儀の進行の妨げにもならず、またお母さん本人にとっても気遣いしなくて済むからです。
席順の決まりがない葬儀や法事もある
ただし以上の席順のルールは、ごく一般的な葬儀でのものです。
したがって、最近増加している、家族葬や自由葬など、身内だけで行う小規模な葬儀や、家族だけが集まる法事などでは、このルールは該当しません。
そもそも葬儀の流れ自体も、喪主の形式ばった挨拶などもなく、比較的自由なので、席順も厳密でないことの方が多いのです。
葬儀後の会食、精進落としの席順は?
以上は葬儀という「弔事」の席順でしたが、この葬儀後の会食などは「慶事」ではないものの、席順の考え方ががらっと慶事に近くなりますので非常に注意が必要です。
会食の席での上座と下座
まずは会食の席の上座と下座はどうなっているかというと、座敷で催す場合は、床の間に近い席が上座、出入り口に近い席が下座です。
レストランなどテーブル席の場合や床の間がない部屋の場合は、出入り口に近い席が下座、出入り口から遠くて、かつ会場の中央に近い席ほど上座になります。
葬儀とは反対でゲストが上座、喪主や遺族は下座
そして最大の注意点は、葬儀においては喪主が主役でしたが、会食では参列者が主役だという点です。
つまり会食では、喪主がホストになって参列者をもてなす、というスタンスになるのです。
従って、喪主だけは上座に座って挨拶をしたり、その場を仕切る役割を担いますが、喪主以外の親族はすべて下座に座るのが一般的です。
その下座の中で年齢順など、縁戚関係の中の上下関係で座ります。
そして会食の席順の考え方は葬儀の一般席の席順の考え方とほぼイコールになります。
僧侶が同席する場合は最上座
会食に僧侶も参加する場合もあります。その場合には、僧侶が葬儀委員長やVIPを飛び越えて、最上座になります。
そして僧侶の隣には喪主が座って、しっかりとおもてなしをするのが大切です。
もしも僧侶が会食に参加しない場合でも、お食事代として「粗飯料(御膳料)」をのし袋に入れて渡したほうがよいでしょう。
金額は僧侶1人につき5千円~1万円程度です。
喪主は事前に席順を考えておく
以上が葬儀および会食での一般的な席順のルールです。
もしも自分が喪主として葬儀を執り行うことになったら悲しみに浸りたいかもしれませんが、あえて実務に徹して、このルールをベースに席順を事前に決めましょう。
事前に決めておかないと葬儀の現場が混乱することも
葬儀および会食の席順を決めておかないと、席に着いた段階で譲り合いが始まったり、上下関係が逆転していて本人だけではなく周囲が居心地悪くなるなど、現場が混乱してしまいます。ですから、事前に席順を決めておき、近しい親族と情報共有して誘導を頼んでおきましょう。
会食のテーブルに「席札」を用意することも
また会食の場合は、席に席札を用意してもよいでしょう。
その方が誘導の手間もありませんし、席順で揉めることも防げます。会食をどこで行うかにもよりますが、お寺の宗門徒会館や、料理店で行う場合は、席札の用紙を用意していることもありますので、確認してみましょう。
まとめ
喪主は故人に1番近い存在ですから、葬儀の時には最も悲しみを感じているかもしれません。
しかし葬儀はある意味非常にオフィシャルな儀礼ですから、悲しみに暮れてばかりいるわけにいかないのが現実です。
特に席順や誰に挨拶を頼むかなどは、喪主の社会的な常識の有無と直結し、かつその後の社会人生活の居心地の良さと関係しますから、しっかり考え、準備をするに越したことはありません。
そのためには席順の基本ルールをよく理解して、失礼のない席順を考えるようにしましょう。