法事は初七日から始まって三十三回忌まで、無事に弔い上げが済むまでは何回も行わなければなりません。
四十九日や一周忌など重要な法要であれば忘れることはないでしょうが、それ以外の法要はうっかり忘れた、ということは十分にあり得ます。
また覚えていても、行うべき日に用事があって行えないという場合もあるでしょう。そのような時に、祥月命日よりもあとで法事を行っても良いのでしょうか。
今回の記事では、命日より後に法事をしても良いのかについて解説します。
法事は命日より後ろ倒しても大丈夫?
法事は祥月命日よりも後ろに倒しても良いのでしょうか。
命日後に法事をずらすのはOK?
亡くなったのと同じ月、同じ日のことを祥月命日と言います。
四十九日や百か日は祥月命日とは関係のない法事ですが、一周忌などの年忌法要は、祥月命日に催すのが基本原則です。
たとえば9月7日に亡くなっていたら、1年後の同じ9月7日に一周忌を行います。
しかし、うっかり年忌法要を忘れたり、「数え」で年数を数えるべきところを「満」で数えていたために1年ずれていしまっていたり、あるいは覚えていても祥月命日にあたる日が平日で、参列者の都合が悪かったりする場合は十分にあるでしょう。そのような場合はどうしたらよいのでしょうか。
ずらすなら原則前倒しにする
まず年忌法要の日が平日で都合が悪いなどの時には、祥月命日の前の土日に前倒すことはOKです。これは一般的に行われていることです。祥月命日の前に行うのは、昔から「法事は先に延ばさない」という考え方があるからです。
なぜそのような考えが浸透しているのかについてはよくわかっていませんが、おそらく法事を後ろ倒しにしてしまうのは、故人をないがしろにしてしまうからということなのでしょう。
また前倒すにしても、祥月命日からあまり前にするのも良いとは言えません。できれば、祥月命日の直前の土日に行うのが良いでしょう。
複数の故人の年忌法要が同じ年に重なってしまう場合など、何回も法事を行わなければならず、それが遺族や参列者の負担になる場合は、重なる年忌法要の中で1番日付けが早いものに合わせて行うことも一般的に行われています。たとえば、3月20日が祖父の十三回忌で、3月7日が父親の三回忌の場合、三回忌に合わせて3月7日の前の土日に行うということです。
後ろにずらすのはOK?
では逆に、年忌法要を後ろ倒しにすることは良いのでしょうか。たとえば一周忌の場合はどうでしょう。
一周忌は故人が亡くなって日が浅いため、忘れるということはほぼないでしょうが、しかし遺族の都合などでどうしても祥月命日よりも前に行えないという場合はあり得ます。
そのような場合は、やむを得ませんから、祥月命日よりも後に一周忌を行いましょう。一周忌は絶対に省略できない法要ですから、祥月命日よりも後になっても、行わないよりはよいという判断です。
しかしその場合も可能な限り、祥月命日が過ぎてから直近の日に行いましょう。
三回忌・七回忌などの年忌法要の日を過ぎた場合、日を間違えた場合
これが三回忌、七回忌など亡くなってから年数が経つと、ついうっかり法事を忘れていたということがあり得ます。
1番よくあるケースは、数えで法事をしなければならない所を、満で考えていたという場合です。
例えば、七回忌など数えで7年目、満6年目に行わなければならない法事を、満7年目でよいと思い、1年間ずれてしまっていた、というものです。
その場合も年忌法要を行わないよりは、遅れてでも行ったほうが良いですから、急いで法事を行いましょう。
その時、気を付けている親族などの中には、法事の案内が来ないからと言ってヤキモキしている人がいる場合もあるので、法事の案内を出す時に、何も知らないふりをしてハガキだけを送るのではなく、電話で事情をていねいに話すことが大切です。
またお墓が近くにある場合は、法事の前に家族だけでお墓参りをして、年忌法要が先になることについて謝っておくとこちらの気持ちも軽くなります。
法事をしないというのはあり?
うっかり法事を忘れて日が経ってしまっていた場合、その法事を省略するということは良いのでしょうか。
あるいは、法事をするべき時が近づくのを知っていても、あえて法事を行わないという判断は許されるのでしょうか。
最近は日本人の死生観も大きく変化し、法事や仏事などの重要性をそれほど感じないという人も増えています。特に亡くなってから年月が経っている故人の法事や、二十七回忌など故人の思い出をあまり持っていないにも関わらず、顔もよく知らない故人の法事などの場合、法事自体を行う必要性を感じないのは、現実問題としてあり得ます。
そのような場合は法事を何を置いても絶対に行うべきだとは、現代日本で主張できる人はあまりいないでしょう。
したがって特に重要な法事以外は、省略するのもやむなし、ということです。
しかし重要な法事だけはぜひ行うことをおすすめします。
死後の世界を信じていなくても、行うべきことを行わないと、何だか気持ちが悪く、仮に悪いことが重なった場合、法事を行わなかったからではないかと疑心暗鬼になってしまうかもしれません。
ですから重要な法事だけでも行っておいた方が、生きている家族にとって安心できることでもあるのです。
ではどの法事が重要なのでしょうか。それは個々の法事の意味合いを知っていると判断することができます。
日本人の民俗的な考えから、奇数の日にちや年数の時に法事を行うということが一般化していました。その奇数の中でも特に、3、5、7という数は、中国から伝わった陰陽道の考えで言っても重要性が高いため、その倍数の時に法事を行うようになりました。
つまり四十九日は、7×7=49で7の倍数ですし、三回忌、七回忌、十三回忌、三十三回忌なども陰陽道で重要だと言われる数に当たります。
特に重要な法事は?
その中でも重要な法事がいくつかあります。
1つは四十九日法要です。人間は亡くなってもすぐには成仏してあの世に行くことはなく、しばらくはこの世にとどまるとされています。
そして亡くなって49日が経つと成仏してあの世に行きます。
したがって、故人があの世に無事に成仏できるように亡くなって49日目には法事を行います。
ですから四十九日法要は非常に重要で、省略することは避けなければなりません。また遺骨をお墓に納めるのも故人が成仏してからなので、四十九日法要に合わせて行うのが一般的です。
そのため納骨の法要も兼ねて四十九日法要を執り行うのです。
次に重要な法事は、百か日、一周忌、三回忌です。
これは法事を行うことの起源となっている、中国の道教の中で、故人が亡くなってあの世に行った時に、極楽へ行かせるか地獄に落とすかを判断する十王という神様を祀るのが、ちょうど故人が亡くなってから、100日目、1年後、2年後だとされているからです。そのような宗教上、習俗上の理由ではなくても、故人が亡くなってから間もない時に行われる以上の法要は、故人だけではなく、遺族や親族、知人の悲しみを癒してくれますから、ぜひ行うべき法事です。
その次に重要な法事は七回忌、十三回忌です。
これは中国の道教が日本に伝来して日本流に変化する中で生まれた、故人が地獄に落ちないように祈るためにの十三仏信仰というものに由来した年数です。したがって七回忌、十三回忌も行ったほうが良いでしょう。
故人が亡くなってから数えで33年目に行う三十三回忌も「弔い上げ」として行った方がよい法事です。
故人の霊魂は亡くなってから満32年間は個人としての人格があります。その人格が33年目には消滅し、故人の霊魂は祖先の霊魂と一緒の祖霊の1つになって、一族を守る存在へと昇華します。したがって、そのことを供養する三十三回忌以降は個人としての法事は行いません。このことを弔い上げというのです。
ですので、もしかすると故人の顔をあまり覚えていないかもしれませんが、三十三回忌は行ったほうが良いのです。
以上の法事以外の、十七回忌、二十三回忌、二十五回忌、二十七回忌は先ほど書いたように、日本人の3と5と7の数字を重視する習俗から江戸時代になって付け加えらたものだとされています。したがって、無理やり催さずに、場合によっては省略してもよいでしょう。
後日法事を行う場合のポイント
以上で挙げた、省略しない方がよい法事を、都合によって祥月命日よりも後に行う場合は、以下のことがポイントになります。
法事をしてはいけない日はある?
多くの場合、法事を後ろにするにしても、土日に行うでしょう。
しかし日本には土日などの曜日のほかに、六曜というものがあり、その日によっては弔事を行わない方がよいという考え方が根強くあります。
六曜とは先勝(せんしょう、またはせんかち)、友引(ともびき)、先負(せんぷ、またはせんまけ)、仏滅(ぶつめつ)、大安(たいあん)、赤口(しゃっこう)の6つのことで、カレンダーや手帳によっては、日にちのところに曜日とは別に小さく記載してあるでしょう。
その六曜を信じる風習で言うと、たとえば結婚式は大安に行い仏滅は避ける、葬儀は友引に行わないなどがあります。その延長で、法事を予定している日が友引の場合、友をあの世に招き寄せる、という意味になるので避けるべきと考える人もいます。この場合はどうしたらよいのでしょうか。
結論から言って、六曜を気にする必要は全くありません。
なぜなら六曜は古い中国の占いで決まっていたもので、本来は太陰暦で使われていました。しかし太陰暦に当てはめると、大安や仏滅が順番に来るだけのことで、あまり意味を感じられず、そのため中国でも、太陰暦を用いていた古い日本でも、六曜は全く考慮されていませんでした。
しかし明治時代になって太陰暦から太陽暦に変わると、日にちと六曜の組み合わせがばらばらになり、結果、仏滅2日続く、というようなことが起き、いかにも六曜に意味があるような感じを与えるようになったのです。ですから六曜には基本的に意味がありません。したがって、法事の日を後ろの倒して、その日が友引などであっても全く気にせずに催してよいのです。
すべての年忌法要をするのが大変だと思ったら
また一周忌から五十回忌まですべての法事を行うと1人の故人の対して9回の年忌法要を行わなければなりません。
この法事を行うべき故人が1人であればよいですが、複数になると場合によっては毎年、あるいは数カ月ごとに法事を行わなければならない、ということも起こり得ます。
それは遺族にとっても、また参列者も多くの場合重複しますからその人たちにとっても、金銭的に、あるいは物理的に負担になります。
その場合は、先ほど書いたように、特に重視するべき法事以外は省略するか、あるいは日にちが近い法事を一緒に行う、など合理化しても良いでしょう。
特に複数の法事をまとめて行うことは、古くから「併修(へいしゅう)」や「合斎(がっさい)」などととして一般的でした。
ですから気にせず行ってよいのです。
まとめ
法事を行う日にちの考え方についておわかりいただけたのではないでしょうか。重要な法事は、仮に祥月命日よりも後になっても行ったほうが良いです。
しかしそれ以外の法事は省略するのも現代日本ではやむを得ないでしょう。その際には以上で解説したことを参考に、行うかどうかを判断してください。