自宅に仏壇がある時に、供養する気持ちは十分あるものの、毎日お供えをあげるのが時々面倒くさいと思うことはありませんか?
特に花は生花を供えるのが基本とはわかっていても、すぐに枯れてしまうことを考えると、造花にできれば楽なのに、と思うかもしれません。
またわずかな額かもしれませんが、花が枯れるたびに生花を買うのもちょっとした出費で、積み重なれば大きくなります。
今回の記事では、仏壇に造花を供えても良いのかどうかついて解説してます。
仏壇とは
仏壇に供える花を造花にしてよいかどうかということを考えるためには、そもそも仏壇とは何かということを知っておいたほうが良いでしょう。
仏壇の発祥は飛鳥時代
仏壇の歴史は、仏教が伝来した6世紀中ごろの飛鳥時代までさかなのぼります。「玉虫厨子」と言うものの写真を日本史の教科書などで見たことはありませんか?
実は「玉虫厨子」とは高貴な人が使っていた仏壇なのです。玉虫厨子が作られた飛鳥時代にはすでに仏壇があって、お参りされていたということがわかります。
その後仏壇は貴族が自宅でお参りするために作られていましたが、江戸時代に「寺請制度(てらうけせいど)」という日本人はすべてどこかの寺院に所属しなければならないという幕府の命令が出て以降、庶民の間でも家に仏壇を置いて、毎日お参りするようになりました。
仏壇とは何か
仏壇とは一口に言うと「自宅にある寺院」です。
通常はお参りをするためには、菩提寺まで出かけていかなければなりませんが、それが毎日となるとなかなか大変です。
現実問題としてその時間が取れないこともあるでしょう。
そのような時に自宅に寺院があれば、手軽に故人や祖先にお参りすることができる、自分の帰依している本尊をいつでも拝むことができる、ということで作られるようになったのが仏壇なのです。
仏壇は何の役に立つか
では仏壇が家にあった場合、どのような役に立つのでしょうか。
精神的な支柱
現代人は物質的には豊かになりましたが、それを反比例して心の豊かさは失われていっているようです。
毎日ストレスに苦しむ、というのもその心の豊かさが失われたことが原因の1つでしょう。
そのような時に、自宅に仏壇があると、毎日拝むことで心の平安が生まれます。
先祖供養の場所
人間は1人で生まれてきて存在しているのではありません。
親がいて、その親を生んだ祖父母がいて、さらに祖父母を生んだ祖先がいて、初めて自分が存在します。
そう考えると自然に祖先に対する感謝の念が生まれませんか?
仏壇はそのような祖先に感謝を伝える、つまり先祖供養をするための場なのです。
故人に話しかける場所
苦しいことや悩んだことがあった場合、自然に自分を大切にしてくれた故人に問いかけたりしませんか?仏壇が家にあれば、毎日拝むことで、故人と会話をすることができます。
以上のような役割が仏壇にはあるので、家に仏壇があることは大切なのです。
仏壇に花を供えるのはなぜ?
ではその大切な仏壇に花を供えるのはなぜなのでしょうか。
仏壇に花を供える理由
仏壇に花を供える理由には以下のようなことがあります。
花の姿が修行の姿と重ねられる
宗教にはそれぞれ教義があります。当然仏教にもあります。
仏教の教義は、簡単に言うと、毎日善行を積んだり、修行を行うことで、悟りに繋がり、その結果亡くなった時に極楽へ行ける、というものです。
一方で花は厳しい自然に負けないで、厳しい季節の時にはじっと耐え、季節が来ると花を咲かします。
その姿はまさに極楽へ行くために修業を積む姿と重なります。
仏壇に花を供えるのは、そのような修行のありようを生きている人間が忘れないようにするため、と言うのが大きな理由です。
遺族の気持ちの反映
花を供える時には、故人の好きな花を選んだり、季節にふさわしい花を探してきたりしませんか?
それは間接的に故人を思い出すことになります。
故人への供養の方法はいろいろとありますが、最も大切なのは、故人のことを思い出したり、思いやったりすることです。
ですから仏壇に花を供えるのは、故人に対する遺族の気持ちを表し、それによって故人を供養することが理由なのです。
花を供えるようになったきっかけ
仏壇に花を供えるようになった歴史は、仏壇の歴史とほぼ重なります。
故人に花を供える、という意味で言えば仏壇よりも花を供えることのほうがさらに古いと言えるかもしれません。
というのは昔は故人を埋葬する際に、花も一緒に埋めていました。昔は土葬でしたので、うっかりすると野生の動物が遺体を掘り返してしまったからです。
そのような悪さを防ぐために、動物の嫌う臭いのする植物を遺体と一緒に埋めていたのです。
そのような風習が、お墓のある地域に野生の動物が来なくなることと並行して、形優先になり、動物の嫌う植物から、故人が喜ぶきれいな花を埋めるようになり、それがいつしか埋めるのではなく、埋葬した場所に花を供えるようになったのです。
造花やプリザーブドフラワーを供えてもいい?
では供える花を造花やプリザーブドフラワーでも良いのでしょうか。
供える花は造花でも良い?
まず仏壇に供えるのは造花でも良いのか、という話です。
これについて、仏教の教義で「ダメ」という決まりはありません。
しかし僧侶や古い価値観を持っている人の中には「造花はダメ」という考えを持っている場合もあります。
なぜなら仏壇に生花を供える理由があるからです。
1つは香りです。故人はあの世では食べ物を摂りません。
では何も食べないかと言うとそうではなく、香りが実はごちそうなのです。
仏壇に線香を供えるのも、その香りがごちそうになるからです。
ですから花に関しても、香りのする生花にした方が故人が喜ぶので、造花はダメだという話になるのです。
また遺族にとっても、生花が毎日だんだんと枯れていくのを見ると、生きとし生けるものには寿命があるということを自ずから悟るでしょう。
それが仏教の教えであり、それを感じることは修行の1つになるので、遺族にとっても生花のほうが良いのです。
造花にするメリット
しかし現実的に言って、生花を造花にするメリットもあります。
それは何といっても費用の点です。
仏花は平均すると1束300円から高いものであれば1000円程度はかかります。
これを1週間ごとに活け替えると、月に4000円、年間で5万円近くになってしまいます。これは大きな負担ですが、しかし造花にすればこの負担がなくなるのです。
また冒頭で書いたように、生花は当然枯れますから、枯れれば取り換える必要があります。
長持ちさせるためには水を取り替えなければなりません。それが毎日のこととなると結構な手間で、忙しい毎日を送っている現代人にとっては大変です。
しかし造花にしてしまえそのような物理的な負担も軽くなるのです。
お世話が負担にならない供花
では普通に生花を供える以外に、負担を減らせる供花にはどんなものがあるでしょうか。
シルクフラワー
素材にシルクを採用した造花をシルクフラワーと言います。その中でシルクフラワーは生花をと同じような質感が得られるので、非常に重宝されています。
アレンジメントフラワー
アレンジメントフラワーとはカゴなどに入れたスポンジに水を含ませ、そこに花を挿したもののことです。
アレンジメントフラワーも生花ですが、毎日水を変えるなどの手間を減らせます。また、見た目も豪華で華やかです。
アレンジメントフラワーの歴史も古く、古代エジプトやギリシャの時代には既にあったと言われています。
プリザーブドフラワー
プリザーブドフラワーとは、生花から水分を抜き、グリセリンの含まれた溶液に浸して、劣化を止めてしまうという、生花に造花と同じような効果を与えたものです。 造花と生花の中間のようなものです。
見た目は生花とそっくりなので、生花の代わりに供えると、造花でありながら生花を同じような印象を与えることができます。
ただし少し高価なのが欠点です。
造花はどこで買う?
では造花はどこで買えばよいのでしょうか。
100均
1番手軽な購入場所は100均でしょう。
100均に行けば、いろいろな花を模した造花が売られていますから、好きなものを選ぶことができます。
ネット通販
近所に100均がない場合は、ネット通販で買っても良いでしょう。
ネット通販であれば、100均よりもさらにいろいろな造花が販売されています。
ホームセンター
ホームセンターでも造花は売られています。
ただし、ホームセンターの場合は多少種類が少ないかもしれません。
造花の飾り方
造花はどのように供えたらよいのでしょうか。
造花でも生花と同じように供える
生花を仏壇に供える場合は、「花立」という仏具に水を張って、そこに挿します。花立は仏壇の左右に1つづつ置き、両方に同じ花を生けます。
また花は仏壇側ではなく、お参りする人の側に表面を向けます。
造花の場合も、以上のような生花の供え方と同じようにしましょう。もちろん花立に水を張る必要はありません。
供える時の作法
仏壇に花を供える場合は、知っておいた方が良い作法があります。これは生花の場合も造花の場合も同じです。
まず1つめは、供える花の本数です。仏壇に供えるに花の本数は奇数と決まっています。したがって、供える本数は3本、5本、7本にしましょう。
2つめは花の色です。仏壇に備える花の色は派手すぎないものを選びます。白、赤、黄、紫、ピンク、水色などの花を選びましょう。
その色の中で複数のものを組み合わせるのはOKです。
まとめ
仏壇にお参りする際に1番大切なのは形よりも、お参りし祖先を供養しようという心です。ですから心さえあれば、ある程度お参りの仕方を簡略化させるのは問題ありません。
その一環としてあり得るのが、生花ではなく造花を仏壇に供えることです。
毎日が忙しくて時間が取れないという場合は、生花を造花にして手間を省き、その代わりに毎日仏壇に手を合わせることは励行しましょう。