一日葬とは、通常二日間にわたって行われる通夜と告別式のうち、一日目の通夜を行わず、二日目の葬儀・告別式のみを行う新しいお葬式の形です。「ワンデーセレモニー」とも呼ばれています。
直葬(火葬式)と同じように思っている方も多いようですが、実際は大きく違っています。直葬は通夜・告別式といった儀式を行わず、火葬のみするというものです(希望により、火葬の際に僧侶が読経をすることもある)。それに対し、一日葬は通夜を行わないだけで、そのほかは小規模であっても一般の葬儀と同じです。
最近、二日間の葬儀は負担が大きいが、直葬(火葬式)では故人とじっくりお別れする時間が持てないということで、一日葬を選ぶ方が増えているようです。
一日葬のメリット・デメリットについてまとめました。
一日葬のメリット
一日葬は、ご遺族のさまざまな負担を軽くするというメリットがあります。
時間的・肉体的負担が軽くなる
喪主や遺族が高齢や病気で、二日間にわたる葬儀は肉体的・時間的に厳しいという場合に一日葬を選ぶことが多いようです。
葬儀のスケジュールが簡素化されるため、遠方から来たり、仕事の都合をつけるのが難しい家族・親族にとっても日程を調整しやすくなり、負担が軽くなります。
費用を抑えることができる
通夜と告別式で2日分準備しなければならない料理や参列者への返礼品が一日分ですむため、その分の費用が抑えられます。
遠方の家族や親族が通夜から参列した場合、その方たちが宿泊する宿の手配が必要になりますが、一日葬であればその手間と費用を省くことができるだけでなく、参列者にとっても負担が軽くなります。
直葬(火葬式)より周囲の理解を得やすい
直葬も一日葬も遺族の負担を軽減するために選ばれます。経済的な負担のみを考えれば火葬のみ行う直葬がもっとも費用を抑えられますが、親族などから簡略すぎると批判を受ける可能性があります。
これに対して、一日葬はきちんと葬儀・告別式を行いますので、直葬よりは周囲の理解を得やすいという長所があります。
一日葬のデメリット
思うほど費用が安くならない
一日葬を選ぶ理由の一つとして、費用が抑えられるという点がありますが、2日間行う葬儀が1日になったからといって、費用も半分になるというわけではありません。
ほとんどの場合、式場代や祭壇の費用は、準備の関係などもあって一日葬であっても2日分かかります。葬儀の費用の大きな部分を占める僧侶などへのお布施は、時給や日給というわけではありませんから、お布施も通常の葬儀と同じように包みます。火葬費用なども変わりません。
実際に費用を抑えることができるのは料理や参列者への返礼品の代金ぐらいということになります。
一般会葬者が参列しづらくなる
最近、首都圏を中心に昼間の葬儀・告別式に参列するのが難しいため、通夜に参列するのが一般的です。ところが、一日葬では通夜を行わないため、一般会葬者が弔問しづらくなってしまいます。
葬儀に参列できない人が多ければ、後日、自宅へ弔問に訪れる人が多くなるという可能性があり、そうなるといつまでたってもご遺族の気の休まる暇がありません。
高齢で家族や親族のみが参列するような場合ならよいでしょうが、友人や知人、職場の関係者など会葬者が多い方については、通夜と告別式を行ったほうがよいでしょう。
最近は通夜をメインに行う一日葬のプランも登場しているようですが、その場合は通夜の翌日に火葬に付すことになります。
宗教者の理解を得なければならない
通夜から葬儀・告別式という流れで行われる儀式には宗教的な意味があります。菩提寺に葬儀をお願いする場合、一日葬を行うことに理解してもらうことが難しいという問題があります。
また、直葬ほどではないとはいえ、親族などから通夜をしないことについての批判があるかもしれません。
一日葬にはさまざまなメリット・デメリットがあります。一日葬を選択肢に入れる場合、故人の社会的立場や人間関係、予想される会葬者などの諸条件を考えて判断する必要があるでしょう。