これまで結婚をしたことがない、離婚をした、配偶者に先立たれたなど、独身になった理由はさまざまあります。
今は、独身者のことをおひとりさまとよばれる呼ぶこともあり、65歳以上のおひとりさまも増えています。
同居する人がいない独身者やおひとりさまの人は、老後や介護のこと、死んだときのことなどを考えると年を重ねるごとに不安は大きくなっていきます。
「病気になったらどうしょう・・・」
「認知症になったら誰が面倒を看てくれるの・・・」
「自分が亡くなったらお葬式やお墓はどうなるの?」
など、不安や疑問がたくさんあります。
そこで、今回は独身者、おひとりさまが地域や社会とつながりながら、心穏やかに安心して最後のときを迎えられるように、独身者が今からはじめておくべき終活について詳しく解説していきます。
目次
■おひとり様・独身者が終活ですること
・遺言書を作る
・身の回りを整理する
・財産の整理をする
・孤独死対策をする
└周りとコミュニケーションをとる
└一人暮らしを役所に伝える
└訪問サービスを利用する
└老人ホームに入る
└緊急連絡先を友人・知人に教える
・認知症に備えて生前契約
└任意後見契約
└死後事務委任契約
おひとり様の現状
50代になると、自分の親が年老いていく姿見たり、介護することがあったりすると自分の老後や介護、自分が亡くなったときのことなどを考える機会が増えてきます。
独身者やおひとりさまの人にとっては、特に不安が大きいのではないでしょうか。
残りの人生を自分らしく安心して楽しむためにも、終活をはじめるようにしてください。
おひとりさまが心配に思うこと
おひとり様はどのような不安を抱えているのでしょうか。
一人暮らしで頼れる人がいないと、やはりお金や健康のことはことさらに心配になります。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](平成28年)」調査の「61 心の豊かさを実感する条件(心の豊かさを実感していない世帯)」によると、50代の単身者世帯のうち、経済的な豊かさを実感していない世帯は53.2%に上るとされ、単身者世帯の2世帯に1世帯は、お金について何らかの不安や不満を持っていると考えられます。
次いで、豊かさを実感していない項目として、健康(49.5%)、将来の生活への安心感(33.7%)と続き、お金や健康、今後についての不安を感じている人は少なくないことが分かります。
お金について心配な方が多いことが調査から分かりますが、実際に老後の資金が足りていない世帯は多いのでしょうか。
同調査の「7 種類別金融商品保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)」によると。50代の金融資産保有額は、平均で1300万円、うち預貯金は549万円となっています。
60代では、金融資産保有額が平均で1755万円、うち預貯金は790万円となっています。
65歳で定年し、85歳まで20年間生きたとすると、定年後に支給される公的年金だけでは生活費をまかなうことができず、別に2,000万円くらいの貯金が必要にと言われているので、平均的な単身者世帯だと、老後の資金が不足することになります。
さらに、同調査の「3 金融資産の有無、預貯金口座または証券会社等の口座の有無、現在の預貯金残高」によると、50代の世帯の内、「口座を保有していて、現在、残高がある」世帯は61.5%、「口座は保有しているが、現在、残高はない」「口座を保有していない」世帯は38.5%です。
およそ4割近くの人が、無貯金で老後を迎えようとしていることが分かります。
今、持っている貯金をさらに増やすためにも、退職金がある人はそのお金を貯金したり、退職金がない人は保険の見直しや住宅ローンの見直し、固定費や変動費の節約をするようにしてください。
おひとり様・独身者が終活ですること
ここからは、独身者やおひとりさまが特にするべきことを含めて、終活ですることについて具体的に解説していきます。
遺言書を作る
遺言書を作ることは、相続してほしい身内がいる人にとっては重要なことになります。
終活をするときによく言われているエンディングノートを使って、相続について書き残すという方法もありますが、エンディングノートには法的効力がなく、遺産を巡り予期せぬ争いに発展することがまれにあります。
そのようなことを未然に防ぐ意味でも、法的な効力がある遺言書に正式な書式や形式で、あなたが希望する相続の方法を残すようにしてください。
また、孤独死などで亡くなり、遺産を相続する家族や親族がいないときは、遺産は全額国に納められることになってしまいます。
自分が亡くなった後に残る遺産を団体に寄付をしたいとか、人の役に立つように使ってほしいという希望がある場合は、必ず遺言書を作るようにしてください。
身の回りを整理する
あなたの身の回りには、ここ最近使っていない物や何年も着ていない服などがたくさんあるのではないでしょうか。
このような普段使っていない物や着なくなった服などを事前に整理しておくことで、あなたが亡くなった後の遺品整理の負担を減らすことができ、気持ちの整理にもつながります。
身の回りには、普段使っている物や大切な物だけを置くようにして、要らない物や不要な物はオークションやフリーマーケットなどで売れるものは売って、売れないものは処分するようにしましょう。
また、身の回りの整理には、体力と時間がかかるので、できるだけ早い段階でするようにしてください。
財産の整理をする
65歳で定年して85歳まで20年間生きたとすると、定年後に支給される公的年金だけでは生活費をまかなうことができず、別に2,000万円くらいの貯金が必要だとお伝えしましたが、それ以外にも介護や葬儀、お墓のことを含めるとさらに多額のお金が必要になります。
終活をする上で大切なことは、今、どのくらいの財産があるのか、今後どのくらいのお金が必要なのかを把握することです。
預金や不動産、株式などの有価証券がどのくらいあるのか、また借金やローンなどがどのくらい残っているのかなどを把握して、老後に必要なお金の計画を立てるようにしてください。
また、利用することがなくなった銀行口座やクレジットカードなどの解約や廃止、利用しなくなった月額サービスなどの解約も忘れずにしてください。
孤独死対策をする
独身者やおひとりさまの人が特に不安に思っているのが、孤独死ではないでしょうか。
人に死は突然やってくることがあります。
心筋梗塞や心肺停止による突然死、高齢者に多いのがケガなどにより動けなくなり、助けを求めることもできずに亡くなる飢餓死、交通事故による事故死も孤独死に含まれます。
孤独死の可能性を少しでも低くするためにも、孤独死を避ける対策をすることは大切です。
ここからは、明日からでもできる孤独死対策から時間とお金をかけてする孤独死対策まで、5つの対策を解説していきます。
周りとコミュニケーションをとる
向こう三軒両隣という言葉があるように、まずは自分が住んでいる近隣の人とのコミュニケーションをとるようにしてください。
散歩でよく見かける人や馴染みにお店の店員さん、趣味を通して知り合った友人など、自分の周りにいる人とのコミュニケーションを積極的にとるようにしてください。
コミュニケーションをとることで、周りの人が「あの人、最近見かけなくなった・・」と、あなたの存在を意識してくれることにつながります。
一人暮らしを役所に伝える
介護保険によるサービスの他に、一人暮らしをしている高齢者に生活支援を提供している自治体もあります。
自治体に一人暮らしを伝えることで、積極的に訪問してくれたり、委託業者の見守り、電話を利用した緊急通報装置、IT機器などを使った安否確認など、さまざまな手段でサービスを提供しています。
高齢化社会が進み日本人の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.26歳で、国や地域別では、男性が世界3位、女性は世界2位と長寿化が進んでいるなか、一人暮らしをしている高齢者も多くいます。
今は元気だけれど、年を重ねるごとに体力は落ちていき、健康面を考えると不安は増すばかりです。
高齢になっても健康で、安心、安全に一人暮らしを続けるためにも、一人暮らしをしていることを役所に伝えるようにしてください。
訪問サービスを利用する
有料にはなりますが、自治体による安否確認以外にも民間による訪問サービスはあります。
365日毎朝、電話をかけてくれたり、毎月もしくは2ヶ月に1回の頻度で訪問してくれたり、週に一度、食材を届けてくれるなど、さまざまなサービスがあります。
あなたの家を誰かが定期的に訪問してくれるようになることで、あなたの異変に気づいてもらいやすくなります。
老人ホームに入る
孤独死対策の中でも、最も安心なのが有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅への入居です。
近年では介護認定を受けていなくても高齢者住宅に入居できるところも増えてきています。
職員が常駐してくれているので、安否確認や日々の健康管理、緊急時の対応など、何かあってもすぐに対応してくれる体制が整っていると安心して暮らすことができます。
趣味のサークルや健康維持のための運動機器を取りそろえている施設もあれば、24時間、看護師や介護士が常駐している施設もあります。
また、他の入居者がいることで、引きこもりや孤立といった不安も解消されるのも老人ホームに入るメリットのひとつになります。
緊急連絡先を友人・知人に教える
万が一に備えて緊急連絡先を友人や知人に教えておくことはとても大切です。
緊急連絡先には医療施設や介護施設、葬儀社や菩提寺などといったところで、大きなケガや病気、万が一のときなどに連絡する必要がある場所のことです。
緊急連絡先を教える友人や知人は、普段から交友があり、信頼できる人に教えるようにしてください。
認知症に備えて生前契約
今は元気であっても人は必ずボケて、認知症になります。
これはごく自然な流れで、どんなに体が健康であっても、どんなに人づきあいがあっても関係ありません。
認知症になると、判断力や理解力などが衰えていき、物忘れや失語、失認や失行と徐々に日常生活に支障がでてきます。
一人で暮らしている独身者やおひとりさまは、認知症になる前の元気で正常な判断ができる間に生前契約をすることで、安心して最後のときを迎えることができます。
財産管理や介護サービスの契約、遺産相続や葬儀、遺品整理など生前から死後までのことをスムーズに進めていく上でも生前契約はとても重要です。
ここからは、認知症に備える生前契約について解説していきます。
任意後見契約
任意後見契約は、国が定めている成年後見人制度のひとつで、後見人になってもらいたい人を本人が選び、財産管理や身上監護など、あらかじめ契約で定めた法律行為を代行してもらうという契約になります。
任意後見契約は、公証役場で公正証書という形で契約を結ぶことができます。
任意後見契約のメリットは、後見人を本人が選ぶことができること、認知症などにより判断力が低下する前から利用できるということです。
契約する内容は、現金や預貯金、不動産や有価証券などの財産管理、税金や公共料金、保険料などの支払い、医療や介護サービスなどの利用に関する手続きなどがあります。
死後事務委任契約
死後事務委任契約は、亡くなった後の死亡届、火葬や埋葬、遺産整理など、亡くなった後に必要な事務手続きを委任できる契約のことです。
先に解説しました任意後見契約は、契約した本人が亡くなった時点で契約が終了になるので、亡くなった後のさまざまな事務手続きについては、死後事務委任契約が必要になります。
死後事務委任契約を結ぶ人は、あなたの信頼できる知り合いの人、行政書士や司法書士など法律に詳しい人などに依頼することができます。
まとめ
ここまで、独身者、おひとりさまが地域や社会とつながりながら、心穏やかに安心して最後のときを迎えられるように、独身者が今からはじめておくべき終活について解説してきました。
終活をはじめる年齢やタイミングは特にありません。
50代だと、まだまだ早いかなと思うかもしれませんが、終活はしなければいけないことも多くあり、時間と体力が必要です。
終活をすると、自分の人生を振り返ることもできるのでやり残したことに気づくことがあったり、自分の財産を見直すことで、老後に必要な資金など残された人生に必要な資金の計画も立てることができます。
最後を迎えるそのときまで自分らしく幸せに、かつ安心して過ごすことができるようにする終活はとても大切です。
この記事を読んだことをきっかけに、すぐに終活に取り組むことをおすすめします。