通夜、告別式などの葬儀、あるいは四十九日や一回忌、三回忌など法要時に、どのような服装がふさわしいかという点については注意を払う人が多いですが、意外と見落としがちな点が、手に持っている鞄のデザインや素材です。
葬儀や法要にふさわしい服装があるように鞄にもTPOがあるのです。
TPOに反しているとマナー違反だとして眉をひそめられたり、あるいは陰で恥をかいていたりすることがあるので気をつけましょう。
そこでここでは葬式に持っていく鞄のマナーについて解説します。
■鞄はどんなものが良いか
まず鞄そのものはどのようなサイズ、素材、形がよいのでしょうか。
・素材は靴とは違い、黒の布地がベスト
葬式の時に靴に関しては黒であれば本革でも問題ないので、鞄もそのマナーを踏襲すればよいかというと厳密にはそうではありません。
本革は殺生を暗喩するので、葬式には相応しくないのです。ですから葬式に持参する鞄の素材は、布地のものにしましょう。
ただし最近は、かつてほど葬式のマナーが厳格ではなくなってきていますから、以下でも書くような、鞄の意匠に気をつければ、本革であっても許容されます。
・合皮でもOK?
革は殺生を暗喩するために葬式には相応しくないとされていますから、本革ではなく合皮であればマナー違反にはなりません。
ただし、遠目で見た場合は本革も合皮も区別はつきませんから、人から見てマナー違反だと後ろ指を指されることを避けようと思ったら、合皮もやめておいた方が無難でしょう。
・鞄のサイズは必要最低限で
鞄のサイズにはマナー的なルールはありません。
ただしあまり大きなものを持ち歩くのは不細工ですし、葬儀中にその鞄を置いておく場所もありませんので、必要最低限のものが納まる程度の大きさの鞄にした方がよいでしょう。
最低限の持ち物としては、袱紗、数珠、財布、ハンカチ、携帯などで、場合によって黒ストッキングの予備や、扇子、黒エプロンなども含まれます。
ただし遠方の葬式に参列する場合は荷物も多くなりがちですから、1つの鞄ですべてに対応することを考えた場合は、多少余裕があるものを選んでおいた方がよいでしょう。
いずれにしても基本は、必要最低限のものが入る大きさにしておくことです。
具体的には、小さめのサイズの鞄の場合は、マチ10cm×幅25cmよりも小さいくらいで十分こと足ります。
大きめのサイズの鞄でも、マチ12cm×幅30cmまでに抑えておきましょう。
高さは、小さめでも大きめでも、おおむね20cm位までが適切です。
・金具や装飾が目立たないデザインを
適切な大きさの鞄がわかったところで、次にデザインです。
デザインは、外側に金具がないシンプルなものを選びましょう。
金具が光に反射するような鞄はNGですので要注意です。
特に、持ち手と鞄のつなぎ目、鞄の開口部分の金具は目立つので、光ものにならないしましょう。
そのようなことを避けるためにはかぶせタイプの鞄にしておく方が無難です。
デパートなどに行くと慶弔両用として黒の鞄が販売されていますが、デザイン自体が慶事寄りの場合も多々あるのでこれも要注意です、特に全体が黒一色でも、大ぶりのリボンが付いていたり、形がきっちりしていなくてルーズに変わるものはおすすめできません。
・使い勝手も考える
鞄の大きさ、外形のデザインで適切なものが見つかっても、使い勝手が悪いと非常に不便です。
逆にどのような鞄であれば使い勝手がよいかと言うと、それは鞄の内側に左右されます。
仕切りのあるなし、内ポケットのあるなしなど、自分で使って不便に感じないものかどうかを、自分の感覚で判断しましょう。
今、日常使いをしていて、便利に感じている鞄があれば、その内側を参考にしてもよいでしょう。
・床に置いても抵抗のない鋲つきのものを
葬式の時には鞄などの荷物をどこかへ預けることができません。
したがって葬式中は鞄を膝の上に置いておくことになります。
しかし、焼香に立ったり、焼香台が回って来たりする場合は、鞄を床に置かざるを得ないということもあります。
その際に鞄の底面と床が直接触れて、汚れたり、摩耗したりすることもありありますから、鞄の底に鋲がついた物を選んでおいた方が何かと便利でしょう。
■葬式の場合にNGな鞄のポイント
ここまで部分的に触れましたが、まとめて葬式の時に持参するには相応しくないNGな鞄の特徴を解説しておきます。
・光ものの金具は避ける
まず鞄についている金具が光を反射するようなものはNGです。
さらに金具に金メッキなどをしてある場合も華美な印象を与えるため相応しくありません。
金具は光を反射しない、シルバーのものにしましょう。
・つやありの素材はNG
鞄の素材はつやありのものはNGです。
したがって本革でも合皮でも、エナメル加工などがしてある光沢のある素材は避けましょう。
・動物の殺生を思わせる革模様はNG
本革の鞄を葬式に持参することは、最近では許容されつつありますが、しかしやはり明らかに殺生を暗喩するような加工のものは不都合です。
たとえば型押しのクロコダイルレザーなどは避けるべきでしょう。
・大きすぎるバッグもNG
大きすぎる鞄もNGです。サイズは最大で、先ほど書いたようにマチ12cm×幅30cm×高さ20cmが限度だと考えてください。
遠方の葬式に行く場合や、乳幼児連れの場合は、どうしても荷物が増えますが、その場合は大きなバッグに必要な荷物を入れて、葬式前にはその鞄ごと最寄の駅のコインロッカーなどに預けましょう。
そして大きなバッグとは別に葬式用の鞄を持って行って、必要最低限のものを移し替えて使う方がよいでしょう。
・黒っぽい色でも黒じゃないと目立つ
服装を含めて葬式で身に着けるものは基本的にすべて黒です。
黒のものがない場合は、最低でも黒っぽいものである必要があります。
しかし鞄の場合は、黒っぽいといっても、ネイビーやグレーのものを選ぶと、質感があまりに服装と異なるので目立ってしまうことに気をつけましょう。
■サブバッグはどんなものが良いか
鞄のほかにもう1つ持っていると便利なものがサブバッグです。
・サブバッグはB5~A4サイズで
サブバッグも黒色が原則です。サイズは、B5またはA4が一般的です。
持ち物が少ない人であればB5サイズがよいでしょう。
しかし、乳幼児連れの場合や、親族として参列するためエプロンなどを持って行く必要がある場合は、A4サイズがよいでしょう。
特に荷物が多くなりそうな場合は、マチ付きのものを選んだ方が、格段に収納量が増えますからおすすめです。
ただしサブバッグは、バッグと持ち手の縫製部分をよく確認して買いましょう。
この縫製部分に全重量がかかりますから、縫製が弱いとすぐに壊れてしまいます。しっかしした縫製のものを選びましょう。
・華美過ぎないデザインが基本
サブバッグもやはり華美なデザインは禁物です。
デパートなどに行くと、さまざまなサブバッグが販売されていますが、総レースの物などはやはり弔事にはふさわしくありません。
喪服やフォーマルバッグとの相性をよく考えて選びましょう。
・しっかり自立するものを選ぶ
サブバッグを葬式や法事以外での使用することを考えている場合は、単体でもしっかりと立つ、自立型のサブバッグがよいでしょう。
反対に葬式や法事だけでしか使わない場合は、折りたためるタイプのサブバッグが便利です。
これであれば使わない場合は、フォーマルバッグの中に納めておけますので、急な荷物や急な要りように対応できます。
■男性は鞄を持っていく?
ここまで解説した鞄は主に女性の場合の話でした。男性の場合も、素材の選び方などは女性と同じですが、男性特有の葬式時の荷物のあり方についてのマナーも存在します。
・荷物は基本的にポケットに
男性の場合、葬式の時には鞄は持たず「手ぶら」で参列することが一般的です。男性であれば、必要な荷物は、香典を入れた袱紗、ハンカチ、数珠、財布、携帯程度ですので、すべて内ポケットに入れて参列しましょう。
ただし、荷物が増えるとどうしても内ポケットが膨らんで不細工になりますから、できるだけ荷物は減らすべきです。
また香典の入った袱紗が、座ったりした場合に折れると困るので、袱紗の支えになるように薄目の長財布を一緒に内ポケットに納めておくことがおすすめです。
・セカンドバッグなど邪魔にならない小さめのバッグ
ただし男性だから絶対に鞄は持参してはならない、というマナーはありません。特にネクタイピンなどのアクセサリーなどがうっかりマナー違反の素材になってしまった場合は、葬式中には外して納めておく場所が必要になります。その場合は小さなセカンドバッグなどがあると便利でしょう。
しかし持参しても人から見て変に思われないのは、あくまで邪魔にならない程度の小さめのセカンドバッグまでです。
取っ手のついたビジネスバッグなどは相応しくありませんので注意しましょう。
■葬儀中の鞄の扱い
最近の葬式では、焼香をする時に、荷物を置く台が焼香台の前に置いてあることが多いです。
したがって荷物台がある場合は、焼香の時にも鞄を持って席を立ち、その荷物台に鞄を置いて焼香をすることが可能です。
しかしそのような荷物台がない場合は、持ち手に腕を通して持ったまま焼香したり、男性のセカンドバッグなどごく小さい鞄の場合は焼香台の脇に置いて焼香することが一般的です。また焼香台が回ってきて、席で焼香をする場合には、その時だけ椅子の下に鞄を置き、焼香を終えたらまた膝の上に載せましょう。
■まとめ
日常生活で1番TPOやマナーが厳しいのは、葬式や法事などでしょう。
その時の服装や持参物によっては、人物の評価まで変わってしまうことがありますから要注意です。
特に見落としがちな点がどのような鞄を持参するかです。ここで解説したことを参考に、葬式や法事にふさわしい鞄を用意すするようにしましょう。