葬式では多くの参列者が香典を持参するため、高いといわれがちな葬式費用を賄ううえで大変助かります。
このためご遺族の側も、 葬式後に 香典をいただいた方々にお返しをするのがマナーです。
ただ葬式を主催すること自体、人生でそう多く経験するわけではなく、葬式でお返しをするのが初めてという方もいるでしょう。
葬式のお返しで気になるのが金額相場です。
確かにお返しの準備では、品物の金額相場がいくらなのかは重要な課題でしょう。
今回は葬式のお返しで一般的な金額相場を、お渡しの時期や適切な品物にも触れながらご紹介します。
葬式でお返しの準備をする予定がある方や、お返しについて気になっている方はぜひともご活用ください。
葬式のお返しの金額相場はいくらくらい?
葬式でお返しを準備する際、金額相場は避けられないテーマです。
実は葬式のお返しに必要な金額相場は、いただいた香典に対する割合として決まっています。
そしてその割合は、地域によってさまざまであるため、ご自身がお住まいの地域の相場に合わせて考えると良いでしょう。
東日本の場合
東日本の場合は、いただいた香典の半額でお返しする金額相場となっています。
例えば1万円の香典をいただいた場合、お返しの際は5千円の品物でお返しするというものです。
これは「半返し」と呼ばれ、現在では東日本に限らず、全国的に広まっています。
このため東日本以外の地域でも半返しでお返しする場合もあるため、事前にご近所の方などに確認すると無難です。
西日本の場合
大阪など西日本の場合は、いただいた香典の3分の1でお返しする「三分返し」が主流です。
例えば1万円の香典をいただいた場合、3分の1にあたる3千円の品物で香典返しします。
ただ上記のように、最近では西日本でも東日本と同じく半返しが行われる場合もあります。
このため三分返しにするべきか半返しにするべきかは、事前にご親族などとよく相談することが大切です。
北海道や沖縄の場合
北海道や沖縄でのお返しの金額相場は、東日本や西日本に比べて独特です。
北海道の場合は、葬式で香典をお渡しした際、5百~1千円程度のお返しを受け取ることになります。
一方沖縄でも葬式のお返しは、1~2千円程度と本州に比べて安い金額相場です。
高い香典をいただいても、3千円程度で香典返しすることがあります。
沖縄では葬儀の弔問者が100人単位と非常に多いというのが理由です。
北海道や沖縄では本州に比べるとお返しの金額相場が安いため、北海道や沖縄の葬儀に参列する方や香典返しの準備をする方は理解しておくことが大切です。
高額の香典をいただいた場合
葬式では、ご親族が高い金額の香典を用意することも多いですが、高額の香典をいただくとお返しの準備でも大きな負担になります。
高額の香典をいただいた場合は、3分の1や4分の1返しなど、負担にならない割合のお返しでも問題ありません。
例えば5万円の香典をいただいた場合は、1~2万円の品物をお返しするやり方です。
なお上記の3分の1や4分の1はあくまでも目安で、ご遺族の事情に合わせた金額相場で用意すれば良いでしょう。
お返ししない場合も
葬式のお返しは地域によって行われない場合もあります。
代表的な例が、群馬県や東北地方、離島地域などです。
特に群馬県の場合は、戦後に生活苦を理由とした新生活運動が行われ、ご遺族の新しい生活を応援する意味で香典返しを受け取らない習慣が今も残っています。
葬式のお返しの一般的な時期とは?
葬式のお返しは、金額相場以外に時期も大切です。
お返しするべき時期は、基本的に決まっているマナーがあるほか、宗教や地域によって独特な場合もあります。
基本的には四十九日が明けてから
日本の場合、葬式のお返しをする時期は仏教の考え方に基づき、四十九日が明けて以降1ヶ月以内というのが一般的です。
四十九日が明けるまでは忌中で、故人のご不幸に対する悲しみから贈り物するべきではないとされています。
また昔は葬儀の準備をしていて、お返しするのが四十九日過ぎだったことも由来の1つです。
いずれにせよ、四十九日が明けてからの香典返しが基本となっています。
ただ最近では、四十九日より前の三十五日でお返しをするケースも多いです。
仏教以外では時期が異なる
以上のように、日本では四十九日以降にお返しをするのが一般的です。
ただし四十九日自体は仏教の考え方に基づいていることから、神道やキリスト教のような仏教以外の宗教では、香典返しのタイミングが少し異なります。
神道の場合は五十日に
神道の場合は、仏教でいう四十九日として五十日があり、五十日が明けた段階でお返しします。
神道でも早い場合は、五十日に先立って三十日で法事(霊祭)を行った段階で香典返しすることもあります。
なお品物やマナーについては、仏教の場合とほとんど同じです。
キリスト教の場合は没後1ヶ月に
キリスト教の場合、本来は香典返しの慣習はありませんが、日本のキリスト教では香典返しの伝統を取り入れて独自に行われています。
カトリックの場合は死後30日目の追悼ミサ後に、プロテスタントの場合は死後1ヶ月の召天記念礼拝終了後が一般的です。
なお品物やマナーについては、仏教や神道の場合とほとんど同じです。
北海道や沖縄では即日返しも
金額相場の面で独特なマナーがある北海道や沖縄は、時期についても独特で、葬式当日の即日返しが一般的です。
北海道の場合は明治時代に開拓が行われていたころ、開拓民が時間的に余裕がなかったために、即日返しが定着しました。
一方沖縄でも金額相場の場合と同じように、弔問者が非常に多い理由から、即日返しが一般的となっています。
葬式のお返しに適した品物とは?
葬式のお返しを準備する際、どのような品物が良いのか迷いがちでしょう。
葬式のお返しに適した品物についても、一定のマナーが存在します。
「消えもの」が一般的
葬式のお返しとして贈る品物は、「消えもの」と呼ばれる、使えばなくなるものが一般的です。
これは故人のご不幸が、品物を使うことできれいさっぱりなくなるように願う意味があります。
消えものの具体例として、お茶・コーヒーやお菓子などの食べ物や日用品などが挙げられるほか、カタログギフトや商品券も多いです。
お茶・コーヒーやお菓子
食べ物関係でよく選ばれるのが、お茶・コーヒーやお菓子です。
特にお菓子は、比較的長持ちするうえに、好きな時にどのような人数に対応できるように、個包装の焼き菓子がおすすめといえます。
お茶・コーヒーについても、香典の金額に応じて、質の良いものを選ぶと喜ばれるでしょう。
日用品
日用品も、洗剤やタオルなどが具体的なものです。
タオルは消えもののうちに入らないように見えますが、使うほど擦り切れてなくなるため、選んで良いとされています。
特に今治タオルや泉州タオルは、上質で人気があります。
カタログギフトや商品券
最近ではカタログギフトや商品券も葬式のお返しとして人気です。
いずれも受け取った側で好きな商品を選ぶ際に使えるため、ご遺族が品物選びをせずに済むという点で負担を軽減できます。
ただしカタログギフトの場合は、使い方を知っていて、期限内に使えるような方に贈るするべきでしょう。
また商品券についても、香典返しで金銭を贈るべきではないといった、常識を重んじる方に対しては贈らないのが無難です。
お返しに不適切なものとは?
葬式のお返しには選ぶべきではないものもあるため、注意が必要です。
具体的に肉や魚といった生ものや、昆布や鰹節などが挙げられます。
肉や魚などの生もの
肉や魚などの生ものは、葬式のお返しで最も避けるべきものです。
生ものは、仏教の教えで説かれている不殺生、つまり生き物を殺してはいけないという教えに反します。
生もの以外にも、ソーセージやちくわなど肉や魚の加工品も避けた方が良いでしょう。
昆布や鰹節
料理に欠かせない昆布や鰹節も、葬式のお返しでは避けるべき品物です。
昆布や鰹節は、結婚式のような慶事でやり取りするものである一方、葬式や法事など弔事のお返しには向いていません。
ただし昆布や鰹節でも、他のものと一緒に入っている場合であれば、贈っても問題ないとされています。
お酒
このほかお酒も葬式のお返しとして不向きです。
お酒も昆布などと同じように慶事でお渡しするものであるうえ、仏教でかつて飲酒を戒める教えが存在したこともあるため、おすすめできません。
ただし米作りが盛んな地域のように、お酒をお返しの品物にして良い場合もあります。
お礼状も忘れずに
葬式のお返しを贈る際は、品物とともにお礼状も不可欠です。
お礼状には、葬儀への参列や香典に対するお礼と、四十九日法要が無事に終わった報告、お返しをお送りする旨を書きます。
なおお礼状を作成する際は、縁起の悪い忌み言葉や句読点を使わないで書くのがマナーです。
葬式のお返しに付けるのし紙について
葬式のお返しを発送する際は、品物にのし紙を付けることが欠かせません。
そしてお返しで付けるべきのし紙には、いくつかのルールが存在します。
弔事用の掛け紙を内のしで付ける
葬式のお返しでは、品物に弔事用の掛け紙を付けます。
弔事用の掛け紙は、右上にのし飾りがないのが特徴です。
また水引も色が黒白か黄白で、結び方も結び切りや淡路結びになっています。
加えて掛け紙は、内のしで付けるのもマナーです。
内のしは品物の上にのし紙を付け、その上から包装紙を掛けます。
控えめに感謝の気持ちを伝えたり、宅配便で送ったりする際に使われる方法です。
表書きと名前の書き方
葬式のお返しで品物に付ける掛け紙には、表書きと名前をしたためます。
表書きは「志」が一般的であるほか、西日本では「満中陰志」が、神道やキリスト教では「偲び草」が使われるなど、地域や宗教独特のものも多いです。
名前の書き方は、喪主のフルネームか、葬式を行った家の名前を記します。
家の名前は「○○家」と書くのが一般的です。
なお書く際に使う墨の種類は、薄墨ではなく普通の墨です。
香典返しのタイミングが、故人の四十九日などを過ぎて、喪に服す段階から故人をしのぶ時期に入ったためといえます。
まとめ
今回は葬式のお返しに必要な金額相場について、時期や品物などにも触れながら見てきました。
以下にポイントをまとめましたので、ぜひ一緒に見ていただければと思います。
- 葬式のお返しに必要な金額相場は、東日本で半返し、西日本で三分返しなどと、地方によってさまざまである。
- 葬式のお返しをする時期は、仏教で四十九日明け、神道で五十日明け、キリスト教で没後1ヶ月、北海道や沖縄で当日というのが一般的である。
- 葬式のお返しに適した品物として、お茶やお菓子、日用品、カタログギフトがある一方、不適切な品物に肉や魚、昆布、鰹節などがある。
- 葬式のお返しには弔事用の掛け紙を付け、「志」や「満中陰志」などの表書きや施主の名前を書き、内のしで付ける。
葬式のお返しを準備する際の金額相場は、地域によって割合が異なるものの、いただいた香典に対して3~5割程度の品物を用意します。
最近では半返しが全国的に定着していますが、地域やご家庭によっては半返しとは限らないため、確認は不可欠です。
葬式のお返しで金額相場が気になる場合に、あらためてこの記事の内容を振り返ると良いでしょう。