お葬式のお返しの方法について、不明な点がたくさんあり、戸惑う方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、お葬式のお返しについて、相場や時期、準備するものなどを中心に解説していきます。マナーをしっかり押さえ、対応できるようにしましょう。
葬式のお返しとは香典返しのこと
葬式のお返しとは、香典返しといい、お香典を頂いた方に感謝の意を込めて品物お渡しすることです。
葬式の参列者に対して当日渡す「会葬御礼」とは別物です。香典返しは香典を頂いた方のみにお返しするのに対して、会葬御礼は香典にかかわらず葬式やお通夜の参列者、全員にお渡しします。後者は、参列してくださったことへの感謝の意が込められています。
香典返しの時期やタイミング
香典返しを行う時期やタイミングは、2種類存在します。その地域での慣習や遺族の判断で決定されることが多いようです。それぞれの種類や特徴をわかりやすくご紹介します。
香典返しは【後返し】が基本
基本的に、香典返しは四十九日の法要を終えた後に行います。
というのも、香典返しは葬式やお通夜を含めた四十九日までの期間に頂いたお香典に対して行われるものだからです。
その期間中にその都度お返しするのではなく、期間が明けてからまとめてお返しします。
そうすることで、香典の感謝の意に加えて、四十九日までの法要を終えたことを報告することができます。よって、香典返しは四十九日を終えた後に行うのがベストです。
葬式やお通夜の当日に渡す【即日返し】もある
後返しが通例となりますが、葬式やお通夜の当日に香典返しを済ませる「即日返し」が風習となっているところもあります。
これに該当しない場合でも、負担軽減などの観点から取り入れる方が増えています。
後返しは昔ながらの風習として一般的ですが、地域によって異なる場合もあります。迷った場合には、その地域の葬儀屋に問い合わせてみると良いでしょう。
後返しと即日返しのどちらかを選択できる場合
後返しが基本となりますが、地域性などでどちらか選定できる場合には、自ら判断して決めなければなりません。
それぞれの特徴を理解することで、より良い判断ができますので、ここで把握しておきましょう。
〈後返し〉
良い点 |
悪い点 |
|
|
悪い点の一つ、「相続税の控除対象とならない」という点について、少し詳しくお話しします。
亡くなった方から相続するお金がある場合、そのお金に対しては相続税が発生します。その課税対象は相続された全額に対してではなく、控除となる対象も存在します。その一つが葬式費用です。
相続されたお金の中から、葬式費用を使用する場合は、その費用分については相続税がかかりません。ただし、葬式費用に含まれるのは香典返しのうち、即日返しのみになります。つまり、後返しを選択した場合はこの節税対策は取れないこととなります。
〈即日返し〉
良い点 |
悪い点 |
|
|
時代の変化とともに、慣習は移り変わっていきます。
無難な方法を選ぶことも良いですが、亡くなった方や遺族がより良いと思う方を選ぶのも大切です。
葬式もお返しどちらも、より良い方法は何かを考え、常に心遣いを意識しましょう。
香典返しの相場は「半額」が一般的
「半返し」と言われるように、半額でお返しをする方が大半です。
また、即日返しの場合は金額に合わせて品物を選定できないため、2000〜3000円くらいを目安としましょう。5000円位のお香典が多いためです。
ただし、1万円以上の高額な香典を頂いた場合には半返しとはなり得ませんので、後日改めて2500円位の品物を贈ります。何事も例外はありますのでその都度、対応していきましょう。
香典返しは「消えてなくなる物」を選定する
不幸ごとを後に残さないという考え方のもと、消えてなくなる物を選びます。
- 飲食料品(コーヒーやお茶、お菓子や調味料、海苔など)
- 日用品(石けんや洗剤、タオルなど)
これらを選定すれば、まず間違いないでしょう。
高額の香典返しの場合には、商品券やカタログギフトを送る方法もあります。ただ、目上の人に商品券を送ることは失礼に当たりますので、注意しましょう。
どうしても、使い方を選べるようなお返しをしたい場合には、明確に金額のわかる商品券を避け、カタログギフトを贈りましょう。心遣いを感じられるお返しは相手方もきっと喜んでくださるはずです。
そして、香典返しに適切でない品物は、以下の通りです。
- お肉やお魚
「四つ足生臭もの」と呼ばれ、贈ってはならない風習や文化が存在するため - お酒や鰹節、昆布
お祝いを連想される品物であるため
これらはタブーとされているものとして、覚えておきましょう。
香典返しを手渡しする場合の注意点
遠方に住んでいる方に郵送で渡す場合も多くありますが、手渡しすることもあるかと思います。その際、相手方に不快な印象を与えないためにも基本的なマナーを押さえましょう。
まずはあらかじめ、都合のいい日にちを相手方に確認しましょう。都合のいい日にちと時間に予定を空けてもらうようお願いしてから、お家へ伺うようにします。また、訪問してからはご挨拶を終えたのち、四十九日の法要を無事に終えられたことの報告と感謝の気持ちを伝えます。それから持参した香典返しをお渡ししましょう。
訪問の時間は短めに済ませ、相手方の余計な負担にならならないよう配慮しましょう。
香典返しの特殊な例
香典はお葬式やお通夜にて、直接いただく場合が多いですが、それ以外のケースも存在します。いざという時に戸惑わないために、香典返しの特殊な例についても見ていきましょう。
香典を連名で頂いた場合のお返し方法
会社の同僚やご夫婦から連名でお香典をいただいた場合、お返しはどのように用意するべきなのでしょうか。
香典返しはご家庭に一つ、お渡しするものですので、ご夫婦で連名の場合は香典金額の半分位の品物を一つ用意すれば、問題ありません。ただ、ご夫婦二人にお礼をきちんと伝えるため、お礼状の名前は連名で記載しましょう。
また、会社の同僚や上司に連名でいただいたら、一人が負担した金額に対して半額位の品物を用意します。
なお、品物は個人にそれぞれ別に用意し、お渡しするのが基本です。金額が少なすぎて個別に品物を選べない場合のみ、詰め合わせの菓子折りを会社へ贈りましょう。
連名でいただいた場合も、お返しの方法は基本的に変わりません。半額位の品物を家庭に一つ、別々に差し上げる点を押さえておきましょう。
葬式後に届いた香典のお返し方法
葬式後にお香典が自宅へ届いた場合、香典返しの時期や方法に頭を悩ませるものです。
御霊前として四十九日の前に香典をいただいたら、通常と同様、四十九日明けに香典返しをすれば問題ありません。
郵送する際はお礼状も忘れずに添付しましょう。
一方で、御仏前として四十九日明けののちに香典をいただいたら、特に決められた期限はありませんので、なるべく早いお返しを意識しましょう。その際に添えるお礼状は、四十九日明けの香典返しに添えたものとは別に作成し直します。参列していただいたことへの感謝や四十九日の法要終了の報告が含まれた文面は、そぐわないためです。
心遣いへの感謝のみを記載したお礼状を香典返しに添付しましょう。
香典返しを辞退されたら
香典をくださった人の中には、香典返しを辞退する方もいます。気を遣わせたくない、葬儀費用やその後の生活に使用してほしい、といった意図があります。
辞退された場合には、そのご意向をありがたく頂戴し、香典返しは遠慮する方が良いでしょう。
お返ししないことを申し訳ないと感じるかもしれませんが、相手方の配慮を無下にするのもよくありません。香典返しは遠慮しても、四十九日明けにはお礼状を送付することで、感謝の気持ちを伝えましょう。
また、高額の香典をいただいたのにも関わらず辞退された場合には、お礼状に加えてさらに配慮が必要です。香典返しと言う形でのお返しは遠慮しつつも、お中元やお歳暮などののちの贈り物で気持ちをお返しすると良いでしょう。
香典返しで準備する必要のあるもの
香典返しは品物以外にも、用意するべきものや留意するべき点が存在します。品物を選定した後、スムーズに手配できるようにここで知識を深めておきましょう。
「志」と表書きした掛け紙(のし)
香典返しにかける紙は、のし紙と呼ばれることが多いですが、正しくは掛け紙といいます。掛け紙を用意する際に押さえておくポイントは、以下の3点です。
- 結び切りの水引が書かれた掛け紙を使用する
- 表書きは「志」とする
- 水引の下には、亡くなった方の姓のみを記入する
(風習によってはフルネームを記入する場合も)
掛け紙は商品を購入した先で用意してもらうことになりますので、これらを掛け紙を作成する担当者に伝えます。
なお、キリスト教や天理教式など仏教以外の宗教では、香典返しがそもそも存在しなかったり、方法が異なったりしますので、留意しておきましょう。
香典返しに添えるお礼状は必要か
お礼状を添える必要があるのは、後返しを郵送で行う場合のみです。つまり、即日返しをする場合や後日手渡しで香典返しをする場合は、お礼状は不要となります。
本来、お礼状は感謝の意や法要を終えたことを伝えるために用いられるものです。そのため、直接会って感謝を伝えられる即日返しや手渡しでは、お礼状は必要なくなるというわけです。どの場合に該当するか見極め、必要な場合はお礼状を用意しましょう。
香典返しはどこで購入するべきか?
香典返しは百貨店、スーパーマーケット、専門のギフトショップ、専門の通販サイトで購入可能です。
百貨店やデパートは、ブランドとして確立していること、弔事用のサービスが充実しているといった理由で選ばれやすいです。ただ、費用の面で負担は大きくなりますので、予算に合わせて選択しましょう。
スーパーマーケットでも、香典返しを想定した品物を取り扱っています。近所にあるため、準備に時間がかからないのが魅力です。のし付けのサービスは無料で行っていることが多いですが、お礼状を添付するサービスはありませんので、自身で用意する必要があります。
専門のギフトショップでは、冠婚葬祭を専門にしているため、商品の選定がしやすいのが特徴です。販売スタッフもその地域の弔事の風習を知り尽くしていることが多いため、相談に乗ってくれるでしょう。のしやお礼状も無料でつけられるお店がほとんどです。
まとめ
葬式のお返しには決められた形式があります。知らないことでトラブルに発展することも珍しくありません。
滞りなく弔事を終えるために、基本的なマナーをきちんと理解し、対応できるようにしておきましょう。