通夜や告別式などの葬式に参列すると、ほぼ必ずと言っていいほど受付が用意されていて、そこで記帳を行うことになっています。
しかしそれほど人生において葬式に参列する機会は多くないはずですから、ほとんどの人の場合は、どのように記帳すればそれがマナーに則っていて、正しい書き方なのかということ知らないのではないでしょうか。
今回の記事では、葬式における記帳の正しい方法とマナーについて解説します。
■受付の流れ
まず記帳の書き方の前に、葬式に行って受付があった場合、どのように対応すればよいのかについて解説します。
・1.記帳台の前に行き、挨拶をする
受付が用意されていたら、記帳のための芳名帳の用意されている記帳台の前に行って、受付の人に対してまず一礼します。
その次に、お悔やみの言葉を簡潔に伝えます。お悔やみの言葉は以下のようなものがよいでしょう。
・「このたびは誠にご愁傷さまでございます」
・「心よりお悔やみ申し上げます」
・「ご訃報に対して、心から哀悼の意を表します。安らかにご永眠されますようお祈りしております」
・「心からご冥福をお祈りいたします」
・(突然の訃報の場合)「先日お目にかかった際にはお元気でしたが、急にお亡くなりになられて、残念でなりません。謹んでお悔やみ申し上げます」
・(病気で亡くなった場合)「お見舞いにも伺えないうちに亡くなってしまい、とても心残りです」
・(事故で亡くなった場合)「突然のことでさぞかしお嘆きでしょう。お悔やみの言葉もございません」
・(若いうちに亡くなった場合)「将来をとても嘱望されていたのに、とても残念です」
・2.記帳する
お悔やみの挨拶をしたら、テーブルに用意されている「芳名帳(ほうめいちょう)」に記帳します。
記帳の方法はこの後詳しく解説します。
・3.香典を渡す
記帳が済んだら香典を受付の人に渡します。
通夜に参列してその際に香典を渡し、さらに告別式にも参列する場合は、当然香典の用意がありませんので、「昨日も参列いたしました」と受付の人に伝えます。ほかの方法ですでに香典を渡している場合も同様です。
また突然の訃報を聞いて通夜に駆け付けたため、香典の用意ができていない場合も、記帳だけして「香典は告別式にお持ちします」と伝えましょう。
■記帳の基本的な書き方
芳名帳に記帳する場合は、以下が基本的な書き方です。
・品物が届く住所を書く
葬式で記帳をする大きな目的は、後日または四十九日の時に香典返しや返礼品を送るための、送付リストを入手することです。
したがって、芳名帳に記載するのは氏名、住所、連絡先になりますが、省略したり、正式な名称を書かないと、香典返しや返礼品を送付できなくなってしまいます。
品物の不達を避けるためには、自分が自分の家に宅配便を送る時に送付先に書く住所と同じレベルの正確さで、氏名、住所、電話番号を記入しましょう。
・分かりやすく楷書で書く
芳名帳への記帳は、上で書いたように香典返しや返礼品を送るための住所リスト入手であると同時に、喪主家にとって誰が葬式に参列してくれたかを知るリストにもなります。
どちらの目的の場合も、誰が参列したかということが明確に分からなければなりません。
そのためには、乱雑に記帳しないで、誰でも読み間違えがないように丁寧に楷書で住所、氏名を記入しましょう。
・香典を渡す人の名前は全て書く
会社の同僚から香典を預かったり、何人かの人間で香典を出し合っている場合、どこまで記帳すればよいのか迷うでしょう。
上でも書いたように、芳名帳への記帳は香典返しや返礼品の送付リストの入手です。
したがって、香典を負担している人の名前を全て記帳することが原則になります。
・すべての参列した人がわかるように書く
同様に、誰が参列し、誰が参列しない代わりに代理の人が参列したかということもわかるようにしておかなければ、後日喪主家が参列者に挨拶をすることができません。
したがって、代理であれば代理であることもわかるようにして、すべての参列者がわかるように記帳する必要があります。
・芳名帳はノート式だけではない
最近の芳名帳はノート形式のものだけではありません。
ノート式の場合は、受付の記帳台にペンとノートが置かれていますが、もう1つの多い形式がカードタイプのものです。
カード式の場合は、後で香典金額を記入したり、関係者別にひとまとめにしたり、香典返しや返戻品の送付状況で区分したりすることが非常にやりやすく便利なので、最近は増えている方法です。
またノート形式の場合は、ほかの参列者の個人名や住所など個人情報が見えてしまいますが、カード式の場合はほかの人の名前も住所も見えないので個人情報の漏れが防げます。
さらにそこから一歩進んで、最新の方式では、iPadなどのタブレット端末が記帳台に用意してあり、そのタッチパネルに専用ペンで記入するようなものも出現しています。この方法であれば、参列者の一覧はすぐにExcel表などに落とせるので、一層整理や処理が簡単になり、非常に便利です。
会葬御礼ハガキのあて名書きも、Excel表から住所ソフトに変換すれば簡単にハガキ印刷できます。
■芳名帳、芳名カードへの参列者別の書き方は
上で個人が個人として参列した場合の芳名帳への基本的な記帳方法を解説しました。
次に、参列者が個人だけではなく、何かを代表していたり、誰かの代理として参列していたりする場合の記帳方法を解説します。
・代理で参列した場合
本来葬式に参列するべき人がやむを得ない都合で参列できない場合、その人の代理として香典を預かって参列することはよくあります。
その際の芳名帳への記帳方法は、本来参列するはずだった人の住所と氏名を記入します。そしてその名前の下に「代理」と記入して自分の名前を追加します。
合わせて、受付の人には自分が代理として参列している旨を伝えます。
夫の代わりに妻が代理で参列する場合もあるでしょう。その際の芳名帳への記帳方法は、夫の氏名を記入し、その後ろに(内)と書きます。
参列できない人の香典を預かり、自分も個人として参列する場合は、参列できなかった人の氏名と住所を記入し、さらに自分も別の欄または別のカードに自分の氏名と住所を記入します。
また代理で参列をした場合、受付で「名刺」を要求されることもよくあります。そのような場合のために、代理で参列する場合は、本来参列するべき人の名刺を1枚預かっておいた方がよいでしょう。
さらに名刺の出し方にもマナーがあります。具体的には参列できない人の名刺の右肩に「弔」と記入し、一緒に自分の名刺の右肩に「代」と記入して両方の名刺を差し出します。
・夫婦で参列した場合
家族ぐるみで付き合っていた人が亡くなった場合、夫婦で通夜や告別式に参列することもあるでしょう。
その際には夫の名前と一緒に妻の名前も記帳します。
香典の中封筒には夫の名前しか記載されていなくても、誰が参列してくれたかということを喪主家が知るために、夫婦とも記帳することが必要なのです。
ただし記帳の仕方は地方によって若干異なります。
具体的には
・夫の氏名の下の名前の隣に妻の下の名前を書き添える
・夫の氏名欄とは別に妻も氏名を記帳する
のどちらかです。
迷った場合は、受付の人に確認してから記帳しましょう、
・会社の代表で参列した場合
会社などを代表して参列する場合もあるでしょう。
その際には、記入欄に会社名と会社の住所を記帳します。
そしてその下に「代表」と書き、参列した本人の氏名を記入します。
また複数の同僚が揃って会社を代表して参列する場合もあるでしょう。
その際には1人を会社の代表として上で書いた通りの書き方で自分の氏名を記帳し、残りの人は個人として記帳します。
・子供も一緒に参列する場合
夫婦だけではなく、子供も一緒に参列する場合もあるでしょう。
子供は香典を出しませんし、後日喪主家が挨拶をするということもほとんどありません。
しかし、ある意味、子供も参列したということを喪主家に知らせることは、故人への供養にもなるので、子供も参列したら一緒に連名で記帳しましょう。
■香典と記帳のみで帰ってもいい?
忙しい時間の合間を縫って、取りも直さず葬式会場に行き、香典だけを渡して葬式に参列しないで帰る、ということはマナー上問題ないのでしょうか。
・参列しなくても失礼にはならない
故人を供養するためには葬儀に参列することが大原則ですが、忙しかったり都合が悪ければ、香典だけを渡して葬式には参列しないで帰ってもマナー違反にはなりません。
ただしできれば、葬式に参列できない旨を事前に喪主家に伝えておいた方がよりよいでしょう。
さらに、受付で記帳をし、香典を渡しただけで帰るのではなく、喪主家に挨拶をし、可能であれば葬式前に焼香だけさせてもらえればベターです。
その際には参列できない理由を合わせて伝えることになりますが、細かい事情を正確に伝える必要はありません。「やむを得ない事情があって」などで十分です。
・途中退席する場合は?
また、葬式の途中で退席することは望ましくはありませんが、完全なマナー違反というわけではありません。
しかし途中退席することが事前に明らかな場合も、前もって喪主家にその旨を伝えておいた方がよいでしょう。
途中退場の旨は、葬式の途中ではなく、葬式が始まる前に伝えておくべきです。
さらに途中退席することが目立たないように、座る席は出口に近い、列の端にしておきましょう。
ただし、葬式の座席は遺族や社会的に地位の高いの人を除けば、前から詰めることが原則ですから、葬式が始まるギリギリまで待って、最後の方で退出しやすいところに座ることがスマートです。
■まとめ
葬式で芳名帳に氏名と住所を記帳するだけでも、いろいろなマナーやルールがあることをお分かりいただけたでしょうか。
原則は、芳名帳を見て喪主家は香典返しを送付するのでその時に役に立つように記帳する、ということです。
以上を参考に、どのような立場で葬式に参列する場合でも、戸惑うことなく記帳を行いましょう。