
名前は知らないけれど、仏壇に向かってお参りするときにチ~ンと鳴らしているお椀型の仏具を見たことがある人は多いのではないでしょうか。
お椀型の仏具をりんと呼びますが、新しく仏壇を購入したときには、一緒に用意してほしい仏具の一つになります。
新しく仏壇を買ったばかりだと、りんと言われてもよくわからず、
「りんにはどんな種類があるの?」
「りんの鳴らし方、お手入れの方法がわからない・・」
「新しくりんを買うときに気をつけないといけないことは?」
など、りんについてこんな疑問があるのではないでしょうか。
今回は、おりんの意味や役割、おりんの種類や相場価格、おりんの鳴らし方やおりんのお手入れまで、おりんについてみていきます。

おりんとは
おりんという言葉は知らなくても、一度は目にされていると思いますが、おりんとは、仏壇に備えられているお椀型の鈴ことで、梵音具(ぼんおんぐ)という音を出す仏具のひとつになります。
おりん以外にも音を出す梵音具があり、お寺にある木魚(もくぎょ)や鐘も梵音具に含まれます。
おりんは、もともと禅宗で使われていた仏具でしたが、近年では宗派を問わず広く使われていて、宗派によっては、鏧(きん)、鈴(りん)、鐘(かね)と呼び名が変わる場合もあります。
この記事では、おりんという呼び方で書き進めていきますが、鏧、鈴、鐘と呼ぶ地域である場合も同義としてご理解していただければと思います。
おりんの意味
おりんが備えられた仏壇を見かけることは多く、仏壇に手を合わせる前にチ〜ンと鳴らすと澄みきった音を出すおりんですが、おりんを備える意味は2つあります。
おりんを備える意味の一つ目は、人々の邪気を祓うと言われていて、二つ目は、供養や祈りをおりんの音に乗せて、極楽浄土に届けると言われています。
このような意味があるおりんですので、おりんを鳴らすときは故人やご先祖さまへの供養と祈りを込めて鳴らすようにしてください。
おりんの役割
おりんの役割は3つあります。
一つ目は、周囲の空気を清らかにするということです。
おりんを鳴らしたときに響く澄みきった音は、その場の空気を清浄する役割があります。
お葬式で僧侶が入場するときにおりんを鳴らしながら歩くのは、葬儀会場を清めるためでもあります。
二つ目は、故人にお祈りをしていることを伝えることです。
おりんの音は極楽浄土にまで届くと言われていて、おりんを鳴らすことで、故人に「あなたのためにお祈りをしています」と故人に知らせる役割があります。
三つ目は、読経の調子を整えるということです。
読経のときに鳴らすおりんには、読経の音程やリズムを合わせるための役割があります。
おりんの基本
お椀型の鈴をおりんと言いますが、おりんだけでは音を出しにくくので、おりん以外にも必要な仏具があります。
おりんの基本は、りん棒、りん台、りん座布団の組合せになります。
りん棒は、おりんを鳴らすための専用の棒で、りん棒でおりんの縁を鳴らすのが一般的になります。
りん台は、おりんを仏壇に直接置かずにりん台に置くのが一般的になり、浄土真宗本願寺派と大谷派ではりん台の形に違いがあります。
浄土真宗本願寺派は、六角形型または丸型のリン台を使い、浄土真宗大谷派では、四角形のりん台を使います。
また、りん座布団をおりんとりん台の間に敷いて、おりんが傷つかないないようにクッション的な役割があります。
浄土真宗大谷派では、りん座布団を使わずに、金襴輪(きんらんわ)という輪状のものをりん台とおりんの間に置きます。
おりんの素材
おりんの素材は、真鍮と亜鉛を混ぜ合わせた合金で作られているですが、金属の種類や合金の比率により、さまざまな種類があります。
おりんの素材で基本になる真鍮は、変色しにくく、傷つきにくく、耐腐食性も高いという性質があるので、永く使うことができます。
おりんの種類
おりんには、鉢型、印金(いんきん)、高台りんの3つの種類があり、それぞれの特徴についてみていきます。
一つ目は、鉢型です。
鉢型は、おりんの基本的な形で、見た目は鉢や壺のような形をしています。
二つ目は、印金(いんきん)です。
印金は、携帯用のおりんになり、お墓での法要などで僧侶が使うことが多く、イメージとしては、ハンドベルのような感じで、手で持ってりん棒で音を鳴らします。
また、印金は携帯用なので、袖の中にも入れられる小型タイプになります。
三つ目は、高台りんです。
高台りんは、おりんがワイングラスのような形をしているので、りん台を必要としないのが特徴になります。
近年では、おりんのサイズや形状、素材によってさまざまなバリエーションがあり、一見しておりんとわからないくらいおしゃれなものもあります。
おりんの作法と鳴らし方
仏壇でお参りをするときのおりんの作法は、線香をあげた後、合掌する前におりんを鳴らすことになります。
おりんをたたく場所は、縁をたたくとキレイな音が出るのですが、宗派によっては縁の内側をたたくこともあります。
仏壇のおりんは鳴らさない?
仏壇をお参りするとき、おりんは鳴らさないといけないのではと考えている人が少なくありませんが、実はおりんは鳴らさなくてもいいのです。
おりんを鳴らすのは、読経をするときだけで、それ以外は、鳴らす必要はありません。
中には、鳴らさないとお参りをした気にならないと思われる人がいるかもしれませんが、鳴らさなくても大丈夫なのです。
おりんの鳴らし方
おりんの鳴らし方は宗派によって違いがあり、おりんの内側をたたく、縁をたたく、外側をたたくなどの違いがあります。
読経のときに鳴らすおりんですが、経本にはおりんをたたく箇所が明示されていて、読経の始まり、区切り、終わりなどにおりん鳴らします。
宗派ごとに違いがあるおりんの鳴らし方ですが、日本にある代表的な宗派のたたき方についてみていきます。
浄土宗のおりんの鳴らし方
浄土宗のおりんの鳴らし方は、読経をするときだけに限られていて、読経をしないお参りでは、おりんを鳴らすことはありません。
浄土真宗のおりんの鳴らし方
浄土真宗のおりんの鳴らし方は、勤行(ごんぎょう)を行うときにだけおりんを鳴らします。
勤行とは、仏前でお経を読んだり、礼拝することで、お勤めとも言われます。
また、浄土真宗本願寺派は、始めに2回、途中に1回、最後に3回鳴らします。
真言宗のおりんの鳴らし方
真言宗のおりんの鳴らし方ですが、鳴らす回数は2回とされていて、1回目は優しく鳴らし、2回目は少し強目に鳴らします。
曹洞宗のおりんの鳴らし方
曹同宗のおりんの鳴らし方ですが、3回鳴らすお寺があったり、縁の内側を2回鳴らすお寺があります。
おりんはどこで買える?
おりんは、仏壇店や仏具店、通信販売やインターネットで販売されていて、最近ではホームセンターでも買えることもあります。
おりんを買うときに気をつけてほしいことが2つありますので、それぞれについてみていきましょう。
おりんのサイズ
おりんを買うときに気をつけたいのは、おりんのサイズです。
おりんのサイズは、寸で表記されているので、1寸が約3cmということを覚えておいてください。
例えば、6寸のおりんだと直径18cmになるので、仏壇の大きさと比較して、バランスが取れるようなおりんを買うようにしてください。
おりんの音色
おりんを買うときに気をつけたいことに、おりんの音色があります。
おりんの音色は、おりんの大きさ、形、厚みなどにより違います。
おりんの特徴は、澄みきった音なので、おりんを買うときは音の良し悪しにも気をつけてください。
一般的には、大きなおりんは低い音を出し、小さなおりんは高い音が出ます。
仏壇仏具店では、実際に音を聞くことができ、また、インターネットのショッピングサイトでも音色を試聴できるサイトもあるので、おりんを買う前に音色も確認するようにしてください。
おりんの価格
おりんの価格は、小さな仏壇に使うおりんだと10,000円くらいで、大きな仏壇に使うおりんになると、20,000〜30,000円くらいが相場になります。
おりんを含めた仏具セットというものがあり、7点セットで10,000円くらいで販売されていたり、職人さんが作った一点もののおりんだと、100万円を超える高価なおりんもあります。
りんのお手入れ
おりんのお手入れは基本的に乾拭きで、日常的にはほこりを払う程度で大丈夫です。
また、おりんに変色などがあれば、仏具仏壇店、通販やインターネットショッピングサイトなどで、おりん専用のクリーナーを購入してください。
専用のクリーナーなどを使って本格的なお手入れをするときは、柔らかい布を使うようにしてください。
また素手でおりんを触ると、おりんに手の脂がつき、汚れてしまうことがあるので、白い手袋をはめて、素手では触らないようにしてください。
りんの磨き方
おりんの磨き方ですが、研磨材が入った金属磨きを使うか、仏具仏壇店で専用のクリーナーを使って磨くようにしてください。
磨き方は、新聞紙や柔らかい布に研磨材、専用クリーナーをつけて、おりん全体に塗っていき、優しく磨いていきます。
黒い汚れが出てきたら、乾いた布などで拭き取れば磨きは完了します。
また、サビなどが出てきたときは、おりんを料理用のお酢に浸けてみてください。
しばらくすると、サビが浮いてくるので、水洗いをすればサビ落としが完了します。
りんの買い替え
専用のクリーナーや、磨きをしても汚れなどが落ちないときは、買い替えを考えてみてください。
汚れたおりんを使い続けるのも悪くはないでしょうが、新しいおりんでお参りをすると、故人やご先祖様に対しても新たな気持ちで供養やお参りができるのではないでしょうか。
まとめ
ここまで、おりんの意味や役割、おりんの種類や相場価格、おりんの鳴らし方やおりんのお手入れまで、おりんについてみてきました。
宗派ごとに慣らし方などの違いはありますが、一般の家庭ではおりんの作法や鳴らし方にこだわらず、仏壇に向かって供養するということのほうが大切ではないでしょうか。
仏壇の前に座って線香をあげ、手を合わす前に1〜3回くらいを目安におりんを鳴らし、故人やご先祖様を想いながら供養やお参りをするようにしてください。
