遺言状には公正証書遺言と自筆証書遺言がありますが、公正証書遺言を作成する場合は、公証役場に行き作成することになります。
この公証役場は普段の利用することはほとんどありませんし、人によっては一生の内一度もいかないという場合もあります。
ここでは公証役場とはについて、利用する為のポイントや、公正証書遺言についてご紹介していきます。
公証役場とは何をするところ?
公証役場とは公の機関であり、法務局が所轄しています。
公証人の机がそれぞれ並べられており、事務所のような作りとなっています。
公証役場の公証とは「公務員が職権で証明する行政上の行為」です。
例えば、Aさんがある文章を作成しました。この文章はAさんが書いたということ、Aさんが書いた内容について、手続きを行うことによって公証人が認めたというものです。
誰が書いたか、誰がどんなことを書いたのかを公務員という職権を利用して証明するということです。
公務員が職権で証明しますので、管轄する法務局が認めた書類となります。
重要な書類を作る際に公証役場を利用する制度となっています。
文章に証人が付く
文章に対して証人が付くことになりますので、いくら第三者が「認めない」といったとしても基本的にはそれを覆すことはできません。
これは裁判所でも同じことが言えます。
相続裁判などが起きた場合は、公正証書は公に認められた文章として裁判で使われることもあるほどで信頼があります。
反対にいうと証人がない文章については、本当に本人が書いたのか、本人が書いたとしてもそれは本当に本人の思いなのかは証明することが出来ませんので、法的に有効な文章とはなりません。
どんな目的で利用するのか
公証役場を利用する方は様々な目的を持って利用することになります。
それではどのような目的で利用することがあるのでしょうか?
代表的な5つについてご紹介していきます。
1.遺言状
遺言状を公証人立ち合いの元作成します。
遺言状は本人が書いたのかどうかが非常に重要になりますので、公証役場で遺言を作成するケースが多いといえます。
ちなみに公証役場で作成する遺言状は公正証書遺言と言われます。
2.任意後見契約
任意後見は本人が認知症になってから発動されるものですので、本人が正常な判断能力がある際に作成されたということが非常に重要になってきます。
公証人が本人の判断能力があるかどうかをきちんと見極めたうえで作成をします。
3.金銭消費貸借
金銭の貸し借りがある場合は、契約書について公証人が立ち合いを行います。
4.土地建物賃貸借
不動産をやり取りする場合に関しても、後々のトラブル防止の為に公証人が立ち合いを行います。
5.離婚
離婚をする際の慰謝料や養育費、子どもとの面会など、様々な取り決めをしますが、口約束では守られない可能性もありますので、公正証書として作成する方は多いといえます。
その他にも事実実験公正証書や私署証書の認証などがありますが、日常的に関りの無いものですのでここでは説明を省きます。
公正証書は後から「言った言わない」を防止する為の目的があります。
特に金銭や土地、遺言など第三者が絡むものに関しては、しっかりと文章を作成してトラブルを防止する必要があると言えます。
法的にも認められる文章ですので、トラブル防止には非常に有効なものとなります。
どんな人が働いていて、どこにあるのか?
公証役場には公証人が働いています。公証人以外は事務員などであり、基本的に公証人は公務員です。
元々弁護士をしていた、検事をしていた、裁判所で働いていたなどの経歴を持っている方が非常に多く、法的に有効な文章を作成する知識を持っています。
公証役場は様々な場所にあり、県内には必ず1か所はあります。県庁所在地にあるケースが多いです。
また、遺言状作成などの場合であれば、現在住んでいるところ以外の公証役場でも作成が可能です。
例えば沖縄で住所を構えていても、北海道の公証役場でも作成が可能です。
遺言状を公証役場で作るのがおすすめな理由
遺言状は公証役場で作るパターンと、公証役場で作成しないパターンがあります。
ここでは公正役場で遺言状を作成することがおすすめにな理由についてご紹介していきます。
公正証書遺言がある場合の効力
公正証書遺言は様々な効力があります。
1.検認の必要がない
通常遺言は家庭裁判所で本当に本人が書いたものなのか確認する作業が必要になります。これを検認作業と言いますが、公正証書遺言の場合は既に公証人が証人としていますので、検認が必要なくスピーディーに物事が進んでいきます。
2.遺言状を無くすことがない
自分で書いた場合は無くす可能性がありますが、公正証書遺言は公証役場で保管されますので無くすことはありません。また全国の公証役場で遺言状を確認にすることが出来ますので、発見も早いといえます。
3.自筆である必要がない
自筆証書遺言は自分で記入する必要がありますが、公正証書遺言の場合は自分で記入することはなく、パソコンで記入することが出来ますので簡単に作成が出来ます。
自分で全文を全て手書きで書くとなると、労力や間違える可能性があります。
自筆証書遺言ではだめなのか?
自筆証書遺言のメリットとしては、費用がかからないことと、気軽に書けるということです。
そのため、自筆証書遺言で作成する方が多いのですが、間違った書き方をしていると無効になることもありますし、第三者の目が入っていないですので項目に不備がある可能性もあります。
また、無くしたり検認が必要だったりもしますので、あまりお勧めはできません。
公正証書遺言で必要な書類と費用
公正証書遺言を作成する手数料としては、遺言状に書かれている財産(遺産)によって異なります。
100万円まであれば5000円、200万円までであれば7000円、3000万円までなら23000円といったように金額によって料金が異なりますので注意しておきましょう。
必要な資料には以下のものがあります。
もし分からない方は直接公証役場に連絡をして確認することをお勧めします。
・印鑑証明
・住民票
・戸籍謄本
・固定資産評価証明書(土地や建物がある場合)
・証人に関するメモ
遺留分も配慮して作成する
遺留分とは本人の配偶者や子などの法定相続人は、法律で遺言者の財産分与の最低割合が決まっているということです。つまりいくら遺言状に書いていたとしても、受け取る側の権利として遺留分がありますので無効になってしまいます。
例えば、長男と次男がおり長男のみに自分の財産を渡したいと考えていても、次男には受け取り権利がありますので、長男に全て渡すことは実現できません。遺留分についても配慮した遺言状を作成しましょう。
公証役場を利用する為に知っておきたい3つのポイント
公証役場を利用する際に知っておきたいポイントについてご紹介をしていきます。
もし利用するのであれば出来るだけスムーズに利用するために、ポイントは抑えておきましょう。
1.自分で全て出来るのか?
結論から言うと自分で公証役場にいって作成をすることは可能です。まずは公証役場に行き「遺言状を作成したいので作成方法を教えて欲しい」と伝えると良いでしょう。
作成の方法について教えてくれます。
覚えておきたいポイントとしては、公正証書は公証人が作成するものです。
そのため、自分で用意するものとして、誰に何を上げたいのかという目的が必要です。
メモ書きなどに書いていくとスムーズに行うことが出来ます。
また、もし自分で公証役場まで行くことが難しい場合は、出張費がかかりますが公証役場の方が来てくれることもあります。
車いすなどの場合は自分で行くことが難しいと思いますので、相談をしてみることをお勧めします。
2.公正証書が無効にならないために
公正証書は基本的に公証人がつきますので、無効になることはありません。
しかし場合によっては無効になるケースもありますので、注意しておきましょう。
遺言状の場合は、作成時に本人の判断能力がきちんとあったかどうかで争いがある場合があります。
もし判断能力が疑わしい状態で作成をした場合は、公正証書遺言であっても無効になる可能性がありますので注意が必要です。
実際に合ったケースとして以下のものがあります。
長女と長男が父の遺言状をめぐって争った件です。
長女が父を公証役場まで連れ添って、公正証書遺言を作成しました。
その内容としては財産の大半を長女に渡すというものです。
公証人は本人がきっちりと受けた答えが出来ていたので、判断能力ありと判断して作成をしました。
本人が亡くなった後に長男が「父が作成した遺言状は、判断能力がない状態で作成したので無効」という裁判を長女に起こしました。
結果的に公正証書遺言を作成する際には、父は認知症が進行していたことが分かり(医師の診断書に記載されていた)、公正証書遺言は無効となってしまいました。
3.作成したことを家族に言うべきか
遺言状を作成したことを家族や親族に言うべきなのか迷われることがあります。
作成をした際は家族や親族に伝えることをお勧めします。
内容は本人しか照会ができませんので安心ですし、もし亡くなった際に遺言状を作成したことを誰にも言っていなかった場合は、そのまま遺言状は誰にも見られることなく終わる可能性もあるからです。
「公正証書遺言を作成している」とだけ家族に伝えておきましょう。
まとめ
公証役場では公証人が働いており、公正証書を作成することが出来ます。
遺言状をきちんと作成したい、残された家族に迷惑を掛けたくないという場合は、公証役場で遺言状を作成することをお勧めします。
もし作成が不安、作成に手間がかかると考えている方は、弁護士や司法書士、行政書士などが代行で作成してくれるところもありますので(有料)活用するようにしましょう。