日本の仏教で最も信者数が多いのは浄土真宗になりますが、浄土真宗の仏壇は他の宗派が使う仏壇と比べると少し違いがあります。
仏壇は大きく4つの種類に分けられるのですが、浄土真宗で使う仏壇は他の仏壇に比べると豪華で、費用も高くなるので慎重に選ぶ必要があるのですが、浄土真宗で使う仏壇について本当に理解している人は少ないのではないでしょうか。
そこで、今回は浄土真宗とは、お西とお東の違い、浄土真宗で使う仏壇、仏具の特徴や費用、他の宗派が使う仏壇などについてみていくことにします。
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浄土真宗とは
日本における宗教は6つの系統に分かれ、それらの系統からさらに13の宗派に分けられるのですが、その中で、最も信者数が多いのが、浄土真宗になります。
浄土真宗は鎌倉時代の仏教で、鎌倉時代初期に親鸞聖人(しんらんしょうにん)が、師匠である法然(ほうねん)によって明らかにされた浄土往生の教えを継承して開かれた浄土宗の一派になります。
浄土真宗は、十の宗派に分かれ、真宗十派とも呼ばれていて、本願寺派、大谷派、高田派、仏光寺派(ぶっこうじは)、木辺派(きべは)、興正派(こうしょうは)、出雲路派(いずもじは)、山元派(さんげんは)、誠照寺派(じょうしょうじは)、三門徒派(さんもんとは)に分けられます。
十ある宗派の中でも特に大きな派が、本願寺派(西本願寺)と真宗大谷派(東本願寺)になります。
それぞれの宗派は、本願寺派、大谷派と呼んだり、お西とお東とも呼んだりしますが、どのような違いがあるのか、みていきましょう。
お西とお東の違い
本願寺派をお西、真宗大谷派(東本願寺)をお東と呼ぶのですが、どちらも親鸞聖人を宗祖と仰ぐ浄土真宗の宗派で、教えの元である聖典、お釈迦様の言葉であるお経などは、親鸞聖人が書き綴っているので、基本的には同じ考えだと思っていただいても大丈夫です。
本願寺は戦国時代までは一つで、一揆の方針を巡って、親鸞聖人の子孫にあたる教如(きょうにょ、東本願寺第12代法主)と准如(じゅんにょ、西願寺派第12世宗主)が対立、分裂して、教如が豊臣秀吉によって追放されてしまいました。
追放された教如は、徳川家康の支援を受けて、もともと一つだった本願寺の東側に、もう一つの本願寺を造り、本願寺が西と東の2つになり、西側の本願寺をお西、東側の本願寺をお東と呼ぶようになりました。
お西とお東に教義上の大きな違いはありませんが、阿弥陀如来像や仏壇のお飾り、焼香や言い回しなどに微妙な違いがあります。
例えば、お西の仏具は黒っぽい色合いの物を使うのですが、お東の仏具は金色の物を使ったり、女性の数珠の持ち方が、お西では両手にかけて房を下に垂らすのですが、お東では両手にかけて房を親指から東側に垂らすように持ちます。
また、お西では焼香は1回ですが、お東では2回行ったり、南無阿弥陀仏をお西では、「なもあみだぶつ」と呼び、お東では「なむあみだぶつ」と呼んだりします。
以降は、本願寺派(西本願寺)をお西、真宗大谷派(東本願寺)をお東と、正式名ではなく、通称名で呼びようにします。
浄土真宗と他宗派の違い
浄土真宗と他の宗派との大きな違いは、死者を供養するという概念がないことです。
浄土真宗の信者は、亡くなると同時に阿弥陀如来によってすぐに極楽浄土に導かれると考えられているので、故人を供養するということはありません。
礼拝の対象も故人や先祖ではなく、極楽浄土に導いてくれる阿弥陀如来が礼拝の対象になります。
人が亡くなると死後の名前である戒名をつけますが、浄土真宗では戒名はなく、法名を授かります。
それ以外にも、臨終後はすぐに極楽浄土に導かれるので、末期の水は取らず、遺体への旅支度の装束を着せないなど、独特の特徴があります。
また、浄土真宗の信者は亡くなると、極楽浄土に導かれて、先に亡くなった故人と再会する日がいずれ来ると信じられているので、葬儀では告別式という言葉は使いません。
もう少し細かな違いを説明すると、般若心経を読まない、位牌を置かない、お盆の迎え火、送り火をしないなどがあります。
浄土真宗の仏壇
ここまで、浄土真宗についてお伝えしてきたように、浄土真宗では亡くなった直後に阿弥陀如来によって極楽浄土に導かれるという考え方が基本で、阿弥陀如来がいらっしゃる極楽浄土は光り輝いていることをイメージしやすいように仏壇には金色が使われます。
ですので、仏壇店に行って「浄土真宗です」と伝えると、絢爛豪華な金仏壇を勧められるのが正式ですが、近年では仏間が無い家も多くなり、マンション、戸建てなどの居住環境に合わせたモダンで家具などのインテリアに合わせた仏壇を選ぶ人が増えているようです。
浄土真宗といえば金仏壇ですが、お西とお東によってそれぞれに違いがあるので注意が必要になります。
お西の本願寺派(西本願寺)の本山は龍谷山本願寺で、お東の真宗大谷派(東本願寺)の本山は真宗本廟になり、それぞれの本山のイメージが仏壇にも反映されています。
浄土真宗 仏壇の特徴
浄土真宗の仏壇は金色の金仏壇を選ぶことが多いのですが、お西とお東の仏壇でそれぞれに特徴があります。
仏壇の中にある柱の色は、お西は金色でお東では黒色になり、仏壇の屋根は、お西だと一重なのですが、お東は二重になっています。
このように、浄土真宗で使われる金仏壇には、お西とお東では違いがあり、さらに金仏壇に飾る仏具にもお西とお東では違いがあるので、詳しくみていきましょう。
浄土真宗 の西と東で違う仏具
浄土真宗の金仏壇に必要な仏具は以下の通りです。
・ご本尊
・脇侍(きょうじ、わきじ)
・法名軸・過去帳(ほうみょうじく・かこちょう)
・三具足(さんぐそく)または五具足(ごぐそく)
・香炉(こうろ)
・角供花(かくきょうか)
・仏飯器(ぶっぱんき)
・おりん
・打敷(うちしき) など
これらの仏具のうち、お西とお東に違いが無いのは、以下のものです。
・法名軸
・過去帳
・仏飯器
・打敷
浄土真宗では位牌を仏壇に祀ることがなく、位牌の代わりになる法名軸や過去帳を仏壇に祀るのですが、法名軸、過去帳はお西、お東であっても違いはありません。
仏飯器は、仏壇にご飯を供える時に使う器ですが、こちらもお西、お東であっても違いはありません。
最後に打敷ですが、打敷は仏壇に置かれる卓の天板の下にはさむ敷物になり、浄土真宗では三角形の形の物を用い、法要などで使用します。
お西、お東で同じ仏具を使うものがある一方、お西とお東で使う仏具に違いがある仏具もあるので、その違いについてはみていきましょう。
本願寺派(お西)の仏具と飾り方
お西、お東で違いがある仏具についてみていくのですが、まずはお西の仏具ついてみていきます。
ご本尊
ご本尊はお西、お東ともに阿弥陀如来ですが、お西のご本尊は、仏像の場合は後光の下(背中部分)に彫り物がついていて、掛け軸の場合は、上部に届いている後光が8本あります。
ご本尊は、最上段中央に飾ります。
脇侍
次に脇侍ですが、お西の場合は、真ん中のご本尊(阿弥陀如来)に向かって右に「親鸞聖人」、向かって左に「蓮如聖人」をお祀りします。
四具足
四具足は、お西では「華鋲(けびょう)一対」「火舎香炉(かしゃこうろ)」「木蝋(もくろう)」です。
華鋲は、樒をお供えするための浄土真宗独特の仏具です。
火舎香炉は、焼香をする仏具です。
木蝋は、ロウソクをともさないときにも常に供えておく木製の蝋燭です。
四つ具足は、ご本尊の前に上卓(うわじょく)を配し、その上に置きます。
中央手前に香炉、その奥に木蝋燭、左右に華鋲を置きます。
三具足・五具足
三具足は、「花立」「香炉」「燭台」です。
五具足は、「花立一対」「燭台一対」「香炉」です。
三具足は日常的なお参りで使い、五具足は法要の時などに使いますが、仏壇のスペースによっては飾れないときは三具足を飾ります。
お西では、黒っぽい宣徳色(せんとくしょく)の物が使われます。
また、香炉は玉香炉または土香炉と呼ばれるものを用います。
三具足・五具足は、ご本尊から一段下がったところに前卓(まえじょく)を置き、その上に打ち敷をかけて置きます。
三具足は左から花立、香炉、燭台の順に配します。
五具足はやはりご本尊から一段下がったところに、中央に香炉、香炉の両脇に燭台、さらに外側に花立を配します。
角供花
角供花は、お菓子や果物などを供える仏具で、お西では六角形をした六角供花を使います。
四具足を置いている上卓のさらに外側に一つずつ配します。
おりん
おりんは読経などおつとめの時に鳴らす鐘のことで、お西ではおりんを置く台の形が六角形で、おりんの下にりん座布団を敷きます。
仏壇の手前に置く経机の右端に置きます。
真宗大谷派(お東)
先ほどはお西で使う仏具についてみてきましたが、次はお東で使う仏具ついてみていきます。
ご本尊
ご本尊はお西、お東ともに阿弥陀如来になるのですが、お東のご本尊は、仏像の場合は後光の下(背中部分)に彫り物がなく、掛け軸の場合は、上部に届いている後光が6本になります。
お西と同じく、最上段中央に飾ります。
脇侍
次に脇侍ですが、お東の場合は、真ん中の阿弥陀如来に向かって右に「十字名号(じゅうじみょうごう)」、向かって左に「九字名号(くじみょうごう)」を掛けます。
四具足
四つ具足は、大谷派の場合は「華鋲(けびょう)一対」「火舎香炉(かしゃこうろ)」「仏飯器」です。
お西と同様、ご本尊のまえに上卓を配し、その上に並べます。
三具足・五具足
お東の三具足、五具足は、金色で鶴や亀が載った物が使われます。
香炉は、透かしの土香炉になります。
飾る場所はお西と同様で、ご本尊から一段下がったところに前卓(まえじょく)を置き、その上に配します。
三具足であれば左から花立、香炉、燭台の順に並べます。
五具足であれば、中央に香炉、その両隣に燭台、さらにその外側に花立を配します。
角供花
お東で使う角供花は、八角形の八角供花を使います。
四具足を置いている上卓のさらに外側に一つずつ配します。
おりん
お東では、おりんを置く台の形は四角形で、おりんの下にりん座布団はひかずに雲の彫刻がされた雲輪(くもわ)という仏具を使います。
仏壇の手前に置く経机の右端に置きます。
浄土真宗 仏壇の相場
浄土真宗でよく使われる金仏壇の相場は、100万円から150万円くらいになります。
金仏壇の特徴は、彫刻、漆、金箔、蒔絵、金具、組立てなど、それぞれの専門の職人さんたちの分業になっているので、唐木仏壇やモダン仏壇などの他の仏壇に比べると費用は高くなります。
最近では、中国産など海外製品もあり、国内産に比べると少し安めの費用で購入することができます。
また、金仏壇と一口でいっても大きさ、漆の種類、金箔・金粉・金塗装などの工法、手書きの蒔絵もしくはシールの蒔絵などにより費用は変わりますので、購入するときは金仏壇を置くスペース、予算なども考慮しながら選ぶようにしてください。
他の宗派の仏壇
浄土真宗では金仏壇を使うことが多いのですが、他の宗派はどのような仏壇を使うのかみていきます。
仏壇には、唐木仏壇、金仏壇、家具調(モダン)仏壇、上置き仏壇の4種類に分けることができます。
唐木仏壇は、黒檀(こくたん)、紫檀(したん)などの材料が使われている仏壇で、禅宗系、密教系、日蓮系など幅広い宗派で使われていて、相場は70万円から100万円くらいになります。
家具調(モダン)仏壇は、自由度が高く、材質やデザインも洗練されていて、インテリアとして置けるものが多く、仏間がない住宅でも使えるのが人気になっていて、相場は50万円前後になります。
上置き仏壇は、台付きの仏壇に比べるとコンパクトなサイズになるので、置く場所を選ばないので人気があり、相場は30万円前後になります。
浄土真宗の仏壇に位牌は必要?
浄土真宗では位牌は作りません。
位牌は故人の戒名、亡くなった年月日、俗名、享年を記した木の札のことで、自宅の仏壇やお寺に安置して故人の霊を祀ります。
位牌は2種類あり、亡くなってから忌が明ける四十九日までは白木の位牌を用い、その後は漆塗りをした本位牌を用います。
この位牌には故人の魂が宿っていて、位牌を祀った仏壇に向かって故人を供養するという考えから仏壇に位牌を祀りますが、浄土真宗では位牌は必要ありません。
浄土真宗では故人の魂は、亡くなってすぐに阿弥陀如来によって極楽浄土に導かれているので、魂が宿った位牌を仏壇に置いて、供養する必要がないのです。
その代わり、過去帳に法名や俗名を記載していきます。
まとめ
ここまで、浄土真宗とは、お西とお東の違い、浄土真宗で使う仏壇、仏具の特徴や費用、他の宗派が使う仏壇などについてみてきました。
浄土真宗といってもお西、お東で仏壇や仏具に違いがあるので、浄土真宗であっても自分の家がお西なのか、それともお東なのかをまずは確認してみてください。
もし、自分の家がどちらなのかよくわからないときは、付き合いがあるお寺の僧侶に相談をして、確認してから仏壇店にいくようにしてくださいね。
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